べロバの仕掛けるジャマトグランプリ二回戦、戦国ゲーム。相手の陣地に攻め込み大将ニラムを討ち取り、家宝のヴィジョンドライバーを奪え。
強力な力を持つギーツとダパーン。伝説のデザ神、広実須井の乱入により最初の襲撃は失敗。一見仮面ライダー優位とも取れる状況であるが、ギーツの所持するブーストマークⅡレイズバックルには副作用があった。超加速の引き換えに、抗いきれない睡魔に襲われる。寝込みをジャマトライダーたちに襲われ、サポーターのジーンが援護に参戦。しかし、それを良しとしなかったべロバは、チラミからコピーした指紋のデータでグレア2に変身。ジャマトライダーをバックルの力で強化し、二人をピンチに陥れる。
「そこで見てなさい。推しのの死にざまを……フフッ、あはははっ!こんな不幸なことは無いわ!ゾクゾクする~」
「嫌だ……ああああああああ!」
ヒュプノレイにより制御され、マグナムバックルで強化されたジャマトライダーが、未だ目覚めない英寿に向けて発砲する。モンスターバックルで強化されたジャマトライダーにより拘束されえた英寿はピクリとも動かず、紅の弾丸が心臓めがけて飛び込んでいった。
「そうはさせない!」
『NINJYA&BOOST!』
直前で、加速したタイクーン・ブーストニンジャフォームが乱入し、拳で弾丸を砕いた。遅れてナーゴとハイトーンが現着し、それぞれ英寿の奪還と追撃の阻止を行う。ナーゴの背中めがけたのビートアックスで英寿はあっさりと離され、ハイトーンが飛び蹴りでマグナムシュータを弾いたことで攻撃手段を奪う。
「ちっ、いい所で!」
極上の不幸を邪魔され、グレア2は三人へ報復しようと残りのヒュプノレイを向かわせる。
「させるか!」
『PROPELLER TACTICAL BOMBER!』
ヒュプノレイたちは、ダパーンの放った高速回転する弾丸に弾き返された。最後に戦場へ現れたダパーンは、ヒュプノレイと弾丸の衝突により生じた爆炎を抜けると共に、空中から不意打ちの回し蹴りを繰り出す。
『BLAST STRIKE!』
全てのヒュプノレイを戦闘に使用していたことで、グレア2はバリア展開が間に合わずキックを上腕でガードする事となる。運営の装備の方がスペックは上とはいえ、それでもダメージは着実に通り、大きく後ずさった。
「よし!今のうちに英寿を!」
さらにタイクーンが足元を殴ることで、一直線に火柱が吹きあがり、ジャマトライダーをグレア2方面に押し返す。ようやっと起き上がったジーンは、タイクーンの声を受けて英寿を支える。これ以上の戦いは無用と、仮面ライダー達は撤退の構えを取った。
「なめんじゃないわよ!」
『DELETE.』『MAGNUM STRIKE!』『MONSTER STRIKE!』
激昂したグレア2はジャマトライダーに指示し必殺技を発動。銃弾の雨と拳のエネルギー体、踵落としの軌道に合わせて発生する斬撃波を一斉掃射する。
「そっちもな!」
『WATER TACTICAL BOMBER!』『『TACTICAL BLIZZARD!』』
仮面ライダー達も同時に必殺技の発動で対抗する。ダパーンの発射する弾丸が破裂すると、二つの水塊が溢れ出、それぞれビートアックスからの冷気で一気に氷結。巨大な氷の壁となってグレア2らの攻撃を防御した。結果的に、一斉攻撃で氷壁は砕けてしまうも、冷気による煙が晴れる頃には全員が撤退を完了させていた。この場で決着するよりも英寿とジーンの保護を優先したタイクーンたちの判断力が勝る形となった。
「無駄よ。ジャマトが天下統一を果たし、この世界を支配するんだから」
グレア2は追跡を諦め、べロバの姿へと変身解除した。
*
ベロバからの撤退には成功した。負傷したジーンにも治癒は必要かと提案したが、断られてしまった。訪れた時代の摂理に従うのが、未来人の慣例らしい。英寿をソファーへ、ジーンをベッドにそれぞれ寝かせ、サロンで解散ということになった。景和と祢音はサポーターの部屋へ。朋希もIDコア管理室で休むとのことだったので、俺は一人どうしようかと熟考した末、モーンのオーディエンスルームに行くことにした。
しばらくぶり転送された彼女の部屋はこれまで以上に管理が行き届いておらず、崩れた本の山には埃と言う埃が積もっている。一部の本棚は倒れていて、下敷きになった本がぐしゃぐしゃに潰れていた。以前に俺に本を勧めていたのはなんだったのか。もう古代人の娯楽には飽きたのか。
「モーン、いるか?」
これほど狭い部屋なのに、俺の声は紙に吸われていまいち張らなかった。億劫ではあったが、ここで引き返しては意味が無い。開きっぱなしの本をたたみ直して、地道に道を作ることにした。ページの皺を残さないよう、伸ばしながら閉じ、大きなものから順番に積み上げていく。初めてみたら案外没頭出来て、三十分だろうか。とりあえずソファー周辺まで一本の道を作ることができた。そして薄々気付いてはいたがモーンはいなかった。最低限ソファーに横になれるくらいのスペースが残されていたので、ここを放棄したわけではないようだが。
「出直すしかないか……何か書くもの……」
置手紙でもと、ポケットをまさぐっても目ぼしい物は無く。出来上がった細い道を辿って、入り口に置きっぱなしだった鞄へと向かう。ペンとノートくらいはあるだろうと、膝立ちになって鞄に片手を突っ込む。
「なんて言えば伝わるもんか……」
「あ」
ブツブツと独り言を続けていると、入室したてのモーンが足元の俺の存在に気付いていた。見上げた視線が重なった瞬間、急速に彼女の顔が青白くなってゆくのが分かった。引きつった頬で、目が細くなっている。次に彼女が取った行動は、回れ右をして逃げることだった。後ろに返って転送されようする彼女の手首を、反射的に掴んだ。ここで話せなかったら、次にいつ会えるかわからない。俺も必死だった。
「は、離して!私は金輪際あなたに会わないと決めてるのっ!」
「それじゃ困る!とりあえず落ち着け!」
パワーバランス的には流石に俺の方が上で、彼女がいくら両手を振り回しても、手を離すことにはならなかった。
ソファーに座るとすぐに、モーンは下を向いて黙り込んでしまった。彼女と会うのは、かみなりジャマト祭りで助けてもらった時が最後で、俺も荒れていたから、どんな様子だったかいまいち覚えていない。わりとアクティブに活動していた印象だったが、いつの間に意気消沈したのだろうか。新井紅美として、俺を騙していたことに後ろめたい感情があるの事実だろうが……
「あなた……なんで戦いに戻って来たの?」
以外にも、彼女から先に口を開いてきた。話すのはこっ恥ずかしいけど、せっかく掴んだコミュニケーションの機会を逃すわけにもいかない。俺は彼女の前で屈んで、目線を合わせ語った。
「そうだな…玲を殺したのは俺で、また戦えば仲間を撃つかもしれない。そう思って俺は、戦うことを拒んだ」
冷静に考えれば、気絶したままの俺が、玲の心臓を狙ってあの重たい武器を使えるわけがない。ともすれば、仕組んだ奴がいる。そいつの顔が割れない以上は、武器を持つことが怖かった。
「でも、俺が戦わないと、奪われる命があった。過去を受け入れて、信じてくれる仲間がいた。そう思うと、怖がってる時間なんて無かった。黎明の時とは違うんだ。一人じゃないって分かったから、俺はもう怖くない」
今の俺の正直な気持ちだ。また誰かが引き金を引かせようとしても、仲間と一緒なら乗り越えられる。そう感じていた。
「そっか……強いね、奏斗は」
「なんとかギリギリでやってるよ。英寿たちだけじゃない、青山とか、ボランティア部の皆に支えられて、やっとだ」
仲間たちの名前が話題に出ると、モーンはさらに苦虫を嚙み潰したような表情に様変わりした。金輪際関わらないって、もしかしてこいつ。俺がこれまでの行動を説教しに来たとでも思っているのか。それなら、間違っていたとしてもはっきり伝えなければ。
「一応言っておくけど、仲間ってのはお前も含んでるつもりだからな」
モーンの苦い顔は、困惑へと様変わりした。少しだけ前を向き、訴えの眼差しを向ける。
「どうして……?怒ってないの?私が、奏斗を、ボランティア部の皆を騙してたこと」
この調子だと、俺たちと部長の会話を盗み見していたのだろう。俺は上手く言語化するのに時間がかかって、がりがりと後ろ頭をかいた。
「まぁ……俺はもう怒ってないよ。サポーターってことは、お前が俺を仮面ライダーに選んだんだろ?仮面ライダーにならなかったら、玲が消えたこと、ずっと知らないままだった。その点、感謝の方が大きいよ」
「じゃあ、なんで今日ここに?」
そうだ。逃げられないように、正直な言葉を紡ぐのに必死で、本当に言いたいことを伝えるのを忘れていた。
「……前に約束したよな。一緒に戦おうって。今度こそ、お前を信じる」
ジャマーガーデン突入直前の会話、まだ覚えている。あの時は後ろからサポートしてほしいという願いだった。けど、状況がかなり変わった。ジャマトは進行を諦めず、仮面ライダーは疲弊するばかり。ブーストマークⅡも副作用がひどいし、パイレーツの治癒で治せるのも怪我だけだ。戦力が足りなすぎる。
「この世界を守るためには、お前の力も必要なんだ。頼む、力を貸してくれ」
「……できないよ」
前のめりになっていた彼女の背中が、再び丸くなった。だめ……か。ジャマトグランプリのルールでは、サポーターがゲームの勝敗に関わってはならない。このルールに反すれば、べロバの変身するグレア2が粛清に現れる。先程のジーンがそうだった。一見こちらの戦力を抑制するルールでもあるが、これには穴がある。
俺たちの目的はゲームの攻略ではなく、敵方のヴィジョンドライバーの奪取。つまり、サポーターの排除のために変身したべロバからドライバーを奪ってしまえばいい。ルール厳守のために家宝が自らのこのこと出てくるのだ。この機会を逃す手はない。グレア2はそれ単体で強力だし、当然ジャマトらの妨害も考えられるから、届く手はできるだけ多い方がいい。特に、モーンの瞬間移動能力は盤面を支配できる。だが……モーンは乗り気ではなかった。
「どうしてもか?」
「うん。約束は守りたいけど……奏斗になにがあるかわからないのが……怖いの」
俺に、何があるか?小首を傾げて考えていると、モーンの方から説明してきた。
「玲さんが死んだ映像、見せられたでしょ。あれは、私をデザインした人の仕業かもしれないの」
デザイン……?そうか、未来人は自らを好きにデザインできるのだった。モーンが新井紅美の姿をしているのもそれが原因……じゃなくて、モーンは何者かに作られた存在だったということか。そのデザインした人が、俺が自ら戦いを降りるように仕向けた……?意図が分からない。実行犯のジットも仕事だと言っていたし、さらに上位の存在、そんな奴がなんで俺を?
疑問が積もりに積もって、言葉が出てこない。モーンが言いたいのはどういうことなのだろうか。
「私をデザインした……”ソソグ”は、デザグラのトップに次ぐ、創設者の一人。きっと、あの人の逆鱗に奏斗が触れてしまったの。だから、できるだけ自然な形でゲームから排除しようとしてる。今は見逃されてるけど……いつか、実力行使に来る。あの人の後継者としてデザインされた私が、”悪辣なサポーター”以上の行動をしてしまうと、きっとすぐに……」
なるほど。彼女が怯えている理由と、デザグラ運営の不自然な介入にも合点がいった。俺の存在が邪魔だった、ってことだ。いつ頃からだったかは分からないが、願いがコラスに悪用されたり、ジャマトライダーから奪ったドライバーを使ったことだってある。思い当たる節が無い訳でもない。玲を撃ったことも、ソソグの工作って可能性もある。不安は絶えないが、皆に危害が加わる可能性を感がると、無理に頼み込むのは得策じゃないな。
「わかった。ジャマトグランプリは俺達で何とかするよ。ヴィジョンドライバーを取り返すまでは、あまり介入してこないだろうしな」
俺は立ち上がり、ソファーを通り過ぎる。せっかく作った道を崩してしまわないように気を付けながら入り口まで戻ると、最後に丸まった背中へ声をかけた。
「でも、できたらさ。卒業式には出てくれよ。部長と会える最後の機会かもしれない」
ボランティア部の三人は、俺よりもっと優しい。新井がまた会いに来たとしても、なんだかんだで優しく迎えてくれるはずだ。
そのためにも、俺は世界を守らなければ。たとえ、ソソグが望む戦いでは無かったとしても。
※
奏斗が去ったオーディエンスルーム。モーンは英寿とジーンの会話を画面越しに見ていた。
「やっぱり浮世英寿は輪廻転生を……」
二千年前、生き別れた母に再び会うため。何度死にながらも、その不幸を糧に次の人生を始める。終わることのない戦い。まだ誕生して十年と間の無いモーンからすれば、英寿の苦しみは想像を絶するものであろう。しかし、英寿の意志は強く、決して折れなかった。
『でも……肝心なのは、今をどう生きるかだ』
その言葉に、背中を押されたように感じていた。
*
広実須井の誘いで、ボランティア部はジャマーエリアの外周を訪れていた。エリア越しに見える”城”は未だに変化を見せず、仮面ライダーとジャマトの戦いが膠着していることを示していた。
「あーあ。今の代の仮面ライダーは情けないなぁ。僕の代が現役だったら、すぐに天守閣に攻め込んで大将をズドンだよ」
わざとらしく昔を懐かしむ須井の言動に、気まずそうにしていた郁真が口を開いた。
「それは、綾辻さんの時か?赤哉の兄ちゃんの時か?」
「どっちもだよ。君たちの大切な人は、強い仮面ライダーだった。身体的にも、精神的にもね」
五年前、中学生時代に参加したデザイアグランプリが思い起こされる。
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郁真の叔父、綾辻誠司とサロンにて。横並びでカウンターに座り、須井はホットコーヒーを、誠司はホットココアを飲んでいた。
当時の須井は荒んでおり、他のプレイヤーに危害を加えるような行動も辞さないプレイヤーとなっていた。それでも、須井の参加者内での評価が下がることは無かったのは、誠司がブレーキを利かせていたからだろう。一回戦の名残で、須井と誠司は一緒に行動するようになっていた。自分が目にかけている親戚である、快富郁真の話ばかり聞かされて、須井はうんざりしていたが。
「それでなぁ!あいつは経営の才能があると思うんだよ!」
「はいはい。じゃあ、その郁真って奴に会社を継がせるんです?」
でこに怒りマークの浮き出ている須井を他所に、誠司は背中をバンバンと叩きづけていた。しかし、須井に問いかけらるとすぐに手を止めて真剣な表情となった。身内に見せる表情とは違う、経営者の顔である。
「いいや。それはあいつが決めることだからな。お前と歳も近いし、仲良くしてやれよ?」
誠司は話の末尾に、決まって仲良くしてやれと言っていた。そもそも同じ学校に進学するかも分からないのに、学年もずれている。郁真を気遣っているように見えて、こちらには傲慢な言動になるのも、須井のうんざりを加速させていた。本当は願いのために、自分を踏み台にしようとしているのではいかと。疑心も僅かに積もっていた。
しかしその疑心は、思わぬ形で裏切られた。
三回戦の終盤、逃げ遅れた他の参加者を守るために、誠司は文字通り盾となった。背中からジャマトたちの波状攻撃を受け、装甲が限界を迎える。それでも、誠司は最後の力を振り絞ってベルトのバックルを叩いた。
『BAZOOKA STRIKE!』
「ぬあああああっ!」
振り向きながらバズーカを薙ぎ払い、緑色の砲弾でジャマトを一掃した。同時に、変身解除して両膝から崩れた。赤いノイズと共に、IDコアに修復不可能の亀裂が入る。須井の変身するクルウスが現着した時には、全てが終わっており、正座のまま動かない誠司だけが残されていた。
「おいっ!誠司さん!なんであんた!」
誠司はクルウスの肩を掴んで寄せると、自らのバズーカバックルを手に持たせた。
「忘れるな!願いは力だ!誰かのために使うのも、いいが…………自らの意思が伴わなければ、形を成さない……っ!」
『MISSION FAILED』
誰かのために死んでいった男の残した言葉が、須井の脳裏に焼き付いている。
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須井は街路樹を囲うように設置されているベンチに座ると、両手を組んで項垂れた。
「彼らは素晴らしい人たちだった。だから、新井紅美を託せると思っていた。あの人たちが信じた、誰よりも、信用できる人に」
「その託すってのは、俺も含まれてるのか?」
三人の元に、ダッフルコートのポケットに手を突っ込んだ奏斗が歩いてきた。上遠橙吾と、綾辻誠司と繋がりがあった赤哉と郁真と異なり、奏斗は須井が自らの意思で仲間に選んだ人間であった。そのことを感じていたから、奏斗も疑問に思ったのであろう。
「もちろん。だけど、もういいんだ。あの新井紅美は偽物で、未来人だった。僕の役目も、ボランティア部の役目も、終わったんだよ」
「お前、見ていたのか」
「うん。定期的に君たちの戦いを観察していたからね」
新井紅美が未来人だと暴かれたのは、ジャマーガーデン突入時だった。須井は特典で残されていた装備品で現地に赴き、一部始終を見ていたのだ。
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「こいつらは未来人なんだよ!君は弄ばれてるだけだ!人類滅亡なんて稚拙な願いを、嘲笑ってただけなんだよ!」
ムスブの暴露を、クルウスは木の陰から盗み聞きしていた。同時に、何者かが放った赤いエネルギー弾にモーンは弾かれ、変身解除した。クルウスは反射的に弾道の始まりを辿った。またしても木の隙間に紫のスーツの後ろ姿が見えたのみで、すぐに消えてしまった。後を追おうと一歩前に出たクルウスだったが、ダパーンの絞りだした声に足を止められた。
「新井…?」
すぐに声の届く先を見つめた。木の葉に汚され、ダパーンに手を伸ばす、新井紅美……もといモーンの姿がそこにあった。
(そっか……いつから勘違いしていた……紅美ちゃんが生きている訳ないじゃないか)
モーンはダパーンに弁明しようと声を荒げる。右手を必死に伸ばしながら。
「違うの、待って!私は……君たちを騙そうとしてたわけじゃない!ただ、知りたかっただけなの!人間のドキドキを!」
あまりの衝撃に自我を失いかけていたダパーンに声は届いていなかったが、クルウスには響いていた。しかし、彼女らを助けることは無く。ただベルトを外して元の場所に戻っただけだった。
──────────────────────────
組んでいた手をほどき、両手を後ろに置いて、須井は寒空を見上げた。
「高校二年生の時に、彼女が一年生になって、僕は少し嬉しかったんだ。誰かの願いで生き返ったのかもしれないってね。彼女が公共物を汚すようになっていと知っても、陰ながら守りたいと思った」
「それで、ボランティア部を作った……ですか?」
赤哉がようやく口を挟んだ。須井は空から目を離さずに頷くと、話を続ける。
「僕が卒業した後も、彼女を守る存在が必要だったからね。付き合わせてごめんね。彼女は新井紅美じゃなかった。もう好きにするといい。今日限りで……ボランティア部は、廃部だ」
「ふざけんなよ!」
一人で爽やかに告げる須井の胸ぐらを、郁真が掴んで立ち上がらせた。自らの望みのために利用されていた。郁真の怒りは当然のものであると須井も受け入れていた。しかし、彼らの反応は違った。
「何勝手に意味を付けて終わらせてやがる……!お前は卒業するからいいかもしんねぇ。けどな!あそこは俺たちの、居場所なんだよ!」
激昂する郁真に、赤哉も続いた。
「そうですよ!ボランティア部が無かったら、僕は兄の背中を追うこともできなかった……あなたが、僕たちを変えてくれたんですよ!」
彼らは思い返していた。須井にボランティア部へ勧誘された日のことを。学校の腫物だった自分たちに、部員と言う称号が与えられたこと。須井が道を示してくれたこと。その全てに感謝しているからこそ、先に諦めてしまっていた須井に怒っていた。
「諦めてんじゃねぇよ!死んじまったなら、なんで新井紅美の意志を、繋ごうとは思わないんだよ!」
「知らないよ……僕は手紙を読んだんだ……!僕が彼女にとどめを刺したんだ……もう、その事実は……変わらないんだ!」
ついに言葉の語気が強まって来た須井。ヒートアップする言い合いを、奏斗の言葉が制した。
「変わるかもしれない。こいつの知っている、事実があれば」
いつの間にか奏斗の後ろに、モーンが立っていた。
「今を……どう生きるか」
モーンは自分に言い聞かせるように呟いた。
*
私は、ソソグの手で、産まれた。
「ソソグ。ついに右腕を作ることにしたのか」
「違うな、彼女は私の後継者だ。いずれ私の業務を継ぎ、デザグラをさらに繁栄させることだろう」
私を作ったソソグは、デザグラの創設者の一人。そして、仮面の男・スエルの一番の友人。あの時は、何の感情も知らなかった。ソソグがそのように私をデザインしたからだ。この空っぽの器に、あらゆる人間の感情を注ぎ込む。私は顔をデザインされておらず、スエルと同じような仮面を作られていた。
ソソグは理想の強い人間だった。気に入らないものは、ねじ伏せる。直接手を下すこともあれば、他人を利用して貶めることもあった。私が、彼の意志に逆らう権利は最初からなかった。
産まれてからの五年間で、私はあらゆる時代の人間の感情を学ばされた。人間が誕生したばかりの時代、血で血を洗う争いの時代、短い言葉で彩られた時代、ぬるく人々が絶望している時代。そして最後に見たのが、デザグラが行われている現代だった。
そして、始めて知りたいと思った。新井紅美という人間の感情を。
雨の日だった。教室で彼女は手紙を書いていた。目には涙が滲み、せっかくの新しい便箋を濡らしていた。
「かわいそう」
私が呟いた時、ソソグの口角が意地悪に歪むのが分かった。
「確かに、このまま死ぬのはかわいそうだ」
未来は既に決まっていた。今日中に彼女は交差点で自殺し、友人の心に深い傷を残す。
かわいそうだと思った。
──────────────────────────
「それが、最初のドキドキだったの」
私は、嘘一つない真実を、ボランティア部の皆に告げてゆく。驚いたのか、聞き入っていたのか分からなかったけど、誰一人として話に割り込んでこなかったから、私はそのまま言葉を繋げた。
──────────────────────────
私はソソグの言いつけで、事故が起こる予定の交差点で傘を持ち、待っていた。
強すぎる雨に傘も刺さないで、とぼとぼと新井紅美が歩いてくる。このままだと、彼女は赤信号の交差点に自ら侵入して、命を絶つ。下を向いている彼女の歩みは、仮面を付けている不自然な風貌の私に気付かなかった。そして、私の横を通り過ぎて、交差点に一歩足が出る。
「待って」
「えっ……?」
反射的に、彼女の手を掴んで止めていた。次の瞬間に、法定速度を超えて走っていた自家用車が目の前をかすめただけで走り去っていった。
「なぜ、死のうとする?あなたを大切にしている人がいる」
広実須井の事だ。彼の動向もある程度学習していた。大事な人のためには自己犠牲も厭わない、善性の塊。反面、責任感が強すぎるあまり、自分を顧みることができない。彼女が死ねば、きっと広実須井は自分のせいにする。今までのパターンでわかっていた。
「私のせいで……大切な人が苦しむの。だったら、死んだほうがいい……!」
「じゃあ、何故手紙を書いた?」
彼女は前を見ることは無く、まだ仮面の存在に気付かない。私は読んでいた。あの手紙の中身を。まだ未練がましく鞄に入れたままの、生に執着したその内容を。このまま死ぬのは、かわいそうだ。彼女は思いを果たさなければならない。
「あれは…………もしこうだったらいいなって、願いを書いただけ……」
「なら実行すればいい。広実須井は、応える」
新井紅美が、手紙の入った肩掛け鞄を握りしめる。そして、ようやく前向きに答えた。
「そうかな」
「そう」
「……わかった、やってみる。ありが───────」
瞬間、彼女の背中が何かに引かれた。糸でひかれたように、彼女の身体は大きく後ろに傾き、バランスを取ろうと後ろに足が出る。
そして、スピード違反の車に轢かれ、私の前から消えた。
「──────っ?!」
「残念だ。彼女はどうしても死ぬ運命だったのだよ」
『OVERLAY…!』
ソソグが私の元に現れて、私の仮面を外した。
「これから、お前はモーンだ。デザグラのオーディエンスであり、善にも悪にも振り切れない情けない者を推す悪辣なサポーターとなる。そして、普段は新井紅美として学校に潜入し、公共物に落書きをする非行に走る。その非行は、広実須井を学校に釘付けにする」
雨でできた水たまりに、新井紅美の顔が反射している。そして、新井紅美では無くなったものを見たとき、無限に感情が湧いてくるようだった。
──────────────────────────
「あの日に、私はモーンであり、新井紅美なったの。落書きなんて行動に意味はなくて、ただ、ソソグが決めた通りに動いていただけ。今まで騙していて…本当に、ごめんなさい……っ!」
私は深々と頭を下げた。こんなことで、この人たちに許されるとは思っていない。そもそも私は、許されるためにここへ来たわけじゃない。頭を下げたまま、本当に伝えたかったことを語った。
「あの手紙の中身は、”ラブレター”だよ……!どうしても今が辛いから、苦しいかもしれないけど、須井君に助け欲しいって。一緒に歩いてくれませんかって、そんな……純粋な願いだよ。呪いでもっ、遺書でもない……」
気付けば、私は泣いているようだった。泣いたのは、始めてかもしれない。泣いていると、身体が震えてきて、私はその場に崩れた。地面が涙でボロボロに濡れてゆく。なんで私は泣いているのだろう。ソソグの意志に反したからだろうか、それで何かされるのが怖いのだろうか。わからない、何も。
「ありがとう」
その言葉に、私は恐る恐る顔を上げた。奏斗と同じように、膝立ちで視線を合わせてきた須井君がそこにいる。
「そのソソグって奴に目を付けられるかもしれない。そのリスクを背負ってまで、僕の所に来てくれたんだよな」
彼が手を差し伸べてくる。気持ち悪くはないのだろうか、自分の愛した人と同じ顔をしている自分が。
「紅美ちゃんの本当の想いを知れて、僕は幸せ者だな。それに、仲間にも恵まれてる」
須井君の手を借りて立ち上がった。袖で涙を拭うと、穏やかな表情の皆がそこに立っている。いつものボランティア部で、仲良しだった、皆の姿が見える。
「ようやく分かりましたよ。あなたの本当の顔が」
「これで、お前も正式な部員だな」
信じられない。私は、許されるのだろうか?人生を利用し続けていた、私が。
「私も……ボランティア部でいいの……?」
「ああ。モーン、次は君に部長を頼むよ。やっと……僕も前に進める…!」
須井君は、ポケットから二つの小型バックルを手に取ると、傍らの奏斗に差し出した。
「そして、奏斗君。君が彼女を支えるんだ。後の世界を、任せた」
奏斗の肩に手が置かれると、法螺貝の音が響いた。ジャマトグランプリが再開されたらしい。
「行くぞモーン。この世界を守るんだ」
「わかった。戦おう、「一緒に!」」
強い意志を持った言葉が、奏斗と重なる。私たちはボランティア部の三人の前に立つと、ドライバーを装着した。
『DESIRE DRIVER』『SET DEPARTURE!』
『LASER RAISE RISER』『MORN SET』
奏斗は玲さんと同じ変身ポーズを取り、私も大きく腕を回してまっすぐ前を向いた。
「「変身!」」
『Voyage for desire!PIRATE&BLAST!』
『LASER ON MORN LOADING』
「ソソグが何を思っていたとしても、もう怖がらない!私は私として、戦う!」
*
天守閣めがけて城下町を進軍するダパーンとモーン。立ちはだかるは忍者ジャマト軍団。
「奏斗!」
『SUPPORT MODE』
モーンがレイザーレイズライザーのレバーを操作すると、銃口からピンクのエネルギーで構成されたソードが出現。ダパーンにレーザーレイズライザーごと投げて渡す。ダパーンはそれをキャッチすると、代わりにクローバックルを装填したパイレーツブラスターを手渡した。クローバックルの能力によって、パイレーツブラスターに三つ又の爪が生成される。
「こいつを使え!」
「ありがと!」
『CLAW CHARGE!』
互いに武器を交換し、長物の武器を携えた二人は、忍者ジャマト軍団の波と激突する。
先んじてモーンが翼で浮かび上がると、パイレーツブラスターの爪を突き出しながら、さながらドリルのように高速回転し突撃する。この攻撃は、通りを埋め尽くしていた忍者ジャマトを一撃で倒しきった。それでも、瓦屋根に飛び移り回避した忍者ジャマトも存在した。
『LASER CHARGE』
そこにダパーンがレーザーレイズライザーを振りかざすと、ソードは伸縮し、逃げおおせた忍者ジャマトを両断して見せた。通りの中央を走り、ステップを踏むように天井の敵をなぎ倒してゆく。右の瓦屋根から二体。自らターンしながら左手に武器を持ち替え、左側の瓦屋根の敵を三体。背後から飛びつこうとしてきた忍者ジャマトは、腕に装備されたサーベルを突き出して貫いた。
『CLAW TACTICAL BOMBER!』
さらに上空から、モーンが三本の爪に加え、翼から分離した四角錘型の羽根を発射し、ソードの射程から外れる忍者ジャマトを撃ち抜いた。
モーンがダパーンの元に着地すると、二人はクロスタッチで称え合った。一体の忍者ジャマトは、これですべて撃破できた。
「やるじゃん」「奏斗もね」
「あら、ここにルール違反のおバカさんが一人」
目当ての大将・べロバが出陣し、二人は武器を構え直す。
「その危ない海賊もまとめて……ぶっ潰してあげる。変身」
『INSTALL.I HAVE FULL CONTROL OVER,GLARE2.』
べロバはグレア2へ姿を変えると、すぐに四体ものジャマトライダーを呼び出し、右側のスロットへバックルを差し込んだ。
『HACKING ON CRACK START 』
『REMOTE CONTROL』
『MAGNUM』『MONSTER』『ZONBIE』『GREAT』
ヒュプノレイで制御されたジャマトライダーは、アーマーを装着され、二人めがけて攻撃を開始する。武器を交換し直し、五対二の不利な戦いが始まった。
一方、ニラム達大将陣営も、ジャマトとの交戦を開始していた。護衛に四人の仮面ライダーがついているものの、変身すらしないニラムの強さは無類で、彼に斬りかかろうものなら、瞬きの間に斬り伏せられる。
「強っ!?」「守る必要ある?あの人」
思わず景和と祢音も感嘆の声を上げるほどだ。しかし、先に進まなければ意味が無い。立ちはだかるルークとビショップの追跡をかわして、大将べロバの元へ攻め入らなければならない。先陣を切るのに適任なのは、やはりこの男だろう。
「変身!」
『DEPLOYED POWERED SYSTEM!GIGANT SWORD!』
浮世英寿がパワードビルダーバックルより変身した仮面ライダーギーツ。ギガントソードから斬撃波を放ち、忍者ジャマトを退け道を開いた。その僅かな道から進行するギーツを足止めせんと、ルークとビショップがツタと胞子で背中に攻撃を繰り出した。しかしそれも、景和たちの変身した仮面ライダーの防御に相殺された。景和はタイクーン・ニンジャフォーム、朋希はハイトーン・ビートフォームに。そして祢音はスロットバックルを使用し、ブーストフォームとなっている。
「英寿さんあんたは先を急げ!」
「任せろ!」
三人の仮面ライダーの武器と、ジャマトたちの攻撃が交差する。
『TAKE OFF COMPLETE!JET&CANNON!』
二人を攻撃して得たエネルギーを利用し、ジャマトライダーはコマンドフォーム・ジェットモードへと変身。空中機動能力を活かして、ヒットアンドアウェイで翻弄する。モーンの瞬間移動は視界に入る者しか適応できない。ジェットモードの速さは、目で追えるものでは無かった。
「なら!」
モーンは近場にいたモンスターフォームのジャマトライダーと自身の居場所を入れ替え、味方を攻撃させた。その衝撃でスピードの緩まった足に、ダパーンが鎖を巻きつけ、グレア2へと投げ返した。グレア2はそれを右腕だけで弾き、二人の腹部に赤いエネルギーを帯びた掌底打を繰り出す。二人はそれをもろに受けてしまい、後ずさって膝を付いた。
「流石に、二人だとちょっときついな」
「でも、ここで止まってるわけにも行かないでしょ」
「それもそうだな……!」
ダパーンは治癒でグレア2の攻撃を帳消しにする。二人の諦めない思いに呼応したのか、頼もしい援軍も現れた。
『DEPLOYED POWERED SYSTEM!GIGANT HAMMER!』
地面をえぐる様に発生した衝撃波が、ジャマト陣営を襲う。大型のギガントハンマーを装備した、ギーツ・パワードビルダーフォームである。
「遅くなった。クルウスと話はついたか?」
「ああ。ついでに、お前の印象もとびきり良くしといた」
「フッ、どうも」
軽口を叩き合うギーツとダパーンに、グレア2はイラッと来たのか、舌打ちをしてジャマトライダーを向かわせる。
「秒で決着をつける!」
『BOOST!MARKⅡ!』
ギーツはブーストフォームマークⅡとなり、ジャマトライダー達の隙間を高速移動で突破。グレア2に正面から連続で打撃を放つ。負けじとグレア2もヒュプノレイよりビームを細かく照射し、ギーツの進行パターンを制限して対応して見せた。二人の一進一退の攻防が行われる中で、ダパーンとモーンもジャマトライダー達に見事なコンビネーションで対抗する。
『DRILL CHARGE!』
『TACTICAL BREAK!』
銃口から二つのドリルを回転させたパイレーツブラスターと、刃が雄々しく音を立てるゾンビブレイカーが激突する。互いの力は拮抗していたが、横槍と言わんばかりにもう一体のジャマトライダーがマグナムシューターより銃撃を行った。
「させない!」
それに対してもモーンは瞬間移動で対応し、その場からダパーンを消した。その勢いで、ゾンビブレイカーは前に振り抜かれ、体制の崩れたジャマトライダーに流れ弾が命中する。そして、ダパーンが転送されたのは、ゾンビフォームの鎧をまとったジャマトライダーの頭上だった。
『DRILL TACTICAL BOMBER!』
逆さまの体制になったダパーンは、ジャマトライダーの背中に、ドリル型の弾丸を発射し、貫いて撃破した。
タイクーンたちもジャマトたちに王手をかけていた。
「これで決めよう!」「うん!」「はい!」
『TACTICAL SLASH!』『GOLDEN FEVER VICTORY!』『TACTICAL SANDER!』
弱った二体のジャマトに、ニンジャデュアラーの斬撃、ブーストの炎の波、そして枝分かれする雷が一斉に降りかかる。この波状攻撃を受け、ジャマト二体を完全に撃破……したかに思われた。ルークジャマトが幾重にも伸ばしたツタを盾に、ビショップともども生き延びていた。
「倒しきれてない!」「待って景和!なんか様子が……!」
ナーゴが制止した通り、ルークジャマトには確かな違和感があった。いつも獣のように前かがみで揺れているルークジャマト。しかし今回ばかりは、スラリと背筋を伸ばして立ち、人間のような仕草で首を回していた。さらに、立ち上がれないビショップジャマトに手をかざすと、ダメージがあったとは思えない動きで立ち上がり、爆発性の胞子を発射させた。
「うわっ!」
その爆発を目くらましに、二体のジャマトは離脱した。不審なジャマトたちの動きに、ナーゴとタイクーンは顔を突き合わせて、ハテナマークを浮かべるばかりだった。しかし、ハイトーンには心当たりがあった。ビートアックスを持つ左手が震えて、呼吸も荒くなっている。
(ついに、尻尾を出した……他人をマリオネットのように、操る……能力……!)
誰もいなくなった爆炎の先を、ただずっと見つめていた。
グレア2とブーストフォームマークⅡの戦い。一見ギーツ優勢であるこの戦いも、限界が近かった。ブーストマークⅡの副作用の眠気。レーザー乱射の時間稼ぎにより、英寿についに眠気が訪れてしまう。
「限界か…!」
自動的に変身が解除され、英寿は膝を付く。
「はぁっ……その強さにも代償があるようね。だったら、一思いに逝かせてあげる」
ダパーンとモーンもこの危機に気付き、打開しようとするも、二人の視線にジャマトライダーが付いて離れず、瞬間移動が発動できない。だが、モーンは目線に捉えていた。今もまだ悩み、答えを探し求めるサポーターの姿を。
「っ!ジーン!」
咄嗟に、ジーンを英寿の前に瞬間移動させた。ジーンもそのモーンの行動に順応し、直ぐ様レーザーレイズライザーで銃撃。グレア2の攻撃を弾いた。
「今をどう生きるか……俺にはまだわからないけど、確かなことが一つだけある…………英寿、俺は君のサポーターだ……!」
ジーンは英寿のデザイアドライバーを反転させると、自身のレーザーレイズライザーのグリップ部分を装填した。
『SET UP!』
瞬間、英寿が目覚める。そして、ゆっくりと立ち上がると、グリップのトリガーを引き、さらなる姿へと変身した。
「変身!」
『『DUAL ON!』HYPER LINK!』『LASER BOOST!』
『Ready?Fight!』
ギーツの進化した姿、レーザーブーストフォーム。ブーストフォームマークⅡに、白と青のアーマーが追加装備された鎧からは、完全燃焼した青白い炎は噴射される。
「英寿のやつ、また強くなりやがった」「ジーンと合わせて二人分ってことね」
驚くダパーンとモーンの声を聞いて、ジーンはふふんと誇らしげに語る。
「そう。レーザーレイズライザーには、理想の自分をデザインする力がある。だから君を、少しだけ俺色に染めさせてもらったよ。これでもう時差ボケはしないはずだ」
ギーツはジーンに与えられた新たな力を実感すると、彼の肩に手を置いた。
「粋なプレゼントだな。さぁ、ここからが「ハイライトだ!」」
レーザーブーストフォームに相対したグレア2は、ジーンへ余裕なさげに呟いた。
「か弱い女の子相手に、本気でやる気?」
その言葉に対して、吹っ切れたモーンは楽しげに答えた。
「あなただって、その姿はデザインした見せかけのものでしょ?ホントは350歳じゃん!」
「歳の事を言うんじゃないよぉーッ!」
実年齢十歳のモーンの煽りにカチンときたグレア2の攻撃で、戦闘が再開された。ヒュプノレイから高圧レーザーが発射され、城下町の建物が全て崩壊。戦場は旗が立てられたのみの更地へと移行した。
「英寿!大将は譲ってやる!」「しっかりね!」
「ああ、任せろ!」
ジャマトライダーとの交戦を続ける二人を背に、ギーツは城の護衛に就いていた忍者ジャマトと交戦する。大ぶりな刀の一撃を首を捻っただけで避け、カウンターの裏拳。さらに肉薄していたジャマトに上段蹴りを繰り出し、続けざまに他の個体をストレートパンチと掌底打で退ける。そして、右手に真紅のエネルーギーを込めてかざすと、重力波が発生。一体のジャマトを押しつぶす。
「ハァァァッ!」
次いで自らに重力操作を適用し浮かび上がると、同じく浮遊させた城下町の瓦礫を拳で叩き落としてゆく。空からの攻撃に忍者ジャマトは成す術もなく爆散した。一帯の忍者ジャマトを撃破し、ギーツが着地すると、いよいよグレア2との直接戦闘が始まった。
「俺たちも決めるぞ!」「ええ!」
ダパーンとモーンの戦闘も王手がかけられていた。ダパーンはパイレーツブラスターに、広実須井から託されたバズーカバックルを装填。パイレーツブラスターが強大な砲台へと変化する。ジャマトライダーもこれに対抗し、ジェットモードからキャノンモードに変身。二連式のキャノン砲からエネルギー弾を連射した。
『BAZOOKA TACTICAL BOMBER!』
モーンが背中を抑えダパーンが引き金を引くと、通常時よりも巨大な砲弾が連射され、エネルギー弾を相殺。次いで一斉にコマンドフォームのジャマトライダーを襲って撃破した。続けて、二人は必殺技を発動する。ダパーンはマグナムのジャマトライダーに鎖を射出し、モーンはモンスターのジャマトライダーを視線に捉えた。
『PIRATE!BLAST!GRAND VICTORY!』
『FINISH MODE!LASER VICTORY!』
ダパーンは鎖を巻き取り、モーンは瞬間移動でジャマトライダーを目の前に引き寄せた。そして、互いに足を振り上げ、ジャマトライダー達を砕き、地面に崩れるとともに爆散。撃破に成功した。
そして、グレア2にも決着の時である。重力操作で拘束されたグレア2が、空中に固定される。
「FINISH MODE!LASER BOOST VICTORY!』
ギーツが蹴りの構えを取ると、青の炎がギーツの形を成し、連続でグレア2にキックをくらわせる。そして最後にギーツもグレア2を貫き、空中でグレア2は大爆発を起こした。二回戦の戦国ゲーム、仮面ライダーの完全勝利である。
爆発の中から出てきたべロバはボロボロになり、足を引きずっている。もう戦えるほどの体力は無かった。
「大将を攻略した。ヴィジョンドライバーを返してもらう」
「年貢の納め時ってやつだ」
三人の仮面ライダーに追い詰められ、じりじりと後ずさりするべロバ。倒れそうになった彼女を支えたのは、以外にもバッファだった。
「守ってくれるの…?」
「ああ。このドライバーはな」
バッファは強引にべロバのヴィジョンドライバーを引きはがすと、地面を蹴り、ツタを生やすことで戦場から脱した。ツタで視界を塞がれては、瞬間移動は適応できない。モーンは物惜しげに手を下した。
*
戦国ゲームは終わりを迎えると、天守閣は消え、町は元の様相を取り戻している。
戦いを終えた仮面ライダー達は、最初に景和たちがいた野外のカフェに集合していた。
「こいつのおかげで助かったよ」
英寿はジーンへとレーザーレイズライザーを返却しようと差し出す。だが、ジーンはそれに銃口部分も加えて、英寿へと差し出した。
「これは預かっておいて。たまには俺のことも思い出してよ」
「えっ…?」
「俺もこれからを生きようと思う。古きこの時代に思いをはせるだけじゃなくて、俺が生きている意味を、見つけるために」
英寿は確かにレーザーレイズライザーを受け取ると、ジーンへと笑いかけた。
「そうか……また会いに来いよ。お前は、ギーツ公認サポーター1号だからな」
「その言葉、信じるからね!」
手でつくられたキツネポーズを受けたジーンは満面の笑みになり、自らの道を歩み始めた。
卒業式は、滞りなく行われた。桜が散ってゆく校舎を振り返り、広実須井は大きく伸びをした。
「卒業おめでとう。モーンはどうだった、クルウス」
校門で待っていたのは、変装もせずに堂々と立っていた浮世英寿であった。周りの生徒が、思わぬスターの降臨に、きゃあきゃあと声を荒げる。その渦中にいる自分の浮き具合に、須井は大きく溜息をつく。
「ホントは、彼女に嫌いだ、とか。ふざけるなって、言おうと思ってたんだけどね。でも……良かったよ。彼女が、紅美ちゃんの遺志を継いでくれている」
須井は英寿を通りすぎると、肩に手を軽く置いた。
「僕は君と違って忙しいからさ。”仲間”の元に行くよ。ああ、あと、僕はクルウスじゃなくて、須井って呼んでよ。僕も、英寿って呼ぶからさ」
爽やかに笑いかけ、ポンポンと肩を叩くと、須井は軽やかに学校を後にする。
「前に進めたみたいで良かったよ。須井」
英寿も須井の反対方向へ、桜の花びらの中へ消えていった。
JGPルール
ヴィジョンドライバーが二つ揃えば、
世界を作り変える女神の力が
行使可能となる。
次回:仮面ライダーギーツ外伝
─べロバの次なる─
「最高の誕生日になるといいな」
─ターゲットは?─
「次のゲームは俺が決める」
「奏斗……そういうのもう……」
「出てこい、僕と戦えっ!」
33話 激情Ⅴ:仲間割れ♡闘牛ゲーム