仮面ライダー同士が戦うゲーム、デザイアロワイヤル。最後まで生き残ったデザ神が選ぶのは、デザイアグランプリが存在する世界か、しない世界か。それに参加した僕、広実須井は、ぶっ倒れた奏斗君のお友達を拾うはめになって……
「まぁ〜だ起きない。早くしてよぉ〜」
サロンのソファーで、後ろ重心になってズルりと滑り落ちる。奏斗君のお友達・半田城玖君を拾ってから、サロンのベットに寝かせて、看病までした。彼から、同じくソソグの出先であろう青山優君の話を聞きたくて、目覚めるのを待っていたと言うのに。爆睡に次ぐ爆睡。もう帰ろうかな……と、立ち上がったその時だ。カーテンが開かれて、城玖君が出てきた。
「お前……お前もライダーか!?」
「ここでの戦いはお勧めしない。強制退場になるよ」
僕を見るなり、バックルを使おうとしてきたので、言葉で制した。サロンでの戦闘禁止はデザイアロワイヤルになっても健在のルールだ。流石の彼も、寝起きで怪我もあって、素直に従ってくれた。
「君、バスケ部の半田城玖君だよね」
「そういうあんたは……去年まで学校いた……広実須井」
「え!?知ってるの!?いやー嬉しいなぁ」
調子に乗っておちゃらけた態度を取る僕に対して、城玖君は強く壁を殴った。
「うるさい。早くここを出ろ。ぶっ倒してやる!」
「何をそんなに焦っているの?」
彼の怒りを鎮めるつもりが、思わず思っていたことをはっきり言ってしまった。僕の目には、彼は焦っているようにしか見えなかった。焦りで周りが見えなくなって、自分の身体に気を配れなくなっている。その傷の身で戦っても、誰にも勝てないことが分かっていない。
「いいかい。落ち着いて聞いて。このデザイアロワイヤルの目的は、運営の時間稼ぎだ。僕たちは利用されているだけなんだよ」
あくまで僕の推理だが、いい線を言っていると思う。運営の専用装備であるヴィジョンドライバーが、まだジャマト陣営の手に渡っているので、帰ろうにも帰れないのだろう。ジャマトもジャマグラを完遂して、攻めてくるのを辞めた。つまり、オーディエンスを楽しませるものがもうない。なので、現状戦える仮面ライダー同士をぶつけることで、盛り上がりを作る。その盛り上がりの裏で細々と撤収作業を終えて、未来に帰るつもりなのだろう。僕は、理路整然と城玖君を諭す。
「考えるんだ。僕たちは戦うべきじゃない。奏斗くんを生き返らせたいなら、運営を直接叩く方が確実だ。デザイアグランプリ存続をかけたゲームなんて、ただの建前かも知れないだろう?」
「でも…!それも確実じゃない……なら俺は、あいつらの言葉が本当って方に賭ける!」
城玖君は焦りながらも、思ったより冷静に物事を考えているようだった。ふらふらと歩きながら、僕の胸ぐらを掴んでくる。
「俺がやるしかないんだよ……!奏斗も玲もいない……朋希も全部忘れちまった……!もう俺しかいないんだ……だから、どんな手を使ってでも…叶えきゃだめなんだ!」
「本人が望んでるとは限らないよ」
僕は城玖君の手首を掴んで剥がすと、ソファーに突き飛ばした。疲労困憊の城玖君は、あっさりとソファーに崩れる。
そうだ、僕は彼の焦りに、自分を重ねていたんだ。八歳の子供の時、多くの命を犠牲にして、紅美ちゃんの不幸を増やしてしまった、あの願い。頼まれてやったことじゃない。全部、僕が勝手にやって、いろんな人を巻き込んで、勝手に自分で傷ついた。きっとこのまま行けば、城玖君も後悔することになる。僕は、彼にまで、そうなってほしくはない。
「僕も、独りよがりな願いのせいで、大切な友達を苦しめてしまった。本人に望まれていないことは、無闇にしてはいけない。もう一度考えてみて。いろんな人の願いを犠牲にした果てに、生き返ったみんなは、喜ぶかな」
城玖君は、僕の説得に顔を伏せると、何も言わなくなってしまった。きっと、大事な仲間の顔を思い出したのだろう。やっぱり……横暴だけど、仲間を思う彼の気持ちは、紛れもない本物だ。
「すぐに覚悟できない気持ちもわかる。だから、ここは休戦しよう。もっと仲間を増やして、デザイアロワイヤルを完走する。その最後に、君の答えを聞こう」
僕はソファーに横になる城玖君に、手を差し出した。彼はその手を、おずおずと握り返す。
「それなら……まぁ……俺が、最後にお前を倒してやる」
「その返事、変わってくれることを願うよ」
僕たちの、いびつな同盟が始まった。
『デザイアロワイヤルに参加中のライダー諸君に、新たなミッションを与えよう』
サロンの空間に、スエルのアナウンスが聞こえた。握手した手を解いて、僕たちは傾聴する。
『これまでジャマトに奪われたIDコアの回収だ。期限は明日より三日間。毎日正午から日没まで。それまでに一番多くのIDコアを集めたプレイヤーには、誰か一人を指名して脱落させる権利を与える。一部チート能力を持つライダーがいるため、実力差を埋めるための特別措置だ』
IDコア集めか……つまり、次の戦場となるのは。
『明日の正午より、ゲームをスタートする』
夜風が髪をなびかせる屋上、スエルのアナウンスを耳にした英寿は、このミッションの意図を理解しニヤリと笑った。あらゆる攻撃を無効とするバッファを強制脱落とさせるか、それともバッファがIDコアを集めきって逃げ切るか。情報交換に綿密な連携、ライダー同士の協力が必要不可欠になるだろう。
「英寿、君はデザイアグランプリをどうするつもりなの?まさか、存在しない世界を望む気じゃないよね?」
彼の元を訪れたジーンが、両眉を上げる。英寿は彼の懐疑心を感じ取りながらも、信念を曲げるつもりは無かった。
「母さんさえ救えれば、デザグラに用はない」
「とことんファンに優しくないね。君は」
ジーンは諦めたように肩をすぼめると、懐からレーザーレイズライザーを取り出して、英寿に手渡した。
「いいのか?デザグラが無くなっても」
「いいわけないだろ。でも今は、君のサポーターだから」
「ふっ…感動できるといいな」
英寿はレーザーレイズライザーを受け取り、その場を立ち去る。英寿の背中を見どけながら、ジーンはぽつりと呟いた。
「複雑だよ……俺が求めていた感動が、君との別れだなんて」
*
IDコアが廃棄されている場所、それはべロバによって焼き払われたジャマーガーデン跡地だった。冬の時期であったこともあって、森林の植物はあまり復活していない。木の幹にも焦げた跡が目立つ。点々と、標識や鉄骨などの、温室の残骸も散らばっていた。
「この近くに反応ある!北西の方!IDコアのレーダーなんだって!」
「沙羅さんすごい!使いこなしてる……!」
「ふへへっ、こう見えてもスマホとかゲームとか得意だから。いこっ!」
沙羅と祢音は、スパイダーフォンの新機能であるレーダーを駆使して、IDコアの捜索を始めた。その後ろをこっそりと追うのは、全身迷彩服の景和だ。
「あんま無茶すんなよ……姉ちゃん……」
頭にも葉っぱを巻き付け、顔も緑のクリームを塗りたくって完全擬態し、すり足で二人を追う。隠密性はなかなかのもので、二人は何も反応することなく、ズンズン森を進んでゆく。
「やば……」
祢音がいち早く接敵に気付いて、足を止めた。突然のことで、前かがみになっていた沙羅が祢音の背中に頭をぶつける。景和も、木に頭をぶつけながらいそいそと隠れた。
「いたた……」
「沙羅さん、一番会っちゃいけないやつだ」
祢音の目線の先にいたのは、顎を立てながら二人を威圧する、道長だった。
「お前らはここで脱落しろ。変身」
『SET FEVER!』
『ZOMBIE!HIT!FEVER ZOMBIE!』
ジャマ神へと変身したバッファに、祢音と沙羅は後ずさる。
「まともに相手したら消されるよ……」
「うんっ。バッファローは危険生物!」
『『SET』』
「「変身!」」
『BEAT!』『ARMED CLAW!』
ナーゴとハクビに変身した二人が変身を終えた直後に、バッファがゾンビブレイカーを振りかざす。初参加だからと言ってハクビに容赦することはなく、攻撃を繰り出していく。それを影から眺める事ができない景和は、いそいそとニンジャバックルを取り出した。
「姉ちゃんを守らなきゃ…!変身!」
『NINJA!』
意気揚々と飛び出そうとするタイクーン。しかし、姉には正体をバレてはいけない。ニンジャバックルのクナイを引くと、手元に忍者小道具を生成する。小道具とは巻物型の布のことで、広げると背後の草木と同化した。
「これで……隠れ身の術〜!そろりそろり……」
その頃、バッファはハクビの頭を掴んで止めていた。
「お前の攻撃なんか当たるか!」
攻撃無効のバフが付いているのだから、避けずに受け止めればいいのに、がむしゃらにクローを振り回すハクビの攻撃を数歩引いて避ける。
その時だ。隠れ身の術で同化したタイクーンの足払いに引っかかり、バッファは姿勢を崩して膝をつく。
「なんだ…?」
『CLAW STRIKE!』
「トリャー!」
バッファが混乱しているうちに、ハクビが両手のレイズクローから斬撃を飛ばして応戦する。ダメージこそ入らないものの、斬撃はバッファの装甲に当たり、爆発する。
「やった!私もしかして天才!?」
「沙羅さんっ!今のうちに逃げるよ!」
初の攻撃命中に浮かれるハクビを、ナーゴが手を引いて連れてゆく。機動性に欠けるジャマ神バッファは、またしても獲物のライダーを逃がしてしまった。しかし、今はそれよりも、自分に足払いをした存在についての疑問が大きかった。
「誰だ……?」
しかし、背景に紛れたタイクーンを発見することはできず、次なる獲物を求めて立ち去る。
「あっぶねぇ〜!」
バッファにすんでのところで見つからなかったためタイクーンは、安堵の声を漏らした。
同じく、ジャマーガーデン跡地を訪れた城玖と須井。彼らを迎え入れたのは、仮面ライダーではなく、大量のポーンジャマトだった。
「あの爆発の生き残りがまだいたのか……戦うよ城玖君」
「え……ミッションと関係ないやつだろ、あれ」
ポーンジャマトにドン引きしながら、消極的な姿勢を見せる城玖。直情的ながらも、面倒を避けようとする姿勢にイラッと来た須井は、彼の髪の毛をぐしゃぐしゃと掻く。
「いいからやー!るー!の!野放しにして人襲ったらどうすんのよ」
髪の毛をくしゃくしゃにされ、不服そうにバックルを取り出す城玖。
「へいへいわかりました。やるよ」
『SET』
城玖はドライバーの右側にブラストバックルを装填。ポケットからパイレーツバックルも取り出したが、使えなかったことを思い出し、もう一度ポケットに戻した。
「変身!」
『BLAST!』
城玖がドリューに無事変身するのを見届けた須井も、クルウスに変身する。
「変身」
『DUAL ON!GET READY FOR!BOOST & MAGNUM!』
『Ready?Fight!』
アルキメデルに育てられてないためか、ポーンジャマトたちは隊列を成さず、好き勝手に暴れまわっていた。彼らは仮面ライダーの存在に気付くと、本能に従って好き勝手に襲いかかる。
「ハッ!」「おおりゃっ!」
マグナムシューターの銃撃をくらい、空に撃ち上がる先頭のポーンジャマト。それをドリューが掴み、振り回して大群に投げつける。突然飛ばされてきた仲間を受け止めるポーンジャマトたちだったが、ドリューは追撃のパンチを投げ飛ばしたジャマトにぶつけて、他のジャマトたちを将棋倒しにした。
「やるねぇ!」
近場の敵を裏拳で処理しながら褒めるクルウス。褒められて、ドリューも満更ではない。
「ま、まぁ……これくらい普通!」
少し機嫌を良くして、さらにジャマトを倒そうと奮起するドリューだが、残りのポーンジャマトは、木々の間を抜けてきた銃撃に処理されてしまった。
『LASER BOOST VICTORY!』
赤いエネルギーをまとったカード型の銃弾が、横一線にポーンジャマトを撃ち抜く。それを放ったのは、仮面ライダーギーツ・レーザーブーストフォームだった。
「タッチの差だったなぁ」
レーザーレイズライザーの銃口を下げたギーツが、ゆっくりと二人の元へ歩いてくる。反射的に戦いの構えを取るドリュー。彼がギーツに手を出す前に、クルウスが肩に手を置いて止めた。クルウスの無言の圧に、ドリューは同盟の件を思い返し、大人しく変身を解いた。ギーツもクルウスも、同様にバックルを引き抜いて変身解除する。
「よっ、お前は新入りか」
「はいはい、すぐちょっかいかけようとしないの」
城玖に近寄る英寿を、須井が手で押し返す。英寿もそんな彼からの塩対応に慣れていたのか、機嫌を悪くすることなく、すぐに普段の調子に戻す。
「まさか、お前まで参加してたなんてな。須井」
「本当はこんなつもりじゃなかったんだけどねぇ。今は、成り行きで」
スエルとの対面時、同じ空間にいた2人だったが、会話をするのは久しぶりであった。親しげな二人の様子に、何も知らない城玖は困惑して二人の顔を交互に見る。
「英寿、シーカーとカローガンには気を付けて」
「あいつらも参戦してるのか?」
英寿がまだ彼らと接敵していないのを知った須井は、詳しく内情を語る。運営のシナリオライターを自称するソソグという男がいること、奏斗とサポーターのモーンに深く関わりがある可能性があるということ、シーカーとカローガンを手駒にしてデザロワに参戦させているということ。知っていること全てを英寿に語った。
「狙いはわからないが……良からぬことを考えてるのは確かだね」
「わかった。気をつけるよ。ところで……こいつはお前の仲間か?」
英寿が指していたのは、初対面の城玖のことであった。須井は城玖の頭をわしづかみにすると、前に突き出す。
「彼は奏斗君の親友。半田城玖くんだよ」
「痛った!?オイ、離せよ!」
「見ての通り気性が荒くてね。僕が保護者代わりなんだ」
思ったよりも須井の握力は強く、城玖は手から抜け出せない。以前は願いのために荒れていた須井が、今度は手綱を握る側になり、それが英寿は面白いようだ。しかし、城玖がその英寿の笑みを自分への煽りだと勘違いしてしまう。
「なんだオイっ!笑うなよ!」
「フッ、悪いな。お互い、生き残れることを願ってるよ」
英寿はそれだけ言って、二人の元を去る。IDコアの回収に向かったようで、残された二人も倣って捜索を始めた。
*
日没になって、城玖と須井がサロンに戻ると、今度は沙羅と祢音が疲れ切って伸びていた。城玖がソファーに座るなり、向かいで横になっていた沙羅と目が合う。その瞬間、二人は立ち上がって互いを指差した。
「「あーっ!?」」
この二人が繋がっていたことを知らなかった須井と祢音は、顔を合わせて首を傾げる。城玖と沙羅は一緒に死線をくぐり抜けた仲。どちらも無事だったこと、仮面ライダーになってしまったことに驚く。
「うっそぉ!?城玖君もライダーに!?」
「え、えぇ……そう言う沙羅さんこそ……」
城玖と沙羅が二人で盛り上がり始めたので、祢音が腕を二人の間に差し入れて会話を止めた。
「はいっ、まずはみんなで自己紹介!」
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祢音が音頭を取って、ソファーに座りあった三人。一人起立した祢音は、これが手本だ!と言うように、明るい声で自己紹介を始めた。
「私っ、仮面ライダーナーゴの鞍馬祢音。デザグラ支持派で、ライダー同士の戦いは反対。使ってるバックルはビートで、接近も遠距離もいけるよ。よろしくねっ」
皆がぱちぱちと拍手すると、祢音は着席し、左隣の須井の肩に手を置く。
「はいっ、次須井さんね」
「わかった」
須井も祢音に倣って立ち上がる。沙羅は須井とという名前に見覚えがあって、祢音からプレゼントしてもらったひみつノートを開いた。そこにはデザグラの基礎知識の他に、祢音が知り合って来た参加者のリストが乗せられていて、頼もしい味方と危険人物が似顔絵付きで書かれていた。須井の欄には『黒色カラスライダー』『優勝経験者で強い!』『奏斗と仲良し!』などの情報が記されている。そんなに強いんだ……!と心の声がダダもれの顔を沙羅が上げると、須井が自己紹介を始めた。
「僕は仮面ライダークルウスの広実須井。奏斗君の先輩って言うのが、皆にもわかりやすいかな。デザグラは反対派だよ。使用バックルはマグナムとブースト。盾役でも援護でもなんでも任せてね」
須井は三人からの拍手を浴びて、座りながら沙羅に手で「どうぞ」のジェスチャーをした。それに気づいた沙羅は大急ぎで手帳を閉じて、意気揚々と腰を上げた。
「私は桜井沙羅、ハクビですっ。景和の姉です。景和をよろしくね。あと、デザグラ支持派で、クローバックルで戦うよ。初心者だけど、機械の使い方はお姉ちゃんに任せなさいっ、へへんっ。ほれ、最後は城玖君!」
先ほどまでつまらなそうに皆の自己紹介を聞いていた城玖。沙羅に促されて、ようやく入れ替わるように立った。
「……半田城玖。仮面ライダードリューっていうらしい。ブラストっていうバックルで戦う。運動部だから、フィジカルには自信ある。デザグラは支持派」
城玖が座り直して、全員の自己紹介が済んだ。その流れで、祢音が須井に問いかける。
「須井さんはデザグラ反対派なんだ?」
「うん。でも、今はミッション優先だよ。このミッションは、バッファ以外のライダーがどれくらい協力できるかにかかってるからね。ところで、僕と城玖君は、合計で五個IDコアを見つけられたけど、君たちは?」
須井と城玖は、テーブルに破損したIDコアを並べる。ジャマトの妨害を受けたので、必用最低限の量であった。須井は申し訳なさそうに沙羅の顔を見るが、次第に沙羅は、顔を白くし始めた。
「う~っ!ごごご、ごめんなさい!私たち、たったの三つでぇ~!」
彼女たちのバッファの妨害を受けてはいたので、しょうがないことではあったが、沙羅は重く受け止めすぎて、手を合わせて謝る。
「あっ…一応、あと二つ…ある」
狼狽する沙羅と祢音を見かねてか、城玖は控えめにポケットから手を出す。そこに握られていたのは、紺色のハイトーンのIDコア。緑色のシャギーのIDコアだった。どちらも破損したもので、天国と地獄ゲームで奏斗が落とした者を城玖が回収していたのである。城玖のIDコア入手の経緯を見ていた沙羅は、手首に優しく手を添えて引かせた。
「それは大事にもっておいて。大切な友達のでしょ?」
「は、はい…」
城玖は若干震えながら、IDコアを懐に戻した。須井も仮面ライダーダパーンのIDコアを所持していたが、わざわざ口に出すこともしなかった。そもそも破損していないし、手元に持っておきたかったからである。そして話題は、再びミッションの内容へと戻る。
「やっぱり、ジャマーガーデンの勝手が知れてるバッファに分があるかぁ……」
「でも、みんなで力を合わせれば」
「その話、僕も混ぜてくれないかな」
積極的に意見交換をしていた須井と沙羅。その会話に入ってきたのは、サロンに入室したばかりの五十鈴大智だった。
「あっ!?私のことめちゃくちゃにした人!」
「その節は悪かったね。君がデザグラ支持派だったとは知らず、つい手荒な真似を」
参戦一発目でこっ酷くやられたのが相当嫌だったのか、沙羅は目を合わせず祢音の側に寄る。当然、祢音も同じ感情で突っぱねたが、神経の図太い大智は調子を変えない。
「なに、しに、来た、の?」
「僕だってプレイヤーだからサロンを使う権利はあるよ。君たちの話、聞かせてもらった。その同盟に、僕も加えてほしいんだ」
大智は肩から下げたポーチから、大量のIDコアをゴロゴロと机に出した。あんなに苦労して五個だったのに…と、城玖も思わず声が出る。
「まじか……」
「バッファを倒したいのは僕も同じだ。先ずは彼をなんとかしないことには、始まらないからね」
一を返せば、百の正論で返してくる大智に、頷いてしまう沙羅。そこでサロンに、何とも形容しがたい裏声が響いた。
「ダマサレルナポン!ポン!ポン!ポン!」
皆が声の方向を向くと、縁起物であるタヌキの信楽焼がソファーに鎮座していた。その設置の一部始終をみていた須井は、「あっちゃー……」と呆れて頭に手を置く。裏声で誤魔化そうとしているが、声の主は明らかに桜井景和で、ソファーの背もたれから彼の髪の毛がぴょこぴょこと見え隠れてしていた。
「オイラは、沙羅っちのサポーターの、ポンチッチだポ〜ン!」
「え〜私にもファンが!?ふふふ〜ん」
この場で景和の存在に気付いていないのは沙羅だけで、髪をなびかさせて得意げになる。だが城玖は、沙羅にバレたくないという景和の気持ちを理解しておらず、口に出しそうになる。
「えっ?後ろのもごっもごっ!?」
「う〜ん!確かにサポーターだ〜!」
城玖の口を須井が無理やり塞いで、祢音が大声を出して誤魔化す。その無駄に意思疎通のできたコンビネーションが滑稽で、大智は顔を逸らして笑っていた。ソファーの裏の景和は、須井と祢音のフォローに感謝しながら、喉を締めて裏声を出す。
「そいつは前に、君の弟を騙した前例があるんだポン!」
「しってる…!悪い人!」
沙羅にとって、景和を騙したことありというのは相当のマイナスポイントで、口をすぼめて対抗する。
「言い訳するつもりはないよ。理想を叶えるためなら、どんな相手だって利用する。時にはジャマトの味方に、時には君たちの味方にね。もちろん、タダで信用してもらおうとは思ってないよ。これを全部、君にあげるよ」
そう言って、大智は自ら集め、机に散らばらせた大量のIDコアを指差した。個数にして二十個ほど、勝つには十分な量だ。
「その代わり、一番になってバッファを脱落させるんだ。これでもまだ、僕のことを疑うかな」
「ふ~ん。確かに、この数に、僕たちが集めたIDコア、合わせればかなりの数になる」
迷って口にできない沙羅に変わって、須井が大げさに喋って場を繋いだ。須井も大智が謀略を働くことは視野に入れていたが、あえて乗る素振りを見せる。
「僕は賛成だね、このミッションは数が正義だ」
「はぁ…?怪しさマックスだろ。けど……えーと。ポンチッチ的にはどうなんだよ」
城玖は嘘が苦手で、棒読みでソファー裏の景和に語り掛けた。景和も流石に数のアドバンテージを優先させてか、賛同の意志を示す。
「くれるト言うナラ…貰っておくポンッ」
「わかった!これは姉ちゃんが預かる!」
沙羅は皆から背中を押されて、IDコアをポーチにしまった。これで、沙羅の所持するIDコアは二十八個、力を合わせて大幅リードだ。
道長が根城にしている倉庫。そこでソファーに腰かけた道長は、ゲットした白いIDコアを眺めていた。
「握り潰す気なら、おすすめはしないぞ。必死にかき集めないと、脱落するのはお前かもな」
「ギーツ、そんなことを言いに来たのか?」
彼の元に、レジ袋を片手に提げた英寿が現れる。威圧する道長に、まだ共に戦っていた頃かのように英寿は接すると、袋の中のおにぎりを投げ渡した。
「腹減ってるだろ」
おにぎりの種類は、バッファを意識してか牛めしだった。道長が文句を言い始める前に、英寿もラッピングを剥いておにぎりを食べ始めた。腹が空いていることは確かだったので、道長は渋々おにぎりにかぶりついた。
「ライダーは俺たちを除けば、タイクーン、ナーゴ、ナッジスパロウ、タイクーンの姉さんに、奏斗の友人、クルウス、シーカー、カローガンの八人だ」
「全員狩れば、最後はお前だ。ギーツ」
道長はおにぎりを海苔くずひとつこぼさずに食べきる。
「フッ、メインディッシュとは光栄だな」
「意外だな、お前がデザグラの無い世界を望むなんて」
「運営から母さんを救うためだ」
道長の中で、英寿の印象が大きく変わり始めていた。今まで、道長にとって、英寿はデザグラで私腹を肥やす一人の参加でしかなかった。それが、創世の女神が英寿の母だと知り、チラミと激突した姿を目にして。ただのチャラついた奴ではないと。
「今までくだらない願いを叶え続けてきたのも、全部そのためってわけか」
「真実が分かった以上、もう容赦はしない」
「……まさかお前と気が合うとはな」
ソファーを離れた道長は、英寿に肩を並べた。
「スエル様、ライダー同士を戦わせるなんて……私には理解できません…」
ハクビ二十八、ギーツ七、バッファ五と並んだポイント。ライダー同士の結託で、ポイントは一極化していた。そんな集計表を眺め、タブレットを胸に抱くツムリ。
ふと、デザイア神殿が暗闇に包まれて、スエルが仮面のみで現出した。
「いちナビゲーターの意思など求めていない。しょせん、この世界はショーのいちステージ。賞味期限が切れれば打ち切るだけだ。」
「打ち切るって……!」
ツムリはスエルの言葉の意味を理解して、青ざめる。彼女を嘲笑うように、スエルは一人語りを続けた。
「この世界から撤収し、全てなかったことにする」
「じゃあ……!彼らは何のために戦いを……!」
「見せ物小屋の動物に……もう餌は必要ない。そもそも、古き時代の人間に傾倒することが間違いだ。お前も…身の振り方を考えることだ」
スエルが去ると、デザイア神殿を包んでいた暗闇が晴れる。ツムリが意気消沈して座り込むと、入れ替わるように二人の男が入室した。
「君も、別れの心積りをしておけ」
「どうして……?」
死んだはずのプロデューサー・ニラムに、仮面ライダーパンクジャックの晴屋ウィンがそこにはいた。
「しばらくいない間に、デザグラは大変なことになってんなぁ」
「大至急、撤収の準備に取りかかる」
*
自分がギーツとバッファを引きつけるから、南の河原の捜索を。それが、五十鈴大智の提案した作戦だった。IDコア捜索隊が沙羅と祢音、そしてこっそりついて行った景和。余計なジャマトを引きつけるのが、須井と城玖の役目になった。
川の上流付近で、二人はジャマトと接敵したものの、相手は野良のポーンジャマト。さほど苦戦することもなく、無事に全てを倒し切り、変身を解いた。作戦は上手く行っている。だが、城玖は浮かない様子だ。それも、五十鈴大智のことをいまいち信用しきれていないからである。水辺の岩に足を乗っけて、須井に問いかける。
「なぁ、本当にあいつの言う通りにして良かったのかよ」
質問された須井は、退屈そうに石を川底に投げながら語った。
「きっと彼の目的は、桜井姉弟に祢音君を、バッファに倒させることだろう。裏で内通でもしてるんじゃない?」
「はぁ!?じゃあ呑気に石投げてんじゃねぇよ!助けに行かねぇの!?」
城玖が声を荒らげても、須井は淡々と石を投げ続けた。川の激流に紛れて、水柱が立つこともなかったが。
「多分バッファは、大智君を倒しに行くから平気だよ。誰かの作戦に乗る、使いっ走りの駒になる。それが…道長君が一番嫌いなことだろうからねぇ」
彼の適当に投げた石は、偶然水切りの形となり、速く流れる水の上を跳ね、向こう岸に届いた。須井はやったー、やったー!と喜んでいたが、城玖は呆れてため息が出る。俺が戦う最後の相手が、こんな腑抜けであり、実力者であるというギャップに辟易していた。
「遊びの時間は終わりだ」
川の向こう岸に、轟戒真と、青山優が立っていた。慌てて、城玖と須井はバックルを構える。
「あんたたち、ここで倒すから」
「それなら…俺が相手になってやるよ」
城玖と須井の前に、ふらっと英寿が現れた。川を隔てて、かつての宿敵と仲間を睨みつける。須井の言伝通り、彼らの目がピンクに染まっていることを、英寿は確かに確認した。
「久しぶりだな、シーカー、カローガン。運営の手駒になった気分はどうだ?」
「笑わせるな。俺たちは、俺たちの理想の世界のために動く」
『SET WARNING!』『SET』
英寿の言葉に耳を貸さずに、戒真と優はバックルをドライバーへ。英寿は戒真の言葉にニヤリと笑って、レーザーレイズライザーとブーストバックルマークⅡを構えた。
「「「変身!」」」
『WOULD YOU LIKE A CUSTOM SELECTION…!』
『GREAT!』
『『DUAL ON!』HYPER LINK!』『LASER BOOST!』
『Ready?Fight!』
英寿の変身する仮面ライダーギーツ・レーザーブーストフォームは、川辺の岩石を複数重力操作で浮遊させ、シーカーとカローガンに放つ。カローガンが前に出て、レイジングソードで岩石を一刀両断し、シーカーは拳で砕いた。
「お前らは沙羅さんとナーゴの所に行け。ここは俺に任せろ」
ギーツが川を飛び越えて、シーカーに掴みかかり抑える。須井と城玖は素直にうなずいて、中流へと下山していった。
案の定、沙羅と祢音はIDコア探しに難航していた。沙羅の持つスパイダーフォンは、二十分ほどレーダーをフル起動していたが、一つも引っかかる様子が無かった。祢音も手にした地図を見る角度をしきりに変えながら、キョロキョロしていた。
「おっかしいなぁ…全然反応がない」
「迷っちゃったのかな…」
景和も心配そうに二人の様子を見ていたが、川の上流から降りてくる城玖と須井を見て、姉を守る存在が増えたことに安堵した。祢音は、二人と合流できたことに喜び、大きく手を振った。
「無事でよかったよ~」
「それはこっちの台詞かな。その調子だと、バッファは来てないみたいだね。大智君の作戦は失敗か」
安心しきって、バックルをべストにしまう須井。大智の作戦と聞き、騙されたと悟った沙羅は頭を抱える。
「これでわかったかな。僕たちはライバルだ。別々の方向を向いている限り、戦いは避けられない」
隠れている景和を含めて、場にいる五人。その中で唯一のデザグラ反対派が須井だ。袋叩きにされる可能性もあると言うのに、臆せず須井は皆に向けて演説を始めた。次々と、四人の目を見る表情は冷静、だが、口調は早口であった。誰の反論も許さないような、自分に言い聞かせるような。
「考えてくれ。デザグラ支持派と言ったって、その先で叶えたい願いはバラバラじゃないか」
まずは祢音の顔を覗いて、次は茂みの景和に向かって。
「大それた願いも、たとえ世界のためでも。願いは、自分の手で叶えないと意味が無いんだ」
須井は何度も、幼き日の過ちを反芻する。そして、自分と同じになってしまう危うさを、この場の皆に感じていた。
「君たちを倒したいという願いを、バッファに託した大智君はどうなると思う?幸せになれるかな。自分がどうしたいか、どう変えていきたいか。それって、本当に他の人に伝わってる?頑張って皆を陥れて、叶えた世界が想像と違った時、その分みんなの幸運が、無駄になってしまうんだよ……!」
須井の言葉に、城玖は目を背け、そのまま歩き始めてしまった。須井は、その去っていく背中にまくし立てる。
「一緒にデザグラを終わらせよう…!きっと、僕たちの幸運は、自分たちの力で変えられるはずなんだよ…!女神に頼らなくたって…!誰かの願いを踏みにじらなくたって…!だから!」
「すまん…まだ、受け入れられない。奏斗たちのこと…」
城玖は自分の心が揺らぎそうで、須井の演説をそれ以上聞く気にはなれなかった。その思いを抱いていたのは、沙羅も、祢音も、景和もだった。
「でも…景和の幸せを守るには、これしかないの」
「わたしだって…デザグラでしか、叶えられない願いがあるから」
身を寄せ合いながら、反発する祢音と沙羅。景和も無言で木の陰にもたれかかって、反対の意を示した。誰にも納得してもらえない。その疎外感を感じた須井は、心の中で、新井紅美の笑い顔を思い出さないように必死だった。最後に、もう消えかかっていた城玖の後ろ姿に叫んだ。
「奏斗君は……!自分の願いのためじゃなくて、戦いを終わらせるために……戦っていたよ……!」
城玖がその言葉を聞くことができたかは、誰にもわからなかった。
一方、沙羅たちにバッファを押し付け、安全にIDコアを収集していた大智。ジャマーガーデンに滞在していたタイミングもあって、破壊されたど言えど地形は熟知していた。そこから施設の距離と爆風の威力を計算すれば、IDコアがどこに眠っているのか、見つけるのは容易い。温室外壁の残骸をどかすと、思惑通り、大量にIDコアが散らばっていた。
「フフッ……これで僕がトップだ。どいつもこいつも……チョロすぎる……!」
「チョロいのはどっちだ」
大智を振り向かせたのは、道長の冷徹な声だった。河原に桜井姉弟と祢音が向かうことを伝え、処刑に向かわせたはずだが、こうして大智の前に立っている。
「お前の二枚舌、俺が切ってやろうか?」
「あぁ?黙れ。創世の女神からもらった力がなきゃ、勝てないくせに」
かつて仲間であった時期があったとは考えられないほど、二人は激しく威圧し合う。
「どいつもこいつも自業自得だ。理想なんて願うから。幸せになりたいなんて考えるから、みんな不幸になっていくんだ……!」
これ以上、道長に自分の知恵は通用しないと理解した大智は、舌打ちしてモンスターバックルを使用する。仮面ライダーに変身さえしてしまえば早い。道長も、ジャマ神バッファに変身した。
「「変身!」」
『MONSTER!』
『ZOMBIE!HIT!FEVER ZOMBIE!』
先手必勝で、ナッジスパロウが殴りかかる。バッファがストレートパンチをゾンビブレイカーでいなし、そのまま振り上げて脇腹を斬り裂かんとする。さすがにそこはナッジスパロウも手練れで、グローブで強化された拳を振り落として手首を打ち、一瞬バッファの動きを鈍らせた。さらに畳み掛けようと奮闘するナッジスパロウだが、バッファが頭を掴んで地面に叩きつけた。
「わかっただろ?お前は俺に勝てない……!」
「ほざけ…!」
『MONSTER STRIKE!』
バッファの挑発に激昂して、ナッジスパロウは地面めがけて巨大化したグローブを叩き込み、クレーターを作って手から逃れた。クレーターが作られた衝撃で巻き上げられた土風が煙幕となり、ナッジスパロウはそれに紛れて逃走しようとする。バッファとのポイント差が覆ることはもうないだろうから、後は逃げるが勝ちだ。
「逃がすか……!」
バッファは土煙で視界が悪い中でもゾンビブレイカーを投擲し、ナッジスパロウの進行方向に突き刺すことで足止めした。それならと反対方向に逃げるナッジスパロウを、今度は毒手を呼び出して退路を断つ。
「くそ…!」
もう後が無くなったナッジスパロウは、苦し紛れにバッファへ突撃。何度も拳で攻撃し、何とか撤退の隙を作ろうと試みる。が、バッファは攻撃が効かないどころかノックバックすらせずに、全て受け止めた。
「欲張り過ぎた奴から消えていく。人生ってのはそんなもんだ!」
クローの薙ぎ払いでナッジスパロウを怯ませると、ゾンビブレイカーを拾い上げて、二度も斬りつけて地面に伏させる。そこから相手の背中でポンプアクションを完遂し、蹴り上げて、空中でゾンビブレイカーの刃を押し当てた。
『TACTICAL BREAK!』
ゾンビブレイカーを振り上げて、ナッジスパロウを打ち上げると、落ちてくる所にダメ押しの一発。
『HYPER ZOMBIE STRIKE!』
クローの一撃は見事ドライバーに命中して、ナッジスパロウを変身解除に追い込んだ。さらに、攻撃の衝撃で、ナッジスパロウのIDコアにヒビが入る。
「これでお前はもう、仮面ライダーになれない……!」
抵抗する大智を歯牙にもかけず、バッファは破損したIDコアを奪い取った。大智が回収したIDコアを含めて、ポイントへと入れるつもりなのだ。
「これで……これで終わりだと思うなあーッ!」
大智は、バッファに手を伸ばしながら、青いホログラムとなって脱落した。
『RETIRE』
バッファがナッジスパロウのIDコアを手に、残された大智のポーチに手を伸ばしたその時。思わぬ乱入者が現れた。
「デャーッ!」
叫びながら地底から浮上してきた古代魚ジャマトがバッファを突き飛ばし、ポーチを掠め取る。さらに、突き飛ばされた衝撃で手から離れたナッジスパロウのIDコアを、アルキメデルに擬態しながら拾い上げた。
「お〜っ……貴重なジャマトの肥料だぁ。お前なんかに渡すかっ」
「アルキメデル……お前なんで……」
「私にも叶えたい世界があるんでねぇ!」
アルキメデルにとって、道長の優勝で終わったジャマトグランプリは、全く望んだ結末ではなく。ジャマトの幸せな世界を叶えるため。ジャマグラ完遂の余波で生き返った、ビショップジャマトとナイトジャマトを従えて、バッファにけしかけた。
ギーツのレーザーレイズライザーからのエネルギー弾を、転がりながら避けて、木の裏に隠れるカローガン。シーカーはギガントハンマーで自らの前に鉄筋コンクリートの壁を建造して防ぐ。
『TAKE OFF COMPLETE!JET&CANNON!』
その間、カローガンはコマンドフォーム・キャノンモードとなって、隠れいた木から現れるや否や砲撃する。狭い森林の中では、キャノンモードの砲撃は高火力すぎて、一帯の木々を巻き込み迫る。ギーツは木の間を走り抜けて、砲撃を避けきろうと試みるが、シーカーが足止めした。
『HYBRID!GIGANT SWORD!』
ギガントハンマーを展開したアームに移し、ギガントソードを装備。狭所での戦闘が行われる。ギーツの進行方向に向けてギガントソードを突き出し、足を止めると、振り抜いて攻撃。ギーツは一歩下がって避けて、ギガントソードを持つ手を掴んで右に流すと、至近距離で銃撃する。シーカーは半身を反らして回避して、ギーツの死角からギガントハンマーをアームを可動をさせて繰り出す。
しかしギーツはそれを読んでいて、重力操作でハンマーを地面に固定。踏み台にして跳び上がり、シーカーをキックで退けた。
入れ替わるように、またしてもカローガンが砲撃。周囲の木がへし折れ、ギーツも爆発に巻き込まれる。
「当たった!?」
ギーツに攻撃が命中し、少し声色を明るくするカローガン。だが爆煙が晴れると、折れたはずの木が重力操作で空中に固定されていて、ギーツはそこに逆さまに立っていた。咄嗟に砲撃で応戦しようとするも、ギーツの銃撃が命中し、後ろに転んでしまう。
ギーツが地面に戻ると、重力操作が解除されて、木がバサバサと地面に落ちた。立ち上がろうとするカローガンを庇うように、シーカーが立ちはだかる。
「しぶといな。そろそろお前らの目的を教えてくれよ。運営の言いなりになって……どうするつもりだ?」
「お前が知る必要はない…!」
シーカーはギガントハンマーを振り下ろし、地面から次々鉄筋の柱を建造する。ギーツは持ち前の高速移動でそれを避け続けていたが、囲み込むように四本の柱が等間隔に建ち、ギーツを動けなくした。
「消えろ…!」
『GIGANT VICTORY!』
身動きが取れない所に、ギガントソードの斬撃を放つ。柱を巻き込んで爆発を起こして、撃破したかに思えた。しかし、次の瞬間には、ギーツの姿は無かった。柱に拘束される直前、後ろ手に銃撃して、斜め後ろの柱を破壊。逃げ道を確保していたのだ。
「あー……化かされちゃったね」
「今はこれでいい。あいつの計画を阻止するためには……」
素の様子で話す二人の会話を、英寿は柱の裏に隠れながら聞いていた。そして、確信を持ってその場を離れた。
*
日が落ちそうで、今日のミッションの終わりも近いのに、俺は一人でぷらぷらとエリア内を歩いていた。ジャマトとも遭遇しないし、IDコアも見つからない。
ずっと考えてしまう。須井の言っていたこと。一緒にデザグラを終わらせようって。あいつの言いたいことは、大いにわかる。誰かの幸せの上に成り立つ命なんて、重みでしかないって。天国と地獄ゲームで嫌と言うほど味わった。
俺は、奏斗と玲を生き返らせたい。朋希も含めて、皆でまたバスケがしたい。それを願うのはだめなのか。どれだけ現実で頑張ったって、失ったものは返って来ないんだから。簡単に、諦めきれない。
「でも……このまま戦ってていいのか……?」
「それならチャンスをあげる」
「誰だ!?」
夕焼けの赤い光に照らされて、見知らぬ女が立っていた。その女は、俺に向かって招待状に似たカードを投げてくる。そこに書かれていたのは……
「私はベロバ。あなたに特別なミッションを与えちゃう〜!アハハッ!」
「え………」
タイクーンの姉・ハクビを殺害せよ。そうすれば、大切な人は返ってくる……カードには、そう書かれていた。
「俺が、沙羅さんを殺せば……奏斗たちは返ってくる………?」
DRルール
デザイアグランプリが終了する時、
この世界からデザグラに関する
事実と記憶が抹消される。
次回:仮面ライダーギーツ外伝
「もうすぐグランドエンドを迎える」
─グランドエンドを前に─
「永遠の別れってぇ……いつだってゾクゾクするじゃない?」
─交錯するそれぞれの願い!─
「私は、あなたのお人形にはならない!」
「俺だって……お前みたいにやって見せるから……!」
40話 空白Ⅳ:かりそめの覚悟