補習授業部で”エルズ・コール”   作:泥狼俯瞰

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本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『新クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
サークル『こり☆かん』様制作『エルズ・コール』のネタバレが含まれます。


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■7月22日 夕方パート ハナコ

 

ア ル「やあ。仕事が早いね」

ハナコ「ええ」

 

ハナコ「ヒフミちゃんから借りた六花ちゃんが着ていたワンピースをアルさんに渡します」

 

ア ル「うん。ご苦労様」

 

アルは服を受け取ると、しばらくそれを観察する。

 

ア ル「やはり、死体とは異なる魔力の残滓がある……」

ア ル「こいつだけ逆だ」

ア ル「……核で間違いない」

ア ル「ん……何か混じっているな……これは……」

ア ル「時の時計か」

 

アルは意味不明なことを呟いた後、少しの間何かを考えるように無言になる。

 

ア ル「うん、色々とわかったよ」

ア ル「……さて、まずは八切六花という少女のことから話そうか」

ア ル「君が言った通り、八切六花は平行世界の存在だ」

ア ル「時間と並行次元を移動する『時計』。それと命が溶け合っている」

ア ル「八切六花はこれにより、門であると同時に輸送装置となった」

ハナコ「(六花ちゃんの中から聞こえる時計の音。その正体は『時の時計』で、その時計には平行世界を行き来する性能があると)」

ア ル「平行世界の生きている八切六花とこちらの世界の死んでいる八切六花が次元間で交換された形跡がある」

ア ル「そして、次元間には元の世界に戻そうとする引力が働く」

ア ル「それを八切六花に埋め込まれた時計が、彼女の帰還を塞き止めている」

ア ル「結果、戻そうとする引力が別の者を引っ張ってしまう」

ア ル「そうして平行世界の死体がこちらの世界に漂流し、その後、こちらの世界の生者が平行世界に流れてしまっている」

ア ル「死体の方が移動に抵抗する力が弱いから、先に移動しているのだろう」

ア ル「一人分の力なので一人ずつしか交換されないであろうが……」

ア ル「やがてこの街は、延いては世界が、死体で溢れかえることになるかもしれない」

ハナコ「なるほど、そういうことでしたか」

ハナコ「(となると解決方法は……六花ちゃんの……)」

 

ア ル「で、それを踏まえたうえでの事件の解決方法」

ア ル「事件というより現象か」

ア ル「……漂流現象ってとこかな」

ア ル「これを止める方法はいくつか考えられる」

ア ル「まず考えられる方法、それは漂流現象の核となっている……」

ア ル「八切六花の殺害」

ハナコ「(やっぱり、そうなりますか)」

ア ル「しかし、時空を超える時計の力により通常の方法では核を破壊できないかもしれない」

ア ル「そこでもっとも確実な手段がある」

ア ル「このナイフ」

ア ル「これは刺した相手をこの次元から完全に追放することができる代物だ」

ア ル「これを八切六花に突き立て、その存在を放逐する」

ア ル「元の世界に戻してあげるだけさ、本来在るべき場所にね」

ア ル「時計は八切六花の命と融合しているため、それを絶たずして無力化することはできない」

ア ル「命の形を変質させれば、拒絶反応により無力化できる可能性はあるが……これは確実ではない」

ア ル「それに、命の変質はその個人の喪失に等しい」

ア ル「もう一つの方法」

ア ル「それは、この仕掛け自体を破綻させる」

ア ル「漂流した死体と対になっている生者を、平行世界に流れてしまう前に殺害する」

ア ル「タイミングは限られているけど、死者と生者の交換というルールを破壊することで、この連鎖が止まる可能性がある」

ア ル「こんなところだろう」

ハナコ「(占い師の霧咲仁奈も六花ちゃんを殺すよう指示していましたが、()()()()()()()()()ですか……こっちはまだ情報がありませんでしたよね)」

ア ル「はい、このナイフを君に渡しておくよ」

ア ル「これを使って、この事件を、この現象を止めてくれ」

 

アルはハナコに不思議な形のナイフを手渡す。

 

ハナコ「……」

ア ル「漂流現象の仕掛けを破綻させる方法は、新たに死体が見つからないと実行できないからね」

ア ル「これに関してはこちらから連絡するよ」

ア ル「それじゃ、よろしくね」

 

軽い。

女子供でも片手で振るえるようなナイフ。

進退窮まれば、私はそのナイフで少女の、あるいは友人の命を奪う選択をする。

そう考えると、右手に持ったナイフがやけに重く感じた。

 

アルは背を向ける

 

ア ル「……ああ、そうだ」

 

彼女は思い出したように、こう言った。

 

ア ル「月羽雨は生ける屍だ」

ア ル「彼女は未練ある幽霊に等しい」

ア ル「彼女を憎悪する者はもうこの世界におらず、彼女を赦す者もまた、この世界にはいない」

 

アルはそう言い残すと、この場から去っていく。

 

ハナコ「知りたいことは聞けたので、私も帰ります」

先 生「わかりました。それでは三人の夕方パートに移ります」

 

 

 

 

 

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