寡黙・ざ・ろっく   作:喜多ちゃんの脳を焼きたい症候群

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【祝】初ぼっちサイド(主人公)


How did this happen?

どうしてこうなった?

 

殺風景な自室で這い蹲る初めてのお友達を見て私は自問する。

 

時刻は21時。

どうお誘いするか悩んでいる間に放課後になってしまっていたので、急遽、と言う形になってしまって大変申し訳なかったのだが、彼女の家を尋ねれば、彼女から連絡を受けていたであろう彼女のお母さんが大きめのボストンバッグに一通り詰めたものと喜多さんの持ったスクールバッグを交換する形ですぐさま踵を返して私の家へと向かうこととなった。

 

お出かけお泊まりに対する熟練度の違いを感じる…私にはそう言った経験がなく、中学校の時の修学旅行にすら用意と確認で二日は要した。

 

お友達の多い喜多さんはさすがだ。やはり、陽キャとはこうなのか。

 

コミュ障陰キャの私には到底できない、圧倒的な対応力に舌を巻く。

 

そんな彼女とイヤホンで繋がりながら、電車の車内で取り止めのない話(合成音声)をして帰る。

初めての経験。

楽しい時間はいつもよりも早く過ぎていった気がする。

なるほど、相対性理論とはこう言うことか。

 

最寄りまで座り続けれたので、体力も十分。

家に着けば、お母さんが用意した夕食を食べて、お風呂に入って…すぐにでも練習を始められるだろう。

 

***

少しの残光を残した空の紫を目で追いながら、駅から家までの道中を行く。

喜多さんはどうやら、あまりの遠さに困惑している様子だった。

 

「ひとりちゃん、いつもこんな距離を通っているの…?」

 

『はい。慣れればそう辛いこともありません。幸い、行きも帰りも時間的にそう混まないし』

 

電車から降りれば、人通りもまばらな住宅街。

堂々とスマートフォンから音声を出し、それで会話をする。

 

喜多さんはすごく良い人だ。

優しいし、気遣いができる。

会話のテンポが遅い私に合わせてくれるし、こちらの意を汲んでくれる。

 

唐突な私のお誘いに関しても面食らった顔はしたが、悩むそぶりはほとんどなかった。

即決してすぐさまお母様にご連絡。

何もかもがトントン拍子。

 

そんな自慢のお友達を家に呼ぶ。

 

いつかやれたらいいな、とは思っていたが諦めていた私の夢の一つ。

叶っちゃったな。

 

頰が緩む。

目尻が落ちる。

端的に、私は破顔していた。

 

まだ出会って数日の人を家に招待するなんて、もしかしたら私は既に陰キャではないのかも…?なんて、自惚れてみる。

 

いや、声を出せるのに出さないだなんて、それだけで陰キャだろ、そうだよね?

 

『ここです』

 

指差せば見慣れた我が家。

おおー、とよく分からない感慨に浸っている喜多ちゃんを後押しして、玄関を開け放つ。

 

「ただいま」

 

「おかえりーひとりちゃん。お友達もこんばんわ、いらっしゃい!」

 

上がって上がって〜、と手招く後藤美智代。私の母。

そこで、反応がない喜多さんを見てみる。

そこには見事な彫像があった。

 

『喜多さん?』

 

合成音声で話しかければ、すぐさま動きを取り戻す。

既にキッチンへと帰っていったお母さんの方ではなく、私へと固定された視線からやや強張り気味に動きだし、辛うじて聞き取れる鳴き声を発した。曰く…あわわ…?

 

どうしたんだろう?

 

靴を脱いで、ダイニングに行けば多少は改善されたのか動きもスムーズになっていた。

 

「お邪魔します」

 

私の後ろを付いてきた喜多さんは目を周りに向けてウチの中を見ているようだった。

 

『荷物はその辺に。夕食の後に私の部屋に行きましょう』

 

「あ、分かったわ。」

 

指示すればすぐに動く。

喜多さんは本当に出来た人だとつくづく思う。

 

「お母さん、彼女が喜多郁代さんね。バンドを組むきっかけを作ってくれた私のお友達」

 

へぇー?なんて、調理のために動かす手を止めずに台所から顔を覗かせる。

 

「喜多ちゃん、自分の家だと思ってゆっくりくつろいでねー?あと、手洗いうがい済ませて待っててちょうだい。もうすぐ出来るから〜?」

 

私がいつものように「はーい」と返して、喜多さんに向き直ると…

なんでか私の顔を見ながら、目を見開いて固まっていた。

 

なんで?

 

『喜多さん、洗面所、行きましょう』

 

「あ、はい」

 

どうしたんだろう、いつもっぽくない。

 

***

「喜多ちゃん、いらっしゃい!いつもひとりがお世話になってるね!今日はたくさん作ってくれたみたいだからいっぱい食べてね!」

 

料理が並ぶ最中、ちょうど帰ってきてスーツ姿のまま食卓についたお父さんがそう告げる。

 

「ありがとうございます!こんな歓迎していただいて…」

 

「お父さん。流石に着替えてきなよ。汚しちゃうよ」

 

「もー、ひとりは最近母さんに言い方が似てきたなぁ…」

 

「おねーちゃん、ほんとにおともだちできたんだね!」

 

妹のふたりはお昼寝から起きてきたかと思えば、台所から自分用のお気に入り食器を持ってきた。

 

「おねーさん、はじめまして、ごとうふたりです!こっちの犬はジミヘンです」

 

テーブルに食器を置いた後、喜多さんの横まで小走りにかけ、誰に何を言われる前にそう自己紹介した。

 

「ふたり、よく自己紹介出来たねー」

 

「おねーちゃん、髪がぐちゃぐちゃになるー…!」

 

むうううー!と抵抗の意思を見せるもまだまだ力はない。

毎日行っている一幕ではあるが、喜多さんと言ういつもと違う存在は…あれ?

 

「……」

 

また固まってる。

どうしたんだろ?

 

『喜多さん、ウチのふたりが何かしました?』

 

「う、ううん!大丈夫よ、ひとりちゃん。ふたりちゃんごめんねー、私は喜多郁代。喜多ちゃんって呼んでね?」

 

うん!きたちゃーん!なんて凄い勢いで懐いた妹。

今夜からしばらくは練習のために泊まるのだ。

仲が悪いよりも良い方がずっと良い。

 

ただ、疎外感を感じるのであまり過度に仲良くはならないでね…?

 

***

夕食後、最初に喜多さんをお風呂へ入れる。

女性陣全員同時に入れるだろうが、流石に家族以外に肌を晒す度胸はまだない。

一緒にお風呂、も友人計画(過去の遺産)の一部ではあるが、それはここ数日で一度でもあれば御の字だ。

 

『あるものは好きに使って』

 

「うん。ありがとう。ひとりちゃん」

 

なんだろう、家に着いてから喜多さんの目が私を睨むでもなしに見ているような…。

 

「喜多ちゃん、もしかして具合悪い?」

 

居間に戻れば母がそう尋ねてくる。

 

「いや、そんなことないと思うんだけど」

 

「でも、ひとりちゃんはおしゃべり好きの良い子って言ってたけど、あんまりお話弾んでなかったわよね…?」

 

そうなのだ。

いつもの喜多さんならものすごい勢いで会話が流れてしまうほどにお話しして、私は追いつくだけで精一杯になってしまっているのだから。

 

思い当たる節はない。

ないが、今日は話の流れがぶつ切りになって止まることが多々あった。

 

原因はなんなんだろうか…?

そう悩みながら、出てきた喜多さんと交代にお風呂へと向かう。

手早く洗って湯船に浸かるまで悩み続けた。

 

答えが出ないので、もう喜多さんに直接聞こう。

 

ザバっと勢いをつけて湯船から出て、着替えに歯磨きまでバッチリ済ませて居間に行けばそこに喜多さんの姿はなかった。

 

もう部屋に案内した、とのことなので自分のギターと荷物を持って2階の自室へと向かう。

襖を開け放ったそこには

畳の上に倒れ伏したままの喜多さんがいた。

 

寝ている…?訳ではなさそうだ。

彼女らしからぬ声音が時々聞こえてくるし。

 

『喜多さん。お風呂上がりましたし、始めよう』

 

そう合成音声で言わせながら、手早くギターの用意を始める私。

用意が整った、が。

 

喜多さんは微動だにしていなかった。

 

『喜多さん?起きてますよね?』

 

そう言わせながら、肩を揺さぶればガバッと顔を上げる喜多さんがキッと私を睨め付けた。

 

え、何かした???

 

「ひとりちゃん!ご家族とは喋れてるじゃない!!私ともお話ししてよ!!!」

 

え、嫌です。

 

『嫌。まだ慣れてないから無理。言葉に詰まってあっとかうっとか絶対言うし、吃るのも嫌。喜多さんが嫌いとかじゃなくて私が無理』

 

「あんなカワイイ声で喋ってるのにいつまでも私にはその矛先が向かないんですもの!そりゃあ、まだ友達になって日が浅いけれど、ご家族の前だけでも私とも普通に喋ってくれて良いじゃない!!」

 

涙を湛えながら、むくれる彼女。

不本意ながら笑い声が口から漏れてしまった。

 

『それはまた今度、ね?』

 

そう出力させれば、より一層膨れ上がる彼女。

もう!なんて言って、畳を叩く姿も可愛いと思ってしまった。

 

もう一度。

どうしてこうなった?




鈍感系ぼっち、に収まりました。

ご期待に添えているかしら?
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