寡黙・ざ・ろっく 作:喜多ちゃんの脳を焼きたい症候群
意:新兵強化訓練が大元
ひらがなたっぷり、ごめんなさい☆
4がつ28にち
きょうはおねーちゃんのおともだちのきたちゃんがうちにおとまりにきました。
おねーちゃんにはずっとおともだちがいなかったので、よかったなっておもいました。
きたちゃんはなんでかおねーちゃんのことをじっとみてて、わたしやおとーさん、おかーさんとはなすときとかおがちがって、ちょっとこわいなっておもいました。
でも、へんなおねーちゃんのおともだちだし、へんなおともだちでもしかたないかなっておもいました!
4がつ29にち
きょうはあさからずーっとぎたーのおとがなっていました。
きたちゃんがおねーちゃんにおそわっているそうです。
おねーちゃんはぎたーがとてもじょうずなので、きたちゃんとのちがいがよくわかります。
おひるごはんのときにあったきたちゃんはげんきそうだったけどすこしねむそうでした。
4がつ30にち
きょうもいちにちじゅうぎたーのおとがしてました。
あときたちゃんのぎたーやめますっていうのがきのうよりすくなかったようにかんじました。
おねーちゃんがまいにちぎたーひいてるのすごいなっておもってたけど、きたちゃんもずっとひいてるからすごいなっておもいました。
ふたりにはおでかけしたりするようじがあるので、できそうにないのですごいなっておもいました。
***
5月1日
虹夏先輩にお呼ばれされて私たちはSTARRYへと向かいます。
ここ数日の練習で左手全部の指が切れました。
絆創膏だらけです。
『喜多さん、もう一曲できるようになったし、簡単な曲であれば合わせられる』
繋がったイヤホンから電子音でそう聞こえた。
「ええ。頑張りましたもの。出来なくちゃダメだもの」
背負うギターの重みが辛い。
藤沢の駅で乗り換えた際、座り損ねたのが悔やまれる。
下北沢まで後何駅あるの…?
『背負ってると周りに邪魔そうですね、こっち置く?』
ドアの際に立つひとりちゃんが手を差し出してくれるものの後ろが詰まっていて取り回せそうにない。
「ごめんなさい、ありがたいけど無理そうだわ」
そう声を抑えて伝えれば、頭を横へ振る彼女。
せめて空いていれば、と願わずにはいられない。
『きっと2人とも驚くよ』
ひとりちゃんがそう言うのはギターの腕前のこと。
まだ始めたてでコード弾きはそれなりに出来るようになったからだ。
「コードチェンジがまだ甘いけどね…まだコードの暗記もし切れてないし」
『コードに関してはルート音の和音感から覚えるべきかな?あとはどの音がどこでなるか覚えられればパワーコードで鳴らすくらいはすぐ出来るようになるよ』
にっこりと微笑む彼女は優しさに満ちていて、私の涙腺はまた緩みだす。
「…こんなド下手でごめんなさい…ステージで腹切って詫びれば、お客さんもロックだって思うかしら…」
脳内に浮かぶ小さな私は白い和服を着ていて、ギターのヘッドで腹を切っていた。
『喜多さんは十分凄い。はじめてまだ一週間も経ってないんだし』
涙を湛えて俯く私をひとりちゃんは肩を叩いて元気付けてくれる。
やさしい…
「そういえば、虹夏先輩はなんで今日来るように言ったのかしら?」
『特に内容は聞いてないですね。時間があったら集合しよう、とだけ』
車窓へ目を向ければ、東京らしい煩雑さを帯びてきた街並みが目に入る。
そろそろひとりちゃんの家を出て2時間。
毎日これは大変だ。
***
いらっしゃーい、と明るい声が店内に響く。
その後に続いた虹夏先輩の声はギョッとした、と形容されるようなものだった。
「ってうわ…っ!?喜多ちゃん大丈夫!?」
何のことかわからず、首を傾げる私。
何か変かしら…?
今日は少し肌寒くてひとりちゃんに借りたジャージを羽織ってきたけど、それくらいだし…。
「いや、目!目っ!クマすごいよ?」
ああ、それのこと。
普段は8時間睡眠を心掛けてるけど、ここ数日はひとりちゃんとずっと一緒だったし、楽しくて…
「郁代、なんか陰キャみたいになってる」
ウケる、だなんてリョウ先輩が言えば、その後頭部を虹夏先輩が叩く。
冗談めかしているのは分かるが…陰キャって何なのかしら…。
『喜多さんは陽キャ。映え映えのナニかを摂取すれば復活します、きっと』
それはフォローになってないと思うわひとりちゃん。
「大丈夫?エナドリならあるよ?」
おーい、と言いながら手を振る姿の虹夏先輩が居る。
その様はたとえ先輩であるとしてもかわいらしいし、愛らしい。
「虹夏先輩ってずるいですよね…」
「…どう言う思考回路を経てそんな結論になったの???」
頭の上に浮かぶハテナの数を増したくものの、先輩の愛らしさは増すばかりだ。
「郁代、ひとりの家に泊まってたんでしょ?どうだった?」
「…金曜日からお泊まりして…初日から徹夜。翌朝は起こされるまで寝て寝落ちするまで。昨日は今日ここにくるって言われなければまた徹夜の勢いでした…ひとりちゃんのタフネスヤバすぎです…意識が持ちません…」
「昨日は寝れたんだ」
「ええ、日付変わってからですけど…」
「ちょ、ちょっとひとりちゃん!
口元に手を当てて笑うリョウ先輩と私の肩を支えてくれる虹夏先輩…あっ…いいにおい…
虹夏先輩に詰問されるひとりちゃんは首を傾げながら画面を見ずに入力し、発声させる。
『いや、いつも通りなんですが』
「正気!?華の女子学生が朝から晩まで部屋にこもってギターを弾き続けてるって!?ギターヒーローと言えど流石にヤバいって!喜多ちゃんが映え不足で天に召されちゃうよ!?」
…私天に召されるの…あ、でも隣に虹夏先輩…ニジカエル居るし…それもイイのかも…
薄れゆく意識の中、虹夏先輩の香りと声が私の中で残響した。
「喜多ちゃーん!?」
***
「一応寝ているようだし…まぁ、よし。とりあえず、しばらく寝かせてあげよう。顔色ヤバいし…こんなんじゃアー写撮れないじゃん…!」
アーシャ?とはなんだろう?
喜多さんの荷物を受け取り、部屋の隅に私のと並べて置きながら考える。
アー写…撮る?写真かな?なら、アーはアーティスト…?
あぁ。
だからアー写か。
『写真を撮るんですか?』
「いや、ひとりちゃん…喜多ちゃんの様子を見て反応なしなのはどうかと思うよ…?」
いや、喜多ちゃんは昨日もこう寝てたし普通なのかと…。
私も休日は敷いた布団の上で眠くなるまで弾き、寝て、起きたらまたすぐに弾くって生活してるし、そんな変ではないかと思ってた。
『え、こんな感じって普通じゃないんですか?』
「普通な訳あるか!!」
虹夏ちゃんの剣幕から察するに、どうやら本当らしい。
「なるほど、ギターヒーローになるには努力を努力と思わないくらいにやらなきゃなのか…ベースヒーローになるために私も真似しよう」
「せんでいい!リョウは生活態度乱すとホントに死ぬからね!お小遣い使い切ってウチに頼る時点で無理だから!!」
どうやら、リョウさんは虹夏ちゃんのお家にしょっちゅう厄介になっている様子。
家族ぐるみなのかな。
そんな友達の関係もあるのか。
「お前、そろそろ家賃徴収するからな…?」
私がオトモダチのカタチについて考え込んでいると第三者の声が転がり込む。
音源を探すと、それはリョウさんの真後ろだった。
「…ゴメンナサイ…」
カタカタ震えるリョウ先輩は涙目のまま助けを求めているようだ、が。
「ひとりちゃん、助けようとか考えなくてイイからね?」
先回りして虹夏ちゃんにそう言われるならば仕方ない。
頷き、リョウさんへ合掌。
あなたのことは忘れません。
それはそれとして居住まいを正して入力。
『初めまして、虹夏ちゃんのお姉様。後藤ひとりです。よろしくお願いします』
定型の文句を言わせれば、リョウ先輩への圧力を弱めながらこちらを見るお姉さん。
先にここの店長がお姉さんと聞いてなければ、めちゃくちゃ若いお母さんと間違えてしまうところだったかもしれない…。
「あぁ、私は虹夏の姉の星歌。ここでは店長と呼んでくれ。君のことは聞いてるよ、【ギターヒーロー】」
喜多ちゃんLog outしたまま終了。
やはり、後藤ひとり式育成法は過酷を極めた…。
そして、ぼっちちゃんガチ勢の店長参戦!!
さー、焼くぞー!!()