Monster Hunter Reincarnation   作:scp-114514

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『そして、底知れぬ所の穴が開かれた。すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空気も暗くなった。』
~ヨハネの黙示録、第9章より引用~


誕生と終焉の光

禁足地の最奥部にある石造りの祭壇。その頂にてアルトゥーラが座しているのをダイゴ達は発見した。

 

「……!」

 

覚醒直後は誰にも見向きしなかったが、レウスが目に入った瞬間、アルトゥーラは巨大な翼を展開して地上に舞い降り、無機質さを含んだ咆哮をする。

 

「ヴィィィガガガガガガガガァ—————!」

 

咆哮と共にアルトゥーラの両翼が光を放ち、それに呼応するかのようにエナの護符も輝きだした。

 

「これは…⁉」

 

偶然とは思えない状況にカイルは驚くが、今集中すべきアルトゥーラに目を向け、動向を見極める。

 

「あ、相棒…」

 

「武者震いよね?ビッグでグレートだものね!」

 

「じょ、上等だ!」

 

アルトゥーラを前にして気圧されるナビルーがツキノにオルゴの言葉で茶化され、啖呵を切ってアルトゥーラに向き直る。

 

「さぁ、一狩りいこうぜ!」

 

「ああ、僕達の絆を見せつけてやろう!」

 

「「「ライドォォォッ—————オンッ!!」」」

 

武器を抜刀したハンター達と、光り輝く絆石を掲げるライダー達。この世界の存亡をかけた最後の戦いが始まった。

 

 

 

***

 

 

 

「尻尾が来るぞ!気をつけろ!」

 

アルトゥーラが地面を滑るように尻尾で薙ぎ払ってくる。鈍重だがあまりの広範囲で

回避やガードに失敗すれば痛手は免れない。

更にアルトゥーラは常に翼をはためかせて宙に漂うため、剣士ではまともに攻撃が届かない。

 

「ダメ!尻尾も全然手ごたえないわ!」

 

「腹も的は大きいがあまり効いていないようだな…」

 

クサンテが攻撃の届きやすい尻尾にツインボルトで斬りかかり、カイルが腹部に王弓エンライの射撃を当てるが、アルトゥーラは全く気にかけない。少なくとも弱点はこの2つではない事は明らかだ。

 

「じゃあ、頭には効くかもしれない!豪火球!」

 

レウスがアルトゥーラの顔面に豪火球を当てる。並のモンスターなら相当の痛手だが、伝説の古龍たるアルトゥーラはあまり効いていないようだ。

 

「ギィィィガアアアアッ!」

 

アルトゥーラが咆哮した。息が荒くなっており、怒っているようだ。

 

「怒った⁉次に何をやってくるかわからないわ!」

 

「攻撃が効いている証拠だ。攻めまくって弱点を探すぞ!」

 

アルトゥーラが邪魔な羽虫たちを潰そうと前脚を振り下ろしてくる。ダイゴはレウスよりも陸上の立ち回りが得意で、かつ力も強いテスラに切り替え、落石の如く頭上から降りそそぐ攻撃をかいくぐりながら攻撃する事にした。

 

「足元だ!そこに回り込めば攻撃も届きにくいはずだ!」

 

「了解。テスラ、雷迅掌!」

 

テスラが大きく跳躍して、電気を纏った前脚をアルトゥーラの胴体に叩きつける。手ごたえは薄いが、それでも動きを見切って攻撃を仕掛けるビジョンが見えてきた。

 

「通常時は尻尾攻撃、怒り時は前脚の叩きつけね。大体立ち回りが掴めてきたわ!」

 

「アルトゥーラの息が落ち着いてきたぞ!尻尾攻撃に———」

 

「いや待て、様子が変だ!体が光り始めたぞ!何か仕掛けてくる!」

 

アルトゥーラの胴体———正確には閉じている2対のうちの1対の翼が光り始め、咆哮と共に赤いオーラを纏って展開された。

 

「なっ…な、何だよこいつ⁉」

 

「成…長…しているの…?」

 

アルトゥーラは覚醒してもなお、自己成長を続けているという事実を突きつけられて誰も言葉が出なかった。

 

「エナ!お前の護符…」

 

「また翼の光とともに輝きを…まさか、共鳴?」

 

「お前ら、前を見ろ!何かが来るぞ!」

 

「おいおい、何だよこの攻撃は…巨大すぎて対策のしようがねえって…!」

 

呆けている暇はない。アルトゥーラの上空に光が収束されていく。それは燃え盛る炎と迸る紫電を纏う透明なエネルギー球となり、ダイゴ達のもとに投射された。

 

【フィアムトゥーノ】

 

盾や刀身によるガードが意味をなさないほどの巨大なエネルギー球が爆発し、地盤を砕く。何度も受けていいはずのない一撃だが、何とか持ちこたえることができた。

 

「いっ…てえっ…!」

 

「急いで回復を…あ、すまねえディノ!」

 

体制を立て直すことを最優先にしようとするが、その前にディノが生命の大粉塵を使ってメンバーの治療を終わらせた。

 

「俺達では攻撃が届きにくい。お前たちライダーは攻撃に専念しろ!回復はこちらで行う!」

 

「翼だ!あそこに力を集約したんだ!翼を部位破壊しないと大変なことになるゾ!」

 

「わ、わかった!」

 

ナビルーの推測を聞いたダイゴはレウスに切り替え、アルトゥーラの翼を狙うべく飛行する。

 

「ブレスが来るわ!避けてッ!」

 

「わかった。レウス、上に飛んで!…なッ⁉」

 

動向を観察していたクサンテはアルトゥーラが首を後ろに引く動作を確認し、ダイゴに注意を飛ばす。ダイゴの指示を受けてレウスが急上昇した事で攻撃は避けられたが、アルトゥーラは火属性のブレス、続けて雷属性のブレスを放っていた。

 

「複数の属性を使うの⁉正真正銘の伝説だな…」

 

「ダイゴ!お前は左を狙え、俺達が右をやる!」

 

「地上からは俺達も狙えるぞ!」

 

アルトゥーラに立ち向かえるのはダイゴだけではない。バンホーと彼を乗せて飛ぶリルスがが右翼を破壊すべくフレイムスロワーと熱線の波状攻撃で攻めたて、地上からはカイルの王弓エンライ、オーウェンの巨獣弓、そしてブルーの超低温の冷気による援護射撃が後押しする。

 

【フィアメルスパイロ】

 

【トゥーノエルスパイロ】

 

しかし、それを許すほどアルトゥーラは生易しい相手ではない。力を溜めた後にセルレギオスのように翼を大きくはためかせ、無数の鱗を飛ばしてきた。それは属性エネルギーを得たのか何条もの光線となって降りそそぎ、地面に着弾して爆発を起こす。

 

「いってえな、この野郎ォ!リルス!お前もギアを上げやがれ!」

 

「…!!ンヴァアアアアオウッ!」

 

爆発に直接巻き込まれなかったものの、凄まじい爆風により体勢を崩されたバンホーに檄を飛ばされたリルスはひときわ力強く咆哮した。燃え盛る蒼炎のオーラ、より黒く染まる全身、周りごと赤色に染まった眼。外見はいつもの時より禍々しさと凶悪さが増しており、まるで神聖な印象を持つアルトゥーラとは対照的にも見える。

 

「その立派な翼をボロ雑巾にしてやんねえとな!クイーンヴェノム!」

 

地砕きを起こすほど力強く踏み込んだリルスが翼目掛けてサマーソルトを繰り出し、更に空中からキックを浴びせた。バンホーもフレイムスロワーを翼に突き立て、竜杭砲を起動して追撃を行い、右翼が破壊される。

 

「僕らだって負けてらんないな!レウス、溜め拡散熱線!」

 

レウスも力を溜めて強力な熱線を放ち、左翼が破壊された。新たに展開された1対の翼は閉じられる。

 

「クゥオワアアアア————ッ!」

 

アルトゥーラは低空飛行で旋回し、その勢いで尻尾で薙ぎ払ってきた。最初にしてきた攻撃と同じだ。

飛行、または跳躍に優れる者を除けば攻撃をやり過ごすのは難しいが、逆に言えばレウスやリルスなど、そういう者であれば回避はもちろんのこと、その隙を狙って攻撃することも可能である。

 

「ヴェノムストライク!」

 

「ヴェノムスパイク!」

 

レウスの毒爪とリルスの毒棘がアルトゥーラに突き刺さった。リルスが劇毒のサマーソルトを先に繰り出したこともあって毒状態にできると思えたのだが、一向に毒で苦しんでいる様子は見られない。

 

「状態異常は効かないと見てよさそうだな…」

 

「待ってバンホー!アルトゥーラからまた光が…!」

 

「おいおいマジかよ!流石、封印されていた伝説の古龍ってモンだな…!」

 

部位破壊されたはずのものも含み、閉じていた2対の翼が光り始め、咆哮と共に青いオーラを纏って展開された。

 

「この護符もまた光りはじめた…やはり共鳴している。でも一体どうして?」

 

強く輝きを増すこの護符はアルトゥーラと関係していることを確信するエナだが、それがどういうものなのかと思考を張り巡らすよりも前にアルトゥーラは攻撃を仕掛けてくる。

 

【アクアギアーシオ】

 

アルトゥーラは再び光を収束させる。それは前と違い、逆巻く水流と凍てつく氷を湛えた透明なエネルギー球。水と氷を複合した強力な属性攻撃が襲い掛かった。

 

「さっきと属性が全然違うゾ!?まさかあらゆる属性攻撃が出来るのか!?」

 

「お前たちのケアはきちんとするから引き続き翼を破壊しろ!攻撃の手を減らすんだ!」

 

3対の翼を展開したアルトゥーラの攻撃は苛烈さを増し、より油断ができなくなってきた。

 

【アクエルスパイロ】

 

【ギアーシオルスパイロ】

 

6枚の翼をはためかせ、烈風とともに水属性あるいは氷属性をまとう鱗が四方八方へ飛来、炸裂する。

 

「くうっ!水と氷を操っている今の状態なら火属性のレウスの攻撃に弱くなると思うのに…!」

 

「2対までなら何とか攻撃をかいくぐれた。でも3対となると滞空しながらの攻撃なんざあっちは普通にやれちまう。攻められねぇ…!」

 

継続して攻撃を続けられるレウスとリルスが最もアルトゥーラにとって警戒すべき敵である。彼らは手数の増えた攻撃に最も注意しなければならず、至近距離から攻撃を仕掛けるのに苦労していた。

 

「(ダイゴ達の攻撃の手が止まれば、部位破壊できず防戦一方になる…。投げナイフで状態異常にするにも、毒が効いていないようだから作戦として使えない。この遺跡には防衛設備が見当たらないから、バリスタによる拘束や牽制も不可能。アルトゥーラが4人に攻撃できない状況を作り出す方法はないのかしら…?

………いや、一つだけある。失敗しても隙は作れるはず。これしかないわね…!)

バンホー!お願いがあるわ!私を一度乗せてほしい!」

 

「あ?何か思いついたってのか!?」

 

「ええ!うんと高く、アルトゥーラの頭に近づいて欲しいの!算段はあるからお願い!」

 

「頭!?とんでもなくリスキーだな!でもこのままでもいいことなんかねぇ、さっさと乗れ!」

 

強走薬を飲んだクサンテと彼女の策を承諾したバンホーを乗せたリルスは水と冷気のブレスを掻い潜りながらアルトゥーラの目の前まで飛行していく。

 

「少し失礼するわよ、リルス!」

 

そしてアルトゥーラがリルスとバンホーに狙いを定め、ブレスを放とうとする前にクサンテがリルスの背を足場にしてダッシュし、彼女の後頭部を踏み台にしてジャンプ。更にそこからツインボルトを抜刀してアルトゥーラの頭に斬りかかる。

 

「はあああああっ!」

 

裂帛とともに大車輪の如き空中縦回転斬撃———『天翔空破断』を繰り出したクサンテは、斬撃を当てた頭部を踏み台にして跳躍、落下しながら頭頂部目掛けてツインボルトで追撃の斬撃を繰り出した。

 

予想外の不意打ちを受けたアルトゥーラが怯んだ隙にクサンテはアルトゥーラの頭にしがみつき、剥ぎ取りナイフを突き立てる。空を飛び続けるアルトゥーラを乗りによるダウンで落下させようとしているのだ。

 

「(アルトゥーラに乗れた、第一関門は突破できた!乗りのダウンを狙えれば攻撃の隙は増えるし、私が振り落とされたとしても今は無防備な隙を晒している…!)今よ!とにかく攻撃を仕掛けて!」

 

「ジュィィィィィィガアアアアアアア———ッ!」

 

頭にしがみついた異物を振り払おうと、アルトゥーラは頭を激しく振って暴れ、咆哮する。無防備になっている今の状態で攻めない理由はないが、一番負担を感じているはずのクサンテのことが気が気でない。

 

「斜め上の発想はいいが、お前の方は大丈夫なのか⁉暴れるのはともかく、咆哮の影響も直に受けてるはずだろ!?」

 

「大丈夫!強走薬でスタミナは切れないし、バゼルシリーズには聴覚保護スキルがついているから咆哮はある程度耐えきれるわ!私のことよりも攻撃を優先して!」

 

「わ、わかった!おいお前ら!無防備のあいつに集中砲火をぶっ放せ!」

 

「言われなくてもッ!」

 

暴れて隙を晒すアルトゥーラは、射撃やブレスの恰好の的でしかない。そして振り落とされない対策を持っていたクサンテが根競べに勝ち、衝撃でアルトゥーラはダウン。巨大な6枚の翼ごとその体は地に堕ちた。

 

「今よ!翼を全部部位破壊して!」

 

力の根源となる翼は目の前。そのすべてを破壊すべく、全員が走り出していく。

 

「攻め手は削ぎ落させて貰う。ツキノ!」

 

「承知です!」

 

すべての真実が明るみとなった。真に倒すべきなのはこの龍ただ一つのみ。カイルが翔蟲で飛び上がり、ミティオリックアローで地に縫い付けるように翼を射抜く。

 

「貴様を討つために全力を出さねば…俺は奴らに顔向けが出来ん!」

 

現大陸に残した仲間達に報いるために、自分では絶対に届かない相手でも確実に力だけは削ぐために。ディノは超震怒竜怨斬を繰り出し、赤熱したネオラギアブレイドの刃を叩きつける。

 

「家も大陸も飛び出して…あの人を探し出すまで私はまだ終われない!」

 

「道を切り開く前に世界が終わるなんて、納得できるわけないじゃない!」

 

家も国も飛び出した。生きているかどうかもわからない想い人。ハンターになりたてで、まだ見ぬ広がる世界と自分の人生。破滅が近づいていたとしても、死ねない理由がある。クサンテの血風独楽、ミーナの風車によりツインボルトとカーサスクロウが翼を切り裂いていく。

 

「クアン村の復興のために…」

 

あいつら(レドと護りレウス)の遺志のために…」

 

「「俺たちの平穏のために…さっさと死んでくれ!」」

 

オーウェンがブルーにライドし、Zグレイザーを。バンホーがリルスにライドし、フレイムシェイバーを繰り出した。絶対零度の冷気と蒼く昏い炎は、目的のために邪魔な障壁はすべて潰す漆黒の意思を示しているようにも見える。

 

「これで…終わらせる!ライドオン、リオレウス!」

 

ダウンから復帰しようとするアルトゥーラにさらに追撃がかかろうとする。ダイゴがレウスにライドし、天高く舞い上がった。

 

『スカイハイフォール』!」

 

6枚の翼すべてがボロボロになったアルトゥーラに、レウスのスカイハイフォールがヒットし、アルトゥーラの全身が天を貫くほどそびえたつ火柱に包まれた。

 

そして火が消え、爆風が止んだ時…

 

「グァガガガガガカガッ……」

 

アルトゥーラは糸が切れたように痙攣しながら倒れ伏した。

 

 

 

***

 

 

 

アルトゥーラは眼から光が消え、まったく動く気配がない。

 

「やったぁ!ついに凶光化事件が幕を閉じたんですね!これで母上もフィオレーネ教官も———」

 

「待て!ならば昼間なのに蒼く染まる空がなぜ元に戻らない?」

 

「あっ…!」

 

破滅の元凶が倒れた光景を目の当たりにして歓喜するミーナを制止し、不穏な状況に神経を尖らせるディノ。それもそのはずだ。今は時刻で言えば真昼間。凶光によって空が晴天の夜のごとき蒼のままだというのは、アルトゥーラはまだ生きていると言っても過言ではない。

 

そしてディノの指摘は正しかった。死んだように倒れ伏すアルトゥーラから、突如として凄まじい光が迸る。

 

「なんなのよこの光!?さっきまでのとは比べ物にならないわ!」

 

耳をつんざく轟音、大気を震撼させるほどの巨大なエネルギーの発露とともにその光は巨大な繭のように収束していく。そして光が雲散霧消したとき、アルトゥーラはさらなる姿を引っ提げて再臨した。

 

左右三対に展開する六つの巨翼を備え、翼に刻まれた瞳のような模様の全てに禍々しい凶光を灯した妖しくも神秘的な姿。

 

アルトゥーラはまだ息絶えてはいなかった。成長を終え、完全なる姿へと覚醒したのだ。

 

天を舞う光よ、天空の使者よ。紅蓮の炎で滅びの定めを焼き尽くせ。

 




狭くてごちゃごちゃした環境ではモチベーションを維持するのはきついですね
自宅…というか寮よりもネカフェで執筆するほうが捗りました

ストーリーズ関連のプレイ経験は

  • MHST
  • MHST2
  • オトモンドロップ
  • ライダーズ
  • 2作品以上
  • ないです
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