Monster Hunter Reincarnation 作:scp-114514
クルルヤック達はクルペッコの演奏によって活発化し、動きが激しくなった。激化する乱戦を今の状態で乗り切るのは難しいと判断した耀真の先導で、祭我達は洞窟地帯のエリア11まで退避する。
「はぁっ、はぁっ…。ちょっと面倒くさい状況になったな」
「どうする?このまま続行するか?声真似が気がかりだけどよ」
祭我から投げられた質問に対し、耀真は暫しの間逡巡して答えを出す。
「…最低でもクルペッコは狩猟する。防具とそのスキル、武器の質。今の俺達はそこらのハンターより遥かに充実しているからな」
「それはそうだろうが…クルペッコは色んなモンスターを呼び寄せれるんだ、何が起きてもおかしくない。そんな状況に晒されかねない今でも、見込みがあるんだよな?」
「お前の言う通りだ。あいつはリオレイアだのイビルジョーだの、危険な奴らだって確かに呼べる。だが考えてみろ?それなら最初からクルルヤックより強いそいつらを呼び出す方が賢明じゃないか。隠し玉のように出し惜しみする事もなくな」
「む…」
「仮にクルペッコ自身の手に余るほどの強いモンスターを呼び寄せれば、自分の身も危ない。強力な個体であって初めて、身の丈以上のモンスターがいても上手く立ち回る事が出来るはずだろう。
中型の鳥竜種ばかりを呼び寄せてるってのは、そういう強力なモンスターと出会い、逃げる経験のなかった個体なのか、声真似のレパートリーが少ない個体なのか…。俺は学者じゃないからこの辺は何とも言えんが、声真似が今の俺達にとってそこまで痛手にならない可能性がある」
「…成程。でもどうやって立ち回る?声真似をすれば2体も乱入してくる、3体が集合する状況を前提にして考えないとな」
「こやし玉を現地調合したり、お前がスリンガーこやし弾を撃つなりで追い払いは出来るが…肝心の素材を探さないといけない。操竜をするにしても…あれはモンスター同士の敵意を使う。クルペッコに煽動されてる状態だと厳しいだろうし、そもそも連続で何度も使えるものじゃない。だから—————」
***
エリア10。外敵が去って間もないので、クルペッコは未だこのエリアに留まっていた。呼び寄されたクルルヤック達は何もない砂地では特にやる事もなくて別エリアに去っていったのか、姿は見えない。
「お?今は助っ人無しか」
「なら合流するまでに削る、狩猟しきれるんならそのまま狩る!『ダッシュブレイカー』!」
真っ先に耀真が前方に飛ばした翔蟲の力を借りてクルペッコ目掛けて突進し、その勢いでイニティメイスを振りぬいた。
「こっちも喰らっとけ!」
祭我のスリンガーに装填されたミズタマリゴケが『スリンガー水流弾』となってクルペッコに命中する。
ガガンッ、ガンッ。
「させない!デンプシー!」
「クルアア「ヴォアアアッ!」…ッ⁉」
弱点の水属性攻撃を受けたクルペッコは再びやってきた外敵たちを排除しようと火打石と化した両翼の翼爪を打ち付ける。跳躍で距離を詰め、耀真達を爆発に巻き込ませようとするが、そこにロアが乱入した。
彼女が繰り出すのは、2連続での角の振り上げ攻撃。若い個体のオトモンであるがゆえに野生ほどの力は出せていないが、相手が中型の鳥竜となれば十分に威力を期待できる。
「キョオオオッ!キョオオオッ!」
再び身の危険を感じて怒り状態になったクルペッコは声真似をし、どこからともなくクルルヤック達がこのエリアに乱入してきた。
「横槍のお出ましか!」
「んじゃ、早速俺の出番だな!」
イニティランスを納刀し、最前線に出た祭我のスリンガーから鉤爪が飛んでいく。狙うはクルペッコの頭、ワイヤーを手繰ってそこにしがみついた祭我はありったけの石ころをスリンガーに装填した。
「全部ぶち込んでやるぜ!」
スパァン!
祭我がスリンガー装填弾を全て放つ『全弾発射』。射撃の反動で祭我は落下してしまうが、衝撃に驚いたクルペッコは顔を向けていた方角に走っていく。その先にはクルルヤック達のいない高台、即ち壁。クルペッコはそれにぶつかったことでダウンした。
「分断成功だな。そっちは孤軍奮闘で頼んだぜ、祭我!」
「ハーッハッハッハ!クルペッコ、お前の相手はこの俺だ!」
分断のためにこやし玉を調達するよりも、この機能の方が手っ取り早い。確かに操竜も一考の余地があるが、それで乱戦状態が収まるとは限らない。何より、既にいる他の大型モンスターを追い払ったら、次に何が来るかわかったものじゃない。
故に耀真は『すべてのモンスターを同じエリアに留めた状態で、一刻も早くそれらモンスター達を分断させる』という事を考えたのだ。
「…さて、アイツが一人で戦うんだ。俺達も負けてられないな」
「はい。最初から全力です!」
「そうだ、その意気だ!てなわけで片方は自分らでやってくれ!」
2体のクルルヤックは早速、器用に岩を掘り出した。耀真と相対している個体は岩を押し付けるように一直線に突き進んでくる。
耀真はククボシリーズが保有する回避性能で難なく避け、イニティメイスで頭を打ち据えようとするが、背後の気配を感じたクルルヤックは体の軸を耀真に合わせ、岩を彼の方向に向ける形で高く持ち上げた。
—————グシャッ。
「そんな使い方もあるなんて想定してねぇ…」
頭に叩きつけようとしたイニティメイスは岩に弾かれてしまった。流石に岩の方も無傷ではいられず表面が一部剥がされるが、肝心のクルルヤックは攻撃を受けていない。やむなく岩に当たらないよう後ろ脚に回り込んで胴体や尻尾を攻撃する事にした。手応えは悪くはないが、如何せんクルルヤックが頻繁に自分のいる方向に岩を持ち上げてガードしてくるため、岩を何とかして捨てさせたい所である。
「待てよ?これを使ったらどうなるかな」
アイテムポーチを探りながら岩の対策を考えているなか、コロガシのダンゴを思い出した耀真はウツシから貰った猟具生物カゴからそれを取り出してクルルヤックに投げつける。
「キョエオッ⁉」
「んん⁉これは予想外!」
ダンゴをぶつけられたクルルヤックは声を出して怯み、全身がずぶ濡れになる。ウツシや『猛き炎』達の言葉を借りるならば『水属性やられ』にでもなったのだろう。
「ハンターは水属性やられになるとスタミナ回復が上手くいかないけれど…モンスターならどうなるんだろうな?教官に聞いときゃよかった」
まぁ殴ってればどういうものかわかるだろ、と踏んだ耀真は引き続きクルルヤックを岩による防御と攻撃の手を搔い潜りながら胴体と尻尾に攻撃していく。そうしていく中で1つ気づいたことがあった。
「さっきより攻撃が通りやすくなった気がする。濡れたことで体がふやけてるのか」
耀真はこれが水属性やられの影響だと確信し、同時に今以上の攻め時はないと判断する。今までは隙を見計らって攻撃していたが、距離を取ってはダッシュブレイカーで突っ込んでいくスタイルへ方向転換。強靭な鉄蟲糸を引っ張る事で勢い良く前進するので、中型モンスター程度の攻撃では吹き飛ばないのだ。
「クルゥオアアッ⁉」
勢いに任せた攻撃を何度も受けたクルルヤックは岩を落としてダウンしてしまう。水属性やられは治ってしまっているが、結構削れているはずだ。
「さて、アキ君達のところは…」
遠くでは、アキが斧モードにしたローグアックスでもう一体のクルルヤックの頭を斬りつけたのが見える。そして攻撃を当てた頭から爆発が生じ、クルルヤックが倒れた。剣に内蔵されたカートリッジ…もといビンにチャージしたエネルギーを使った攻撃『属性解放斬り』のおかげだ。
一方のロアは今のところ、そこまで突進やタックルをしていない。オトモンと言えど体躯の小さい相手では主を巻き込みかねないからだと耀真は一瞬思ったが、よく見るとクルペッコの方を時折見ながらそれとほぼ一直線上に立っており、また何やらブレスを吐き出している。大方、クルペッコの邪魔が入らないように自分が壁となりつつ最低限の攻撃をしているのだろう。
「んじゃ、片付けて祭我の方に向かうかねぇ…!」
耀真はイニティメイスを抜刀すると同時に溜めの構えに移り、クルルヤックが起き上がるタイミングで頭上高くに翔蟲を飛ばす。
「オルルアッ!」
ハンマーを振り回しながら跳躍し、落下時に叩きつけを行う鉄蟲糸技『インパクトクレーター』。ただハンマーを叩きつけるだけでなく衝撃波も発生させるこの技は地面を抉る程の威力を誇り、クルルヤックを地に伏せるには十分だった。
「ライドオン、ディアブロス!」
一方のアキも、もう一体のクルルヤックが榴弾ビンの属性解放斬りによるスタンで倒れている間にロアにライドしていた。
「もうあっちも終わりか。…そういえばあの子の絆技、見たことないや」
ダイブするように助走をつけて地中に潜ったロアは猛烈なスピードでクルルヤックに急接近していく。
「クゥオオオオオウッ!」
スタンから復帰したクルルヤックは怒り、岩を掘り起こすがそんなの関係ない。なぜならクルルヤックの足元を中心に地割れが発生し始めたからだ。
ロアがクルルヤックを足元から激しく突き上げると同時に地盤は崩れ、一帯が竜巻と見紛う程の怒涛の砂嵐に巻き込まれた。巨大な角の餌食になったクルルヤックも荒れ狂う砂の奔流に吞み込まれ、天高く巻き上げられる。砂嵐が止み、地面へ堕ちた時には既にクルルヤックは冷たくなっていた。
***
「クェエエエッ⁉」
耀真達に2体のクルルヤックを任せている一方、祭我はクルペッコの火打石による攻撃を受け切り、カウンターの一突きを頭に当てて嘴の部位破壊に成功していた。
「自慢の声真似もしづらくなったし、イケるイケる!」
至近距離でいきなり火打石を打ち合わせての爆発は予測が出来ず、何度か火属性やられになってしまった。しかし正面ではなく斜めに陣取ったり、深追いせずガードできる余裕を残しておけば被弾も少なくなった。
「そもそも何のためにこんなシールドがあるんだよ、って話だしな…」
この世界に来るまでは基本的に戦隊ロボの要塞の如き堅牢さをウリにして、真っ向から攻撃を受けて殴り返してきた。
しかし…今に始まった話ではないが、モンスターというのは一撃でも真っ向から喰らうとマズイ者が多い。故に攻撃を避けたり受け止めなければいけない。当然、一瞬の油断も許されない。
城塞高地にて出くわした怨嗟響めくマガイマガドとの戦闘も、そういう点を考えておけば結末も変わっていたのかもしれない。
「ま、こんな立ち回りも覚えといて損はない」
メゼポルタではクルペッコの素材を扱っておらず、そもそも祭我自身がクルペッコの武器にあまり興味がない。しかし報酬は多いに越したことはないと踏み、続けて翼の火打石を狙う事にする。
「石というだけあって硬いからあいつらの協力が欲しい。クルルヤックの方は、っとぉ?」
後方を向くと、横たわる2体のクルルヤックを尻目に自分の方へ耀真達がやって来ている。邪魔者は討伐したのだろう。それはクルペッコも確認したようで、翼をはためかせて空を飛び、エリア移動しようとする。
「逃がさない!ロア、お願い!」
「キョエッ、キョエエエッ⁉」
とんでもない音圧の咆哮が響き渡り、驚いたクルペッコが墜落する。
思わず耀真と祭我は耳を塞いでしまうが、アキはこれが身近なのか慣れているらしく、ロアの背から降りてローグアックスを弄くりながらクルペッコに向かって駆けていく。
「やああああっ!」
剣と合体した盾から光の刃が発生し、地に堕ちたクルペッコを下から上へ斬り上げる。
チャージアックスのビンに溜めた力をエネルギー状の刃として発揮し、周囲を薙ぎ払う大技『エネルギーブレイド』だ。ビンの効果を得られず、ヒット数もあの斬撃一発だけであり、これだけ聞くなら高出力属性解放斬りよりもパッとしないだろう。だがあちらはビンの爆発が着弾地点から後ろに発生するので場合によってはすべてのビン爆発が当たらない事もあり得るのに対し、この狩技は消費した全ビン分のエネルギーが一発の斬撃に変換されるのでどんな相手でも無駄がない。それに斬撃を繰り出すまでの隙も少ない。これならオトモンの事を考えないといけないライダーでも使い勝手が良さそうだ。
「そんじゃあこっちも終わらせっか!」
「調査の報告もあるんだしな」
咆哮による硬直が解けたハンター達も負けていられない。先に突進で詰め寄り、バックステップを挟みながら突きを繰り返す祭我と、力を溜めながら遅れて合流し、インパクトクレーターを繰り出す耀真。火打石は硬くて部位破壊は出来なかったが、この追い打ちはクルペッコを討伐するには十分だった。
***
気付けば日は沈みかけている。いくら気候が安定してきた砂原でも、夜になれば冷え込むので、耀真達は急いでクルペッコとクルルヤックの剥ぎ取りを済ましてベースキャンプに帰還した。
「…あ、まだ居たんすね」
「ええ。今回の状況が状況でしたからね」
一行はベースキャンプにてヤクモと再会する。教え子達の姿が見えないが、隣の砂上船の方から寝息やイビキが聞こえるので、十中八九狩りで疲れて寝ているのだろう。
「…おや?アイテムの整理ですか。その様子だと、調査は終了したようですね」
「はい。原因であろうモンスターを討伐したんで。俺達、クルペッコに出くわしたんですよ」
「…ふむ。クルルヤック、あるいはドスジャギィはそれに呼び寄せられた、というところでしょうか」
「まーそうですね、でもここら辺は結構複雑なんじゃないかと俺は思うんです」
「というと?」
「クルペッコが元凶だった」で済まさず更に深堀りしていく耀真にヤクモはつい目を見開く。正直、ヤクモは耀真達の装備や今回のクエストのターゲットを鑑みるに現状の実力はそこまでないハンター達なので、更に深く考察することもないと思っていたのだ。
「クルペッコって、普通身の危険を感じると声真似で他のモンスターを呼び寄せるんですよね?そうしたら外敵をそいつらに任せてとんずらしてもおかしくないでしょう。
でもアイツは砂原にずっと居座り続けてた。こう見ると何かおかしくないですかね?」
「…この狩場では今まで確認されなかったバサルモスの目撃情報が相次いでいます。同様に考えると、クルペッコは砂原から逃げなかったのではなく、逃げられなかった、もしくは砂原へ逃げてきた、という解釈にもできますね」
「(火山とかにいるバサルモスが砂漠地帯に出現ってマジ?)そうですね。俺達が遭遇した個体はクルルヤックを嗾けてきたんですが、クルルヤックはそこまで強くないんですよね?過去に遭遇しても逃げれたモンスター、呼び寄せても自分がやられそうにはないモンスターを呼び出すと考えるんなら、砂原の外に逃げれない…いや、そこまで強くないから砂原へ逃げてきて居座ったんでしょうよ」
「そしてドスジャギィ或いはクルルヤック…いえ、縄張りを持つドスジャギィ達との争いが起きてクルルヤックを呼び寄せた。貴方の考えはこのようなところでしょうか、ヨウマさん」
「そっすね、声真似的にもクルルヤックが後から砂原に来たんじゃないかと」
「しかしドスジャギィ達にしても、一つの狩場に3体もいたのは不自然ですね。縄張りが幾重にも被ってもおかしくありません。
…クルペッコ同様、砂原へ逃げてきたのでしょうか…?」
「あー、言われてみれば確かに。もしかして、生息地の変化ってハナシですかね。それこそ百竜夜行みたいな多くのモンスターの生息地の移動みたいな…」
本来砂漠地帯に生息するボルボロスが寒冷地の洞窟にいたり、世界各地のリオレウスがいち地域へ大移動したという事例をスレで聞いた事がある耀真からすれば、十分あり得る事例だ。最も、これらは遥か彼方のアルカラ大陸での出来事だが。
「私は書士隊に属していないため断言はできませんが、その影響も少なからずあるかもしれませんね。事実、先述した砂原でのバサルモスの出現はカムラ近辺にて小規模の百竜夜行が再び発生し始めた頃と時期がほぼ同じなのです」
「百竜夜行の鎮圧と並行して原因の調査をしなけりゃ、もっと影響が出そうっすね…」
「そうですね、そういった意味でもカムラの現状は他人事では済まされないでしょう。
…とにかく。砂原は本来はメゼポルタの管轄外です、ドンドルマへの調査結果の報告・考察は私が代わって致します。皆さん此度はお疲れさまでした」
「そちらこそお疲れさまでした、ヤクモさん」
何かしらの影響で、既存の生態系に変化が生じている。その謎を解き明かすのもハンター達の役目。果たして、此度の乱戦の背景にある真実は如何なるものか。決して良い話ではないというのを本能的に察しながら思考に耽る耀真の表情はあまり浮かないものだった。
今回、体感だと戦闘は短めですがこのパーティは駆け出しながらも火力がそこらと比べ物にならんから早く終わっても仕方ないですよね?
モンハン派生作品の関連曲で真っ先に思いつくのは?
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『ふぁいっ!』
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『僕ら今日も生きている』
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