Monster Hunter Reincarnation 作:scp-114514
「ぅ、ぁ……」
グラビモス亜種の範囲攻撃を避けれなかった耀真は、ベースキャンプのベッドで意識を取り戻した。武器と防具は…目立った破損箇所は見られない。
「…すまん。まさかグラビモス亜種があのような行動も出来るとは思わなんだ」
起き上がった耀真に気付いたクルトアイズが、開口一番に謝る。
「いえ、気にしないでください。装備も無事でしたので」
「今回は控えめに戦闘に参加すると言っていたが…至近距離でもあんな厄介な攻撃をやるとはな。
方針展開だ、俺をパーティの戦力として見なした上で改めて立ち回りを考えようか」
「クルトアイズさんが本格的に介入するってなると…今回俺達を評価する話は流れてしまいますかね?」
「いや?そうでもないさ。この際だから話すが、俺が今回見るのは単に狩猟技術の良し悪しだけじゃない。如何にして即席のパーティメンバーを「使う」かという、役割を考えての指示もある」
「指示、ですか…」
「そう。改めて聞くが、君は今回俺とサイガ君にどういう指示を出すんだ?」
「…最優先として、腹の破壊をお願いします。アレを破壊さえすれば剣士でも戦えるので」
「ふむ…。して、サイガ君の方に出す指示は何かあるのか?グラビモスに安定して戦えそうなガンランスだが、立ち回りは変わったりしないかね?」
「それは俺も思ったな。なぁ耀真、俺は今まで通り普通に間近で攻撃すればいいか?」
「それはそうだが…クルトアイズさんの事を今まで以上に意識してほしい。ヘビィボウガンは機動力が無いし、ガードも出来ない。可能な限り、この人に注意を向けさせないようにしてくれ」
「つまり俺がクルトアイズさんのカバーをするってことだな!」
「それとクルトアイズさん。さっき落とし穴にはめた時、なんか変なリロードしてましたよね?アレなんですか?」
「『圧縮リロード』をしていたんだ。その名の通り複数の弾丸を圧縮して一つの弾丸としてリロードする事で、威力を大幅に上げた弾丸を撃てるのさ」
足を止めて連射で高火力を稼ぐ『しゃがみ撃ち』に対し、単発の射撃威力を大幅に上げたものが圧縮リロードだ。だがこれには当然、デメリットも存在する。
まず、複数の弾丸を圧縮する都合上弾の消費が激しい。そして射撃時の反動が非常に大きくなる。言うまでもなくモンスターに当てられなければ元も子もない。
射軸の強烈な修正は不可能な上に外した時やヒット数が稼げなかった場合のロスが極めて大きくなるが、逆に言えばこれを使いこなしているクルトアイズはギルドナイトの肩書に偽りなき実力者なのだ。
「その圧縮リロード、出来れば積極的に狙ってくれませんか?」
「弾丸の消費が激しくなるから俺が息切れしかねんからあまり使えんのだがな…。それに、反動も無視できない大きさだし…」
「なら、今回は俺がサポートします。罠にはめたり…後は、攻撃が通るようになったら足の部位破壊による転倒を狙います。多分これで圧縮リロードのチャンスを増やせますよ」
「動きを縛るってんなら、俺もスリンガーでうまい事やってやるぜ!」
「ふむ。そう動くならばこちらも都合がいいな。あとは準備を整えるだけだ。秘薬や携帯食料で体力とスタミナを増やしておけ。勿論、今のうちに砥石も使っておこうか」
「あ、その前にちょっと待ってください。一度、この狩場一帯を見回りに行かせてくれませんか?何か剣士でも使えるような手掛かりがあるのかもしれないので」
***
グラビモス亜種は既に、クルトアイズがペイント弾でマーキングさせたので居場所は割り出せる。ベースキャンプを出た3人は遭遇しないよう気をつけながら、遺群嶺の各エリアを探索していく。
今、彼らがいるのは湖があり、全域に水が満ちているエリア4。そこで耀真は青色の花びらを咲かしている草を見つけた。これは大社跡に行った時に採取したことがあるので知っている。
「おっ、流水草だ。これと手持ちのこれで…出来ました!」
それは葉に大量の水分を蓄える植物、流水草。新大陸、現大陸双方で生息が確認されているものの厳しい環境に弱いのか温暖湿潤な地域以外ではあまり採れないとされている。耀真はこれをLv1通常弾と調合して水冷弾を作り、更に同エリアを歩き回って流水草を他にも集め、手持ちの水冷弾を増やしていった。
「弾切れになったら俺が渡しますね。と言っても、流石にこのエリアだけじゃ最大数60個は集められませんでしたが…」
「いや、それでも俺の方で調合する手間を省いて補充できるのありがたい。使わせてもらうよ」
「しっかし、お前は今回調合書を持ってなかったよな?よくミスらないで出来たな」
「ウツシ教官から教えてもらったやり方は失敗しないのさ」
「…今、ウツシって言ったか?カムラの里のか?」
「え、ええ。あっちの里に行った時、あの人の指導を受けてハンターになったんですよ。
…クルトアイズさんもご存じなんですか?」
「知ってるも何も、あいつは俺達ギルドナイトの中では有名人さ。若くして教官職に就いただけじゃない。ヨウマ君も知ってるかもしれんが、あらゆる武器の扱いに長け、それらの強さを更に高める鉄蟲糸技の開発も行った。それに忍者のような役目も担っているらしい。こんな事が出来るギルドナイトはドンドルマにはいないほどの逸材だ」
「そんなに…すげーヒトがカムラにいんのか…」
「ウツシについてはこのくらいでいいだろう。引き続き探索を続けるぞ」
***
「こんなに移動するのが大変な狩場だなんて聞いてねぇよ…」
ようやく、縦に長い全てのエリアの探索が終わった。先程のエリア4ではミズタマリゴケ。落雷の頻度が多い高高度のエリア8では雷毛コロガシ。そして今彼らがいる、バルファルクの寝床とされる遺群嶺頂上のエリア9では泥玉コロガシ。とにかく環境生物のバリエーションが多かった。
「泥玉コロガシがあれば、グラビモス亜種の堅牢な甲殻も何とかなりそうだ」
「俺のスリンガーに装填できるミズタマリゴケが見つかったのもラッキーだぜ!
…しっかし、なんで色んな種類の環境生物を発見できるんスかね…?」
「ここは灼熱や極寒の環境でしか生きられないモンスターを除けば、多種多様なモンスターの出現情報が寄せられている。それだけ住み心地のいい場所であるならば、小型の生物にとっても同様なのかもしれないな」
そしてクルトアイズはまだ効果が持続しているペイントの匂いを確認し、耀真と祭我に向き直る。
「グラビモス亜種はエリア5にいる。エリア8の端から飛び降りるぞ、ついてこい」
「リベンジ開始、ですね」
「狩猟再開だ!」
***
それは強者の余裕というものだろうか。グラビモス亜種はエリア5の天井から降ってきた3人の着地した音にも目もくれることなく、鉱脈に顔を突っ込んで食事を続けている。
「圧縮リロードでお願いします、クルトアイズさん!」
「隙を晒してくれたことには感謝しているよ。そら、お礼だ」
開幕のゴングとなったのは、クルトアイズのバストンウォーロックから放たれた圧縮水冷弾。背中に強烈な衝撃を受けたグラビモス亜種は3人の方に振り向き、熱線で薙ぎ払おうとする。
「その動きは見切ってる!」
「ガードできれば何の問題もねぇのさ!」
ガードで受け流した祭我はそのまま懐に回り込み、回避をした耀真はさっそくシビレ罠を設置する。
「クルトアイズさんは…」
「おいおい、俺を誰だと思っているんだ?」
クルトアイズの方は、耀真からしてみればただでさえ剣士よりも打たれ弱く、機動性も劣るヘビィボウガンを使っているが故に不安感をぬぐえなかったが…非常に長いきりもみ回避でやり過ごしており、直後にバストンウォーロックを構え直して腹に射撃をしている。絶対回避【臨戦】を繰り出したのだ。
「これが上級者の立ち回りってもんなのかね」
培った洞察力、経験、技術。そしてそれらを基にした確かな我流の立ち回り。あらゆるものでクルトアイズは武器の弱さを補い、自らより遥かに大きな竜と渡り合っている。スペックや能力に物を言わせたライダーに変身して戦ってきた時期が長い耀真としては、彼の在り方は見習わなくてはいけないと感じた。
「俺もまだまだケツの青いガキ、ってか…」
「ん?どうかしたか?」
「いえ、何でもないです。俺も本格的に参加しないと…」
———ヒュン、パシャンッ!
「ゴワアアアッ!?」
耀真が泥玉コロガシの泥団子を投げつけ、グラビモス亜種が大きく怯むと共にずぶ濡れになる。その隙に右脚に桜花鉄蟲気刃斬を当てると、普通の斬撃を当てた時の音が返ってきた。手応えは今まで以上のものだった。
「よし、これで巻き返せる!」
「俺も積極的にイケるチャンスだぜ!」
祭我も右脚に突きと砲撃を交えたコンボからフルバーストを敢行し、グラビモス亜種の右脚から甲殻が剥がれ落ちた。
「グゴガァアアッ⁉」
部位破壊の衝撃で転倒したグラビモス亜種。体表が乾き始めたのを見た耀真は、更に攻撃を仕掛ける事を決めた。
「こいつも喰らいやがれ!」
「俺も協力するぜ!」
グラビモス亜種の腹の甲殻に、イニティキャノンの突きと長蒼刀【鎌将軍】の桜花気刃斬が叩き込まれる。甲殻はまだ割れなかったがヒビが生まれた。部位破壊が近い証だ。
「ギャガアアアア—————ッ!」
怒り、咆哮するグラビモス亜種は尻尾を大きく振り上げて叩きつけてくる。
「おっぶぇ⁉」
「あでっ!」
咆哮で動きを縛られてしまった耀真と祭我は、上からの重みの乗った一撃を避けきれずに吹き飛んでしまう。そこに追い打ちでグラビモス亜種が熱線を放とうとした時…
「これはまずいな。少し本気で行かせてもらう」
ズガァアアアンッ!
カランッと乾いた金属音が響いた直後、グラビモス亜種の頭が大爆発に巻き込まれた。その派手さに違わず相当なダメージを受けたのかグラビモス亜種は頭部の甲殻を大きく欠損させて怯む。
「どうだい?ヘビィボウガンの狩技『スーパーノヴァ』は」
「「ホンット助かりました!」」
2人の安全を確認したクルトアイズは、ジェスチャーでシビレ罠の元へ来るように指示。耀真がグラビモス亜種を誘導するように罠に向かって走り、祭我が彼を守るようにガードをしながら後退していく。
「おい、ヤツの挙動に気をつけろ!」
「んなっ…⁉」
クルトアイズの警告の直後、全速力で走る耀真の足元が焦げた。
「キィィアアッ!キィアッ!」
背後を見れば、グラビモス亜種がのそのそ歩きながら耀真を狙って熱線を連射して迫ってきている。
動きこそ緩慢だが、狙いがかなり正確なせいで全く安心が出来ない。
「後ろに回り込めば…いや、そんな暇ない!」
「雷毛コロガシの玉を投げろ!早く!」
クルトアイズの指示を受け、耀真は大急ぎで猟具生物カゴを漁って雷毛コロガシの持っていた玉を投げつけると、クルトアイズが水冷弾から反動の小さいLv1通常弾に切り替え、頭を狙って連射していく。
「頭を狙え!雷属性やられのモンスターは気絶しやすい!」
「了解っス!」
祭我もクラッチクローでグラビモス亜種の頭にしがみつき、渾身の力でイニティキャノンの砲口を突き刺して砲撃を行った。
「ゴガアアアアッ⁉」
ハンターと同じように感電状態でのダメージを受けたことにより、グラビモス亜種はスタン。腹にバストンウォーロックの圧縮水冷弾とイニティキャノンの竜撃砲が炸裂し、ようやく甲殻が割れて無防備な部位が露出した。
「ここまでくれば俺も本格的に戦える!」
耀真も長蒼刀【鎌将軍】を抜刀して甲殻が剥がれた腹部に斬りかかっていくが、あまり攻撃は出来なかった。
気絶から回復したグラビモス亜種が、隣のエリアへと移動したからだ。
「シビレ罠が無駄になっちゃったよ…」
「気にするな。こういう時もある」
「移動先は地図によれば…エリア6か」
「いつの間にかペイントの効果が消えてる。もっかいやらないと」
「そうだな。いや待て、念のため他のモンスターの居場所も…」
そう言って耀真は千里眼の薬を飲み、遺群嶺にいるモンスターの居場所を把握する。
「…すいません、俺だけちょっと遅れて合流しますね。あと、補充分の水冷弾渡します」
「あん?どうかしたのか耀真?」
「ちょっと、色々とな」
「ほう?」
***
玉藻なす 浮かぶ宙狐の 艶姿
高雅淡江 行逢の竜
***
空模様が悪く、比較的暗くて狭いエリア6。グラビモス亜種に張り付いている祭我と、後方で翼を狙って水冷弾を撃つクルトアイズの元に耀真がやってきた。それも、タマミツネを操竜して。
「お待たせしました!」
「そいつは…タマミツネか!」
耀真は先ほど千里眼の薬を飲んだ時、隣のエリア4にモンスターがいることに気づいた。そして向かった先にいたタマミツネに鉄蟲糸技を当てて操竜状態にさせたのである。
「そらよっ!」
鉄蟲糸で操られたタマミツネが泡を飛ばす。滑液によって生み出されたこの泡を浴びたグラビモス亜種は行動の自由を奪われ、まともに動くこともできずにバランスを崩して転倒してしまう。
「へっ、重い装甲が仇になってんじゃねえの!」
続けて巨大な泡を飛ばして更に行動を縛ったところに、長い尻尾を叩きつけた。豊かな体毛によって一見優しく柔らかな印象を受けるが、その一撃でグラビモス亜種の翼から甲殻が剥がれたことから非常に強靭であることが伺える。
ブッッシャアア—————ッ!!
今度は、体内で圧縮した高圧水流のブレスを正面に、続けて左から右に飛ばした。グラビモス亜種が水属性やられになり、攻撃のチャンスが再び訪れた。
「もうそろそろ大技喰らわせてやる!」
そして2連続でサイドステップしながら泡で囲み、尻尾を叩きつけてから跳躍、勢いよくボディプレスをかまして大打撃を与える。
「さーて、今のうちに練気を溜めまくっとかないとな!」
操竜大技によりダウンしたグラビモス亜種。その弱点の腹に、耀真も加わって再び総攻撃が叩き込まれる。水属性やられによる肉質の軟化と、弱点の水属性攻撃。これでかなり体力が削れたらしく、起き上がったグラビモス亜種は足を引きずってエリア5へ逃げようとする。
「そういや、これがあったな。使っとくか!」
クラッチクローで再び頭にしがみついた祭我が、スリンガーでミズタマリゴケを勢いよく射出して水属性ダメージを与えるとともに強烈なショックによってグラビモス亜種を壁へ突進、転倒させた。
「これで終わりにしてやるぜ」
「おっと、それをするんなら俺は別の場所を叩くとしようか」
翔蟲は先程のダウン時に桜花鉄蟲気刃斬を使いまくったおかげでクールダウン中で、使えない。だが今繰り出せる大技はまだある。
「らああっ!」
体の周囲を振り回すようにして気刃斬りを放ち、さらに逆回転でもう一度。そして手首を使って切っ先を捻るような小さく素早い2連撃を繰り出し、頭上に力一杯振り上げてから全体重を乗せて勢いよく踏み込み、長蒼刀【鎌将軍】を叩きつける。
「ぬぅぅん!」
そして耀真は最後に、身体を横回転させながら踏みこみ、一瞬のうちに広範囲を薙ぎ払った。
「ゴッ、ガガガァッ…」
「やっぱ、こうして見ると映えるものだぜ、気刃大回転斬りってよ。…あっ、討伐できた」
***
グラビモス亜種から素材を剥ぎ取った3人は、急ぎの依頼であるがゆえに足早に龍識船へと帰還し、船内で装備のメンテナンスをしながら雑談をしている。
「…クルトアイズさん、今回俺らを見てどうでした?」
「そうだな…剣士泣かせのグラビモス亜種を相手に、即席のパーティでの立ち回りやメンバーへの指示。不安が残らんでもなかったが、よく出来た方だと思っているぞ」
「マジですか!?」
「あとは場数を踏むのみだろうか。未知のモンスターに対してただ自分の武器やアイテム、技量、知識だけで対応するんじゃない。パーティメンバーの特徴、狩場の状況…そういうものを経験を積んで理解することだな。そうすれば自然とアドバンテージに繋げていけるだろう」
「ご指導、ありがとうございます」
「…さーて、帰ったら資料の見直しをしなければな。グラビモス亜種があんな行動をしてくるとなれば、原種でも同様かもしれない。各地のギルドにも言って、狩猟難易度も変更させる必要もあるだろう」
「見直し、ですか?」
「そうそう見るようなモンスターでもないとはいえ、早いうちに修正しておかないと犠牲が出かねない。下位クエストから出していいモンスターじゃなかったからな。
それに近いうちに未踏の領域へ調査隊も出すらしいし…今回の調査報告は重要になる」
「未踏の領域、ですか…」
クルトアイズの言動から、耀真は色々と考えさせられる。
狩場を調査し、拠点など最低限度の整備をするギルド。武具やアイテムを融通してくれる商人や職人。こうしてここにいることだけでも、非常に多くの者たちに支えられているのだ。未開拓の地で一から興していった新大陸古龍調査団も、クルトアイズの言う未踏の領域の調査隊も、相当な道を辿るものだろう。
未踏の領域への調査隊というのは、新作ワイルズの主人公が属する禁足地調査団のことを指しています。絶対彼らも新大陸調査団に抜擢されたメンバーのように相当な実力者かもしれないと思います。
ノベル版モンハンって知ってる?
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そうだよ(肯定)
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知らねーよ、そんなの(辛辣)