独身魔王が婚活を仕掛けてきた! 作:はふへェ!
俺には使命がある。
勇者として、人類を救うため魔王を倒すこと。
長い長い旅の果て。ついに魔王の下に辿り着いて───
「よく来たな勇者!子供は何人欲しい!?」
耳を疑った。
「ま、魔王め!覚悟しろ!!」
とりあえず言ってみたが締まらない。
混乱が脳内を支配する。
え、子供?どういうことだ???
いや、そんな事より決戦だ!最後の戦いだ!と頭を振り自分を奮起させる。
しかし、当の魔王はまるで生娘の様に赤面でプルプルと震えていた。
え、なにこの反応。
「か、かかかか覚悟しろなんて!一体私をどうするつもりだ!!ああ、分かったぞ!もうそれは足腰立たないくらいドチュドチュ♡ってして『俺たちの子供で騎士団作ろうぜ?』ってするんだろ!!!」
「なに言ってんだお前!?」
やぁもー♡と言いながらクネクネとどこか嬉しげに身を捩らせる魔王。こちらの声が届いていないのか、口から「子供の名前は〜」なんてセリフが延々と垂れ流れている。
唯一の救いは、魔王が人の基準で美しいとされる容姿であったことぐらいだ。
まあ、いくら美人でもこの場面に遭遇すれば百年の恋も冷めるだろうが。
何というか、頭が痛い……いざ人類と魔族の最後の戦だ、と思って気張って来たらこのザマだ。
悪夢かこれは……
「勇者よ、よくぞ来てくれた」
「うおぉ!?」
頭を抱えていると、後ろから声をかけられる。
振り向くと、いかにも魔法使いといった様相のローブを纏った老婆たちが居た。
増援か!?と慌てて剣を構えるも、老婆たちは魔法を撃つような動きは見られない。
……戦闘をしに来たわけじゃないのか?
「驚かせてすまんの。ワシらは魔王様の側近……なぜ魔王様が貴殿と契りたいと考えているのか説明しよう」
契りたいとか言うな。頭痛が増すだろうが。
「まず前提としてじゃが、魔族とは強いものを好む…と言うことは知っておるかの?」
「……まあ、噂程度には」
「うむ。さらに、魔王とは魔族の中で一番強いものがなるということは?」
「いや、それは知らなかったな」
魔王と言っても王とつくならもうちょっと血筋や政治的な意味合いの強いものだと思っていた。
いくら強さを尊ぶ文化があるといっても、最強の魔族が魔王というのはあまりにも脳筋すぎる。
「端的に言うと、魔族は恋愛に『強さ』も求める。そんな中、最強の魔王様が自分よりも遥かに弱い魔族に惹かれると?」
「あー……」
なんとなく、言わんとすることは分かった。
つまり、魔族最強の魔王にとって魔族は恋愛対象外なのか。
「魔王様は全魔族にとって高嶺の花。武力、知力、魔力……全てにおいて誰も寄せ付けぬ孤高の存在。魔王として完璧と言えよう」
あれが?
今まさに「新婚旅行は〜」とか言って妄想の世界にトリップしてるあれが高嶺の花か?
「じゃが、それが災いした。魔王様に婚約を申し込む者がおらんかった。『魔王様と自分程度が釣り合うわけがない』と婚約どころかお見合いすら断るものが続出……遂には、婚約者候補すら出来ず仕舞い」
「そんなに力の差があるのか」
「仮に四天王が一斉にかかってきても1分も経たぬ間に倒せる程度には強いのう」
魔王強すぎじゃないか?
四天王といえば、俺の記憶の中で苦戦を強いられた最強格の魔族だ。
即死攻撃は当たり前、街を覆うほどの範囲攻撃に自己蘇生、魔法無効や飛び道具無効なんていうものもあった。
そんな卑怯くさい四天王が総がかりで1分も保たない?強さのバランスがおかしくないか?
「誰も寄せ付けず、誰にも縛られない孤高で完璧な魔王様。そう思われていたが、魔王様も魔の子であった。結婚願望がお持ちであったのじゃ」
まあ、それは見れば分かる。
というか、逆にアレで結婚願望が無い方が怖い。
「婚約者不在の魔王様。そんなもの気にしていないと思っておったのじゃが……ワシらは聞いてしまったのじゃ。魔王様の嘆きを」
「トイレで泣いている姿が余りにも……っ!」
「思い出すだけで涙が……っ!」
勝手に盛り上がり泣き始める側近たち。
いや、憐れすぎるだろ……というか、なんでトイレで泣いてんだよ……
「それを知った時、ワシらはある決断をしたのじゃ……『魔族に魔王様より強いものが居ないのなら、人類に賭けるしか無い』と」
……ん?『人類に賭けるしか無い』?
「魔王様に相応しい、人類最強の誰かを。即ち貴殿、勇者を待っておったのじゃ」
「……人類と魔族の争いって」
「うむ、魔王様の伴侶探しじゃ」
「うそだろ……マジかよ……」
やりやがった……婚活のために人類に喧嘩ふっかけたのかよ魔族……
……少し冷静になろう。
そもそも、四天王総掛かりでも倒せないようなヤツに戦って無事の保証は無い。むしろ負ける可能性の方が高いだろう。
と、来れば平和的解決手段として結婚は意外とア───
「んんっ……と、いうわけで勇者!私と結婚して幸せな家庭を築こうじゃな───」
「お断りします」
「」
「魔王様ァー!?」
食い気味に断られたのがよほどショックなのか、彫刻のように固まる魔王。
しまった、つい反射的に断ってしまった。
でもなぁ……流石に赤面ではぁはぁ言って妄想癖があるのはちょっと……いくら美人でもキツいかな……
それに、こっちにも事情というものがある。急に結婚を申し込まれても困る。
「勇者よ、そんなこと言わずに……まずは婚約だけでも!」
「いや、しかしな……まずは婚約だけでも?」
まあ、魔王と婚約して停戦することは魅力的な選択肢ではある。
四天王を相手に無双できる魔王と戦って無事に勝てると思うほどほど愉快な頭をしていない。無傷でこの争いが終わるなら得でしかないだろう。
だが、そんな心算よりも拒否感が強いというか……はっきり言うとアレと生活するのはキツい。いくら見た目が良くてもキツい。
出会って数分しか経っていないが、即断できる程度に魔王は無い。
一緒に生活なんてすれば胃に穴が開くんじゃないか?
「魔王様、お気を確かに!!」
「はっ!魔王である私が光の速さでフラれた気がするが、なんだ夢か……」
現実だよ。
「良いですか魔王様。勇者は魔族ではなく人類、こちらから歩み寄らねば振り向きませぬ」
「うぅ……だが、歩み寄ると言ってもだな……」
「まずは魔王様のことを知ってもらわねばなりませぬ。自己紹介をして魔王様がどれほど優良物件なのか知ってもらいましょうぞ!」
「じ、自己紹介……入学式……血のホームルーム事件……うっ、頭が」
不安そうにしながら、視線を右へ左へと慌ただしく泳がせる。今にも吐きそうなほどに顔色も悪い。
……なんだか物騒な言葉が聞こえた気がするが、大丈夫なのか?色んな意味で。
「なぁに、この勇者程度なら魔王様の魅力でイチコロですぞ!決して人類にウケのいい顔立ちというわけでもありませんし、恋愛経験も浅いはず!余裕でいけますぞ!」
「そ、そうか……!」
今すぐ人類と魔族の決戦を始めてやろうかババア。
■■■
「お茶をお持ちしましたぞ。勇者、紅茶は飲めるかの?」
「ああ」
「じゃあ、ワシは失礼して……」
別室に移動し、お互いに向かい合う様に座る。
婚約云々はともかくとして、和平につながるかも知れないし話くらいはするかと席に着いたはいいが……
「あ、えっと……じ、自己紹介……え?なにからすれば……?」
魔王と視線が合わない。うつむき気味で視線を右往左往させて、脂汗を滲ませながらなにやらブツブツと言っている。
「魔王様、自己紹介ですよ自己紹介。まずは名前から」
「うっ、あ……ま、魔王プロメアである」
「勇者クリフだ」
「「………」」
気まずい……
魔王が話を振ってくるものだと思って黙っていても一向に話しかけてこない。
こちらから話題を切り出そうとしても「あ……」「う……」とうめく様に口をモゴモゴさせ話し出す素振りをするものだから話しかけることもできない。
「……自分を嫁にすればどのような恩恵があるのか、アピールするのです」
老婆はこの重苦しい状況で何か察したのか、軽くため息を吐き魔王へ耳打ちをする。
「お、恩恵?」
「他の女子よりも優れていると思わせるのです」
「なるほど……」
「では、ワシはこれで……」
なにやらいい助言をもらったのか、「恩恵…アピール……」と呟き考え込む魔王。
それまでの混乱が解消された様で、顔色も良くなってる。
良かった、これでまともに会話ができ───
「勇者!」
「な、なんだ」
「私を嫁にすれば、毎日のように手合わせができるぞ!」
「刑罰か?」
思わず本音が溢れてしまったが、仕方がないだろう。
何が好き好んで最強の魔族と毎日手合わせしなきゃならないんだ……こっちは戦闘狂じゃ無いんだぞ。
「ふふっ、妻としては武器の類を使える様にしておいた方がいいのだろうが、私は生憎武器と相性が悪くてな……魔法と体術なら任せてほしい。四天王程度なら一撃で倒せるからな」
むふー!と誇らしげに胸を張っているが、死刑宣告にしか聞こえない。
もし魔王を嫁にすれば、自宅より最前線の方が安全地帯になりそうだ。
「あと、この身体も自慢なんだ」
「ブフッ!」
そんな急な話の切り出し方に咽せてしまう。
豊かな胸に手を当てて、顔を赤らめる魔王。
思わず身体に視線が行く。
品のある艶やかな銀の髪、玉のように美しい小麦色の肌、鮮血のような紅い瞳。改めて見ると、先ほどの奇行を忘れてしまいそうになるほどの美貌だが……そんなこと自分で言うか普通!?
「ゴホッゴホッ……い、いきなり何を……!」
「この身体は最強魔法を打ち払い、万物を破断すると言う魔剣グラムの一撃をも受け止めることができる。この拳は世界一硬い鉱石であるアダマンタイトを叩き割り、この脚は山河を踏み砕く。ふふ、自画自賛する様で少し恥ずかしいな……」
性能の方かよ!!!!
しかも恐ろしいまでの性能だ。夫婦喧嘩をしようものなら土下座以外の選択肢を選べないだろう。家庭は魔王に支配され、圧政が敷かれる絶望の未来しか見えない。
ダメだ、話を聞けば聞くほど断りたい要素が増えていく……魔王との夫婦生活を思い描くだけで頭痛がする。
もう少しこう、普通のものはないのか?普通の───
「他は……そうだな。意外かも知れないが、料理が趣味なんだ」
そうそう、そういう普通の…………………
普通だ!?おお、おお!ようやく俺が理解ができる話が来た!!
「料理か、いい趣味だと思う」
「!そ、そうか……私と結婚すれば…その、料理当番は任せて欲しい」
そうだ、こういうのでいいんだ。こういう普通の日常が───
「毎日火龍の心臓焼きを振る舞おう!」
違う、そうじゃない。
「……火龍?」
「ああ、私はなんでもこだわってしまう癖があってな……料理も素材から調達する様にしているんだ」
火龍。
Sランク冒険者が5人フルパーティで挑むような最強格の魔物。
近くを飛んだだけで都市に壊滅的な被害を出したという逸話があるほどの怪物だ。
無論、そんな魔物の素材など流通しているわけがない。持ってる人も手放そうとはしないだろうから、金を積んで買えるような代物でも無い。
火龍の素材を手に入れる手段はひとつ。直接狩りに行くことだ。
「水竜やクラーケンも美味しいのだが、毎日調達するとなると火龍が簡単でな……無論、食べたいというなら用意するのもやぶさかではないがな!」
もしかしなくても趣味、料理じゃなくて狩猟じゃないか?
「ご歓談の中失礼します、お茶菓子をお持ちしました」
頭を抱えていると、老婆が入ってきた。
元はと言えばこのババアの入れ知恵のせいだ。一体どんな余計なことを吹き込んだんだ……
「ほほ、魔王様の楽しげな声が部屋の外まで聞こえてましたぞ。どうやら上手く行ってるご様子で」
「ああ!全力でアピールしたからな…これで振り向かないヤツがいるだろうか?いいや、いない!」
この時、魔王と老婆の間には確かな感触、成功の未来が見えていた。
しかし、それは違う。
端的に言えば、魔王は勘違いしていた。
人類と魔族の差を。魔族の中でも異端、極端な魔王の感性は常人のそれとはズレている事を。
(これだけ強さをアピールして、振り向かないヤツはいない!!)
『強さ』は魔族の恋愛に置いて重要な要素である。
しかし、どう転んでもただの一要素にしかすぎない。顔がいい、金がある、頭がいい……そういう要素の一つなのだ。
魔族の誰もが重要視すると言っても、「できれば強ければいいな〜」程度の認識。魔王の「私より強いやつ以外興味はない」というのは魔族の中でも極めて異端の存在だ。
老婆は魔王の感性のズレを知っていた。
しかし、聡明な魔王様は人類の尺度に合わせてアピールしたと思い込んだ。
そんな違う思いを胸に、自信満々の表情で頷き合う。
「それで……どうだ、勇者?」
「……どうだとは?」
「自分で言うのもなんだが、私ほどの良い嫁というのはいないだろう?さあ、勇者よ!私とイチャラブの新婚生活を始め───」
「お断りします」
「」
「魔王様ァー!?」
よって、この惨劇は必然である。
絶対に成功すると思っていたのか、またも固まってしまう魔王。
俺としては、なぜアレで成功すると思っていたのか疑問を抱かざるを得ないくらいには酷い内容だった……要約すれば「私は強い!」しか言ってないからな。
「ゆ、勇者よ!ちょっと答えを急ぎすぎではないかの!?まだお互い分かってないだけじゃ!ほら、だからここは一つ、物は試しと言うじゃろ!?」
「いや、アレはちょっと……」
「わ、わたっ、わた───」
「ん?」
壊れた
ふと目を向けると、死んだ目をした魔王からつぅ…と涙が静かに頬を伝い流れ落ちていた。
「わたしじゃっ、やっ、やっぱりっ、ダメ……!」
「魔王様ァー!!」
引き攣った嗚咽が広い空間に嫌に響く。
そ、そこまで本気で泣かれるとは思わなかったというか……
なんだか悪いことをした気になる。人類の仇敵、魔王相手なのに胸が痛い。
「私、やっぱり魅力なんて無いんだ……思えば、学生時代から友達少なかった気がする……ふへっ、そうか、私じゃダメか……へへっ……」
「魔王様お気を確かに!」
「あれ?そういえば前のパーティで『久しぶりに友と会えて嬉しい』って言ったら『私ごときに魔王様から友と呼ばれるなど思いもしませんでした、望外の喜びです』って言われたんだが、遠回しに『お前と友達じゃないけど?』って言われた?あれ?人望もない?」
机に顔を伏せ、うわ言の様に呟く魔王の姿は哀愁が漂う。
なんというか、限界で保ってた人に俺がとどめを刺してしまったような気まずさがある……
というよりも、魔王が色んな意味で可哀想すぎる……魔族で強すぎるとこうなるのか……
「知り合いがな、結婚報告や招待状を送ってくるんだ……何年も前から、何通も……後輩も先輩も同僚も部下も親戚も!みーんな一言挨拶書いてくださいってくるんだ!!ははっ、私も書いて欲しいなぁー!!」
「お労しや魔王様……」
泣いていると思ったら今度は虚空を見つめて壊れたように笑いだした。
「家族なんて『世継ぎってどうなってるの?』と気軽に傷口を抉ってくるし、『早く孫が見たい』とかさらに塩を塗ってくる!彼氏なんて生まれてこの方出来たことないのにな!!ははっ、ははははは!!!!」
「くっ……!」
魔王の言葉についに耐えきれず顔に手を当てて震え出す老婆。
「思えば昔から仕事ばっかりしてた気がする……生徒会長とか公務とか休日返上してやってたなぁ……ははっ、彼氏ができないわけだ。いや、仕事が恋人というやつか?はは!やった!恋人ができた!!あはははは!!」
連鎖して黒歴史が掘り返されたのか、老婆のフォローも虚しくどんどん沈んでいく魔王。
ブツブツと可哀想なエピソードが魔王の口から無限に出てくる。溜まりに溜まったものが噴き出しているんだろう。
いや、もう限界がすぎる。なんでこうなるまで放っておいたんだ。
「ゆ、勇者!勇者!」
「げっ」
「『げっ』とはなんじゃ!ほら、貴殿も魔王様を慰めい!」
「そんなこと言われてもな……」
「貴殿があんな一刀両断するからこうなったんじゃろ!泣きやますぐらい手伝わんか!」
「うぐっ……」
そう言われると、弱い。
魔王相手とは言え、自分の言葉が原因でここまで泣かせてしまった事に少し罪悪感はある。
「だ、だが俺は勇者だぞ?魔王を慰めるのは変じゃないか?」
「魔王様は一度凹むと長いんじゃ……少しでいいから協力しとくれ……」
「はぁ……分かった、少しだけだぞ……」
まあ、原因が俺と言ってしまえばそうだし、泣かせた手前後味も悪い。それに、魔王が泣き止んでくれないとこっちも動きようがない。
……魔王を慰める勇者とかいう謎の構図になっているのはひとまず置いておこう。
「あー、その……そんなに落ち込むな。お前なら大丈夫だと思うぞ」
「そんな抽象的な褒め言葉ではなく、もっと具体的に!」
注文増やすんじゃないババア!!
「えっと、そうだな……容姿は整っているから第一印象で嫌われる事も少ないはずだし、魔王という立場で仕事ができるというのは好感を持たれると思うぞ!」
なんとか言葉を尽くして褒めてみるも、嗚咽が止まる様子はない。
「強さを褒めるのが効果的じゃぞ」
「あー、強い!めっちゃすごい!最強!!魔族の中の魔族!!」
「もっと讃える感じで!!」
「さっきから指示ばっかり出してないで、お前も慰めろよババア!!」
何でこうなった……
魔王をあやす勇者ってなんだ……
こうして、魔王をあの手この手で慰め続ける。
時にリズミカルに、時に情熱的に、時に囁くように。
途中、「何やってんだろ俺……」と正気を取り戻しかけたが、なんとか泣き止ますことには成功した。
「はぁ、はぁ……ここまで褒め倒せば、流石に大丈夫だろ……大丈夫だよな?」
どれだけ時間が経ったか分からないが、とりあえずは疲れた……もう宿に帰って寝たい……
これでもう一度褒めろとかもう無理だ。
というか、序盤で褒め言葉なんて尽きて最終的には「すごい!強い!すごい!賢い!」なんてバカ丸出しの言葉しか出てこなかったしな。
「……ねえ」
「!な、なんだ……」
俯いたまま、少し枯れ気味の声で魔王が呼びかけてくる。
こ、今度はなんだ……褒め言葉はもう無いぞ!ええい、ババアどもは俺を盾にするな!押すな!散れっ!!
「……わたし、かわいい?」
「?ああ、容姿は整っているとは思うが……」
「わたし、すごい?」
「まあ、魔王だし実際すごいだろ」
「わたし、つよい?」
「四天王を一撃で倒せるやつが強くなかったらなんなんだ」
ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ魔王。
質問の意図がよく分からないが、嘘をつく意味もないので率直に答えておく。
すると、机から上がった顔には目には光が戻っており顔色が良い。
しかし、どこか赤らんだ顔をして、恥じらう乙女の様な表情でチラチラとこっちを見てくる。
「あ、愛の告白……!」
「は?」
「私の事を好きじゃないと、あんなに褒め言葉なんて出ないはずだ!」
「お、おう……?」
「ならこれはもう告白と同義だろう!?さあ、結婚しよう!純白のドレス!幸せな家庭!安心の老後!地獄の挨拶ラッシュよさようなら!!」
ハハハ!と高らかに笑いながら小躍りをする魔王。どこから取り出したのか花びらを撒く老婆たち。
……褒め言葉の中のどれが告白と相当するかは分からないし、何を以って魔王が告白されたと思っているのかも分からない。
もしかして、ババアに嵌められた?いや、あの態度は本気で困ってた感じだし……よく見ると、側近たちが少しヒソヒソと耳打ちしあって首を傾げていた。その様子を見るに、魔王の中で何かが繋がって告白と捉えられたか……
……色々と不可解な点はあるが、とりあえず言うべき事は一つ。
「結婚は無理だぞ」
「何を言うんだ、ここまでして責任逃れはダメだぞ♡」
「いや、俺そういう相手がいるから。魔王と結婚はそもそも無理だぞ」
空気が凍った。
魔王も老婆も時が止まった様にその場から動かない。舞い散る花びらが悲しげに地面に落ちる。
「……え?は?な、何の冗談だ一体?」
「あれ、言ってなかったか?俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」
懐から出した写真には、勇者と可愛らしい少女が寄り添う様に立つ姿が写っていた。
魔王には見覚えがあった。国王の娘、第三王女。自分よりか弱く、蝶よ花よと育てられたお姫様。
「王様には色々と恩もあるし、断るのも難しくてな……ということで、お前と結婚はできないんだ。まあ、俺より強いやつなんて人類にいくらでも───」
「勇者、知っているか?」
「うん?」
平坦な、感情を感じない声で魔王が喋る。
「デスペナルティと言って、蘇生魔法を受けた者は強さの階位が下がるんだ」
「ああ、知っているが……」
それがどうした、と言おうとした瞬間、魔王からとてつもない魔力が吹き荒れる。
「ここから逃げられないくらいに蘇生をすれば、私と結婚する他なくなるよな?」
「おっ、おまっ、それはダメだろう!!」
「もう手段は選ばん……なんたって私は魔王だからな!さあ勇者よ───子供は何人欲しい?」
「う、うおおおお!!死んでたまるか!!」
ゆうしゃの (色んな意味で)ひけない たたかいが はじまった!!
魔王のイメージは、『褐色巨乳ケツデカデカ角疲れ目ポンコツ行き遅れ気味OL風お姉さん』です。対戦よろしくお願いします。
修正点
・名前書き忘れてたので追記