独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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待たせたな……!

待たせすぎたかもしれません。

書きました。


第16話 常識とは非常識である

朝食を食べ終えると、休む間もなく部屋を飛び出た。目的地は魔王の部屋。

 

本当は魔王なんて訪ねたくないが、問題児にパーティーで妙な事をしないよう言い含めなければならない。問題が起きてからだと遅いのだ。

一番良いのは、魔王をパーティーに参加させない事だ。まだ魔王の耳にパーティーの件が伝わってなければ何とでもできる。

魔王を不参加させる事で、貴族たちにネチネチ文句を言われる程度我慢しよう。それよりも、魔王がパーティーに参加した時のフォローの方が圧倒的に疲れる!

 

せめてパーティーまでゆっくりしようと思っていたのに……くっ、胃がキリキリしてきた……!

 

「おい、いるか。俺だ!」

 

ドンドン、とノックをする。

朝だが決闘の時みたく早朝と言うわけでもない。流石に起きてるだろう。

 

「おお、来てくれたのか!入ってくれ!」

 

朝から妙にテンションが高いな……

少し訝しみながらも扉を開ける。

すると、そこには───

 

 

「どうだ勇者、似合うか?」

 

 

扉を開けると、中には薄紫のタイトなドレスを着た魔王がいた。

くるくると回りながらドレスを見せつけてくる姿を見て、俺は確信した。

 

「遅かったか……!」

 

膝から崩れ落ち、片手で目を覆う。

コイツ、パーティーに参加する気満々だ……

 

「な、なあ。どうしたんだ?そんなに似合ってなかったか……?」

「いや……今後のことを考えたら少し胃がな……」

「大丈夫か?体は大切にしないとだめだぞ」

 

心配そうにこちらを覗いているが、俺の胃に大ダメージを与えている大半の原因はお前だ。

 

「それよりも、パーティー、参加するのか?お前の存在を隠すなら不参加の方が良くないか?」

「ん?当然参加するぞ?」

「そうか……そうかぁー……」

 

座り込んで朝から陰鬱な様子で長いため息を吐く俺に、魔王は不思議そうな顔をした。

一応、僅かな望みを掛けて不参加の意思を聞いてみたがやはりダメか。

 

「というよりも、参加しないとダメだろう?」

「いや、確か強制では無かったはずだが……」

「それはそうなのだが……肩書きは伏せているものの、私が他国の王という事に代わりはない。そして、私の存在を知っている者がいる以上、不誠実な真似はできない。それに、後から私の存在を明かした際、妙な言いがかりはなるべく減らしておきたいからな。そういう理由で、パーティーには参加しなければならないんだ」

「そ、そうか……」

 

思ってた以上に真面目な理由があって驚いた。

そうか……そうだよな。一応、こんなのでも王だ。外交上の立場があって、それ相応の振る舞いが求められる。

そうなると、俺の都合で不参加を強要する訳にもいかないな……不安は残るが仕方ないか。今回はフォローに回るしかなさそうだ。

 

「それで、急いで来てたようだが、私に何か用事が……はっ!よ、夜ならまだしも、こんな朝からなんて……!寝込みを襲うにしても、もう少しムードというものをだな……!」

「そんな事するかバカ!というか、襲ってきたのお前だろうが!!」

「あっ、えっと……その節は、本当にすみませんでした……」

 

俺の反論に、魔王は少し苦い表情をして目を泳がせる。

 

このバカは少し前、夜に襲撃を仕掛けてきた。

なんでも「初デートを奪われた挙句当人がメスの顔しててイラッとムラッとしてつい……」と意味不明な供述をしている。

回避スキルや隠密行動スキル、認識阻害スキルなどを連発してなんとか朝までやり過ごし、姫様に説教してもらう事で決着がついた。

 

さすがの魔王でも、一回りも年下の少女に「常識的に考えて、他人の家で暴れちゃダメでしょ?」という真っ当すぎるお説教が効いたのか、それから襲撃を仕掛けてくる事は無くなった。

 

「用事って言うのはな……あー、パーティー大丈夫かと思ってな」

「わ、私の心配を……!これはもう、両思いと言っても過言じゃないのでは……?」

「過言だろ」

 

それに、お前の心配というより、お前がやらかす未来についての心配だしな。

 

「んんっ……パーティーの件は心配無用だ。これでも王。パーティーぐらい慣れている」

「まあ、だろうな」

「ふふん、『社交界の黒薔薇』と呼ばれたほどだ、大船に乗った気でいてくれ」

 

本命は不参加にさせることだったが、副案はパーティーを波風立たせずに終わらせる事。

その確認のため魔王を訪ねたわけだが……魔王の佇まいを見るに、その心配はなさそうだ。

ほんと、頭が残念なだけで有能なんだよなコイツ……頭が致命的に残念だが。

 

「ところで、パーティーに必要なものが用意されてなかったのだが……」

「ああ、悪い。すぐに用意させる。何が必要なんだ?」

「ああ、メリケンサックか手斧が欲しいんだ」

「………ん?」

 

メリケンサックか手斧……?

いや、聞き間違えか。たぶん「メルヘンチックな手紙」と言ったんだろう。そうに違いない。

……念のためもう一度聞いておくか。

 

「あー、すまん。もう一度言ってくれ」

「メリケンサックか手斧を用意して欲しい」

「嘘だろ?」

 

聞き間違えであってくれ……そう思いながら、頭を抱えて天を見上げる。

い、いやまだだ。パーティーに参加する理由が真面目だったし、何か深い理由があるはずだ。 

 

「……一応聞くが、何に使うんだ?」

「パーティーにだが……ええと、パーティーに武器は必須だろう?ドレスコードとして」

「何を言ってるんだお前は」

 

冗談で言っているかと思いたいが、俺の言葉に困惑した顔を見るに本気で言ってるんだよなあ……

いやまあ、魔族のパーティーでは武器の携帯が礼儀とか……そんなところだろう。

 

「人類のパーティーに武器は必要ない」

「えっ」

「むしろ、武器を持つのはダメだ。護衛の騎士ならまだしも、貴族は武器の不携帯が基本だ」

「なっ……!?そ、それではパーティーの醍醐味にして一番の目玉、一対一の対決はどうなるんだ!?」

「そんな物騒なものはない」

 

信じられないと言ったような顔をしているが、信じられないのは俺の方だよ。

なんだよこの蛮族……なんで貴族がパーティーでタイマンの勝負やるんだよ……目玉とか醍醐味とか言っていたし、嬉々としてやっているようだ。

 

「魔王、ダンスはできるか?」

「一応教養として習ったが……パーティーになんの関係が?」

「ああ、うん……なるほどな……うん……」

 

その反応で分かった、魔族と人類ではパーティーの概念が全く違う。

これは現場レベルでどうこうとかいう話じゃないな。流石にフォローしきれん……面倒だが、仕方ない。

 

「……特訓だ」

「はぇ?」

「今からお前に人類のパーティーの常識について教える。時間がないから気合いで覚えろ」

「ええ!?きょ、今日はゆっくりと溜まってきた勇者の寝顔写真を整理しようと……!」

「ええい、パーティーでお前の事がバレれば迷惑がかかるのは俺なん………寝顔写真?」

「なんでもない」

「なんでもなくないだろう!?盗撮か、盗撮したのか!?お、お前、襲撃に来なくなったと思ったらそんな事をしていたのか!?」

「そ、それはしてない……」

「『それは』ってなんだ『それは』って!!」

 

魔王は目を逸らしながら、後ろのタンスに後退りする。

両手を広げる様子は、何かを守るようで………

 

「おい、そこに隠している物を出せ」

「か、かくしてな……うわあああああ!!!やっ、やめろぉ!!!集めるの大変だったんだぞ!!?」

「盗撮は立派な犯罪なんだよ……!くっ、はなっ、離せっ!!」

「盗撮じゃない!!買っただけだ!!!」

「寝顔写真は公式で売ってないんだよ……!!」

 

タンスに手を伸ばそうとすると、魔王はタンスの上に覆いかぶさり全力で抵抗してきた。

くそっ、力づくで没収したくてもできない!

 

「うわああああ!!!私のSSR露天風呂勇者セミヌード写真集は守り抜くぞおおお!!!!」

「なんだそれ寄越せ!燃やす!!今すぐ燃やす!!!」

 

なんだそれは、そんなアホみたいな写真が出回ってるのか!?今すぐ摘発してやるからな畜生!!

くっ……これ以上魔王を追い詰めると、タンスを担いで王城……いや、王都中を駆けずり回る可能性が高い。目立つなと言ったところでコイツは話を聞くやつじゃない。そして、目立たれると被害を受けるのは俺なのだ。

 

非公式グッズを放置するわけにもいかない、パーティーの準備を疎かにするわけにもいかない……

追い詰めることもできないとなれば……くそっ、奥の手を使うしかないか……!

 

「魔王」

「なっ、なんだ!これは渡さんぞ!!」

「取引をしよう」

「と、取引……?」

「お前が持つ勇者非公式グッズと引き換えに───」

「や、やだ!!これは渡さないぞ!?入手するのにどれだけ大変だったか分からないからそんな簡単に処分など言える───」

 

 

「俺の写真を撮らせてやる」

 

 

魔王はばっと目を見開きこちらを見る。

先程までの取り乱しようが嘘のように鎮まる。

きゅ、急に落ち着かれると怖いな……目も血走ってるし……

 

「どうぞ」

「え?あ、ああ……どうも……?」

 

スッと後ろのタンスを渡してくる魔王。

俺に執着している上、グッズを買い漁っているならこの手は有効だと思ったが……効きすぎて怖いな。俺は一体どんな写真を撮られるんだ……

え?姫様が負けたらコレと婚約するのか?……うん、姫様を全力で支援しよう!負けられない理由がまた増えた……!

 

「しゃ、写真を撮るのはパーティーが無事に終わってからな?」

「なっ……おあずけだと……!?」

「なんだそのゴツいカメラ」

 

細長い巨大な、まるでバズーカの様なカメラを持ち出す魔王。

ええ……それで撮るのか?なに、俺の細胞の写真でも欲しいのか?……コイツなら「それも欲しい」って言いそうなのが怖いな……

 

「無事にパーティーを終わらすため、礼儀作法を覚えてもらうぞ」

「ああ、ドンと来い……今の私は最強だ……!」

 




非公式グッズは《遠見》と《念写》の魔法を用いた勇者のオフショットが大流行しています。摘発しても摘発してもまるで無いところから湧いて出てくるので対処しようにもできません。
公式グッズが「健全すぎて物足りない」という意見が一定数あるので、非公式グッズのギリギリ健全写真集は大人気です。


高評価、お気に入り登録、感想、誤字報告等お待ちしております。鹿せんべいを貰った鹿並みに喜びます。

「会話」と「会話」の間は

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  • 1行あけて
  • どっちでもいい早よ書け
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