独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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遅くなった言い訳タイム。

キャラが二転三転と定まらなかった……

言い訳終わり。
どうぞ。


第17話 写真はもう懲り懲り

その日の夜。

パーティーが始まるには少し早いが、俺は会場へ足を運んでいた。

来たは良いが、何をしようかと悩んでいると、見慣れた後ろ姿が見えた。

 

「姫様、お手伝いに来ました」

「クリフ?アンタはパーティーの主役なんだから、今回はゆっくり……して……」

「いえ、手伝わせてください……!」

「く、クリフ!?なんでそんなにフラフラなのよ!?」

 

俺を見るや否や、姫様はギョッとしながら駆け寄って来た。

先程鏡を見たらひどい顔をしていた。パーティーが始まっていないのにも関わらず疲労困憊。三徹目の朝ぐらいの疲労度だ。

 

「ね、ねえ?何があったの?」

「ああ、奴に礼儀作法を教えてたんですよ」

「礼儀作法を?」

「他の貴族もいるわけですし、最低限失礼のないようにと……まあ、最初から教えるハメになりましたが」

「何も分かってなかったの?挨拶の定型文とか、パーティーの立ち回りとか」

「ええ、何もかも0から教えましたよ……」

「そう、0から……その様子じゃ大変だったのね」

「大変でしたよ……本当に……マジで……!」

 

思い出しただけで頭痛がする。

 

魔王への礼儀作法の指導は案外早く終わった。驚異的な集中力を見せた魔王は、本一冊を10秒足らずで読み、言ったことは一度で覚え、最終的には貴族特有の言い回しもある程度理解していた。

細かい作法やパーティーに参加するだけなら覚えなくていい事を除き、完璧と判断して切り上げた。

 

教師役で付きっきりだったため、パーティーまでの時間、少し休もうと思い踵を返し……肩を万力の力で掴まれた。

振り返ると、笑ってない目でカメラを持った魔王が。

約束は約束だったので了承したが……俺の想像を遥かに超えていた。

 

魔王の写真撮影会は熾烈を極めた。

まさか1度単位のポージングを求められるとは思わなかったし、お互い魔法が使えないためワイヤーによるゴリ押しで無茶な体勢を撮影する羽目になったし、最終的には「違う!私の求めていた写真はこんなのじゃ……!」なんて職人じみた事を言い始めた。

 

「パーティーの準備がある」と隙をついて無理矢理逃げ出して来れたのが幸運だった。

とにかく疲れた……もう写真撮影はゴリゴリだ……一生分撮ったと思う……

 

「だ、大丈夫?その、疲れてるなら休んでた方が……」

「ご心配なく、まだ動けます」

「顔色も悪いし……無理はしない方がいいわよ?」

 

心配そうに俺の顔を見る姫様。

優しさが沁みる……

 

「姫様は癒し系ですね」

「え?うん、ありがとう……?」

「一緒にいてくれるだけで心が安らかになります」

「えぇ!?そ、そんな……一生一緒なんて……!」

 

これがアニマルセラピーならぬロイヤルセラピーなんだろうか……無茶振りと口調はキツいが根は優しい姫様のなんて癒される事か……悪辣変態魔王の後だとその優しさが何倍にも感じられる。

 

「っ〜〜!わ、私、準備があるからっ!後は頼んだわ!!」

「ああ、はい。また後ほど」

 

姫様は持っていた物を俺に押し付けると、足早に会場を後にした。

ちゃんとしたドレスを着ていたと思うのだが……まあ、化粧直しや髪を整えたりとする事があるのだろう。

走り去る姫様を尻目に、渡された物を確認する。なになに……備品のチェックリスト?ああ、最終確認のやつか。

 

「これはこれは勇者殿。相変わらず姫様と仲が良いようで」

 

姫様に渡された物を確認していると、声をかけられた。

この鼻につく、話しかけてくるたびに問題事を持ってきそうな問題児の声は……

 

「久しぶりだね。帰って来ているなら僕に一言ぐらい挨拶をくれれば……」

「ああ、副団長か。久しぶりだな、まだ騎士団長のストーk」

「うわああああああああああ!!!?!?くっ、クリフくぅん!!ちょっっと向こうでお話が!!!」

「うるさい」

 

副団長は必死な形相で俺の口を手で塞ぐと、ガッと肩を組まれ会場の外に連れて行かれる。

周りの騎士達はいつもは穏やかな上司の慌てぶりに目を瞬かせる。しかし、熟練の騎士は「またか」と言わんばかりにノーリアクションだ。

 

外に出るや否や壁に軽く押さえつけられる。

肩で息をしているところを見るに、本気で慌てたんだろうな。チッ、追い返すにはストーカー呼ばわりは強すぎたか……

 

「突然なんだ。今から姫様に頼まれた仕事をやらないといけないんだが?」

「君が他のみんながいる前で秘密をバラそうとしなければこんな事はしなかったよ……!」

「近い離れろ、俺も悪かった。というか、秘密をバラすのはお前の十八番だろう」

「僕はそんなことしないよ!日常会話をしていると反抗的な子でもなぜか言う事を聞いてくれるだけで……」

「チラつかせて脅しているのか。効率的だな」

「人聞きが悪いなあ……」

 

疲れたようにため息を吐く黒髪黒目の色男。

この男の名はスザク。王国騎士団副団長にして騎士団長のストーカーだ。

 

騎士団長に一目惚れをしたこの男は、告白する勇気も無く、見守る事しかできずにいた。それは誰にも気付かれずに王城に潜伏するという偉業。

しかし、騎士団長を盗撮している所を俺が偶然にも発見。今まで誰にも気付かれなかったという油断からか、盗撮に熱中していたコイツは俺に触れられるまで1ミリも気づかなかった。

捕縛後、ストーキング行為を止めるように説教し、とりあえず牢屋に入れようと人を呼ぶために周囲を見渡した───その一瞬で逃げられた。あの時は報酬を逃したと悔やんだものだ。

 

もう2度と会う事はない。そう思っていたが、なんと正々堂々と騎士団長に会うためだけに騎士団に入団。その後凄まじい早さで副団長の地位まで駆け上がった。まさか真正面からストーキングをするとは思わなかったな……

 

魔王とは別ベクトルの変態。それが副団長、スザクというヘタレストーカー色男だ。

 

「それで一体何の用だ。見ての通り暇じゃないんだが?」

「ほとんど終わってるよねそれ!ディアナ様と一緒に確認してたの僕だよ!?」

「チッ……早く要件を言え変態」

「なんでそんなに辛辣なのかなあ!僕上司だよね一応!」

「犯罪者にかける情けは無い……んんっ、こんなに気安く話せるのはお前くらいだよ」

「そんなキメ顔で言われても嬉しくないよ!というか、犯罪者じゃないから!証拠も無いのに酷いな君は!」

「証拠が無いだけなんだよな……」

 

スザクは心底傷ついたと白々しく大袈裟な演技をする。それを見て頭を抱えながらため息を吐く。

 

スザクは状況的に盗撮盗聴を行なっているのは確実だ。恐らく騎士団長のストーキング行為の延長なんだろうが、そこで得た様々な情報で気の荒い新人を()()()ているらしい。

その為、コイツが何かしようとするとパシリの如くヘコヘコとする人間が一定数いる。そのせいか、なんでも「騎士団で一番怒らせてはいけない人」など言われているらしい。

 

『らしい』と言うのが多いのは、証拠が何も出てこないせいだ。自分の職場で盗撮盗聴など良い気もしないので本格的に調べたが、これが何も出ない。その後思い立ったら調べてみてはいるが未だに収穫は無し。

 

魔王の事も伏せてはいるが、どこまで知ってるのやら……一応、盗撮盗聴の魔道具対策の魔道具を作動させてはいるが、どこまで通じているのかは不明だ。反応的に知らないんだろうが……

 

はあ……騎士のNo.2が犯罪者とか、魔王の事とか、色んな意味で頭が痛い話だ……

 

「それで、盗聴でまずい話でも聞いたのか?」

「噂話と言ってほしいね……それと、今回は噂話じゃ無くて遠征の件だよ」

「遠征……この前の早朝に王都周辺の遠征をしたやつか?」

「なんだ、知っていたのかい?」

「いや、知っていたと言うか何と言うか……」

 

歯切れの悪い俺に、不思議そうな顔をするスザク。

姫様の我儘の巻き添えにされたのか……俺が持ってきた面倒事だから、少し罪悪感があるな……

 

「ふぅーん……まあいいや。これを見てほしい」

 

なんだか弱みを掴まれた気がするな……

そんな含みのある言葉の後、スザクはポケットから小さな袋を取り出した。

 

「……ってこれは」

「気付いたかい?これは最悪の薬と名高い禁制の薬『魔法増強薬』さ」

「また出回っていたのか……はあ、こんな物使うバカは存外減らないものだな」

 

『魔法増強薬』は魔法の強化、増幅を目的に製造された薬だ。しかし、出来上がったものはただの白い粉。魔法を強化する効果は無かった。

しかし、最悪の副効果があった。それは強い酩酊感と幸福感だ。通常では得られない量の快楽に溺れ、薬に強く依存してしまう人が続出。

国は早々にこの薬を製造所持を強く禁じた。しかし、薬の回収を試みるも成分を分析され模造品が溢れかえってしまった。

その後はイタチごっこで回収と流通が行われている一品。それがこの白い粉の正体だ。

 

「だが、この案件はそう珍しい物じゃないだろう?」

「問題はここからなのさ。遠征で検挙した数はおよそ30。それが王都周辺だけで見つかった。さらに、薬は()()行く商人や旅人が持っていたんだよ」

「なんだと?それはつまり───」

「お察しの通りさ。ここ王都を根城にした大規模犯罪だよ」

 

話を聞いて頭が痛くなる。

王都……即ち王のお膝元で組織的な大犯罪をしていると言うのだ。王都に犯罪者を放逐するのは王族の威信に関わる……即ち、勇者()が派遣される可能性が高い。

はあ……勇者の仕事は魔族との戦闘じゃないのかと何度言いたくなった事か……しかし、勇者と言えどお役所仕事。上には逆らえないのだ。

もう慣れたものだが、こういった捜査は地道な上、貴族が絡んでくるので本当に面倒くさい。ため息の一つも吐きたくなる。

 

「それで、犯人の目星は?」

「ここまで大規模にできている点から、恐らく貴族。もしくは豪商が主犯だと考えられるね。経済的にも、政治的にもここ王都でやろうと思えばお金がかかるからねえ」

 

……まあ、そんなところだろうと思ってはいたが、本格的に面倒になったな。主に貴族の説得とか、調査の協力を持ちかけたりとか。

武力行使こそあまりしないが、グチグチネチネチとゴネる奴が多いから本当にキツい仕事になる。後ろめたい事がある貴族は特にゴネるからな……

 

「そんな顰めっ面しなくても大丈夫だよ。今回の件は騎士団が主導して調査するからさ。それに、君は訳ありで帰ってきているんだろう?そっちに集中するといいよ」

「おお、そうか!なんだか仕事を押し付けたようで悪いな!」

「全く、現金だね君は」

 

やれやれと肩をすくめて苦笑いをするスザク。

こういう貴族のプライドが関わる系の仕事の面倒くささは計り知れないのだ。その仕事をしなくていいとなれば喜びもするだろう。少なくとも胃痛の原因が一つ減って俺は嬉しい。

それにしても、『訳あり』とか『そっち』とかやけにボカした言い方をするな。一体どこまで情報を掴んでるのやら……コイツの事は気にするだけ無駄だろうが、色んな意味で厄介極まりないな……

 

「まあ、俺の方も気を付けては見る。と言っても、偶然ばったり取引現場を見つけたりなんてしないだろうがな」

「はは、頼もしいね。犯人検挙の報告を楽しみにしているよ」

 

軽口を叩き合い、もたれかかっていた壁から離れる。

 

「さて、時間も限られてるんだ。さっさと仕事に戻るか」

「そうだね……ああ、そうだ。チェックはもう終わりかけだろう?それが終わってからでいいから、僕の仕事を手伝ってくれないかい?」

「えー……」

 

時間いっぱい使ってゆっくりと作業するつもりだったのだが……まあ、俺のせいで遠征に駆り出される事になったんだし、これくらい手伝ってやるか。でも、コイツのせいで迷惑被る事も多々あるんだよな……

 

「………はあ、いいぞ。何をするんだ?」

「随分長い葛藤だったね」

「お前マイナス要素が多いから悩むんだよ」

「そんなにハッキリ言っちゃうの!?もうちょっと、こう…オブラートに包むとか……」

「ははっ、お前にそんな他人行儀な事を言うはずないだろう?」

「親しき仲にも礼儀ありじゃないかなあ!?」

「別に親しくないだろ」

「親しいよね!5年の付き合いだよね!!」

「そう言えば5年もヘタレてるのかお前……いい加減に玉砕してきたらどうだ?」

「……あと5年は欲しいかな……」

「随分と長い葛藤だな」

 

騎士団長に早く告白してしまえば良いのに。なんて思っているが、この顔面Sランクの色男はあろう事か「告白されるのには慣れているが告白の仕方が分からない」などとほざいている。

悩むのはいいが、いい加減長すぎてイラッとし始めてきたんだよな……5年も目の前でウジウジとされると流石にそう思う。

 

「そ、それはさておき!仕事だよ仕事!」

「ああ。で、俺は何をすればいいんだ?」

「実は、撮影係を任されてね。準備に使った資材の撤去と、予備を控え室に使いやすいように置いといてほしいんだ」

「また面倒な……ん?やけに良いカメラだな」

 

スザクが取り出したカメラを見ると、魔王が使っていた物よりも数段良い物と分かる。

というか、最先端の技術が詰まった最高級カメラだとかテレビで言っていた気がする……少なくとも3桁万は軽くするほどの金額だ。

よくケチな財務省からこんなカメラの経費が降りたな……

 

「あ、分かるかい?高かったんだよこれ」

「え、お前の私物かこれ」

 

コイツが盗撮盗聴のため大量のカメラやマイクを持っているのは知っていたし、オタク気質な所もあるのは知っていたが……よく手が出せたなこんな物。

 

「臨時収入が入ってね。それに、前のカメラもガタついちゃって、ちょうど良い替え時だったんだよ」

「ついこの間も新調してなかったか?」

「あー……あれはちょっと無茶な使い方をしちゃってね。防水を過信しすぎちゃったんだよね……」

「水にでも落とした…の、か……」

「どうかしたかい?」

 

話していて、ふと脳裏で何かが引っかかる。

点と点が線で繋がる。

……推察の域は出ないが、コイツならやりかねないし、なにより可能なんだよな。

 

「……そう言えば知っているか?俺の写真集が出回っているらしい」

「君は人気だからなあ」

「中を改めたが、男風呂に入らないと撮れない画角だったんだよ。俺はてっきり《遠見》の魔法の悪用だと思ったが、あんな人気な風呂場に防犯の魔法がかかってない訳がないよな」

「ず、随分と気合の入った盗撮犯がいんだねえ……」

「そう言えば、お前温泉旅行にカメラ持ってきてたよな?防水関係で壊れたと言えばそこか?あとそのカメラ、最高級の物だろ?数百万は下らないはずなんだが……()()()()で買うには高すぎないか?こう何度もカメラを新調しているなら金もないだろう?何百万の臨時収入を一体どこからどう得られるんだろうな……」

「「………」」

 

沈黙のまま目と目が合う。

スザクは貼り付けたような笑顔をしており、俺は訝しむような目をしているんだろう。

スザクはスッと何気ない動作で壁から退くと、クラウチングスタートの体制をとって───

 

「あ、僕ちょっと部下とお話があるからまたね!」

「逃すか待てゴルァ!!!」

 

あのセミヌード写真集、やっぱりお前が犯人かよ!!!!




副団長は盗撮盗聴、隠密のプロですがそんな事より騎士団長ガチ恋勢です。でもヘタレです。顔はいいのに……
ついでに、ありとあらゆる問題を唯一事情を知っている主人公にぶん投げてきます。貴族のドロドロとした死ぬほど面倒な案件を投げてくるので、魔王と並ぶ胃痛枠です。


高評価、お気に入り、感想、誤字報告等お待ちしております。チートデイのマッチョ並みに喜びます。

2023/4/16 一部表記の追加

「会話」と「会話」の間は

  • 詰めて
  • 1行あけて
  • どっちでもいい早よ書け
  • 興味ないね……
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