独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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第2話 ソロ攻略って基本ムリ

勇者と魔王の激突。

 

それは魔王城を廃墟と化し、辺りに無数のクレーターを作った。

一撃ぶつかり合うごとに大気を震わせ、見える範囲に無事な所はない。

お互いに必殺の一撃の応酬。紙一重の戦いに冷や汗が流れる。

しかし、この一撃で勝負を決める!!正々堂々と魔王の下に飛び込んで行き───

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこに行った勇者!早く出てこいっ!!」

 

 

なんて事はなく、俺はこうして堂々と逃げ隠れしている。

 

いや、俺のステータス構成的に真正面から戦うようなスタイルじゃ無いしな……というか、そもそも何で魔王誅伐に勇者ソロなんだ!無理だろ常識的に考えて!軍を呼べ軍を!!

 

ぐちぐちと文句を言っているが、俺は俺なりに必死に戦った。

止むことはない爆炎を切り裂き、尽きることのない暴力に抗い、隙間の無い一斉射撃を躱し切った。

離れれば圧倒的魔力による魔法の一斉掃射によりなす術なくぶちのめされ、近づけばカスっただけでHPが削りきれる攻撃に身を晒すハメになる。

そんな不条理の中飛んで跳ねてなんとかこうして五体満足で生き延びている。生きてるって素晴らしいな……

 

反撃?はっ、やって見ろよ。飛ぶぞ。あの世に。

 

 

「私から逃げられると思うな!捕まえたらもう……夫として色々と覚悟しておけっっ!!!!」

 

 

ゴゴゴゴゴ……!という爆音と共に、魔王を中心にして暴風が吹き荒れる。

うわぁ、流れ出た魔力だけで瓦礫を粉々にしてる……言ってる事もやってる事も怖ぁ……

 

救いなのはまだ居場所がバレてないことだ。視認されるまで認識され難くなるスキル、《潜伏》を発動しているおかげで最悪の事態を回避できている。

粉塵に紛れて身を潜められたのは本当に運がよかった……

 

そもそもの話、俺が魔王に勝てる見込みはない。理由は、魔王へこれと言った有効打がないせいだ。

聖剣で一万回同じ所を殴れば勝てるかもしれないが、一万回殴りきる前に回復魔法でリセットされるのが関の山。

遠距離に強くて近距離が無敵で装甲が硬くて回復できるってなんだよ……それパーティで役職分けてやる事なんだよ……

 

もう逃げよっかな……勝ち目ないし……

 

「しかし、逃げると言ってもな……」

 

そうだ。逃げると言っても、真に逃げ切れる場所は無い。

魔王が本気で俺を捕まえに来るならば、世界の果てに逃げたとしても追いついてくるだろう。

それに、魔王が追って来ないとしても問題がある。魔王から逃げたと分かれば、これ幸いと言わんばかりに勇者を目の敵にしているお偉いさん方が猛烈にバッシングして、世論で『腰抜け勇者』とか不名誉を着せられて、全財産没収された上に人類の生存圏から追放される可能性もある。

 

前門の魔王、後門の人類という所か……あれ、俺人類側だよな?なんで人類に退路断たれてるんだ?

 

「ちっ、打つ手が無いな……どうするか……」

「なら、ワシの案に乗らんか?」

「うおぉ!?」

 

瓦礫の影から魔王を見ていると、背後から急に声をかけられる。

 

「そ、側近のババア……生きていたのか!?」

「勝手に殺すな。ワシは《テレポート》を使えるからの。同僚を逃してから戻って来たんじゃよ」

 

何気なく言っているが、《テレポート》って三大難関魔法の一つだよな?魔法使いが束となって夜通し儀式すれば使えるかどうかって類の魔法だよな?なんで日常使いしているんだ……

 

「で、案とはなんだ?まさか負けを認めろと?」

「いんや。立場上それは無理じゃろうて。しかし、お主が勝てないのもまた事実じゃろ」

「ぐっ……」

「だからこその妥協案じゃ」

「……一応、聞いておこう」

「なあに、そんな怖い顔せんでもええぞい」

 

妥協案って持ち掛けられるとどうしても疑わしいんだよ。

WIN-WINの関係なんて3:7ぐらいの関係だろ。国のタヌキ共のお陰で身を以て知ってるぞ。

とは言っても、これ以上打開策がないのも事実。多少の損は目を瞑るしかないか……

 

「お主、魔王様と婚約すれば解決じゃて」

「じゃあ俺は帰る」

「待たんかっ!」

 

うるせえ!LOSE-WINの関係なんだよ!負けてるんだよそれは!!

あんな戦闘狂で変わり者の魔王と婚約しようものなら、俺のこれからの人生は灰色どころかドブ色に彩られるだろう。胃に穴が開いて回復薬が手放せなくなる未来がありありと見える。

それなら、一回帰ってタヌキ共を説得した方が万倍マシだ!勝算もそっちの方が高いからな!

それに冷静に考えたら、魔王と婚約なんてしたら寝返った判定食らってどの道バッドエンドなんだよ!

 

「くっ、止まらんか!後悔するぞ!」

「こんな所いられるか!俺は帰らせてもらう!」

「ええい、こうなれば……!」

 

ズルズルとマントの裾を掴む老婆を引きずりながら突き進む。

魔王相手にソロは無理、という点をゴリ押せばなんとか説得できるか……?いや、逃げ帰ったんじゃなくて偵察に行った体にすれば……

 

「魔王様ァー!勇者はこゴフゴフ!!」

「オイコラババア黙れババアァーー!!!!」(小声)

 

魔王へ手を振る老婆の口を手で塞ぎ、瓦礫に身を潜める。

まさかこんな強硬手段を取るとは……!くっ、無理矢理交渉のテーブルに座らされたか……こんなの、冤罪裁判以来の屈辱だ……!

いや、そんな事よりも魔王は……

 

と思い振り帰ろうとした瞬間、潜んでいた壁のすぐ隣が爆散した。

そして、本能的に理解した。

 

 

「 み つ け た 」

 

 

あ、これダメなやつだ。




魔王の戦いにおけるコンセプトは「クソゲー」です。
一対多でようやくなんとかできるレベルですので、人類サイドは総戦力を投入するべきだったんですね!!

まあ、人類サイドも「魔王って為政者でしょ?強くても四天王よりちょい上くらいっしょw」と慢心したのが運の尽きです。ちなみに皺寄せは勇者に来るものとします。


修正点
・魔王との婚約のデメリットの追記
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