独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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おまたせしました。

お待たせし過ぎたかもしれません。

今月がんばります。

対よろ。


第20話 胃痛パーティー、その3

 ラウンジから下に降りると、やはりと言うべきだろうか。ニヤニヤと口角を上げた貴族達が押し寄せて来た。

 

「おやおやおや、勇者様じゃありませんかぁ。2階で一体何を?」

「男爵殿、こう言うのを聞くのは野暮ですぞ」

「おおっと、私としたことが。歳をとるといけませんな」

「ふふふ……揶揄うのはおやめなさい。でも若いって良いですわねぇ」

 

 ………うざい。本当に、うざい。

 

 下町で初々しい男女を揶揄うジジババと同じ雰囲気を感じる。

 昔は「大変そうだな」と他人事だったが、当事者になるとたまった物じゃない。それもこうも的外れな事で揶揄われていると特にな……

 

 後ろに居る姫様に「なんとかなりませんか?」と念を込めた視線を向ける。しかしやはりと言うべきか、姫様はため息混じりに首を横に振る。

 やはり姫様の力を持ってしてもこの状況をなんとかするのは難しいか。

 それにしても、姫様の眉間に皺がよってるような……疲れているのだろうか?それとも目立ちすぎてしまったから呆れてるのだろうか?

 

「勇者殿! 真実の愛の探究、真に苦難の道と思われますが応援いたしますぞ!」

「い、いえ。我々はそういった関係では……」

「ふふ、そう恥ずかしがらずに。良いではありませんか、禁断の恋というわけでもありませぬし」

「あ、あの……」

 

 ……蹴散らしたい。実力行使を持ってこの恋バナゾンビ共を誅罰したい。

 だがそれはできない。相手が貴族で俺が平民だからだ。命拾いしたな……!

 

 しかし、この状況はあまりよろしくないな。パーティーが終わるまでに有耶無耶にしなければ変な噂が拡大してしまう。「目立たない」という目標を達成するためにもなんとかしなければ。……あと、精神衛生情的にも。

 くっ、俺がこんな目に遭っているのに、問題を起こした張本人は何をしてるんだ……!

 

「へへへ……」

「……あんた、なんでそんなに上の空なのよ。ちょっと気持ち悪いわよ」

「……あっ、いたのか?ふふっ、悪いな……いや本当に悪いな。うへへへへ……」

「何言って……ま、まさか!」

「ふふっ、どうかな」

「……そのリアクション的にリーチはしたけどゴールはまだね。ゴールしてたなら煽り散らしてくるだろうし……話しなさい! 上で何があったの!?」

 

 魔王は能天気にご飯片手に姫様と話していた。

 遠くの壁際で姫様と話しているため、何を話しているのかよく聞こえないが姫様が鬼の形相で荒ぶっていた。今にも掴みかからんばかりの雰囲気だ。対する魔王は上の空で不気味な笑みを浮かべるばかり。

 そんな不気味な二人に近づけないのか、貴族たちも遠巻きで見つめるばかり。

 目立ってはいるが……まあ、貴族と話してさっきの二の舞にならないだけマシか。

 

 そんなことを考えている間にも、貴族達による詰問……言い方を変えるなら、野次馬根性全力のバカ共を捌いていく。

 しかし、話は今のところ全くそれる気配がない。貴族達が今1番聞きたい話題が固定されてしまっている。即ち「彼女とはどういう関係で?」という話題に……!

 

 何か、何でもいい。誰でもいい。この際ハプニングでもいい。この流れをぶった切るような何かを……!

 

 

「勇者とあろう者が色恋沙汰に現を抜かすなど、人類の危機に良い身分だな」

 

 

 空気が凍る。

 和気藹々とした楽しげな雰囲気は一変。緊張が孕んだものとなっていた。

 

「久しいな勇者。前回の魔王討伐前祝い以来か」

「……財務大臣殿。お久しぶりです」

「ああ、およそ10日振りだな」

 

 彼はふくよかな体を揺らしながら、嫌味を交えて近づいてくる。

 財務大臣という貴族の中でも上位にある上、姫様や騎士団長と違い険のある雰囲気も相まって他の貴族も萎縮してしまっている。

 

 こ、これは…………

 

 

 

 これはありがたい! 感謝してもしきれない!

 

 願いを叶えるにしてもこんないい方向で叶えてくれるとは! 今なら財布の中身全て寄付しても構わない気分だ!!

 

 ぶっちゃけてしまえば、野次馬根性恋バナゾンビよりも棘のある財務大臣の方がいなしやすい。扱いも比較的に楽だし、面倒も少ない。

 

「意気揚々に魔王討伐に向かい手柄もなく帰って来れるとは思わなかった。流石は勇者だな」

「目に見える手柄こそありませんが、情報は持ち帰れました」

「ふん、そんな事は案山子でもできよう。貴様の無能さは身に染みて知っていたと思っていたが、まさか想定を超えるとはな」

 

 ふん。と鼻を鳴らしながら、ワインを静かに傾ける。

 

「ならば、勇者は必要無いだろう。平民は大人しく平民に相応しい振る舞いをすればいい」

 

 久々に聞いたな、財務大臣の勇者ヘイト……

 財務大臣は純血主義者で有名だ。城に平民の兵士が入る事も難色を示し、貴族以外に指揮官や役人になる事にも顔を顰めるほどの徹底ぶり。

 故に、平民である俺にも当たりがきつい。

 

「勇者が不要な世になってくれるのを願っているのですが、どうにも乱世のようでして……」

「それを解決するのが勇者の仕事だろう」

「それはご尤も。私の不得の致す所です」

 

 淡々と頭を下げる。

 こういう手合いの貴族は多いもので、パーティーでも嫌味全開で絡んでくる。しかし、そういう貴族は嫌味だけで実害はない。

 人類では割と強者側と自負する俺に危害を加える事の難しさ、勇者という立場に危害を加えることが露見してしまった時のリスクなど。それらを鑑みるに、俺に直接手を出す事は割に合わないのだろう。だから、こうした嫌味やちょっとした嫌がらせで溜飲を下げる。

 

 ふぅ……にしてもこれで一安心だな。こうして嫌味を聞き流しているだけでパーティーが終わればへい、おん……

 

「は?」

 

 頭を上げると、バキバキに目がキマっている魔王が拳を振りながらズンズンと近づいてきていた。




勇者くんはなんかあったら貴族に呼ばれるし、平民という立ち位置から割と理不尽な目にあってるぞ!!
でもメンタル強者な勇者くんは「世界の危機なんでその日は無理ですねー」「え!?王族の呼び出しよりも優先な案件なんですか!?!?」「聖剣の具合が悪いので帰ります」など色々適当こいて逃げてます。
逃げられないパーティーの時だけは頭下げながら「リザレクションがあるなら一発までは誤射かもしれないよなぁ。コイツら前半に来ないかなあ……もしくは王都襲撃とかないかなあ……」なんて事を考えてます。物騒だね!

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