独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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補足回。ネタバレ回とも言う。


幕間 第17.5話 2度目の決闘はいかにして

 時は少し遡り、パーティーが始まる前のこと。

 

「はぁはぁ……はぁー……」

 

 会場から少し離れた廊下で、金髪の少女が壁に手をついて息を荒くしていた。

 

「く、クリフ……! い、一生一緒って……!」

 

 何を隠そう、彼女はグレゴール王国第三王女、ディアナ・フォン・グレイズロッドその人である。

 彼女は先程に勇者クリフから伝えられた(捏造の)言葉を噛み締めていた。

 恋煩いの乙女の様な表情(かお)で、頬に手を当て身を捩らせる。

 

「私と一緒にいれば癒されるってそう言うことよね? もうこれ告白よね!?」

 

 恋する乙女は強い。

 脳がスイーツに支配されたシュガーブレインは突拍子もない結論を弾き出す。

 事実、クリフは告白などしていない。ただ「(魔王と比べて)一緒にいると癒される」という事を伝えただけ。

 

 その事に気づかないのは果たして幸せか否か。

 現在、乙女の脳に占めるのは夢のような妄想の世界。彼女はそこでバージンロードを走っていた。

 

「はっ! そうだわ、こうしちゃいられない。お父様に結婚しますって言わなきゃ」

 

 半分現実に帰ってきたディアナは走り出した。早く外堀を埋め切って差し切らなければと。

 確かに、告白されたなら王への報告は必要だろう。現実的な対応だ。告白された事が妄想ではなければ。

 しかし、そんな事は気づかない。彼女の中ではクリフに告白されたのは確定事項なのだから。

 

 そうして王の執務室へ向かおうと、廊下を曲がろうとしたその時。

 

「きゃっ!?」

「おっと。廊下は走ると危ないぞ」

「いたた……ご、ごめんなさい。少し慌ててて……」

 

 人とぶつかり、少しよろけてしまう。

 物理的なショックのおかげか、少し掛かり気味になってしまって周りが見えてなかった。王族の振る舞いではなかったとディアナは自省した。

 

「ってなんだ淫乱オオクワガタじゃない」

「淫乱オオクワガタ!?」

 

 反省して損したと言わんばかりにぺっと床に唾を吐く。

 目の前の敵。内地でぬくぬくと外堀を埋めていたら突然現れた外来生物の淫乱オオクワガタ──魔王プロメア。

 人類の敵だなんて、大それた事は言わない。ただの恋敵である……!

 

「さ、さすがにそれはひどくないか?」

「そんな事より、あんたなんでこんな所に居るのよ。もうすぐパーティー始まるわよ」

 

 さりげなく話を逸らす。ディアナとしても、流石に淫乱オオクワガタは言いすぎたと思っている。それはそれとして恋敵に頭を下げるなど以ての外なのだ。

 

「え? もうそんな時間か……しまったな。写真整理に熱中しすぎたか……」

「というか、あんた着替えは? 向こうで着替えるところないわよ」

「あ……わ、忘れてた……」

「忘れてたって……普段着でパーティー出るつもりだったの? 流石に温厚な貴族も嫌な顔するわよ?」

「す、すまない……」

「いいから行くわよ。遅刻は厳禁なんだから」

 

 恥ずかしそうに、しゅんとした顔をする魔王。彼女の手を引き、着替えの部屋に向かう。

 

「全く。こんな調子でパーティー大丈夫なの?」

「ふふん、それについては心配はない。種族が違えど私は王族。それなりにパーティー経験もある。それに、そちらのパーティーの常識も勇者に叩き込まれた。心配は無用だ」

 

 ドヤ顔で胸を張る魔王に、興味なさげに「ふーん」と返事をするディアナ。

 「勇者に」の部分をやけに強調しながら教えられた事を自慢する魔王に、少しイラッとしながらも聞き流す。

 

(このクワガタ。そういえば人類の常識に疎いのよね。パーティーも今日さっき教えられたみたいだし……)

 

 ───そうして聞き流してたディアナに、電撃の様な閃きが脳裏に浮かぶ。

 

(魔王は人類の常識、パーティーに疎い。私は人類のパーティーに詳しい)

 

 点と点が繋がる。

 

(このパーティー。人類の常識に沿ったルールを元に勝負を仕掛ければ……!)

 

 急速に脳を回転させる。

 勝てる条件、負ける要素、有利な場……それらを考慮したルールを作るべく、思考を加速させる。

 

「───と言う風に勇者は」

「そんな事より、2回戦の内容決めたわよ」

「……ほう?」

 

 低く、冷徹な声色。魔王はまるで見定める様な目でディアナを見る。

 先程までクリフに教えられた事を乙女の表情(かお)で自慢していた魔王はいない。正しく魔族の王としての貌を覗かせる。

 

 そんな魔王に一歩も引かず、ディアナは口を開く。

 

「2回戦は……ダンス、踊りよ」

「……ほう?」

「安心しなさい。ただ踊って評価されよう、なんて勝負じゃないわ」

「………」

 

 ダンスでいかに勝つか、その事に思考にふけようとしていた魔王の視線がディアナに向く。

 

「この勝負は、『勇者と踊る』ことが勝利条件。勿論、暴力や脅迫なんて以ての外。無理矢理クリフと手を繋いで踊っても無効。()()()()()()()()()踊らなければならないわ」

「……なるほど」

「それと、2回戦の内容はクリフに知られてはダメよ」

「……なぜだ? 勇者に内容を話せば、今回の勝負は私の必敗。私との婚約を嫌がる勇者はお前の手を取るだろうに」

 

 自分に不利な条件を付け足したディアナに、魔王が怪訝な目を向ける。

 それにディアナは呆れた様にため息を吐く。

 

「フェアな勝負で言い訳もできない敗北を与えないと、あんたは諦めないでしょ? ……それに、消去法で手を取らせて何の意味があるのよ」

「……そうか。お前は、存外良い奴なんだな」

「当然でしょ。私ほどの良い女、クリフでも放って置けないわよ」

 

 服を着替え、部屋を出る。

 

「この勝負、貰うわよ」

「ふっ……安心しろ。3回戦の準備は不要だぞ」

 

 乙女達はパーティー会場(戦場)に向かって歩き出した。




なんだよ(三人称視点)結構書けんじゃねぇか……!(投稿頻度)止まるんじゃねえぞ……!
ということで主人公が絡まなければ割と有能冷徹暗黒面のヒロインズの話でした。2回戦の裏ではこんな事が……!
次回から普通の主人公視点です。よろぴこ。
ps.誤字報告マジでありがとうござます。感謝です。

高評価、お気に入り、感想、誤字報告等お待ちしております。ハットトリック決めた時並みに喜びます。

「会話」と「会話」の間は

  • 詰めて
  • 1行あけて
  • どっちでもいい早よ書け
  • 興味ないね……
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