独身魔王が婚活を仕掛けてきた! 作:はふへェ!
パーティーの翌日。
謎に踊って、謎に満足されて「なんだったんだあれ」となんとも微妙な気分で眠ったが、寝起きは清々しかった。そう、清々し
「やだやだやだやだ!!!わーたーしーもーいーくーのー!!!」
「あの、姫様……闇市は危険なので……」
「やーーーだーーー!!!!!」
大声で地団駄を踏みながら抗議する姫様。宥めたり説得を試みるも効果がない。
どうやら、闇市調査についていく気だったらしく、朝からピクニック気分で楽しみにしていたそうだ。しかし、いくらなんでも危険と判断し、姫様と一緒には行けないと伝えるとこうして駄々をこね始めた。
姫様視点で言えば、楽しみのお出かけをドタキャンされた様なものなのだろう。キレるのも分からなくもない。
こう言うキレ方を王族の姫にやられる平民の気持ちを答えよ。(配点50点)
「ですから、騎士団が護衛できない以上姫様の身の安全の保証ができないのです」
答えは「命令と職務の板挟みで頭が痛い」だ。
いかに王族のお願いでも安全確保ができない以上首を縦には振れない。今回は街中などでは無く治安の悪い闇市。そんな所に供回りも無く王族など連れて歩けない。
というか、どうして闇市なんて危険な場所に行く気だったんだ……スリルを満喫したい年頃なのだろうか?
まあ、大変だがこういう事態には割と慣れている。姫様は時折こうして困るレベルのガチギレをするが、懇々と説明すれば理解はしてくれる。納得するまで全力で駄々をこねるだけだ。
ふっ……この程度、狸ジジババ共の湿度の高い嫌がらせに比べたら屁でもない。可愛い子供のわがままだ。
───しかし、今回はこれだけではなかった。
「ふはははは!! 大人しく留守番をしてるんだな!!」
「はあ!? 調査だけならアンタ要らないじゃない!! 私が留守番するならアンタもすべきよ!!」
「私はな? 身軽な立場だし、下手に動くより勇者について回った方がなにかと外聞も良くてな? まあこうして調査の手伝いをする事になっているんだ」
「うぐぐぐぐ……!!」
「全くこうして身分上の問題で身動きができないのは可哀想だが、王族の責務と納得して留守番をしてると良い!! その間勇者のことは任せろ!! はーっはっはっはっ!!」
「グギガゴガギ……!!」
「あ、なんだまだ居たのか。もう部屋に戻っても良いぞ?」
「■$%〆●€○!!!!」
視線で人が殺せそうな凄まじい凶相で睨みつける姫様。対する魔王はニコニコと満面の笑みで煽る。
今回、魔王はなぜかついてくるらしい。
最初は断っていたものの、コイツの行動を制限する術が(物理的に)ない為、最終的にはこちらが折れる形となった。まあ、コイツなら闇市だろうとダンジョンだろうと竜の巣だろうと散歩と大して変わらないのだろうが。
付いてくるのは良い。もうこの際諦めた。だが、姫様を煽るな。収拾がつかんだろうが……!!
そう叫びたい。というか一回叫んだ。だが無意味だった。二人は止まらない。火に油どころか火薬が突っ込まれたような燃え上がりを見せている。
何をしても無駄だった。むしろ何かするとヒートアップした気がする。なんでだ。
まだ出発してないのにもう疲れた……調査後日に回したい……だが一応極秘の緊急任務扱いだから今日中にやらなければ……
……勇者辞めて田舎で畑でも耕してたい……
「ふん! アンタなんか2回戦目負けたくせによくそんなに言えるわね! 負け犬の遠吠えかしら!!」
「えっ」
今なんて?
「な、なにっ!? 私が負けた……!?」
「ふふん。昨日の夜、パーティーが終わった後に、ね」
「う、嘘だ! 嘘をついているな! 私を動揺させようとしても無駄だぞ!!」
「ねえクリフ。昨日の夜ダンスの誘いに乗ってくれてありがとうね」
「え? あ、いえ。その程度のことなら別に……」
「ぅぁ……そ、そうだ! パーティーの後などルール違反だろう! よって無効だ!!」
「あら。誰が一言でも『このパーティーで』とか言ったかしら?」
「しょ、証拠は……」
「内容決めた時の録画あるけど、見る?」
「うぐぐ……!」
「勝利目前まで行ったのに浮かれて勝負忘れて負けたとか恥ずかしくないのかしら! 私なら恥ずかしくて部屋に引きこもるわね!!」
「あががががが………!!!」
呆然としている間に、いつの間にか攻守が入れ替わっていた。反撃を入れられて満足したのか姫様は嬉々として胸を張っていた。
「スッキリしたわ……まるで新年に家具を一新したような気分ね」
「あの姫様、決闘なんていつの間に終わらせたんですか?」
「え? ああ。言ってなかったっけ。昨日終わったわよ。勿論、私の勝ちでね!」
「お、おめでとうございます。流石ですね」
俺が知り得ない間に2回戦が終わってた事に景品の立場として少し複雑だが、姫様が勝ってくれてよかった。これで最終戦にもつれ込んだわけだ。
「それで、一体何の勝負を?」
「ダンス勝負よ」
「……ダンス?」
「ただのダンスの勝負じゃないわよ? クリフをダンスに誘って、先に一緒に踊った方が勝ちの勝負よ」
「なるほど」
通りで急に踊りに誘ったり、踊った後舞い上がるほど喜んでたのか。納得した。
魔王がパーティーでダンスを猛プッシュしてたのもそれだったんだろう。危なかった、あのままパーティーが続いていれば踊っていたかもしれない。
「ふぅ……スッキリしたら頭回ってきたわ。冷静に考えて王族を闇市になんて連れて行けないわよね。行ってもクリフの仕事の邪魔になっちゃうし。仕方ないから今回は見送る事にするわ」
「ご理解いただきありがとうござます」
魔王に反撃を喰らわせる事ができて冷静になってくれたようだ。
良かった、これでようやく仕事に行けそうだ。
「その代わり、今度一緒にお出かけしなさいよね!」
「スゥー…わかり、ました……」
仕事が派生して仕事が生まれてしまった。どうして仕事は生まれるんだろう。不思議だなあ。ふふ、なんでだろう。今猛烈に貴族と関わりのない仕事に転職したくなってきた。
休暇がゴリゴリと削れる音がするが、姫様の気が変わらない内に出よう……
「おい、そんな隅でしゃがみ込んでないで行くぞ」
「どうして油断してしまったんだ……」
「おい」
「幸せな結婚生活が……掴んだはずのウイニングバージンロードが……」
「………」
……説得するのも面倒だ、引きずって行くか。その内気を取り直すだろ。
■■■
闇市は必要に応じてできた市場だ。
表の市場の使用料を払えない人、表の市場から追い出された者、表の市場に置けない物を売りたい人。色んな理由で表の市場では活動できない人がこぞって集まるアンダーグラウンド。
そんなわけで当然治安が悪い。騎士団や警邏の巡回ルートから外れてたり、滅多に来ない薄暗い場所で開かれている。闇市の取り締まり強化の声が上がるのも頷ける。
「天気がいいからか人が多いな」
だが闇市は人気がある。
表より安い物があったり、掘り出し物、珍品に世間の目には憚られる物。───果てには、違法品なんて扱う所もある。
そう、今回の調査はまさにそれ。
違法品の調査と摘発。特に魔法増強薬の出所を探る為に来た。
金の動きが怪しいと副財務大臣も言っていたが、恐らく闇市の需要が高まってるのだろう。魔法増強薬が出回ってるなら納得だ。
こうしちゃいられない! さあ、気合を入れて王都を守るために立ちあがるんだ!!
「ちょっと横にさせてくれ……」
「立てよ」
「いや、本当にムリ……」
無気力にベンチに横たわる魔王。
2回戦が自分の慢心で負けた事にかなりショックだったのか、闇市手前の広場まで引きずって来てもこの調子だ。
このまま放置して行こうにも、いつの間にか手首を握られていた。そのため、この重し『ミシッ…』見た目もフィジカルもパワーも良すぎる魔王様を放って闇市には行けない。
「はぁ、闇市はただでさえ店が多くて時間かかるというのに……露店回り切れるか?」
ただでさえ姫様の説得で時間を食ってしまい、時刻はすでに昼頃。予定はすでに破綻している。
そろそろ仕事に取り掛からないと、後日に仕切り直しになってしまう。それだけは避けたいが……
「露店、だと……」
「ん?」
「今日の仕事は、露店を見て回るのか……?」
「あ、ああ。闇市の調査だからな。当然見て回るが……」
のそりと起き上がった魔王は、ギラリとした視線を俺に向ける。
「つ、つまり……つまりこれって……」
ガッと肩を掴まれる。
魔王の頬に赤みが出ており、呼吸もわずかに荒い。目もどこか血走っている。
「露店デートという事だな!!」
「仕事だ」
「さあ行こう早く行こう今すぐ行こう!! デート、楽しみだな!」
「仕事だ」
「ふふ、デート♪デート♪」
「仕事dあばばばば」
魔王は浮かれたようにスキップをしながら闇市に入って行く。手首を掴まれている俺は引きずられるように後を追うしかできなかった。
仕事、できるだろうか……
魔王のメンタルリセット(デート)
という事でデート回です。仕事だけどデートです。二人でお出かけしたらデートなんです。勇者にとってはバッドかもしれませんが。
高評価、お気に入り、感想、誤字報告等お待ちしております。阪神のアレ並みに喜びます。
「会話」と「会話」の間は
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詰めて
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1行あけて
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どっちでもいい早よ書け
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興味ないね……