独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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第27話 情報は宝石よりも価値がある

 『死神の落涙』

 あらゆるスキルを貫通する猛毒。

 それは暗殺からモンスター討伐まで広く活用される代物。

 デメリットを挙げるなら、独特な甘い香りと味がする事。とんでもなく希少で値段が張る事。

 服用すれば最後、眠るように死に絶える。

 

「……おいおい嘘だろ」

「………」

 

 眠るように静かにカウンターに顔を埋める魔王。その姿に思わず頬が引き攣る。

 くそっ、まさか魔王に毒が効くとは……!

 スキル貫通はさすがの魔王でも厳しかったか!

 

「おい、起きろ! おい!」

「起きれませんよ。飲んでしまえば最後なのですから……まあ、安心してください。味は保証しますよ」

 

 声の方に目を向ける。そこには先ほどの夢カワ女子バーテンダー(男)がいた。

 

「くそっ、あの夢カワ女子は演技だったか」

「ふふふ……目の前の情報量に気を取られた隙に油断して毒を煽ってしまうこの奥義。まさか破られるとは思いもしませんでしたよ」

 

 「さすがは勇者サマ」と慇懃無礼な態度で小馬鹿にするように拍手をする。

 この男、立ち位置的にただの下っ端ではない。おそらく幹部クラスか……

 

「……それにしても、随分と雑な登場だな。こそこそと暗殺でも仕掛けてくると思っていたよ」

「暗殺などしませんよ。ああ、誰にも知られず消す、という意味ならこれも暗殺になるんですかね?」

「なんだ、やれる気でいるのか?」

「やれないとでも? あなたは人類の中でも上澄ではありますが、規格外ではありません。これだけの戦闘員に勝てるのですか?」

 

 勝ちを確信しているのか、男は薄ら笑いを浮かべている。

 周囲には客に偽装した戦闘員。騒ぎになっていない所を見るに、下のフロアの人間も全員敵か。

 

「ふふ……くひひ……まさかこんな簡単に罠にハマってくれるなんて。あの勇者サマとあろう者が無様ですね」

「……罠?」

「ええ、ええ。闇市に、夕方に、貴族の子供が1人。それに違和感を覚えず追ってくる。果てには怪しい現場に単独で突入するとは……さすが勇者サマ、正義の人ですね」

「そこからか……」

「釣り針としてはデカすぎるとは思いましたが、どうやら無用な心配だったようで」

 

 発言の内容から察するに、あの少年は白。俺を釣るための撒き餌にされただけだろう。

 罠は……まあ、その可能性が半分くらいありそうとは思っていた。

 

 罠かもと思いながらも突入したことに、そう大した理由はない。

 ただ、一度引いて準備してから逃げられると、貴族連中が後でぐだぐだ文句を言うのは目に見えている。それなら、単騎で突入して罠ごと踏み潰した方が手っ取り早いし精神衛生上楽でいいなあとなっただけだ。

 

 それに最悪魔王を暴れさせる作戦もある。その時は一緒に生き埋めになるが。

 

「さあ、冥土の土産はもういいでしょう? 聖剣の無い勇者など簡単な仕事です。報酬もたっぷりと出てることですし、早く仕事を終わらせましょう」

 

 下卑た笑みを浮かべて近寄ってくる戦闘員たち。口々に金の使い道を話している。

 

 その様子に深いため息を吐く。

 こんな程度の低い罠などかけられ慣れている。

 俺を完璧に罠にかけたいなら、最低でも劇場型無知誘導三重連鎖自爆罠を用意すべきだった。無知誘導幽閉袋叩き罠はもう古い。

 

 まあ、なんだ。勘違いは正してあげなければいけないな。

 

「少しいいか」

「命乞いですか? 残念ですがそれは───」

「お前は鼻」

「は?」

「お前は腰、お前は顎、お前は膝」

 

 戦闘員に向かって1人ずつ指をさしながら体の部位を言っていく。

 

「な、なにを……」

「なにって……今から折る部分」

「は?」

「一応人類の守護者だからな……人類相手に命まではとらん」

 

 

───ただ、骨折ぐらいは覚悟しろ。

 

 

 有言実行にすべく戦闘員たちに向かって歩を進める。

 すると、先ほどの余裕が嘘のように消え、面白いくらいに狼狽えて後退(あとずさ)る。

 

「く、口だけだ! この数に勝てるとでも!?」

「俺が弱いとか、数で押せるとか、誰の入れ知恵かは知るよしも無いが……少し、舐め過ぎだ」

「思い上がるな! 聖剣もない貴様が、お荷物を抱えて勝てる…と……でも……」

 

 激昂していたバーテンダーだが、次第に語尾が小さくなっていく。目を見開いて顎が外れんばかりに大きく開ける。

 

「ぅうーん……きぶんわるい……」

 

 そこには、猛毒を煽ったはずの魔王がゆっくりと、二日酔いのような状態で起き上がっていた。

 少し顔色が悪いだけで特に支障はなさそうだ。

 

 そんな『死神の落涙』は希少性からあまり知られていないが、実はスキル貫通以外にこれといった強みが無い()()

 一般人ならともかく、生命力が高ければ耐えれる。正直名前負けしてるアイテムだ。

 生命力が低めの俺でも1日横になる程度。魔王ならほぼ無効化、良くても乗り物酔い程度の効果しか望めないだろう。

 

 『死神の落涙』を俺に使うということは、敵はプロではないことは明白。暗殺慣れしている人間に使うアイテムではない。

 勇者の情報の欠如、碌に知らないアイテムを本番で使う雑さ、勝利を確信して目の前に現れてベラベラと計画を語る未熟さ……ありとあらゆる点で粗末。

 

 こんな組織が良くもまあここまで大きくなれたものだと逆に感心してしまう。

 運が良かったのか、王都のお膝元で逆に警戒網からすり抜けれていたのか……どうでもいいか。

 さっさと全員捕まえて仕事を終わらそう。

 

「ようやく起きたか。起きたところで悪いが、頼むから何もするなよ。魔力も使うな。いや冗談抜きで本当に頼む」

「わかった」

 

 それだけ言うと、魔王は椅子を並べて横になった。

 なんというか、やけに素直だな。少しは駄々をこねられると覚悟してたんだが……

 

「どうした、お前らしくない。毒でダメージでもあるのか?」

「今そういう気分じゃない……」

「気分ってお前」

「隠し通路のオシャレ感と、クラブハウスの

イケイケ感と、バーのリア充感でもう、ダメ……」

「その顔色、毒の影響じゃねーのかよ!?」

 

 効かないとは思ってたけど全くのノーダメージとは思ってなかったわ!

 

「こんな状況でコントなど、コケにしているのか貴様……! 潰せっ! たった2人、囲んで叩き潰せ!!」

 

 バーテンダーの怒号とも取れる号令で、逃げ腰だった戦闘員が一斉に立ち向かってくる。

 

 

「あ゛?」

 

 

 時が、止まった。

 

 先ほどの喧騒が嘘のように静まり、皆一様に石像と見間違うかの如く静止している。

 不機嫌な魔王に無暗に近づく愚行。正に寝ている虎を叩き起こすような恐れを知らぬ所業。

 その報いとして待っていたのは、物理的な圧を感じるほどの魔力放出。

 

「どこのだれだか知らないが、今は気分が悪い。失せろ」

 

 腰を抜かした相手を冷めた目で一瞥すると、興味を無くしたのか再度眠りについた。

 こうしてるとちゃんと魔王という感じなんだがなあ……

 

 何はともあれ、手間が省けた。

 俺は俺の仕事をすべく地面にへたり込むバーテンダーに近づく。

 

「おい」

「ひ、ひぃ……た、たすけ……」

「帳簿を置いてる場所はどこだ?」

「へ……ば、バーカウンター裏の事務室に……」

「どうも。ああ、逃げるなよ? 逃げたらもっと『バキッ』大変な目に……なんだ今の?」

 

 上から何かが折れるような異音。

 ……つい最近聞いた覚えがある音。

 

「おい。ここって空間拡張の魔道具で作っているのか?」

「は、はい……そうですが、それが?」

「そうか……そうかぁ……よし、全員立って出口まで走れ。なに、死に物狂いになれば人間なんとでもなる」

「は、はい?」

 

 俺は忠告したぞ。うん、人間やればなんでもできる。強く生きろよ。

 

「ひい!? じ、地震!?」

「て、店長! 壁が捩れてます!」

「崩れるぞ! 逃げろぉ!」

 

 

 

■■■

 

 

 

 やっぱり魔王に魔力を制限させるべきだよな……

 でも魔力を制限させる魔道具とか魔王が装備して3秒持つかな……

 だが魔力を使われると魔道具を利用している部屋とか崩れるよな……

 魔道具の値段もバカにならないし、対策考えないとな……

 

 そんなことを考えつつ、瓦礫の山と化した闇市の一画で右往左往している騎士を遠目に見つめていた。

 夜中に駆り出されてかわいそうに……騎士って職業はやっぱりダメだな。勇者を退職したらできるだけ遠く離れた田舎でキャベツでも作っていよう。

 

「全く、闇市で崩落なんて何かの聞き間違いだと思いたかったよ……」

 

 退職後の未来に想いを馳せていると、頭を痛そうにするスザクが声をかけてきた。

 

「君が居ながらこんな事態になるとは……いや、君が居たからかな?」

「どういうことだ」

「君って不幸体質だろう? どこに行ってもなにをやっても変なことに巻き込まれるよね」

「そんなことは………………ない」

「僕の目を見て言い切っても事実は事実だよ」

 

 認めない、認めてなるものか! 行く先々で罠にかけられたり、魔族と鉢合わせたり、事故にあったりするのは……そう、勇者という職業柄のせいだ!

 思えば勇者になってから俺の人生が狂い始めた気がする。やはり勇者なんて早々に辞職すべきなんだ!

 

 このゴタゴタが片付いたら辞めてやる! 絶対だ!!

 

「それで……何がどうしてこうなったんだい?」

 

 何がどうしてって……

 

「魔道具の暴走」

 

 ということにしておこう。魔王のことを闇雲に話すわけにもいかないからな。

 

「ああ……それでこの有様か。うーん、王城の件もあるし、魔道具になにか細工でもされているのか……事故が事件か……」

「かえってねたい……つかれた……メンタル的に……」

「おおっと、悪いね。すぐ終わらせるから」

 

 まだリア充パリピ空間のダメージが抜けないのか、瓦礫の上にも関わらず横になる魔王。

 魔王に一番ダメージを与えたのが毒よりも聖剣よりもコレって……未来の歴史家とかが聞いたら発狂するんじゃないだろうか。

 

 その後、簡単に事情聴取をした。

 と言っても行動ルートやバーの内部構造などを軽く教えただけだ。詳細は王城に帰った後の報告書……徹夜確定か……

 ……ああ、そう言えばこれを渡さなければ。

 

「忘れ物だ、受け取れ」

「なんだいこれは」

「偶然ばったりと見つけたお目当ての代物だ」

「……え、冗談のつもりだったんだけど。本当に掴んだのかい?」

「本当に偶然だ。このバーも元はボッタクリかと思って立ち入ったからな」

「偶然で見つけられた相手もかわいそうに……」

 

 手渡したファイルをパラパラと開く。すると、徐々に険しい顔になるスザク。

 それもそのはずだ。これは───

 

「例の薬の組織図と販路、販売履歴など……まあ大体全貌だな」

 

 敵の尻尾ではなく、心臓を捕まえていた。




戦闘狂の魔王でも戦闘をしたくない時もあります。
インフルエンザで体調ボロボロだといつもは楽しい事でもやりたくない。だいたいそんな感じです。

「会話」と「会話」の間は

  • 詰めて
  • 1行あけて
  • どっちでもいい早よ書け
  • 興味ないね……
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