独身魔王が婚活を仕掛けてきた! 作:はふへェ!
冷ややかな視線がアリュードを貫く。嘘偽り、冗談の一つも許さないと言わんばかりの眼力。
「アンタ今、なんて言ったか分かってるの?」
「犯罪の動機ですよね? 趣味ですよ。ただのちょっとした遊びでした」
「遊び……!?」
思わぬ答えに驚きを隠しきれない姫様。
それも当然だろう。ここまで大掛かりな犯罪の動機がまさかの『趣味』だ。
「どれだけお金を稼げるか、という遊びです」
「それがなんで犯罪につながるのよ!」
「真っ当な手段で稼げる金など高が知れている上効率が悪いからですよ」
タバコを踏み消しながら、淡々と説明を続けるアリュード。
「真っ当な手段は人脈や法などの障害があまりにも多い。その上、大きく稼ぐには必ず運も絡んでくる。面倒が多く、効率が悪い。最短最速で稼ごうと思うなら、やってられないというのが本音ですね」
「やってられないって……それをどうにかするのが、仕事なんじゃ……」
「どうにかしましたよ」
「………」
「法を守り法に守られていると、ローリスクローリターンの稼ぎ方しかできない。大きく稼ぐためにはどうするべきか」
微笑みを携えたまま、優しく教えるように言葉を紡ぐ。それがこの場ではひどくズレていて、不気味に見える。
「……犯罪に手を染めたのは」
「ハイリターンを得るため。名前を伏せる、顔も隠す、信用と責任を他人になすりつける……そのようにリスクをなるべく減らす立ち回りをすれば、
「組織を作ったのは……!」
「個人で稼ぐなど限界は知れています。最短最速で稼ごうと考えるなら、組織を作るのは当然の流れですよ」
「薬の密造も、闇市の活性化も、勇者の暗殺計画も……!」
「効率的なお金稼ぎの結果です。まあ、勇者暗殺未遂以外はそう大したことがない
姫様の威圧を事もなさげに受け流し、新しいタバコに火をつけるアリュード。
なるほど、通りで今まで見てきた悪党と違うわけだ。
アリュードは金に狂っていない。勿論薬にも、何に対しても狂ってはいない。
研究者の研究欲からの暴走、商人の金への執着、貴族の嫉妬からの犯行。
アリュードはこのような欲望からの行為とは違う。ただの趣味。気軽な息抜き、楽しい遊び。
金をどれだけ積み上げられるかという、心躍るゲーム。
ある意味、運が良かったのだろう。
アリュードが明確な悪意を持って組織を作っていたなら、それこそ国を揺るがす事態が起こっていても不思議ではない。
「……遊びなら、もっと別のことをやればよかったでしょう」
「もちろん、色々とやってみましたよ? チェスも、数学も、恋愛も。私には簡単すぎて面白くありませんでした」
「あいつ今恋愛が簡単って言わなかったか? なあ?」
「今重要な所だからちょっと黙ってような」
額に青筋を浮かべ、今にも殴り掛からんとする魔王を押し留める。
少し刺激されたら爆発するとか、どんな欠陥品なんだよ。初期不良で返品できたらなあ……
「その点、お金稼ぎは意外と難しいのですよ。大きく稼ぎすぎると、恨みや嫉妬を買います。下手に大きな犯罪をすると行政側に疑念を持たれます。しかし、リスクを負わなければ大きく稼げない!」
アリュードの姿は、ただ自分の好きな趣味を語る人間にしか見えない。どこまでいっても普通の、ただの趣味人。
「ほどよく難しく、ドキドキとワクワクを提供してくれる心踊る遊び……それが私にとってのお金稼ぎなのです」
その行為が犯罪なだけで。
この熱意がもう少し別の方面に……少なくとも犯罪ではない方面に向いていれば。そう思うと勿体無いと思ってしまう。
「……もう、いいわ」
「分かりました。と言うわけで悪いが、詳しい事情は騎士に言ってくれ……姫様」
「ええ。ディアナ・フォン・グレイズロッドが命じます。その不埒者を捕えなさい」
命令がハッキリと出されたことで、捕縛すべくアリュードの方へ向かう。
こうしなければ後々の処理が面倒なことに……具体的には書類の量が5倍ほど多くなる。
お役所仕事は得てしてこういう側面がある。上から下に命令がある方が報告も申請も色々と楽なのだ。
「いえ、それには及びません」
手を差し出して投降の構えをするかと思ったが、手のひらを向けて腕を前へ突き出す。
それは「静止しろ」というジェスチャー。反抗の意思表明。
「……どういうつもりだ?」
「忘れてもらっては困りますが、私も役職持ちの人間。待ち人が王族だという事は分かってましたよ」
「人質のつもりか? 戦闘経験のないお前が、
この距離に、この立ち位置。広範囲攻撃でもしない限り被害は出せない上、攻撃の前兆が見えた瞬間を抑えられる。
万が一があるとしても、横にいる魔王がなんとかしてくれる……ハズだ。たぶん。
「人質ですよ。この時間帯で王城にいるのは非戦闘員のディアナ姫だけ。さらに勇者以上の戦力は遠く離れた場所にいる」
「……増員は見込めないと」
「そのように配置しておきましたから」
副財務大臣の権力か……厄介だな。
しかし、それでもこの状況で余裕を見せる理由にはならない。
趣味で犯罪を犯すような人間だが、話を聞く限りリスクとリターンを計算する慎重なタイプ。
圧倒的不利なこの状況をひっくり返す何かがある。
「確かに勇者は強い……ですが、王族を守りながら、増員がないなら……勝機は十分!」
その瞬間、大きな振動に襲われる。
この揺れは、爆発? ……! いや、これは……!
「じ、地震!?」
「姫様、下がってください!
「おお、これは……!」
「目を輝かせるな! お前も下がってろバカ!!」
「す、少しくらいなら……」
「大人しくしてろ! 後でなんかやってやるから!」
「言質だぞ! げーんち!」
「あー! ずる! ずるよ!」
「早よ下がれ!」
ぐだぐだギャーギャーと騒ぐ姫様と魔王を後ろの扉の前まで下がらせる。
そして、轟音ともに土煙が舞う。
「このような事態、想定していないわけがないでしょう?」
振動が止む。ガラガラと瓦礫が崩れる音がする。
眼前には見上げるほど巨大な影。それが土煙を掻き分けるようにして霧散させる。
「おいおい……さすがにこれは……」
「これぞ我が最終兵器! ギガント級ゴーレム! 『S.R.エクスカベーター』!!」
人の身には有り余るほど長大な廊下の幅の半分を占め、首が疲れるほど上を向く必要があるほどの巨大なゴーレム。
そして、そのゴーレムの手のひらの上に乗り、不敵な笑みを浮かべるアリュード。
なるほど、大きさは強さに直結する。このサイズのゴーレムがあるならば、余裕を見せるのも納得がいく。
しかし、疑問が残るな───
「ゴーレムならば城の結界に弾かれるはずだが……」
「ああ……アレは『一定以上の速度と質量』『登録外の攻撃魔法』を弾く魔道具。つまり、結界の中に仕込んでいればどんな速度も魔法反応も障壁になりませんよ」
「……は?」
結界をすり抜けるため、使うかどうか分からない巨大なゴーレムを、わざわざ敵陣の地下に……?
「む、無駄がすぎる……リスクも、費用も……!」
「ふふふ、保険は徹底的にかけておく主義でしてね。リスクを承知で用意しましたよ」
「保険なら逃走用の魔道具でいいだろ!? わざわざゴーレムなんて使わなくても!!」
「経費削減ですよ! ゴーレムの使い道なんていくらでもありますからね!」
「悪党のくせにセコいやつだな……!」
真面目に商人でもやっていればいいものを……!
なんでこう、変な方に振り切れるんだ!
「それに、守護対象への脅威がなければ、逃走すらままなりませんよ。特に騎士団長殿を相手にするなら」
それは……まあ、そう。
「さあ……悪あがきをさせてもらいますよ!」
Q.非戦闘員が
A.相手の護衛対象ごと広範囲攻撃に巻き込んでいる隙に高速移動で感知範囲外に逃げられれば……まあ、成功率1割あればいいなあ。
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「会話」と「会話」の間は
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詰めて
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1行あけて
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どっちでもいい早よ書け
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興味ないね……