独身魔王が婚活を仕掛けてきた! 作:はふへェ!
聖剣『無銘』。
勇者クリフが背負う
その聖剣は折れず、曲がらず、砕けない。
しかし剣として見ると切れ味の悪い鈍。
聖なる力があるため聖剣とされているが、対魔族魔物に特攻があっても切れ味がゴミすぎて使い勝手が悪い。
制作者不明、製作年度不明、製作過程不明、魔術解析断念、唯一理解できたのはこの聖剣は狂気にも思える執念の果ての結晶であることのみ。
特に見どころのある剣ではない。とてもではないが、勇者が背負うに相応しい剣ではない。
しかし、この聖剣は世界一の鈍である。
この聖剣の唯一の特異性、不壊。
どんなに無茶をしようとも壊れない。そのため、膂力さえあれば理論上は万物を切り裂く絶剣。
であるならば、この聖剣は勇者クリフではなく、規格外の膂力を持つ騎士団長アイラ・フォン・グレイズロッドが持つに相応しい。
しかし、騎士団長は王族である。前線に出すには立場が許さない。
そういった理由から、最前線にいる勇者クリフが聖剣を握っている。
勇者クリフも人類全体で見れば上澄である。けれども、聖剣を扱うには膂力が不足している。
この問題を解決するにはどうするか。
聖剣を十全に扱うためにできる事はなんだ。
辿り着いた答えが——
「シィッッ!!!!」
「くっ、装甲を一撃で……!」
——遠心力による、威力の補完!!
鎖鎌から着想を得たこの鎖聖剣のポテンシャルは、騎士団長の攻撃力に比肩する!!
「せ、聖剣にこんなふざけた真似を……!! 教会が黙ってませんよ!?」
「だから今まで使ってなかっただろう」
アリュードの指摘の通り、この戦い方は「勇者の戦い方ではない」と教会や国の上層部からストップがかけられている。
しかし、有用性は確かなため『目撃者が事情を知る者のみ』の場合において使用許可が下った。
勇者が人気商売な面もあることは分かるが、俺の安全とどっちが大事なんだ……人気の方なんだろうなぁ……
「そもそもこんな情報、私は知りませんよ……!」
「財務大臣なら知っているが?」
「っ……! ですが、攻撃力が上がったとしても、防御力は変わりません! 一撃が当たれば終わりです!!」
「それはそうだ……だが、当たればの話だがな!!」
ゴーレムの攻撃が激化する。
まるで子供の癇癪のような暴れ方。洗練された武とは程遠い。それでも、その攻撃力は脅威に値する。
だがしかし、その無茶苦茶な攻撃は勇者の身には一度たりとも触れられない。むしろ、一度動くたびゴーレムに深い傷跡が増えていく。
動きながらでは一刀両断とはいかないか……あと60秒、間に合うか?
「あ」
そんな事を考えていたせいか、威力が足りず聖剣がゴーレムに弾かれた。
鎖聖剣、やっぱり使いにくいな……!
「ここだ!!」
アリュードはそれを見逃さず、一瞬の隙をついてきた。
速さ重視のコンパクトな攻撃。一度で仕留め切る方向から、ダメージの蓄積に狙いを変えてきたか。いい狙いだ。
だが——
「——惜しい、残念賞だ」
俺とゴーレムの間に一本の鎖が割り込む。そのピンと張った鎖に攻撃が当たる。
その瞬間、俺は
「私の攻撃を利用して……!」
「中々に上手いだろう? 鎖を利用した立体機動」
「この状況で曲芸など……舐めてますね」
「いいや、舐めてなどいない。これもれっきとした戦法さ。その証拠に、
「っ!」
アリュードたちを中心に、鎖が廊下を支配する。
緻密に、複雑に張り巡らされた鎖はまるで蜘蛛の巣のような不気味さすら感じさせた。
「いつの間に……!」
「戦闘の興奮で視野を狭めていては一流たりえないな。ご自慢の機体が泣いているぞ」
「言ってくれます、ねっ!!」
怒りからか、手頃な瓦礫を投げつけてくる。豪速球超質量のそれは、下手な遠距離攻撃をも凌ぐ死の礫。
それをシャンデリアから鎖に飛び移り回避する。
不安定な鎖の上、俺にとっては上等な足場だ。それが無数に張り巡らされているこの廊下は、すでに
「悪いが、制限時間があるのでね。最速で行かせてもらう」
「なにを……っ!?」
相手の返事を待たずに鎖を手繰る。
鎖同士が干渉し、聖剣は複雑怪奇な軌道を描いてゴーレムに襲いかかる。
アリュードは何をされているかも分からず、丸くなりながら身を守るので精一杯。しかし、その間にも聖剣が傷跡を増やしていく。
「っ……おおおお!!!」
この状況を打破するためか強硬策に出てきた。攻撃を無視して俺に一撃を加えようと言う算段か。
悪くは無い。だが、良くも無い!
一直線に突き進んできたアリュードは、俺に辿り着く直前で顔面から倒れ込んだ。
「なん……!?」
「足元注意、だな」
「ぐっ……これは、鎖……!?」
ゴーレムの足にぐるりと巻きついた鎖。それが足を引っ張りバランスを崩した原因だと理解した。
アリュードは乱暴に鎖を引きちぎり、立ち上がる。
「くそっ、変則的な攻撃ばかりして……それでも勇者ですか!!」
「勇者だって姑息な戦法とってもいいだろ! 偏見だぞそれは!!」
「なにが『勇気ある者』ですか! 『卑劣なる者』の間違いですよ!!」
「お、お前……っ!!」
地味に気にしていることを!!
俺だって、俺だって騎士団長みたいに正面からすべてを打破するような戦い方できればしているに決まってるだろう!!
「このままスクラップにしてやる!!」
「うおおお!!?」
■■■
上下左右前後から絶え間なく斬撃が襲いかかる。毎秒増えていく傷に焦りながらも抵抗を続ける。
瓦礫を投げつける、鎖で弾かれる。
拳を叩き込む、鎖の間を縫うように移動して避けられる。
鎖を引っ張る、それを利用されてすれ違い様に一撃を入れられる。
アリュードのあがきは全てが無意味。
戦闘と呼ぶにはお粗末。冷徹に淡々と聖剣が振るわれ、ゴーレムに傷が増える。ただそれだけ。
(戦闘など、とても呼べない! これは……処理!!)
カタログスペックはゴーレムが圧倒的に上。
データ上負けるわけがないほどの性能差。それほどの理不尽をいとも簡単に覆す。
驚くべきは勇者の戦闘センス。
未来視を疑うほどの回避性能、針に糸を投げて通せるほどの身体操作能力、そして意識の隙間を突く膨大な戦闘経験。
それらが合わさり、一度も被弾せずゴーレムを圧倒し続けている。
足掻くたび、もがくたびに無力さを痛感する。何もできないという現実を突きつけられる。
3手先、4手先を読むも読みは外され、挙句は利用される。どんな手を打っても後手に回る。
ゆっくりと底なし沼に沈むような絶望感がアリュードを襲う。
今までにない、予想も想像も全てを根底から覆す常識の破壊者。
簡単、難しいなどの話ではない。
弱いのに強い、勝っているのに勝てない、分かるのに分からない。
アリュードの優秀な頭脳でさえ理解不能と弾き出す。
(強い……! これが、『勇者』……!!)
ほんの数十秒前まで確信していた勝利は、いまや刻一刻と敗北へ天秤が傾く。
最善手を打ち、動きを修正し続けてこれだ。もしも当初の余裕のまま改善をしなければ、ものの数秒で終わっていた。
その事実に冷や汗と同時に笑みが溢れる。
「その右腕、プラプラして邪魔だろう……!!」
来る。そう思考すると同時に、身構える暇もなくゴーレムの右腕を根本から両断する。
急に右腕を失ったことでバランスが崩れ、堪らず片膝をつく。
アリュードは理解した。
このままだと、無様に負けると。
終わりが近づく。
世界で遊んだツケを支払わされる。この取り立てからは逃れられない。
明るい未来設計は暗く閉ざされる。
これから先の人生をつまらない灰色で埋め尽くされるだろう。
——その事実がなによりも心躍る!!
「これで……!」
「——謝りましょう」
「なに? 今更投降か?」
「私は、あなたを侮っていました。
アリュードの心にあったのは、絶望を遥かに凌ぐ歓喜の声!
世界に退屈し、暇つぶしに手を出したお金集めゲーム。だがそれは、真に心躍るものではなかった。暇を潰せるだけの手慰み。
そんなお遊びとは比べ物にならないほどに脳内麻薬が分泌する。
アリュードは分析と予想の天才だった。
全ての物事の結果が始まる前から見えていた。
本来格上の人間すら思い通りに動かすなど他愛のない事。格下は話にすらならなかった。
思い通りにならない、想像を超えてくる、見えていた結果を覆される。
アリュードにとってそれは得難い経験。
そして、何よりも求めていたもの。
「故に、全身全霊で『勇者』を打倒しましょう」
アリュードは心赴くままに、保護ケースを叩き割りボタンを押す。
それは本来使うはずがなかったもの。使うべきではないもの。
ゴーレムの傷口から魔力の漏出して青く揺らめく。
計器が異常を検知し、警告を知らせるメッセージが視界を埋める。アリュードはそれを見て
「……っ!! ゴーレムの魔力制限解除!? 自爆する気か!?」
「まさか、私は勝つために全力を尽くすだけですよ」
「正気じゃないな……!!」
一か八か、無制限の全力稼働!!
後先など考えない最終手段!!
先ほどまでのゴーレムとは、比較にならないスペックに
「さあ、私を退屈にさせないでくださいね」
アリュードくん
「私の思い通りにならないなんて……おもしれーやつ」
高評価、お気に入り、感想、誤字報告等お待ちしております。試験をコロコロ鉛筆で突破した時くらい喜びます。
「会話」と「会話」の間は
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詰めて
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1行あけて
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どっちでもいい早よ書け
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興味ないね……