独身魔王が婚活を仕掛けてきた! 作:はふへェ!
魔力を可視化させるほどに滾らせる。
今か今かと爆発する時を待つゴーレム。それ目の前にして嫌な汗が滲み出る。
魔力の制限解除。
魔道具やゴーレムの性能を100%を超えて引き出す機能。
しかし、当然のデメリットとして、この状態は制作者も安全を保証できないと断言している。
即ち、半暴走状態。
諸刃の剣と呼べる代物。
正直に言って想定外!
今までの傾向的に、アリュードは安全策を取ると考えていただけに、この命懸けの決断は読めなかった!!
嫌な空白の時間がこの場を支配する。
ゴーレムは動かない……いや、動けない?
攻撃を誘っているのか、はたまたトラブルでもあったのか。
事情は分からないが、相手が動かないという事は分かる。ならば、取る行動は一つ。
「先手必勝!」
相手が何かする前に倒し切る!!
鎖に力が伝わり、聖剣が宙を舞う。
そしてゴーレムの頭部を切り飛ばす——
——事はなく、ただ虚空を通り過ぎる。
「ッッ!!」
速……ゼロから!? この巨体で!?
防ぐ……無理ッ!
避ける!? どこに!?
右…左……下……下!
沸騰しそうなほど巡らせた脳が身体に一つの命令を送る。
全力で脱力。崩れ落ちるように前のめりで床に転がる。
その刹那、ゴーレムが頭上を通り過ぎる。
後ろから破壊音と瓦礫片。
「完全に不意を突いたと思ったのですが……」
「……不意は突かれたさ」
「だったら大人しく食らってくださいよ」
「当てられない方が悪いだろう」
「ふふ……確かに、あなたの言うとおりですね」
壁に埋もれていたアリュードは瓦礫をどかしながら立ち上がる。
「それにしても、逃走用の魔道具……魔力放出による高速移動か」
逃走用の魔道具と聞いていたため、転移系か移動系の魔道具だとはあたりは付けていた。
だが、あの巨体であの速度。
制限解除で出力を底上げしているとはいえ、あそこまでの高速移動は予想外。
王国が保有するどのゴーレムよりも性能が良いな……犯罪やるよりゴーレム職人になった方が稼げたと思うんだがなあ。
「戦闘用でもないだろうに、よく使えるな」
「なんでも使いますよ。あなたに勝てるなら!!」
魔力が沸る。
瞬間、ゴーレムが残像を残して消える。
本来ならば長距離高速移動用の魔道具。
それを攻撃に転用したタックルはもはや制御などはない。真っ直ぐ進んで体当たりするだけ。
それでも、その質量と速度は恐るるに足る。
だが、ネタは割れた。
性能もある程度把握した。
「後は斬るだけ」
引き伸ばされた時間の中、アリュードは見た。
瞬間、脳裏に過ぎるは破滅の未来。
勇者は避ける体勢ではない。直撃する。
勇者は微動だにしない。反撃はない。
勝利は揺るがない。この一撃で終わりだ。
それでもアリュードは己の予感に従った。
「っ……!」
急旋回で回る視界の中で見たのは、横一文字に深く切り裂かれた壁と柱。
先ほどまでいた場所を走る光の軌跡に、ドッと汗が噴き出る。恐怖と、緊張と、安堵と……ごちゃ混ぜの感情がアリュードを襲う。
「いい! とても良いですよ勇者クリフ!! 今のは危なかった!!」
その感情の濁流を、楽しげに笑う。
視界外からの致命の一撃。
音を極限まで消した、背後からの横薙ぎ。
時差を利用した予備動作が無いように見える不意打ち攻撃。
「まさか一度で合わせてくるとは……!! 予想外にも程がある!!」
「こっちだって切り札だったんだがな……なぜ初見で避けれるんだ……」
「勘ですよ!」
「勘かぁ……」
勘で避けられたらたまったものでは無いのだがな。
制限時間的に今ので倒しておきたかったのもあるが、お互いに消耗が激しい。俺は魔力が、向こうは機体が限界に近い。
おそらく次が最後の攻防となる。
速度で負けている敵に攻撃を仕掛けるのは愚の骨頂。カウンターが最善手。
しかし、今回に限っては時間が敵。相手もそれを理解している。
したがって、こちらから仕掛けるしかない。
明らかに不利な状況。さて、どこから仕掛けるか……
「安定は敵です。今の私には経験が足りない……だからこそ、不安定な状況が好ましい」
ありえない言葉が耳を打つ。
ありえない光景が目に映る。
「
ゴーレムが腕を振り抜く。
視界を埋め尽くすのは大小様々な瓦礫の雨。
「ちぃっ!」
有利を捨てて攻撃を仕掛けてくるとは……っ!
それもタックルではなく、瓦礫の投擲!
瓦礫の対応は鎖でできるが、次々と飛来する瓦礫に足を動かされている。
体力の消耗が狙いか? それとも思考を乱す事が……いや、これは……
「煙幕か!!」
瓦礫が廊下を破壊する。その影響で天井や壁が崩落、あたりに砂塵が立ち込める。
煙幕を張ったと言うことは次の攻撃がある。
瓦礫を投げ続けるのは悪手。位置を自分から知らせているようなものだ。
高速タックルも無い。視界が遮られているのは相手も同じ。後隙が大きい高速タックルは詰めに取っておくだろう。
ならば、ここから来るのは……近接攻撃!
後ろの砂塵からゴーレムが飛び出してくる。そして左腕を振りかぶる。
「読み通りだ!」
バックステップで攻撃範囲から抜け出す。
相手が振りかぶった後に聖剣を当てれば!
「いいえ、想定通りです!」
ぶわりと、
明らかにゴーレムの手が届く場所では無い。
なにが、なぜ、どうして。
思考が脳裏を巡る。
しかし、それより先に身体が動く。
なにも分からない。分からなくてもいい。
脅威が来ている!
防がなければ負ける!!
「っぉおおぉおお!!!」
「これを防ぎますか……っ!!」
聖剣を切り上げるようにして攻撃を逸らして弾く。
絶対に壊れない聖剣だからこその無茶な運用。
その期待に応えるかのように、聖剣は仕事をこなした。
「ですが、状況はこちらに傾きましたね!」
「ちぃっ……!」
聖剣は壊れない。だがしかし、持ち主はその限りでは無い。
勢いに負けて聖剣が大きく弾き飛ばされる。
「させません!」
「くそっ!」
聖剣に手を伸ばそうとするも、すんでの所でアリュードが攻撃を仕掛けてくる。
流石に見逃してもらえないか……って、あれは……!
「切り飛ばしたゴーレムの右腕か!」
「ええ! 頑丈で壊れにくい、一級品の武器ですよ!」
「お前っ、俺が聖剣を鎖で振り回したら苦情入れてきた癖に、随分と都合がいいな!」
「勝つためならば、私はなんでもしますよ!」
右手と左手で手を繋いで、ゴーレムの右腕を棍棒のように振り回す。
見た目のおかしさに目を瞑れば、最善手。これ以上ない有効打。
「くっ……! 仕切り直しだっ!」
ピンと張った鎖に攻撃が当たる。
そして引っ張られるように上へ加速して——
「それを待ってました」
ブーメランのように投げられたゴーレムの右腕は、俺の真上を通過して1本の鎖を断ち切った。
「2度の攻撃で鎖の大半は除去しました。ですが、あえて少しだけ残していたんです。——そう、上に逃げられる鎖を」
「〜〜っ!!」
「タックルを当てるためには、あなたの
鎖を失い、重力に従い落下しているクリフに告げる。
それは死刑宣告をする裁判官のように凪いだ口調で、それでいて難問を解き明かした数学者のような表情で。
楽しそうにも見えて、悲しそうにも見えて。
「私の勝ちだ!!」
ゴーレムの魔力が迸る。
最後の一撃と言わんばかりにパーツが悲鳴を上げる。しかしそれに構わず、一直線に飛び上がる。
クリフの最後の抵抗か、手を前に突き出し、防御の構えを取ろうとして——
「惜しい、残念賞だ」
——大きく横にズレた。
「は?」
手の中にあった
ありえない事に、思わず言葉を失う。
鎖はなかった、のにも関わらず空中で移動した。スキル? 魔法? いや、それならなぜ今の今まで……それに、聖剣に魔力を持っていかれていて魔力はもうないはず……
濁流のような思考の中、アリュードは見た。
月明かりに反射して、うっすらと見えるクリフが握る半透明の物を。
(あれ、は……
そして全てを察した。
この状況は仕組まれたものだと。
鎖で上方向の移動手段を見せたのも、
切り札と言っていた攻撃も、
聖剣を自身から遠ざけたのも、
2度目のタックルで見せた笑みも、
3度目のタックルで見せた焦った顔も!
すべてこの状況を作り出すためのブラフ!!
「っいいえ、まだです! 衝突後に立て直せばまだ……!!」
「いいや、終わりさ」
その言葉と共に、アリュードの目の前にキラリと光る物が壁に突き刺さる。
「置き土産だ、存分に堪能してくれ」
それは聖剣。
聖剣の柄が壁にめり込み、刃がゴーレムへ向いている。
「聖剣!? どうして操れて……っ、透明な鎖……!」
操縦レバーを握り込み——そっと、手を離した。
アリュードの優秀な頭脳は理解した。理解できてしまった。
もうすでに手遅れと。
そもそも、制御が効かない高速移動。
この距離では回避は不可能、無駄な足掻きにしかならない。
どかりと背もたれに倒れ込む。
思い通りにならなかったのも、予想を外されたのも、今日だけで数えきれないほどだった。
自分が手玉に取られるなんて、記憶がないほどの幼少以来だろう。
その事を噛み締めるかのように、穏やかな表情で目を瞑る。
「……楽しかったですよ、勇者クリフ」
心からの呟きは、爆炎に飲まれて消えた。
決着!!
いやー、アリュードくんは強敵でしたね!!
いやあの本当に強くて……学習能力の鬼というか、データキャラ(脳内完結型)というか……
敗因的には戦闘経験の無さ、うきうきハイテンション、舐めプ時に削られすぎた体力くらい……
なんだコイツ、もうお前が勇者でいいよ()
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「会話」と「会話」の間は
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詰めて
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1行あけて
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どっちでもいい早よ書け
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興味ないね……