独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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第33話 理性的ラストスパート!

 魔力を可視化させるほどに滾らせる。

 今か今かと爆発する時を待つゴーレム。それ目の前にして嫌な汗が滲み出る。

 

 魔力の制限解除。

 魔道具やゴーレムの性能を100%を超えて引き出す機能。

 しかし、当然のデメリットとして、この状態は制作者も安全を保証できないと断言している。

 即ち、半暴走状態。

 諸刃の剣と呼べる代物。

 

 正直に言って想定外!

 今までの傾向的に、アリュードは安全策を取ると考えていただけに、この命懸けの決断は読めなかった!!

 

 嫌な空白の時間がこの場を支配する。

 ゴーレムは動かない……いや、動けない?

 攻撃を誘っているのか、はたまたトラブルでもあったのか。

 事情は分からないが、相手が動かないという事は分かる。ならば、取る行動は一つ。

 

「先手必勝!」

 

 相手が何かする前に倒し切る!!

 

 鎖に力が伝わり、聖剣が宙を舞う。

 そしてゴーレムの頭部を切り飛ばす——

 

 

 

 

 

 

 ——事はなく、ただ虚空を通り過ぎる。

 

 

「ッッ!!」

 

 速……ゼロから!? この巨体で!?

 

 防ぐ……無理ッ! 

 

 避ける!? どこに!?

 

 右…左……下……下!

 

 沸騰しそうなほど巡らせた脳が身体に一つの命令を送る。

 全力で脱力。崩れ落ちるように前のめりで床に転がる。

 

 その刹那、ゴーレムが頭上を通り過ぎる。

 後ろから破壊音と瓦礫片。

 

「完全に不意を突いたと思ったのですが……」

「……不意は突かれたさ」

「だったら大人しく食らってくださいよ」

「当てられない方が悪いだろう」

「ふふ……確かに、あなたの言うとおりですね」

 

 壁に埋もれていたアリュードは瓦礫をどかしながら立ち上がる。

 

「それにしても、逃走用の魔道具……魔力放出による高速移動か」

 

 逃走用の魔道具と聞いていたため、転移系か移動系の魔道具だとはあたりは付けていた。

 だが、あの巨体であの速度。

 制限解除で出力を底上げしているとはいえ、あそこまでの高速移動は予想外。

 

 王国が保有するどのゴーレムよりも性能が良いな……犯罪やるよりゴーレム職人になった方が稼げたと思うんだがなあ。

 

「戦闘用でもないだろうに、よく使えるな」

「なんでも使いますよ。あなたに勝てるなら!!」

 

 魔力が沸る。

 瞬間、ゴーレムが残像を残して消える。

 

 本来ならば長距離高速移動用の魔道具。

 それを攻撃に転用したタックルはもはや制御などはない。真っ直ぐ進んで体当たりするだけ。

 それでも、その質量と速度は恐るるに足る。

 

 だが、ネタは割れた。

 性能もある程度把握した。

 

 

「後は斬るだけ」

 

 

 引き伸ばされた時間の中、アリュードは見た。

 

 微(・)笑(・)み(・)を(・)携(・)え(・)た(・)勇(・)者(・)の(・)姿(・)を(・)。

 

 瞬間、脳裏に過ぎるは破滅の未来。

 

 勇者は避ける体勢ではない。直撃する。

 勇者は微動だにしない。反撃はない。

 勝利は揺るがない。この一撃で終わりだ。

 

 

 それでもアリュードは己の予感に従った。

 

 

「っ……!」

 

 急旋回で回る視界の中で見たのは、横一文字に深く切り裂かれた壁と柱。

 先ほどまでいた場所を走る光の軌跡に、ドッと汗が噴き出る。恐怖と、緊張と、安堵と……ごちゃ混ぜの感情がアリュードを襲う。

 

「いい! とても良いですよ勇者クリフ!! 今のは危なかった!!」

 

 その感情の濁流を、楽しげに笑う。

 

 視界外からの致命の一撃。

 音を極限まで消した、背後からの横薙ぎ。

 時差を利用した予備動作が無いように見える不意打ち攻撃。

 

「まさか一度で合わせてくるとは……!! 予想外にも程がある!!」

「こっちだって切り札だったんだがな……なぜ初見で避けれるんだ……」

「勘ですよ!」

「勘かぁ……」

 

 勘で避けられたらたまったものでは無いのだがな。

 

 制限時間的に今ので倒しておきたかったのもあるが、お互いに消耗が激しい。俺は魔力が、向こうは機体が限界に近い。

 おそらく次が最後の攻防となる。

 

 速度で負けている敵に攻撃を仕掛けるのは愚の骨頂。カウンターが最善手。

 しかし、今回に限っては時間が敵。相手もそれを理解している。

 したがって、こちらから仕掛けるしかない。

 

 明らかに不利な状況。さて、どこから仕掛けるか……

 

 

「安定は敵です。今の私には経験が足りない……だからこそ、不安定な状況が好ましい」

 

 

 ありえない言葉が耳を打つ。

 

 ありえない光景が目に映る。

 

 

「私(・)か(・)ら(・)攻(・)撃(・)を(・)す(・)る(・)は(・)ず(・)が(・)な(・)い(・)と考えましたね?」

 

 

 ゴーレムが腕を振り抜く。

 視界を埋め尽くすのは大小様々な瓦礫の雨。

 

「ちぃっ!」

 

 有利を捨てて攻撃を仕掛けてくるとは……っ!

 それもタックルではなく、瓦礫の投擲!

 

 瓦礫の対応は鎖でできるが、次々と飛来する瓦礫に足を動かされている。

 体力の消耗が狙いか? それとも思考を乱す事が……いや、これは……

 

「煙幕か!!」

 

 瓦礫が廊下を破壊する。その影響で天井や壁が崩落、あたりに砂塵が立ち込める。

 

 煙幕を張ったと言うことは次の攻撃がある。

 瓦礫を投げ続けるのは悪手。位置を自分から知らせているようなものだ。

 高速タックルも無い。視界が遮られているのは相手も同じ。後隙が大きい高速タックルは詰めに取っておくだろう。

 ならば、ここから来るのは……近接攻撃!

 

 後ろの砂塵からゴーレムが飛び出してくる。そして左腕を振りかぶる。

 

「読み通りだ!」

 

 バックステップで攻撃範囲から抜け出す。

 相手が振りかぶった後に聖剣を当てれば!

 

「いいえ、想定通りです!」

 

 ぶわりと、真(・)横(・)か(・)ら(・)砂塵が押し除けられる。

 明らかにゴーレムの手が届く場所では無い。

 

 なにが、なぜ、どうして。

 

 思考が脳裏を巡る。

 しかし、それより先に身体が動く。

 

 なにも分からない。分からなくてもいい。

 脅威が来ている!

 防がなければ負ける!!

 

「っぉおおぉおお!!!」

「これを防ぎますか……っ!!」

 

 聖剣を切り上げるようにして攻撃を逸らして弾く。

 絶対に壊れない聖剣だからこその無茶な運用。

 その期待に応えるかのように、聖剣は仕事をこなした。

 

「ですが、状況はこちらに傾きましたね!」

「ちぃっ……!」

 

 聖剣は壊れない。だがしかし、持ち主はその限りでは無い。

 勢いに負けて聖剣が大きく弾き飛ばされる。

 

「させません!」

「くそっ!」

 

 聖剣に手を伸ばそうとするも、すんでの所でアリュードが攻撃を仕掛けてくる。

 流石に見逃してもらえないか……って、あれは……!

 

「切り飛ばしたゴーレムの右腕か!」

「ええ! 頑丈で壊れにくい、一級品の武器ですよ!」

「お前っ、俺が聖剣を鎖で振り回したら苦情入れてきた癖に、随分と都合がいいな!」

「勝つためならば、私はなんでもしますよ!」

 

 右手と左手で手を繋いで、ゴーレムの右腕を棍棒のように振り回す。

 見た目のおかしさに目を瞑れば、最善手。これ以上ない有効打。

 

「くっ……! 仕切り直しだっ!」

 

 ピンと張った鎖に攻撃が当たる。

 そして引っ張られるように上へ加速して——

 

 

「それを待ってました」

 

 

 ブーメランのように投げられたゴーレムの右腕は、俺の真上を通過して1本の鎖を断ち切った。

 

「2度の攻撃で鎖の大半は除去しました。ですが、あえて少しだけ残していたんです。——そう、上に逃げられる鎖を」

「〜〜っ!!」

「タックルを当てるためには、あなたの手(聖剣)と足(鎖)をもぐ必要がありました」

 

 鎖を失い、重力に従い落下しているクリフに告げる。

 それは死刑宣告をする裁判官のように凪いだ口調で、それでいて難問を解き明かした数学者のような表情で。

 楽しそうにも見えて、悲しそうにも見えて。

 

「私の勝ちだ!!」

 

 ゴーレムの魔力が迸る。

 最後の一撃と言わんばかりにパーツが悲鳴を上げる。しかしそれに構わず、一直線に飛び上がる。

 クリフの最後の抵抗か、手を前に突き出し、防御の構えを取ろうとして——

 

 

「惜しい、残念賞だ」

 

 

 ——大きく横にズレた。

 

 

「は?」

 

 手の中にあった勝利(もの)が忽然と消え失せた。

 ありえない事に、思わず言葉を失う。

 

 鎖はなかった、のにも関わらず空中で移動した。スキル? 魔法? いや、それならなぜ今の今まで……それに、聖剣に魔力を持っていかれていて魔力はもうないはず……

 

 濁流のような思考の中、アリュードは見た。

 

 月明かりに反射して、うっすらと見えるクリフが握る半透明の物を。

 

(あれ、は……透(・)明(・)な(・)鎖(・)……?)

 

 そして全てを察した。

 この状況は仕組まれたものだと。

 

 鎖で上方向の移動手段を見せたのも、

 切り札と言っていた攻撃も、

 聖剣を自身から遠ざけたのも、

 2度目のタックルで見せた笑みも、

 3度目のタックルで見せた焦った顔も!

 

 すべてこの状況を作り出すためのブラフ!!

 

「っいいえ、まだです! 衝突後に立て直せばまだ……!!」

「いいや、終わりさ」

 

 その言葉と共に、アリュードの目の前にキラリと光る物が壁に突き刺さる。

 

「置き土産だ、存分に堪能してくれ」

 

 それは聖剣。

 聖剣の柄が壁にめり込み、刃がゴーレムへ向いている。

 

「聖剣!? どうして操れて……っ、透明な鎖……!」

 

 操縦レバーを握り込み——そっと、手を離した。

 

 アリュードの優秀な頭脳は理解した。理解できてしまった。

 もうすでに手遅れと。

 そもそも、制御が効かない高速移動。

 この距離では回避は不可能、無駄な足掻きにしかならない。

 

 どかりと背もたれに倒れ込む。

 思い通りにならなかったのも、予想を外されたのも、今日だけで数えきれないほどだった。

 自分が手玉に取られるなんて、記憶がないほどの幼少以来だろう。

 その事を噛み締めるかのように、穏やかな表情で目を瞑る。

 

「……楽しかったですよ、勇者クリフ」

 

 心からの呟きは、爆炎に飲まれて消えた。




決着!!

いやー、アリュードくんは強敵でしたね!!
いやあの本当に強くて……学習能力の鬼というか、データキャラ(脳内完結型)というか……
敗因的には戦闘経験の無さ、うきうきハイテンション、舐めプ時に削られすぎた体力くらい……
なんだコイツ、もうお前が勇者でいいよ()

高評価、お気に入り、感想、誤字報告等お待ちしております。下駄箱にチョコレートが入ってた時くらい喜びます。

「会話」と「会話」の間は

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  • 1行あけて
  • どっちでもいい早よ書け
  • 興味ないね……
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