独身魔王が婚活を仕掛けてきた!   作:はふへェ!

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Q.なぜ3日も空いた、言え!
A.偏頭痛で寝込んでた&新作小説読んでました!!


ヨシ!!!!!!


第8話 勇者は実質アイドル

魔王と勇者の戦いは熾烈を極めた。

四天王を打倒した勇者と言えど、魔王には()()()()と思わされるほどの強敵だった。

しかし、勇者は諦めない。

彼は人類の希望を背負っている。必ず勝つために戦っている。

それが()()じゃなくてもいい。

勇者は今日勝つ事を諦めた。次に勝つため、敗走を選んだ。

なんとか隙を突き、魔王に捕らえられていた人が持っていた《時止めの宝玉》で魔王を一時と言えど封じた。

しかし、その代償はあまりにも大きく、同時に彼女の記憶も封じられてしまった。

彼女の記憶、ひいては人類の未来を取り戻すため、こうして魔王打倒の準備をしに帰国した。

 

 

 

 

 

 

という(シナリオ)で関所を何とか抜けることができた。

 

「なんとかなったな……」

「何というか、弱者扱いをされるのは歯痒いな……」

 

お互い疲れた顔をして道を歩く。

 

別れる時なんて、関所の兵士が涙を流しながら手をとって来て「どうか頑張ってください、応援してます!」とか言われたりしたからな……説明よりその後の対応の方が疲れたかもしれない。

 

《変身》の魔道具が無事だったのも良かった。

もしこれが壊れていたら、『魔族に改造させられた上に記憶も無くしてしまった哀れな人類』とかいう無理筋の説得をする羽目になっていたかもしれない。

 

まあその心配も杞憂で、防水防火防塵防酸……ありとあらゆるものに耐性がある特別性の魔道具らしい。

こんな多機能な魔道具聞いた事ないし、恐らく国宝級……いや、下手したら伝説級……アレが沼の底に沈んでいたら……うん、深く考えるのはやめよう。アレはただの魔道具だ。

 

「……んー」

「そんなキョロキョロしてどうした?珍しいものでもあったのか?」

「いや、なんだかその……視線が多くないか?」

「そりゃまあ、こんな2人が歩いてたら見てしまうものだろう」

 

かたや褐色銀髪の美女。作り物かと思わされる美貌に、周囲の男女問わず息を呑む。

かたや仮面の不審者。真昼間の道中にも関わらず舞踏会のような仮面を被り闊歩する様子に、周囲の男女問わず首を傾げる。

 

1人でも見てしまうのに、どう考えても共通点のなさそうな2人が並んで歩いている。それはもう、注目されて然るべきだろう。

 

「ところで、何でそんな格好をしているんだ?」

「……顔が売れすぎてるんだよ俺は」

「?」

「要は、顔が割れると人が群がって来てまともに歩けなくなる」

「そんなアイドルみたいな……」

 

実際、勇者はアイドル的側面がある。

人類の希望、魔王を打ち倒す存在、救世主……まあ、やたらと持ち上げられ持て囃される立場である。

 

そのため、街に出れば黄色い歓声が上がり、商品を買えばそれは在庫が無くなるほどの人気となり、露店では非公式の勇者グッズがズラリと並ぶ。

それが王都のみならず、人類圏おおよそ全てでだ。

 

まあ、つまりはだ。

 

生活の質(QOL)、割と最悪なんだよなあ……」

 

勇者はまともな生活なんてできない。少なくとも、変装グッズを常備する程度には。

 

後悔しても遅いだろうが、もし過去に戻れるとしたら一生騎士のままで居る。

勇者になって良かったこと、給料の高さ以外皆無だからな……

 

そんな事を考えていると、魔王はまだ怪訝な顔をしながらキョロキョロと周囲を見渡していた。

 

「どうした?そんなに警戒しなくてもちゃんと変身はできてるぞ」

「いや、そうじゃなくてな……その、やはり周囲の視線が少し変な気が……」

「そうか?」

「変わったものを見る目というよりも、あり得ないものを見たような……」

 

そう言われ周りを見渡してみる。確かに好奇からの視線や奇異を見る目というよりも、何か訴える様な、責める様な……

 

疑問に思いながら魔王に視線を向けて───納得する。

 

「とりあえず、服買いに行くか」

 

自分だけ綺麗な格好なのに、隣に全身ドロドロの美女を連れ歩く男がいたらそんな視線も向けるよな。

 

 

 

■■■

 

 

 

魔王は《変身》の魔道具で、頭と同じほど大きなツノは消え、尖っていた耳は丸くなり、どこから見ても魔族には見えなかった。

《幻惑》ではなく《変身》のため、あの大きなツノは物理的に存在しない。

そのため、なんの心配もなく人類用の服を着れる事は幸いだった。

 

「ど、どうだろうか……」

「あー、いいんじゃないか?」

「そっ、そうか。そうか……」

「奥様、大変お似合いですよ!」

「おっ、おおおお奥様なんてうへへへ……」

 

白を基調とした、刺繍が入ったワンピース型のドレス。生地も滑らかで、一見するだけで高級品だと分かる。

一応は魔族の王だし、この後王侯貴族と会うとなると下手な格好はさせられない。そのため高級店を選んだが……

 

「じゃあ今着てるのと、これとこれ……お会計で」

「はい、お会計で58万ゼニーです」

 

高い。ものすごく高い。

王都市民の平均月収が20万ゼニー。そう考えると、たった数着の服に対する値段では無いと思う。

 

「カードで」

「かしこまりました」

 

まあ払えるけど。

 

世界を救うという仕事(勇者)は給与だけはいい。月収が年収みたいな給与だ。

勇者の旅もほとんどが経費で落ちるから、本当にここ数年使う機会が無かった。金は溜まりに溜まっている。おそらく、そこそこ裕福な生活を死ぬまで送れる程度には。

 

「にしても、綺麗な奥様ですね」

「違います」

「ふふ、ではお付き合いされている方とかですか?」

「ただの知り合いです」

「ただの知り合いに60万ゼニーもする服を贈りませんよ」

 

普通はそうだろうが、本当に違うからやめてほしい。

 

「さて……そろそろ行く、ぞ……」

 

商品を受け取り、振り向く。すると、魔王は先ほどの店員と話していた。いや、あれは……

 

「とても可憐でお美しい奥様に、さらに魅力を高める特別な商品がございまして」

「そ、それを使えば……」

「ええ!これを使えばどんな倦怠期も一撃で吹き飛び、二人の関係はより強固に……」

 

魔王のチョロさを見抜いたのか、金払いの良さに目をつけられたのかは分からないが、ここぞとばかりに売り込まれていた。

 

「奥様には特別に、このお値段でご提供させて頂ければと」

「安い、買った!」

「買わん!行くぞ!!」

「ありがとうございました、またのお越しを」

 

魔王の手を取り、店を出る。

 

魔王がいいようにカモられてるんじゃない、そもそもお前無一文だろうが!!!

 

 

 

■■■

 

 

 

店を出てしばらく歩いた所、ちょうど良さげな広間に立ち寄った。

中心に噴水があり、周囲にベンチがあって落ち着けそうな場所だ。

 

「はぁ……全く、アレはセールストークだ。無駄に商品を買わされかけてたんだよ」

「わ、分かってる!分かっているんだが、その……いつもならこんなあからさまな美辞麗句、聞き慣れているんだが……お、奥様と言われて少し舞い上がりすぎた……すまん……」

「……まあ、こういうのはどこも多い。気をつけろよ」

 

なんというか、こう……シュンとされて謝られると、何も言えなくなる。

実害はなかったし、別にいいと言えばいいんだがな。ただ、あまりにもチョロすぎて、いつか『奥様』というワードで高い壺でも買わされるんじゃないかと心配になる。

 

「そ、それと……そのぉ……」

「ん?どうかしたか?」

「て、ててってぇ〜……!」

「どうした急に!?」

 

魔王が急に壊れた!?

 

「そ、そろそろ手を……!」

「手?……あ」

 

言われて気づく。

店を出てからずっと手を握っていた。

 

「す、すまん……」

「い、いやいいんだ。いいんだが……その、急はビックリするというか……」

 

モジモジと、いつもの暴力性は鳴りを潜め、乙女な反応を見せる魔王。

手を握っただけだろうが初心(うぶ)か!と言いたいが、こっちにも非があるし、なによりそんな反応されたら反応しづらい……!

 

「と、とりあえず時間もあるし、飯でも……」

「痴漢の後にナンパ?やるわね、流石だわ」

「うぉお!?」

 

突然の声に背筋が伸びる。

いや、痴漢だのナンパだの不名誉すぎるぞ!いったいだれ、だ……

 

「貴方が帰ってきたと報告があって、こうしてわざわざ出向いてみれば……手を握りあって楽しそうね、勇者様……?」

 

振り向くと、あまりにも見覚えのある少女が絶対零度の視線を向けていた。

そんな視線に俺は、

 

「ご、ご機嫌麗しゅう、姫様……」

 

頬を引き攣らせながら、そう応えるのが精一杯だった。




魔王様は初心でらっしゃる……
ええ!?自分でセクハラしに行くのはいいけど、急にされるとダメな系さいつよ唯我独尊行き遅れ気味社畜ケツデカ褐色魔王がヒロインなんですか!?

ああ!


ちなみに、姫様はロリです。やったね!
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