超昂大戦SS 瑠璃よ掴め! エスカチームが伸ばした手 作:環 藍河
※原作の今後の展開予想(=ネタ潰し)にならないよう配慮しているつもりですが、懸念される方は原作10章以降の公開まで、お読みになるのをお控えください。
どごおおお……っ…!
(くおおおお…おっ…!!)
石化の閃光にも怯まぬ、紅蓮の拳は…
幻魔王の核と、人類の絶望を打ち砕いた。
「あ…ああっ…、嘘っ…!?
本当に…ルビーが…アカリが…王を倒すなんて…!」
一対の子鬼の角を頭に宿す幻魔は、その瞬間、感極まる。
地上で戦士を見送った彼女は、空間を歪めて援護の槍を王に穿つ道を拓き。
そして幻魔を…自分たちを滅ぼす力を持つ少女の勝利を請い願い、そして叶った。
幻魔の少女オルバは、勇者の凱旋を涙で迎える。
「オルバちゃん…ただいまっ。」
同胞を滅ぼし得る力を秘めた人類を、恐怖に墜とし自らの贄とするべく裁きの刃を向けた幻魔は…。
紅き超昂戦士の伸ばした、共存の手を握った。
「…偽善者。」
(えっ…?)
声の方向に、姿は見えないまま。
オルバと繋ぐ右手もそのままに、世界がぐにゃりと沈む。
「人と幻魔の共存…はっ、ヒューマニズムってヤツね。」
侮蔑混じりのあざけりが続く。
(だ…誰?)
「私たちは、間違いながら、進む…か。
あんたはそれでいいんでしょ。でもね…。」
かっ。
「!!」
「その目に焼き付けなさい…!
私は…あんたのエセ博愛の、なれの果てよ…!」
暗黒の緞帳が落ちた、その目の前には…
今にも崩れ落ちそうに衰弱した…暴虐と獣欲と、理不尽の汚濁を一身に浴びた少女。
「る…瑠璃ちゃんっ!!」
がばっ…
ばしっ!!
「!?」
ルビーが反射的に伸ばした左手は、平手で弾かれた。
「その右手は何だああっ!!
幻魔と繋いだ逆の手で、私に嘘まみれの救いを向けるんじゃないっ!!」
「っ! …瑠璃ちゃん…!」
「幻魔といっしょを望んだあんたが、みんなから愛されてっ!
幻魔とちょっと一緒にいただけの私は、なぶり者にされてっ!
あんたが振りかざすエセ正義の裏で…私は慰み者にされたんだあっ!!」
絶句するルビーに、容赦なく瑠璃は憎悪を吐き続ける。
「ヘドが出るのよっ!
人類を救った、無敵で最強の戦士さま!
そして、吹き溜まりでこぼれた私みたいなのには、目を向けようともしない偽善者!」
「そんな…私は…!」
「仕方なかった…なんて言わせないっ!
私を見ろ! いるんだよ! あんたの正義に潰された犠牲者が、ここにっ!」
「くっ…!」
「それとも、何よ? 地球滅亡と天秤にかけたら、軽いんだから我慢しろって?
そんなの…寄ってたかって両腕押さえて、猿ぐつわで黙らせるのと、何が違うのよおっ!?」
「違うよっ! 私だって、瑠璃ちゃんを見捨てたりしないっ!
ただ…声が、聞こえなかった…。」
…!!
「うるさいっ!! 返せ…返せよっ! 私の大事なもの、全部…全部っ!
あんたが幻魔と繋いだ手は…私の家族も平穏も、純潔も断ち切った!
許さない…っ、絶対、許さないいいいっっ!!!」
(…っ!!)
……
…
「あっ…うっ、ううっ…う~~~っ…!」
街が闇に沈む夜明け前、アカリは悪夢にのたうち回り。
「うあ…あああああーーーっっ!!」
悲鳴のような動悸と、滝のような汗に耐えかね、意識を取り戻す。
(はあっ、はあっ、はあっ…!)
夢であることを確かめながら、呼吸を整えるアカリ。
昨晩、アカリは四道城から戻ったうららから、ネオノロイ党・ハルヒーナとして見たこと、聞いたこと、戦ったこと…全て、すべて、聞き尽くした。
瑠璃との出会い、変節、転機、決意。
そして何よりも…瑠璃の怨嗟。
(瑠璃ちゃんも…護りたい…護りたいよ…!
でも…私は、どうしたら…?)
幻魔を護り、瑠璃は仕方ないと諦めるか。
瑠璃が迫る通り、オルバたちと決別するか。
そんな哀しい二者択一しか無いのだろうか…!
…
……
(私…エスカレイヤーさんみたいに、みんなを護る力がほしいんです!)
その一心でダイビートに身を投じ、鍛えた拳と蹴撃は、いつだって大事な人を護るために振るってきた。
誰よりも隣人の幸せを願って走り続けてきた、アカリなのに。
…いや、だからこそ、何度も壁に突き当たった。
(どうして…? 長官を見ると…胸が苦しい…。
私…みんなのためじゃなく、自分のために戦っていたの…?
こんなの…私…正義のヒーローに、ふさわしくない…!)
(あの幻魔の子は、悪い子じゃありませんでした…だから、護りました。
幻魔だから悪いんだ、倒せばいいんだとは、私は思えないんです…!)
(私…力と技を磨き抜けば、いつかみんなを護れるって、思ってた。
でも、違う…。
初音さんの…心に秘める大事なものに寄り添えない私には…。私がどんなに強くなっても、救えない…!)
見えない自分、見失う初心、突きつけられる非力…戦うたびに湧き上がる、戦う意味への疑問。
駆け出しのひよっこ戦士だった当時なら、この迷いも自分の未熟のせいと、言い訳できた。
でも、謙遜では済まされない戦歴を重ねた今は…許されない。
(もう少し…。瑠璃ちゃんみたいに悲しむ人を、減らすために…。
私ができること、あるはずなのに…。)
ほのかな日射しとともに、街が目覚める刻が訪れ…。
いつしか考え疲れて、アカリは浅くまどろむ。
ノロイとの決戦で倒れ、辛うじて命を取り留めたものの、今も治療室で眠る瑠璃。
彼女が目覚めたときにかけられる声を…アカリは見つけることができるのだろうか…?
お立ち寄りいただきありがとうございます。筆者の環藍河です。
およそ1週間のご無沙汰…この作者としては難産ペースのブランクでしたが、その分だけ練り込んだ展開を描けますよう、全力で執筆・投稿して参ります。
そんなわけで今回は「マジメかー!」系、瑠璃がアカリに向けるヘイトを巡る物語をエスカチームサイドから描いてお届けします。
シリーズはこの序章から、第3章までの全4話を予定。どうぞご期待くださいませ。