超昂大戦SS 瑠璃よ掴め! エスカチームが伸ばした手   作:環 藍河

1 / 4
※原作第2部9章(2023年3月時点で最新章)までのネタバレを思いっきり含みます。
※原作の今後の展開予想(=ネタ潰し)にならないよう配慮しているつもりですが、懸念される方は原作10章以降の公開まで、お読みになるのをお控えください。


序章 拒まれた救いの手! 超昂戦士の迷い道

 どごおおお……っ…!

(くおおおお…おっ…!!)

石化の閃光にも怯まぬ、紅蓮の拳は…

幻魔王の核と、人類の絶望を打ち砕いた。

 

「あ…ああっ…、嘘っ…!?

本当に…ルビーが…アカリが…王を倒すなんて…!」

一対の子鬼の角を頭に宿す幻魔は、その瞬間、感極まる。

地上で戦士を見送った彼女は、空間を歪めて援護の槍を王に穿つ道を拓き。

そして幻魔を…自分たちを滅ぼす力を持つ少女の勝利を請い願い、そして叶った。

 

幻魔の少女オルバは、勇者の凱旋を涙で迎える。

「オルバちゃん…ただいまっ。」

同胞を滅ぼし得る力を秘めた人類を、恐怖に墜とし自らの贄とするべく裁きの刃を向けた幻魔は…。

紅き超昂戦士の伸ばした、共存の手を握った。

 

 

 「…偽善者。」

 (えっ…?)

 

声の方向に、姿は見えないまま。

オルバと繋ぐ右手もそのままに、世界がぐにゃりと沈む。

 

 「人と幻魔の共存…はっ、ヒューマニズムってヤツね。」

 侮蔑混じりのあざけりが続く。

 (だ…誰?)

 

 「私たちは、間違いながら、進む…か。

  あんたはそれでいいんでしょ。でもね…。」

 

 かっ。

 

 「!!」

 「その目に焼き付けなさい…!

  私は…あんたのエセ博愛の、なれの果てよ…!」

 

暗黒の緞帳が落ちた、その目の前には…

今にも崩れ落ちそうに衰弱した…暴虐と獣欲と、理不尽の汚濁を一身に浴びた少女。

 

「る…瑠璃ちゃんっ!!」

 

 がばっ…

 

 ばしっ!!

 「!?」

 

ルビーが反射的に伸ばした左手は、平手で弾かれた。

 

「その右手は何だああっ!!

幻魔と繋いだ逆の手で、私に嘘まみれの救いを向けるんじゃないっ!!」

 

「っ! …瑠璃ちゃん…!」

 

「幻魔といっしょを望んだあんたが、みんなから愛されてっ!

幻魔とちょっと一緒にいただけの私は、なぶり者にされてっ!

あんたが振りかざすエセ正義の裏で…私は慰み者にされたんだあっ!!」

 

絶句するルビーに、容赦なく瑠璃は憎悪を吐き続ける。

 

「ヘドが出るのよっ!

人類を救った、無敵で最強の戦士さま!

そして、吹き溜まりでこぼれた私みたいなのには、目を向けようともしない偽善者!」

「そんな…私は…!」

「仕方なかった…なんて言わせないっ!

私を見ろ! いるんだよ! あんたの正義に潰された犠牲者が、ここにっ!」

「くっ…!」

 

「それとも、何よ? 地球滅亡と天秤にかけたら、軽いんだから我慢しろって?

そんなの…寄ってたかって両腕押さえて、猿ぐつわで黙らせるのと、何が違うのよおっ!?」

「違うよっ! 私だって、瑠璃ちゃんを見捨てたりしないっ!

ただ…声が、聞こえなかった…。」

 

…!!

 

「うるさいっ!! 返せ…返せよっ! 私の大事なもの、全部…全部っ!

あんたが幻魔と繋いだ手は…私の家族も平穏も、純潔も断ち切った!

許さない…っ、絶対、許さないいいいっっ!!!」

  

(…っ!!)

 

……

「あっ…うっ、ううっ…う~~~っ…!」

 

街が闇に沈む夜明け前、アカリは悪夢にのたうち回り。

 

「うあ…あああああーーーっっ!!」

 

悲鳴のような動悸と、滝のような汗に耐えかね、意識を取り戻す。

 

(はあっ、はあっ、はあっ…!)

夢であることを確かめながら、呼吸を整えるアカリ。

 

昨晩、アカリは四道城から戻ったうららから、ネオノロイ党・ハルヒーナとして見たこと、聞いたこと、戦ったこと…全て、すべて、聞き尽くした。

瑠璃との出会い、変節、転機、決意。

そして何よりも…瑠璃の怨嗟。

 

(瑠璃ちゃんも…護りたい…護りたいよ…!

でも…私は、どうしたら…?)

 

幻魔を護り、瑠璃は仕方ないと諦めるか。

瑠璃が迫る通り、オルバたちと決別するか。

そんな哀しい二者択一しか無いのだろうか…!

 

……

(私…エスカレイヤーさんみたいに、みんなを護る力がほしいんです!)

その一心でダイビートに身を投じ、鍛えた拳と蹴撃は、いつだって大事な人を護るために振るってきた。

誰よりも隣人の幸せを願って走り続けてきた、アカリなのに。

…いや、だからこそ、何度も壁に突き当たった。

 

(どうして…? 長官を見ると…胸が苦しい…。

私…みんなのためじゃなく、自分のために戦っていたの…?

こんなの…私…正義のヒーローに、ふさわしくない…!)

 

(あの幻魔の子は、悪い子じゃありませんでした…だから、護りました。

幻魔だから悪いんだ、倒せばいいんだとは、私は思えないんです…!)

 

(私…力と技を磨き抜けば、いつかみんなを護れるって、思ってた。

でも、違う…。

初音さんの…心に秘める大事なものに寄り添えない私には…。私がどんなに強くなっても、救えない…!)

 

見えない自分、見失う初心、突きつけられる非力…戦うたびに湧き上がる、戦う意味への疑問。

駆け出しのひよっこ戦士だった当時なら、この迷いも自分の未熟のせいと、言い訳できた。

でも、謙遜では済まされない戦歴を重ねた今は…許されない。

 

(もう少し…。瑠璃ちゃんみたいに悲しむ人を、減らすために…。

私ができること、あるはずなのに…。)

 

ほのかな日射しとともに、街が目覚める刻が訪れ…。

いつしか考え疲れて、アカリは浅くまどろむ。

 

ノロイとの決戦で倒れ、辛うじて命を取り留めたものの、今も治療室で眠る瑠璃。

彼女が目覚めたときにかけられる声を…アカリは見つけることができるのだろうか…?

 

 




お立ち寄りいただきありがとうございます。筆者の環藍河です。

およそ1週間のご無沙汰…この作者としては難産ペースのブランクでしたが、その分だけ練り込んだ展開を描けますよう、全力で執筆・投稿して参ります。
そんなわけで今回は「マジメかー!」系、瑠璃がアカリに向けるヘイトを巡る物語をエスカチームサイドから描いてお届けします。
シリーズはこの序章から、第3章までの全4話を予定。どうぞご期待くださいませ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。