超昂大戦SS 瑠璃よ掴め! エスカチームが伸ばした手 作:環 藍河
※また、内容は9章の後日譚ですので、未公開シナリオを読む楽しみを奪われたくないとお考えの方は閲覧をお控えください。
あくまでIFストーリーとしてお楽しみください。
「言いがかりもいいところね。」
朝10時、エリーは憤慨する。
「うわ…バッサリだあ…。」
未明にうなされたアカリは、目覚めも悪く、頭も回らず…食堂でもご飯がろくに喉を通らない。
そんな様子を察したエリーが、対座して紅茶を嗜みながら…ビシバシ毒づく。
「アカリは何も、『全部の幻魔と仲良くしろ』だなんて言ってないわよ。現に、人を襲うはぐれの幻魔は、今もダイビートの討伐対象じゃない!」
それは瑠璃の言う「ダイビートが幻魔を護ったりするから、私はあんな目に…!」への、論理的な反駁。
「いちばん悪いのは瑠璃を嬲った奴。暴行を幻魔で正当化しようだなんて…下衆よ!
でも、瑠璃だって…いくら被害者だって、おかしいものはおかしいよ。ルビーやダイビートにこじつけて逆恨みなんて!」
(…。)
それでも、うつむき気味のアカリの表情は曇ったまま。
「…でも、こう論点整理しても。
アカリの悩みは…そこじゃないんでしょ?」
「…うん。そうだね…。」
ダイビートの…ルビーの選択で、誰かが苦しんだ。
それは避けられないことだと頭でわかっていても、その実例を突きつけられ、胸が苦しくなるアカリ。
「じゃあ…私しか言えないこと。聞いてね。」
「…えっ?」
すうっ…。
ティーカップをソーサーに戻し、深呼吸を一つ。
「幻魔は…箱船の、魔女の宿敵。
歴史の中でも、そして今だって…血を血で洗う戦いを続け、仲間を何人も奪った、不倶戴天の敵なのよ。」
「エ…エリーちゃん?」
豹変し、表情を強張らせたエリーが、周囲を脅かさない程度に絞った声で語るのは、思ってもみなかった怨嗟。
静かな、しかし凛と張った声が、かえって憤怒を強める。
「…忘れないで、アカリ。
幻魔は…私のパパとママを奪った敵なのよ…。」
「あっ…!!」
モノローグの怒りが、一転その矛先をアカリに。
がたん、ぐいっ。
「アカリ…どうしてオルバを…。
アカネだってタイガージョーだって、初音だって…。
幻魔なんか…どうして護るのよおっ…。」
エリーはテーブル越しに乗り出し、親友を睨みつける。
「どっ…どうしたの? エリーちゃん?!」
たじろぐアカリは、エリーの真意を測りかね、言葉を返せなくなる。
すっ…。
「ねえ…アカリ、どうする…?
私のため…魔女のために、オルバたちと決別して、って懇願したら…?
私のお願い、聞いてくれる…?」
(あ…ああっ…!)
両の手のひらをアカリの頬に寄せ、指先はアカリを試すように、顎からチーク、目元へと蠢く。
妖しくも哀しい魔眼でエリーは踏み絵を迫り…
むにゅっ。
(ふにゃあああっ!!?)
寄せた両手の指で、エリーはわんことじゃれるようにアカリの両頬を引っ張り、ぷにっと伸ばす。
「…ぷっ…ぶふっ…!」
「へ…へりーひゃんっ…?!」
「あははははははははっ!!
ど〜お? 迫真の演技!
アカリったら、泣き出しそうな表情!
私、オスカー獲れるかも〜っ!」
「ひ…ひどいっ!」
これもエリーの小悪魔っぷり…なのだろうか。
「…な〜んて、ねっ。」
してやったりの笑顔を、一転、真剣な眼差しに変えて。
「…でもね、これも魔女勢力の中に、少なからずある声。少なくとも、ヴィクトリア派では…ね。」
「…あっ…!」
魔女は一枚岩ではない。これまでも…今でさえ、ルビーとダイビートの行動には賛否ないまぜの評価がなされてきた。
むしろ、エリーが導くエリザベス派が、幻魔とも手を結びつつ動くダイビートと共同戦線を張ることの方が奇跡的なのだから。
「ま、私たちだって、いつまでも敵は未来永劫、敵のまま…って意固地ではダメだって、考えを改めたのよ。」
(…それは、エリーちゃんが…!)
かつて、エリザベス派の中でも意見が割れる中、エリーは異端視されながらもダイビートとの共闘を再三呼び掛けてきた。
でも、その考えを箱船の主流にするまで、どれだけエリーが骨を折ってきたか。
「あ…あのっ!」
(?)
「エリーちゃんは、どうしてダイビートをこんなに信じてくれたの? 瑠璃ちゃんみたいに、憎い幻魔と手を握る私たちを、どうして憎まないの?」
「ん〜…。」
人差し指を自分の唇に当て、しばし沈思黙考。
「アカリをじかに見てるから、かな?」
「…ほへっ?」
「…私はね、アカリが人道主義とかきれいごとでオルバたちを助けたわけじゃないことも、あの子たちをほっとけなかったいきさつも、全部見てるから。」
(あ…。)
「瑠璃が知ってるダイビートは…。
瑠璃が知ってるエスカルビーも。
きっとそれは、テレビやネットを通した、切り抜きの…イメージだけが一人歩きしたルビー。虚像よ?
…だからアカリは、いま憎まれてることを自分のせいだって思い詰めないの。そこに本物のエスカルビーはいないんだから、ね?」
「…エリーちゃん…!」
「ま、もーちょっと悩んでもいいと思うけどね。
顔が売れちゃったルビーには、この先もずっと付きまとう問題だしねー。ごちそうさま〜!」
「え…うええええっ?!」
少し冷めてしまった紅茶をこくりとあおり、結論を丸投げで退散するエリー。
でも、軽口に添えた絶対の信頼は…アカリの苦悩を少しだけ軽くしてくれた。
【続く】
作者です。
今シリーズではこのように、瑠璃の糾弾にどうダイビートが応えていくか、正義の形って何なのか、環なりの視点で切り取ってみます。
ホントに「マジメかー!」ですので、読者選んでしまうのかも…ですが。よろしければ、またお寄りください。