超昂大戦SS 瑠璃よ掴め! エスカチームが伸ばした手 作:環 藍河
※また、内容は9章の後日譚ですので、未公開シナリオを読む楽しみを奪われたくないとお考えの方は閲覧をお控えください。
あくまでIFストーリーとしてお楽しみください。
「お目覚めはいかがかな、忍者剣士ハルヒーナ。」
「…どん底よ。アカリと語り明かして、最高の寝付きだったのに。」
エリーがアカリを翻弄していた朝。
自室で高いびきだったうららは…。
忍び込んだヒビキに雁字搦めに拘束され、尋問を受けていた。
「アカリにだけ全部話せばいいと思うなよ。
事は閃忍の宿敵・ノロイに関わる事案。私からも若頭領に具申が必要だからな。」
「ふん…話すことは話すわよ。ヒビキの期待に沿う中身かは保証しないけどね。」
「…では単刀直入に。お前は今後、外法天りるかと…瑠璃とどうして行くつもりだ?」
「どうって…今まで通りよ。あの子がまた立ち上がるなら、私は瑠璃のやりたい事、示したい正義を、これからも支える。」
「それで、ダイビートと袂を分かつことになってもか?」
「それは…!」
りるかはダイビートを偽善とののしり、ルビーにもイノリにも憤怒の一撃を向けた。
そんな彼女が、たとえイノリとトキサダに救われた身としても…すんなりダイビートと共闘するとは思えない。
ましてや、瑠璃が外法天りるかとして極めようとする正義は、積極介入型。
侵略戦争から電車の割り込み乗車まで、一切の悪を根絶やしに。
現行犯はもとより、未遂の計画犯まで一罰百戒。
強すぎる実力を濫用せず、飽くまで地球人類の滅亡危機に関わる事案のみ介入するダイビートとは…トキサダとは、水と油だった。
ダイビートとネオノロイ党、どちらに与し、どちらと手を切るか。
ヒビキはうららに、非情の二者択一を迫る。
「ノロイは、我々が倒したノロイで終わりとは限らない。
クチナワもカンザエルも行方がわからない今…次の脅威への前哨戦はもう始まっている。
そして…りるかに改心が見られなければ、あいつはノロイの欠片集めを再開するだろう。」
「そうね。きっと…りるかは怯まず、欠片の力でカンザエルにお礼参りを…!」
「ともなれば、それを手伝うお前には閃忍の追っ手がかかる。
想破七閃から市井の上弦衆までことごとく、お前を追討しようと四六時中付け狙うだろうな。」
「うげっ!?」
つまりうららは…ダイビートの敵となる。
(あたしが責任もって瑠璃を説き伏せて、ダイビートの目指す正義のあり方をわからせる!)
…ヒビキが期待したそんな優等生な答えが、うららから返るはずもなく。
「…ダイビートにも、残る!
私はエスカトパーズ・兼ハルヒーナで…デュアルヒーローで行く!」
「そっ…」
一瞬あっけにとられたヒビキは。
「そんなご都合主義が通るかあっ!!」
ぐいっ、ぎりぎりぎりぎりぎりぎり…
「あいだだだだだだっ、痛あーーーーっ!!」
倍返しの怒気を込めた一喝と共に、縄を締め上げる。
「心底バカなのかっ、お前はっ!」
「バカで結構! いっそバカを極めてやるっ! 馬鹿力で両方放さないっ!」
「無理だと言っている!」
「無理じゃないっ!
瑠璃一人救えないで、なにがヒーローよっ!」
ダイビートと右手を。瑠璃と左手を。
繋いだ両手が逆向きに引かれ、真っ二つに裂かれそうなうらら。
だが…それでもその手を絶対に離さないと、全力で誓う。
「瑠璃は、全部を失った! 家族も、五体の満足も、純潔も!
でも、あの子は絶望しなかった!
掴んだ力を復讐に使って、社会の隅で私怨にまかせて生きたって、おかしくなかったのに!
瑠璃は…この力で、自分みたいな不幸から他の人を救うんだって、地獄の道に飛び込んだの!」
そのやり方は…正しいとは言えない。
そして、堕天使に利用され、異形復活の生け贄に捧げられた。
それでも。
「そんなあの子を、我が身かわいさで見捨てたら…
私のヒーロー魂が、一生私を許さないんだからあっ!」
「…ならば、我らと繋いだ手を放せ。
瑠璃と心中する覚悟なのに、ノロイを利用する者を断固許さない想破とダイビート…こちらとも手を繋ぎ続けるのは、虫が良すぎやしないか?」
ヒビキは、決して選んで欲しくない選択肢をうららに提示する。
「…それも断る。瑠璃の正義は、ダイビートや想破の正義と、矛盾しないもの!」
「何だとおっ!」
「やり方は違っても、ルビーとりるかは同じよっ!
悲しむ人を作らない、理不尽な暴力に挫けない!
二人の願いに、何の違いがあるっていうの!?」
「ああ…違わないな。だが、手段が違う。
いいか。このまま外法天が自分勝手な正義を振りかざし続けたら、自己矛盾で身を滅ぼすぞ。」
「…何よ、それ?」
「まず…全ての悪を裁くと言っても、りるかの体は一つきり。
見逃す悪があれば、その不公平は途端に、りるかへの失望と批判になって降り注ぐんだ。」
「そ…そんなの、警察や法律、政治だって同じよ! 社会の網にかからない悪に鉄槌を下すのが、外法天りるかなのっ!」
「全ての悪をか? 馬鹿げてる!
いいか、市民は無責任に、りるかに勝手な期待を膨らませる。
そして、りるかの正義は、誰にとっても正義なわけじゃない…。
そのギャップは必ず近いうち、あいつに牙を剥くだろう。
大衆の期待にそぐわない存在になった瞬間、りるかは『無能』と嘲り笑われ、そして『独善者』と…憎悪の的にされると言っているんだ。」
…!!
「そ…そのくらいの汚名、今までだって進んでかぶってきたわよ! 配信が炎上したって、りるかは信じる正義を貫き通してきたんだから!」
「もう一つ。
ダイビートが出しゃばらないのは、恣意で力を使わないための自制だ。
そこにりるかが、エスカトパーズの後ろ盾を持ったままリンチまがいの制裁を繰り返せば、ダイビート全体が危険視される!
今後ダイビートも上弦衆も、いつ若頭領の腹一つで実力行使に出るかわからない、社会の爆弾と見なされるんだぞ!」
「…っ!!」
外法天を黙認することは、事実上ダイビートの方針転換。
(これからはエスカルビーも、自らの判断で誰かを裁くのではないか。)
(上弦衆もその伝統を破り、現世の表舞台で裁きの手を隠さぬ存在に変わるのではないか。)
その懸念は…堤防の蟻穴の如く、組織の中も外も大きく揺さぶることになるだろう…。
「させないわよ!」
「なっ…!?」
「ダイビートは地球を護る正義の戦闘集団! りるかは悪を許さないワンマンヒーロー!
もしズレが起きるなら、あたしが間に入って、全部修正する!」
「…無理だ。」
「それでもあたしは! やるのっ!
だって…誰も瑠璃の本当の姿も気持ちも、見たことも考えたこともないじゃない!
だから、それがみんなに伝わるまで、あたしが盾になるのよ!
無責任な一般人が、りるかを切り取って勝手に笑うのも!
ダイビートや上弦衆が、本当のりるかを知らずに潰そうとするのも!
全部あたしが止めてやるんだ! それができる、唯一無二のあたしが!!」
「うらら…」
「それとも何よ! りるかと一緒にあたしも潰そうってハラなら、かかってきなさい!
忍者剣士ハルヒーナは…しぶといわよ!」
ぷっ…。
「ふん縛られたその姿でなければ、格好いい大見得なのだがなあ…」
「がっ…縛ったのは、あんたでしょーがあああっ!!」
しゅるっ。
「あっ…?!」
うららを縛る縄を解き、ヒビキは嘆息する。
「…アカリといい、お前といい…つくづく難儀な相棒を持ったものだ。
判った。この先の苦難をきちんと解って、それでも進むのなら、勝手にしろ。」
「ヒビキ…?」
「ただし、りるかが再び暴走し、本当に若頭領まで累が及ぶ事態になったら…。
私は、お前ごと外法天を斬り捨ててでも、若頭領を護るからな。」
「くどいっ! それもさせないから!
だって、正義は一つ! 目指す頂が一つなら、いつか道は繋がるの!
我らネオノロイ党は二人きりになっても、真のヒーローとして、ダイビートや上弦衆と同じ、覇道を征くんだからっ!」
ヒビキにも計算があった。
(今後、外法天が戦うなら、ノロイの欠片でではなく、若頭領の龍輪功で、だろう。)
それならばぎりぎり、上弦衆に討伐される事態は避けられる。
あとは、リンチが度を超さなければ…。
もっとも、それが危なっかしいのが、この2人。
究極独善爆走ヒーロー・うららと、それを師と仰ぐりるか…。
しゃきん。
「…やっぱり、今のうち未然に滅しておくか。」
「ゆ…友軍攻撃いいっ!!」
クナイをのど元に向け、笑っていない目でうららを見据えるヒビキ。
びーっ、びーっ、びーっ…!
《緊急事態発生。ポイントB−6、敵勢力出現。エスカチームに出動命令!》
「なっ…!?」
「いくわよっ、ヒビキっ!」
ノロイとの激闘も冷めやらぬというのに…。
それでも、サファイアとトパーズは戦いの地へと赴く。
【続く】
筆者です。第3話、お送りしました。
うららの行動力と強い意志、ヒビキの真面目さと現実主義に、二次創作書きとしては大変助けられまして、筆が勢い良く進みました。
次話完結編、明日の投稿とはならないかもですが、よろしければお立ち寄りを。またお会いします。