超昂大戦SS 瑠璃よ掴め! エスカチームが伸ばした手   作:環 藍河

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※原作最新章(第2部9章・2023年3月現在)までのネタバレ有りです。



第3章 それでも届かぬ手の先に…! 超昂戦士は今日も手を伸ばす

「どうして! どうして父さんを助けないで、出てきたんだあっ!!

ダイビートは地球は護っても、父さんのことなんか、どうでもいいって言うのかよおっ!」

幻魔を掃討したエスカチームを待っていたのは、居合わせた少年の涙混じりの罵声だった。

 

(…!)

ルビーをはじめ、4人とも…哀しく唇を噛む。

 

……

 

1時間前。

 

《こちらはダイビートです。現在、幻魔がこの地区に出現しています。市民の皆さんは指示に従い、至急避難してください。繰り返します…》

 

ビル街にはぐれ幻魔が出没し、エスカチームに出動命令が下された。

可能な限り迅速に避難を指示し、誘導スタッフを回したものの、エスカチーム現場到着時でも、逃げ惑う一般市民がまだまだ残っていた。

 

「ひどい…!」

「まだビル内にも逃げ遅れた人々がいる。避難完了の確認が取れるまでは、幻魔の掃討より市民の安全が優先だ。」

「ま、いつも通りかな。誘導の非戦闘スタッフは十分いるから、私たちは戦闘に専念。

可能な限り、私が前に出て魔眼で足止め。不意打ちの一撃で仕留められる確信が持てれば突撃。」

「ダメなら泳がせて、人質を取られないよう牽制しながら追い込み、でしょ? オッケー!」

「長官、問題なければ、作戦開始の許可をくださいっ!」

 

作戦を確認し、最後にルビーがトキサダに指示を仰ぐ。

 

『敵幻魔の位置と一般市民の生体反応位置は、こちらから指示する。

では…エスカチーム、戦闘を開始せよ!』

「「了解!」」

 

…だが。

知性の無い幻魔の対処は難航し、ことごとく逃げ遅れの市民に襲いかかる。

ルビーとトパーズは自らを盾にして割って入り、サファイアはクナイで幻魔を足止め。

アメイズはウィップで幻魔の矛先を真逆に向けて抗戦するも…。

何人かは間に合わず、負傷者を出してしまった。

 

そして…

 

 【クレエエエエッッ!!!】

 

「なっ…!!」

「まずい! 退避しろおっ!!」

 

 どごおおおーーーっっ!

 

最後のクレイド一体が、屋内で超昂戦士を道連れにしようと自爆。

辛うじてルビーの蹴撃で突き飛ばし、巻き添えはまぬがれたものの、ビルは上下の数階が崩落し、逃げ遅れの市民が瓦礫に閉じ込められる。

 

「げほっ、かはっ…!」

「やってくれたわねっ…!!」

 

『みんな、幻魔の反応は消滅した。警戒レベルを3に下げる。

エスカチーム、撤収だ。』

「長官っ!? まだ、一般市民が中にいますっ!」

 

《ルビーちゃん、私たちと交代よ。》

「!? その声は…ユイさん!」

 

通信に割り込んだのは、国防陸軍・龍造寺ユイ。

《うちの災害救助部隊が現着済みよ。あなたたちが幻魔を掃討してくれたから、突入が可能になったわ。

ここまでありがとう。あとは任せて。》

「…了解。エスカチーム、後方へ下がります。」

 

……

「エスカチームの…バカヤロおおおおっ!

助けてよおっ! 父さんを…僕の父さんをおっ!!」

 

そうしてビル入り口まで後退した4人に浴びせられたのは、少年の嗚咽と糾弾。

朝まで一緒だった父が、一転して幻魔の襲撃を受け、生命の危機に陥っている。

たとえ悪いのは幻魔であっても、その苛立ちとやり場の無い煩悶の矛先は…父を見捨てるかのように戦場から降りてきた超昂戦士に向けられる。

 

 ざっ…

(ルビー…?)

 

そのまま輸送車に戻り、警戒を維持しながら次の指令に備えて補給をするべきところを。

ルビーは小さな糾弾者に向き合い、少しかがんで目線を揃える。

 

「ごめんなさい。でも…私たちは、君のお父さんを助けられないの。」

「う…嘘つけえっ! あんなに強いのに…幻魔の王様だって倒せるルビーなのにっ、なんでだよおっ!!」

 

「私は、君のお父さんに覆い被さる瓦礫や天井をどかすことはできる。

でも、どかしたときにお父さんや他の人に別の大けがをさせたり、押しつぶしてしまったり…。

そこにある電線やガス管を壊して、みんなをかえって命の危険にさらしたり、ビルを崩してしまうかもしれないの。

私たちダイビートの超昂戦士は、そういう訓練を受けていないんだ。

だから、崩れたビルから人々を助けるプロの人たち…いま、君のお父さんを助けようと必死な人たちの、足手まといになっちゃうんだよ…。ごめんなさい。」

 

「じゃ…じゃあ、どうして…どうして救助訓練をしてこなかったんだあっ!

幻魔やアルダークと戦えば、父さんみたいな被害者にいちばん出くわすだろお!

助けるための勉強が必要なのがわかりきっていて、どうして訓練しなかったんだよおっ!」

「それは…!」

 

 びーっ、びーっ、びーっ!!

 

《緊急事態! ビル内部に接現力反応! 幻魔のスポットが生成されます!

 エスカチームに臨場要請!》

「ルビー! まずいぞっ、救助隊が…!!」

 

 「フラックスプロージョン・ビート・エヴォリューション!!」

 

 しゅっ…ぴきいいいんっ!

 

真紅の煌めきに包まれ、非力を詫びた戦士は次の刹那、自らの使命に燃え、翔ぶ。

その羽は輝き、空を突き抜け、救助の現場へ真っ直ぐに…!

 

……

 

「ボク、よく見ていてね。あれがルビーたちの頑張り…君のパパを助ける姿だよ。」

「あなたは…?」

「国防陸軍・特能戦技部隊、龍造寺ユイ。今は救助部隊の援護指揮をしてる。

いいかな? 私たちの部隊は、災害現場で二次災害を出さないよう…ビルの作りや医療知識、被災者の心理や法律までいっぱい勉強して、訓練を重ねているんだ。

でも…その分、幻魔やフーマンたちと戦えるような鍛え方は、できなくなるの。」

「あっ…!」

「戦闘のプロの超昂戦士たちが敵を追い払って、救助部隊の安全を確保してくれる。

そこからバトンタッチして、救助のプロの私たちが、君のパパみたいな人たちを助ける。

直接助けるのは私たちだけど…これって、エスカルビーたちが君のパパを助けたことには…ならないかな?」

 

「…うん。…うん…!」

 

「ルビー! スポット、閉じたぞっ!」

「もう幻魔は売り切れよっ! とどめ、刺しちゃえっ!!」

「クレイグくじ、ラストワン賞よっ! ルビーにあげるっ!」

「了解っ!」

 

瓦礫を崩さないように。救助部隊に爆風が届かないように。

アステライズフォームの爆発力をギリギリまでセーブし、斧で鉛筆を削るような繊細さでクレイグを捌いてきたルビー。

追って現着したサファイア・トパーズ・アメイズの援護で時間を稼ぎ、スポット消滅を確認して。

 

「どっ…せええええいいっ!!」

「クレっ…クレえええええっっ!?」

 

トパーズがハイキック一閃、最後のクレイグを空中に蹴飛ばすと。

 

「スターバースト・エスカレーションっっ!!」

 

六芒星に包まれた幻魔を縫い付けるように、幾重もの彗星が流れた。

それは救助成功を告げるシグナルのように天空に輝き、地上で見守る市民に安堵と歓喜をもたらした。

 

……

 

「父さんっ!」

担架で運ばれる少年の父を含め、ビルに取り残された市民は全員の安全が確認された。幸い、負傷者も命に別状無し。

 

「…ごめんなさい。お父さん、無事じゃなかった…ごめんなさい…!」

 

すくっ。

 

「ありがとうございました。ルビーの…エスカチームの皆さんのおかげで、父さんは助かりました。

それなのに、ルビーにひどいことを言ってしまって…すみませんでした!」

 

(あ…あれっ…?)

 

もっとなじられても当然だ…そう覚悟して降りてきたルビーは、詫びを詫びで返され、見事に肩透かしを食らった。

 

「ルビーちゃん。もしかして、帰ったら災害救助の勉強しよう、なんて思ってたんじゃない?」

「ユイさんっ!? な…何でわかって…?」

「こらっ! 貴女たちは、貴女たちしかできないことをやりなさいっ!

ダイビートの苦手分野は国防陸軍が全部面倒みているのに、台無しよっ!」

 

ユイが真剣に怒りを向けるのは…

「エスカルビーは、地球をむしばむ難病の特効薬なの!

それをいちいち、災害救助や小競り合いなんて、私たちでも対処できることに…!

むしろ、私たちの方がよっぽど上手な使い道にホイホイ使っていたら、次に来る巨悪に勝てなくなるでしょおっ!

わかったら、さっさと帰投して戦闘訓練!」

「ユ…ユイさん?」

「返事が無いっ!!」

「はっ…はいいいいっっ!!?」

鬼教官の血の騒ぎだった。

 

……

「ユイさん…凄かったね。もう私、タジタジだよ…。」

「百戦錬磨のなせる、芯の通った強い意志だったな。」

「確かユイさん…国防陸軍は、国際平和維持活動とか、国内外の震災被災地の救援とか、あちこちに何度も派遣されているわ。悲惨な…何千人、何万人と苦しむ場所で、私たち以上になじられてきたはずよ。」

「あ~…。

…まあ、そんな歴戦の勇者が『ルビーはもっと戦闘力を磨いて人を助けなさい』って言うんだから、これでいいんじゃない?」

「あはは…ガッツで頑張ります。

でも、普段の人助けまで禁止じゃ…ないよね?」

……

 

手の届く範囲を護ること…ときに誰かを見捨てるように見える、その振る舞いは。

誰かの心を動かし、その誰かが、ルビーだけでは…ダイビートだけでは手の届かない相手に、救いの手を差し伸べるかもしれない。

 

逆に、誰もができなかったことに、ルビーは勇敢に手を伸ばした。

そのことを知る魔女は、仇敵とも繋がるルビーの左手を取り、次代を拓く。

 

護りたい人を護り、貴女を護りたい誰かが貴女を護る。

その連鎖の先に、いつか瑠璃が手を取る日が来ることを願って。

 

【原作へ続く】

 

 




筆者の環藍河です。長文にも関わらず、完読いただきありがとうございました。
「マジメかー!」がこじれて、けっこう難文になっちゃいました。
できるだけ「スカッと感」もお持ちいただけるよう、バトル展開や心情表現のシンプルさ、表現の砕き方にも配慮したつもりですが…環なりの「これからの正義の話」、超昂大戦のキャンバスで自由にマジメに楽しく切り取って描けました。

…これで読者さま置いてきぼりだと、ただの自己満足なんですが…(怖いっ)。

さて次回作ですが、出だしの設定は完成しています。
膨らませて娯楽作品にするのに熟成期間を多少(数日~数週間)いただきますが、環自身も「完成させて早く読みたい」と思えるよう頑張って執筆してます。
公開の暁には、またお立ち寄りいただければ幸いです。
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