MILLENNIUM   作:のすとら

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1章 恐怖の大王
2012/12/22 マヤの大虐殺


 

 2012年12月22日。

 その日、全世界を巨大な津波が襲った。

 黒い津波が、あらゆるモノを飲み込み消し去っていったのだ。

 

 失われたモノの中には、当然人命も含まれる。

 死者行方不明者2,070,698,172人。

 約20億人。当時の世界人口がおよそ70億人であったことを踏まえれば、およそ全人口の3割を葬ったこととなる。

 

 人々は家を失い、故郷を失い、財産を失い、友を、恋人を、親を、子を、家族を失った。

 当然、世界は深い悲しみと絶望に包まれる。原因不明の大災害を前に、人々はやり場のない怒りを飲み込むしか無かった。

 

 だが、暫くして。

 この前代未聞の大災害は人の手によって引き起こされたことが明らかとなる。

 そう。これは大災害を超える被害を出したテロだったのだ。

 実行犯はたった1人の少女。彼女は自らを“マヤ”と名乗った。

 

 この日を境に、人々は既存の科学や常識で説明のつかない特異な力を持った存在がいることを知ってゆく。

 各国政府中枢を始めとした一部の者だけが知っていた情報は、遂に隠し通せなくなり、全世界全人類へと公表された。

 

 それこそは2000年生まれの超能力者たち。

 彼らは、ある科学者の論文を元に“MILLENNIUM”と呼ばれることとなる。

 

 

◇◇◇

 

 

「えぇ、そうです。ミレニアムは完全に私たちとは別の人種。新人類と称するしかない存在なのです」

「全く同じ生存圏と生活スタイル。自然界では、こういう場合に起きる事は決まっています。見事に分け合って共存するか、或いは――」

「――争って片方を滅ぼすかの二者択一です」

 

 

◇◇◇

 

 

 2012年の“マヤ事件”の事もあり、人々の感情は一斉に排斥へと向かっていく。

 理解の及ばぬ未知の存在への恐怖が排斥と差別を助長したのだった。

 

 一方で、その力を武力として利用しようとする者たちがいたのも事実。

 ミレニアム拉致事件は多発し、超能力部隊として少年兵たちが使われていく。

 

 また、ミレニアムの中にも様々な考えを持つ者たちがいた。

 平和的共存を訴える者。穏やかな日常を望む者。

 己の力を誇示しようとする者。

 

 そして――

 

「父母たる旧種に最大限の敬服と感謝を。そして誓おう。我々が次なる時代を担うと」

 

 ――旧人類を滅ぼそうと考える者。

 

 

◇◇◇

 

 

 それが運命だとでも示すように。

 世界は否応なく、救いなき戦争(マルス)へと突き進んで行く。

 500年前の予言の通りに。

 

 

◇◇◇

 

 

 この流れを変えられる存在はいない――。

 

『おい、これは本当に生きてるのか? あの大洪水以来、この結晶体の中でずっと動かないんだろ?』

『さぁな。ミレニアムの事は良く分からねぇよ。案外、ただ眠ってるだけだったりするのかもしれねぇし』

『……ま、そうだよな。しっかし、こんな小さな少女が大洪水を起こした大量虐殺の下手人とはねぇ』

『少女の姿をしてるだけの化け物だ。史上最も多くの人間を殺したんだからな』

『なあ、お前ら。ふと思ったんだけどさ。これって待ってるんじゃないか?』

『待ってるって何をだよ』

『……そりゃ勿論。恐怖の大王を、さ』

『おいおい、怖いこと言うんじゃねえよ』

 

 ――今は未だ。

 

 

◇◇◇

 

 

 2015年現在。

 “恐怖の大王”は未だ見つかっていない。

 

 

 

 

 

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