死亡代行サービス   作:ダイヤモンドリリー

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4713字。
今作からは前書きに書くことにしました。
新作です。
早速本編どうぞ。


0日目/2日目

2014年10月2日

 

「はぁ...今日も今日でブラックだ」

 

片桐陽介は会社から出て駅へと向かう。もうすでに深夜だ。早く家に帰って少しでも長く寝なければいけない。

 

「でも俺よりもひどい人たちもいるだろうし...ここで潰れてたらダメだよなぁ」

 

お前よりもひどい状況の人が世界には何人もいるんだと何度も何度も言われる。そう言われるたびに無理矢理自分を納得させて仕事をこなしていくのだ。

 

「明日は金曜日。明日さえ終われば休みが...来るわけないよなぁどうせ休日出勤だよなぁ」

 

すでに何連勤しているのかは覚えていない。覚えていたらそれはそれで気が滅入ってしまいそうだ。

 

「何かこう...劇的に何かが変わってくれればいいんだけど」

 

自分では動こうとせず、周りに変わってもらうことを考えている今のままでは何も変わらないのは明白である。無意識に考えている以上改善は難しい。

 

「いや、いっそ転職をいやだめだ辞めさせてくれると思えない」

 

そんなことを一人でぶつぶつと呟いていた片桐は横断歩道を渡り始める。ちゃんと青信号に変わったのは確認済みだ。そこまでの理性は残っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けれども、どれだけ自分で気をつけようとも無駄な時はある。

 

突然横から衝撃がくる。大きく跳ね飛ばされ地面を転がる。バウンドなんてしない。人体のほとんどは水分なのだ。グチャッと弾け飛ぶだけだ。

 

(なんだよ...これ)

 

片桐は奇跡的に意識を保っていた。でもすぐに気を失ってそのまま死んでしまいそうだ。

 

(走馬灯って見えないモンなんだな。見えてもろくなモン見れないだろうけど。あ、車逃げてく。ひき逃げしやがってあの車ァ!)

 

すでに体の痛みはない。走馬灯は見えないが思考だけが加速していく。

 

(あっ御守り落としてる...拾わなきゃ)

 

御守りといっても神社でもらうようなものではない。小さい頃から持っていた宝石のような石だ。誰からもらったのかも覚えていないけど、神秘的なものを感じて今までずっと持ち歩いていたものだ。

 

(クッソ体うごかねぇ。そりゃ当然だよなはねられたんだし)

 

なんとか御守りに手を伸ばそうとするも、体が思うように動かない。それでも、何故か御守りさえあれば自分を守ってくれるような気がして手を伸ばす。けれど、その手は届くことなく、そのまま力尽きてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年10月1日

 

「ッうわぁ!...へ?生きてる」

 

気がつくと、ベッドに横たわっていた。

 

「あれ俺って車に轢かれて死んだよな...もしかして夢だった?いやでもあの感覚はリアルすぎるし...ってあれ?」

 

英語が耳に入る。周囲を見渡しても自分以外には誰もいない。となると、英語を話しているのは自分ということになる。

 

「うわ日本語話してるはずなのに英語になってる。どういうことなんだこれ」

 

その独り言すら耳では英語になって聞こえている。その英語がわかるわけではないのでただのノイズのように聞こえる。

 

「ところでこの部屋はなんなんだ?あっ、カレンダーだ」

 

壁にかかってるカレンダーを見る。

 

「これも英語になってる...あれ2016年?2年経ってる。ってかほんとにどこなんだここ」

 

ざっと部屋を見渡してみる。見た目は普通だ。なんかベッドの足置くところらへんに布敷いてあるのが気になったが、それ以外は普通の家具しかない。書いてある文字は全て英語になっていたが。

 

「うわ靴履きっぱじゃんなんでさ」

 

部屋の中なのに靴を履いていたので脱ぐ。ここで少し気付いても良さそうだが、片桐はまだ気づかない。

 

「とりあえず部屋もう少し見てみるか...って鏡だちょっと待てなんだこれ」

 

鏡には、髪はボサボサで目の下にクマをつくり死んだ目をしている男の姿はなく、金髪碧眼の男が映っていた。

 

「これ俺?なんかのドッキリだったりする?」

 

わけがわからず慌てふためく片桐。

 

「あ、これ異世界転生とかいうやつ⁉︎いやでも英語だしな...てか憑依っぽい?」

 

「ちょっとあなた、早く準備して開店するわよー」

 

そんなことを呟いていると、1人の女性が部屋に入ってくる。

 

「へ?誰?」

 

「まだ寝ぼけてるの?というかあなたなんで靴脱いでるのよ本当に寝ぼけてるの⁉︎」

 

「え、あ、ごめんすぐ準備するよまってて」

 

矢継ぎ早に言葉をつなげていく。

 

「早く準備しなさいねー下で待ってるから」

 

女性が部屋から出て行く。

 

「英語の評定悪かったのになんか全部わかるな。てか準備って何すればいいんだ?」

 

ひとまず真っ先にやらないといけないことは靴を履くことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ひとまず情報を整理しよう)

 

片桐は調理をしながら思考する。

 

(まずここは多分イギリス。しかも現代。全然異世界とかじゃなかった。そして俺は料理店を開いている一般男性。奥さんがいて、息子が1人。客足はまぁまぁ。店の従業員は自分と奥さんと息子とバイト2人)

 

妻と調理をして、できた料理をバイトの人に配膳してもらう。

 

(英語だとか普段の仕草とかはこの人の記憶を少し覗かせてもらってなんとかなった。まさか料理までできるとは思わなかったけど。体が覚えているってことなのかな)

 

要するに、片桐は死んだ後この人に憑依してしまっているということか。何故か死んでから2年後にに。

 

(この憑依いつまで続くんだろ。ずいぶん幸せそうな暮らししてるっぽいしちょっと悪い気がする。できれば早く開放してあげたい。もし一生続くんだとしたら、奥さんには黙っておいた方がいいのかな。話すべきかちょっと悩む)

 

本人になりきることは簡単だろう。なんとなくだがこの人ならこうするだろうという直感が湧いてくるのだ。だから、初日にしてボロを出したのは朝の出来事くらいだった。

 

(イギリスの料理ってあまり美味しくないって聞いたけど...なんか食べてみたら違和感がすごい。自分の味覚には合わないのに体の味覚には合ってるぽくて、美味しいと不味いの感情が同時に出てなんか気持ち悪い。食文化には慣れないとまずいな)

 

料理人に憑依した以上これからも食べる機会はほかの人よりも多いだろう。日本人の味覚は早めに忘れなければならない。

 

(それにしても客足はまぁまぁなんだよな。片田舎にしては多いけど。隠れた名店的な感じの店なのかな。今度調べてみよ)

 

スマホはある。2年経ってるとはいえもちろん現代なのだから大体の人は持っているだろう。パスワードも記憶を覗けばわかるだろうし、生きていく上で何も不自由がないように思えた。

 

(ああでも息子に店を継ぎたくないって言われたな。別に無理して継がせるつもりはないって言ったらちょっと泣きそうになってから苦虫を噛み潰したような顔になってたな。ちょっと闇深い?)

 

息子のことが少し心配ではあるが、これからどうにかしていけばいいのだろう。時間はたっぷりとあるのだ。

 

(新たなセカンドライフを終わるまで楽しむとしますか。いつまでも続くのかは知らないけど。この前だって急に死んだんだしいつ終わっても不思議じゃない)

 

この命、何も知らない奥さんのためにもなんとしてでも守らなければならない。

 

しかし、身構えていても、不幸は向こうからやってくる。前回もそうだったのだ。

 

「もうすぐラストオーダーでーす。まだ頼む人はお早めにどうぞー」

 

奥さんが客に向かって呼びかける。その時のことだった。

 

扉の開く音がした。

 

「いらっしゃいませーもうすぐラストオーダーになりますのでご注文はお早めに...ヒッ!」

 

「金出せ」

 

帽子を深く被った男がナイフを持ってただそう言った。簡潔にして明快。強盗であった。

 

「客、従業員全てそこに集まれ。そのままじっとしてろ」

 

ナイフを突き付けながら言うので、客従業員ともども指定された店の奥へと集まっていく。

 

「ああ、お前は残ってろ。金庫とレジの中身を出してもらおうか」

 

「ああ、わ、わかったよ。金はやるから誰も傷つけないでくれ。頼む」

 

(ところでなんで金庫あるってわかったんだろ。店の奥にあるから客からは見えないはずなのに)

 

金庫の場所がわからなかったので、記憶を覗いてみたがとても客にはわからないであろう位置に金庫はあった。不思議に思いながらもひとまず金庫のもとに行き、鍵を開け中身の金を取り出す。

 

(思ったけどついてきてないなら全部持ち出さなくても良くない?ちょっとは残しておこう)

 

もともとどれだけ中身が入っていたのかは強盗にはわからないのだ。素直に渡すとしても少しは残しておかないとこの先困るだろう。

 

「早くしやがれ!」

 

「い、今持ってきますから!」

 

金庫を急いで閉めて今度はレジの方へ向かい、レジのお金も渡された袋に詰めていく。

 

(結構ずっしりくるけど1人で持ってくの大変そうだな。俺には関係ないけど)

 

お金の入った袋を強盗に渡す。袋を受け取った強盗はそのまま何も言わずに逃げ出していった。

 

「…はぁ、これでもう大丈夫か...?」

 

「大丈夫あなた?」

 

「俺は大丈夫だ。客も平気だよな。誰も死んでないよかったよかった」

 

「父さんでもお金が...」

 

「大丈夫だ全部持ってかれたわけじゃない。その前に通報しないとダメか」

 

命の危機を感じたがなんとか乗り切った。もう一度死ぬわけにはいかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察の事情聴取は夜遅くまで続いた。人相も伝えておいたので時期に捕まることだろう。

 

(まさか強盗に遭うなんて運がないなぁ。海外なのにナイフだったのが不幸中の幸いだな。銃じゃなくてよかった。ってリビング電気ついてる。ドア開きっぱだし消し忘れたか?)

 

電気を消すためにリビングに入ろうとするが、中から話し声が聞こえたので思わず入るのをやめてしまう。

 

(え、なんで入らないで聞き耳立ててるんだ俺?)

 

「ねぇ、あの強盗あなたの友達よね。顔あまり見てないけど声でわかったわ。あなた今日の強盗に一枚噛んでいるなんてことないわよね」

 

「そ、それは...」

 

「この店を継ぐのも嫌がっているし、それでかしら」

 

「……」

 

(なんだって⁉︎いや、たしかにそれなら金庫について知ってたのも納得できるけど、まさかそんなこと...)

 

「たしかにあいつには昔金庫のこと話したことあったけど、強盗とはなんも関係ないよ!」

 

「あら、私は友達とは言ったけど誰かまでは言ってないわよ。それなのに()()()ねぇ。あなたには誰か分かったのかしら」

 

「っ!」

 

(おいおいマジかよ)

 

「早く観念しなさい」

 

「俺はほんとになにも...っ!親なのに信じてくれないんだ。母さんは父さんとは違うんだ。父さんは認めてくれたのに母さんは!」

 

(ナイフ隠し持ってる⁉︎それをしちゃダメだ!)

 

勢いよく飛び出して間に割り込む。そんなことすればどうなるかは明白だ。

 

「グッ⁉︎」

 

「父さんなんで⁉︎」

 

腹にナイフが突き刺さる。

 

「お前に...親を殺して欲しくはなかった」

 

「父さんも俺の親だよ!どうしてこんなことを!」

 

「私を庇って...こんな...」

 

痛い。とても痛い。車にはねられるのとは違う痛みだ。じわじわと血が抜けていく感覚がする。けれど今ならまだ、病院に急いで行けば命は助かるかもしれない。

 

(死にたくない。でも、守れてよかった。とっさに体が勝手に動いてた。でも、後悔はない。きっと、俺が憑依していなかったとしてもこの人はそうしただろうと感じた。ああでもやっぱ死にたくはないなぁ)

 

思考がまとまらない。死にかけの体はなかなかちゃんと動いてくれない。

 

「あ、あ、ナイフ、ぬ、抜かないと」

 

(え、ちょっナイフ抜くのはダメ!)

 

「               」

 

声にならない叫び声をあげる。ナイフによって塞がれていた傷口が開き、大量に出血する。

 

せっかく助けた相手にトドメを刺されることとなってしまった。

 

そして、片桐は二度目の死を経験することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが最後の死であったのならよかったのだが。

 

これからも、何十回と死んでいくことになるとは夢にも思わなかった。




なんとなくわかってくれたかと思いますが、死にまくります。
ディアボロ並みに死んでいくというとわかりやすいかな。
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