死亡代行サービス   作:ダイヤモンドリリー

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5724字。

新キャラの名前作るのめんどい...


抵抗戦線

2016年10月31日(2日目)

 

今日の仕事はサクッと終わらせてきた。と言っても夜までかかったが。

 

もし記憶を取り戻せていなかったら、相当苦しんでいたかもしれないけれど、すでに17回死んだ記憶があるため何も感じなくなっていた。死を回避する必要もないわけだし余計な動きをしなくていいから前よりも楽になった気がする。

 

「仕事のことなんかどうでもいい。まずは情報収集だな。佐川のところに行こう」

 

隣の佐川の部屋に移動する。今日は佐川も休みなはずだ。あと3時間ほどで日付が変わるからそれまでにやることはやっておきたい。

 

「よぉ片桐、待ってたぜ。結構遅かったな」

 

「夜死ぬことになってたからな。そんなことは置いといて...だ。俺のことを思い出したお前に頼みがある」

 

「頼みってなんだ?」

 

「今の佐川にしかできないことだ。一つ前の俺と交友関係があったやつのことを教えてくれ」

 

「交友関係?仲間を増やすためか?」

 

「そうだ」

 

今の2人だけでは心もとない。最終的にはこの狭間の世界にいるすべての人に手伝ってもらいたいが、流石に最初からは無理だ。そこで、以前交友があった人から仲間にしていくことにしたのだ。

 

「そう言われてもなぁ...俺もお前とずっといたわけじゃない。お前もほとんど部屋に閉じこもっていたしな。2、3人くらいしか知らないぞ?」

 

「それでいいんだ。最初は少なくとも、そこから数珠繋ぎのように人と人を繋いでいけばいずれ多くなる。チリも積もればなんとやらだ」

 

「なんかマルチみたいだな」

 

「悪い言い方をすんな」

 

マルチ呼ばわりは酷いだろう。相手が損することなんて絶対にないしマルチとは違う。

 

「まず1人目はお前の部屋の左隣りの芦川さんだな。近所付き合いも多かったはずだ。2人目はちょっと遠いが、この辺に住んでる青山さん。3人目は外国人だったな。イギリス寮の...名前は忘れた、確かここに住んでたはずだ。イギリス寮入ってすぐの部屋だ」

 

佐川はこの世界の地図を広げて指差しながら教えてくれた。この世界はいろんな国から人が来ているから各国ごとに寮として纏めて部屋が置かれているらしい。ってかなんでイギリス人と交流あるんだ過去の俺。

 

「なるほどなるほど...ああそうだ。佐川は次、明日で仕事終わりだったよな。同じようにもう1回か2回で仕事終わりのやつ知らないか?知ってたら教えてほしい」

 

「知り合いに何人かいるが...どうしてだ?」

 

「もしこの記憶が正しいのなら、またすぐにここに戻ってくるはずだ。記憶を失ってな。そいつらの記憶が戻ってくれれば信用して仲間に加わってくれるはずだ」

 

「なるほど。言葉で説明されても信用してもらえるかわからない。現実に起こったこととして実体験して貰えば信用するしかない...か」

 

簡単に説明してくれた。助かる。

 

「じゃあ知り合いを集めてくるよ。1時間くらいしたら戻ってきてくれ」

 

「わかった。じゃあ教えてくれた人のところに行ってくる!」

 

俺は佐川の部屋を飛び出した。いやまぁ2個隣のところだからこんな飛び出す必要なかったんだけどさ。

 

「すみませーん!芦川さんいますかー!」

 

扉をドンドンと叩きながら呼びかける。この時間なら今日仕事の人も帰ってきているだろう。

 

「はいはいちょっと待っててくださいねー」

 

中から少し声が聞こえる。ワンルームだしそりゃ声も通るだろうな。流石に壁薄すぎる気がするけど。あっ扉開いた。

 

「あっどちら様でしょう...か?」

 

中から女性が出てきた。とりあえず台本通りにやろう。

 

「あっどうも。挨拶が遅れてすみません。隣に住むことになった者なんですけれども」

 

「ああ隣の。わざわざ挨拶に来るなんて律儀ねぇ。短い間ですけどよろしくお願いしますね」

 

そう言って扉を閉めようとする芦川さん。やっぱり俺のことは覚えてないようだ。思い出させてやらないとな。

 

「えっちょっ何を...」

 

足を突っ込んで扉が閉まるのを防ぎながら手首を掴む。こうやったら記憶が戻ったはず...!

 

「何するんですかやめてくださいよ片桐さん!」

 

「名前...!思い出しましたか芦川さん!」

 

俺は名前を名乗っていないのだ。

 

「あれ私いつ名前を...どうしたんだろ私なんで忘れていたのかしら」

 

よし成功!なぜか俺が触れると記憶を取り戻せるらしい。

 

「あれ?片桐さん確か仕事終わったんじゃ...」

 

「そのことで話があるんですよ芦川さん」

 

「話?」

 

「それがかくかくしかじか、まるまるうまうまというわけでして」

 

「ちゃんと説明してもらえる?」

 

「すんません」

 

俺は真面目に今わかっていること、目的を簡単に話した。

 

「なるほどねぇ。なんであなたは記憶を取り戻せたの?」

 

「わからないんですよねぇ」

 

「そうなの...こっちでも色々やってみるからあなたも頑張ってね」

 

「ありがとうございます。あとあの女神にはバレないようにお願いしますね」

 

「わかったわ。あと敬語はいらないわよ。同い年ですもの」

 

「あっそうなんだ。じゃあ俺は次の人のところに行ってきますんであとは頼みます!」

 

芦川の部屋をあとにする。次は青山さんのところだ。

 

「確かにちょっと遠めだな」

 

とりあえず2人目だ。今度はさっさと手を掴むことにした。話のネタもないしね、多少強引に行かないと接点ないから場が持たない。

 

「ここで多分あってるよな。すみませーん。青山さんいますかー」

 

「何ちょっとうるさいんですけどー帰ってもらえます?明日仕事入ってて寝たいんですけどー」

 

うわ高校生かこいつ。若者感がすごい。いや俺も一応定義的には若者なんだけどね。25だし。

 

「邪魔なんで用あるなら明日か明後日にしてもらっっ⁉︎片桐さん⁉︎」

 

話の途中だったがさっさと手を掴んで記憶を取り戻してもらう。

 

「よぉ思い出したか」

 

まぁ俺は青山のこと知らないんだけどな。

 

「思い出したか...って確かになんで俺忘れてたんだろ。あれ?片桐さんもう30日経ったんじゃ?」

 

「ああそれな、今から説明するよ。かくかく「それ前にもやられましたけどわかりませんって」...前にもやったのかよ俺」

 

真面目に説明を始める。

 

「へぇ。そんなことに...わかったよ。こっちでもなんとかやってみるよ。バレないようにコソコソとね」

 

「話が早くて助かる。あっそうだ今何時かわかる?」

 

「今ですか?22時半くらいですよ」

 

「あと30分か。ありがとう。それじゃあ俺は最後の1人のところに行ってくるから。仕事頑張れよ」

 

「はい!」

 

青山の部屋をあとにする。高校生で死ぬなんて可哀想だな。もっと人生を楽しめるはずだったのに死んでこんなところで働かされるなんて可哀想だ。あの女神の目的を暴いてなんとかしなければならない。

 

「イギリス寮ねぇ...うわほんとにイギリス人しかいないな。なんか懐かしい気がするのはあの時の記憶か」

 

懐かしいな。覚えている限りで最初の憑依の記憶だ。あの時は何が何だかわからないまま頑張ったな。

 

「一応言葉は通じるのか。あの時と同じだな」

 

聞こえて来る声はちゃんと英語だがすらすらと聞き取って理解することができた。おそらくこちら側の声も日本語のままちゃんと理解できるのだろう。

 

「なんか周りの目が気になる...あまり他の国の寮には行かないのかな普通は。おっここかな?」

 

地図的には合っているはずだ。名前はわからないがとにかく突撃だ。

 

「すみませーん。ちょっと開けてもらいたいんですけどー」

 

「なんですか?」

 

扉が開く。パパッと手を掴み記憶を取り戻させる。

 

「お!片桐さんじゃないですか!仕事終わったんじゃなかったっけ?」

 

「ああそれなんだけど...かくかくしかじか、まるまるうまうまというわけで...」

 

「なるほどですね!そんなことが...ループしてるだなんて怖いですね」

 

「えっ、今のでわかったの?」

 

「逆になんで今のでわからないんですか?」

 

なんで日本人に伝わらなくてイギリス人に伝わるんだ...ってかなんで俺またこれ使ったんだろ。

 

「それじゃ早速直談判してきまーす!」

 

「チョチョット待って!直談判はやめて!」

 

「なんでですかー?」

 

「あの女神には知られないように動いてくれ。もし知られたら消されるかもしれん」

 

記憶を取り戻したことをあの女神は知らないだろう。もし知られてしまったら何されるかわからない。消されるなんてことじゃすまないかもしれない。

 

「ふむふむ...わかったよ。ちょっとテンションおかしくなってた。こっちでも色々動いてみるよ。イギリス寮は任せてくれ」

 

「ああ、助かる」

 

俺はイギリス寮をあとにした。そういえば結局名前聞いてなかったな。まぁいいか。

 

「もうそろそろ佐川が人を集め終わる時間かな。さっさと戻ろう」

 

佐川の部屋へと戻る。ちょっと早すぎたかもしれないけどいいか。

 

「佐川!戻ったぞ。ちょっと早かったか?」

 

「やぁ片桐。大丈夫だよ。もうみんな揃ってる」

 

部屋には佐川を含めた5人の男女がいた。

 

「この人たちが?」

 

「そう。明日で仕事終わりの人たちだ。俺が知っている中で明日終わりなのはこの人たちだけだったよ」

 

4人か。まぁ最初はこれでいいか。確かめやすいしな。

 

「紹介するよ。右から立花さん、野田さん、原さんに有田さん」

 

「どもっす」

 

「ど...どうも」

 

「よろしくね」

 

「なんでうちら呼ばれたわけ?うちらもうあと1時間で仕事なんですけど」

 

有田さんが挨拶もなしになんか言ってきた。そういえばこっちで何話すか決めてなかったな。まぁアドリブでいけるか。

 

「まず、君たちにある話をしようと思う」

 

「さっさと済ましてね」

 

反抗的だなぁ。

 

「この狭間の世界から現実世界に戻ることができない。そう言ったら信じるか?」

 

「は?何言ってるのさ」

 

まぁそりゃ最初は信じてもらえないだろう。接点がないから触れることも意味がない。あれはあくまで俺を媒介にして記憶を思い出させているにすぎないらしい。一つ前の時に俺と関わってなければ意味がないのだ。広間で何回か人にぶつかっても何もならなかったことから出した推測だ。

 

「正確には、死んだ日に戻っても別の原因で死んでまたここに戻ってきてしまうんだ」

 

「何を言ってるのかわけわからねぇな。それに何を根拠にそんなこと言ってんだ」

 

「んー、まぁ今ここでなんと言おうと信じてもらえないだろう。根拠はあるにはあるが話さないことにするよ」

 

「…何がしたいのかまるでわかんねぇな」

 

「ここでこの話をすることに意味があるんだよ。今のことをしっかりと覚えておけ」

 

「そんだけでいいのか?」

 

「ああ。あと君たちの部屋がどこにあるのかを教えてくれ。そうしたら解散してくれて構わない」

 

「それくらいならいいけどよ...」

 

4人から部屋の場所を教えてもらう。

 

「はあぁ、時間無駄にした」

 

「結局何したかったんだあいつ」

 

「あっえっと...さようなら」

 

「それじゃあさようなら」

 

4人は佐川の部屋から去っていった。

 

「あれだけでよかったのか?片桐」

 

「いいんだ。あっそうだ。お前も明日で仕事終わりだったよな。ちょっと実験したいことがある」

 

「実験?」

 

俺は自分の鞄からメモ帳とペンを取り出す。

 

「佐川の持ち物の中に何か書けるものはあるか?あったら貸してくれ」

 

「ん?こんなのでいいならいいけど」

 

ティッシュを手渡してくる。まぁこれでも書けるからいいか。

 

「あとペンもある?」

 

「あるけど...

 

「さて実験だ。お前はティッシュとこのメモ用紙に自分のペンで自分の名前を書いてくれ。そしたらまた別の紙に俺のペンで書いてくれ。俺も別の紙で同じようにやるから」

 

「それがなんの実験になるんだい?」

 

佐川がペンで名前を書きながら聞いてくる。

 

「仕事が終わったらお前は一度この狭間の世界から消える。その時に消えるのは本人の記憶と周りの人間のその人に対する記憶。だけど多分それだけじゃない」

 

それを確かめるのがこの実験だ。

 

「これは予測でしかないけど、その人の残したもの全てなくなるはずだ。何かに書き残しても文字は消える。元々持っていたものは初期化されるからこれもまた消える。それを確かめるんだ」

 

「わかるようなわからないような...まぁ結果を見ればわかるか。ほれ、書き終わったぞ」

 

佐川から4枚の紙を受け取る。

 

「ありがとう。そうだ、死亡予定時刻がいつか教えてくれないか?それが分かれば完璧なんだ」

 

「7時53分だったはず」

 

「午前の?早くね?」

 

「俺は異世界担当だしね。魔物にサクッと食われることがほとん

 

話途中で目の前から一瞬で佐川が消えた。日付が変わって仕事が始まったのだろう。こんな一瞬で消えるんだな。

 

「とりあえず、時間まで待つか」

 

佐川の仕事が終わった瞬間に実験が終わる。それまで自分の部屋で寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年11月1日(3日目)

 

只今の時間は7時50分。佐川の仕事が何事もなく進んでいればもうそろそろ実験の結果が出るはずだ。

 

「成功してくれよぉ」

 

目の前には4枚のティッシュペーパーと4枚のメモ用紙。もし俺の予測が正しければ...

 

「ビンゴォ!」

 

実験は成功だ!

 

「思った通りだ!やっぱり佐川の痕跡は消える!」

 

目の前からティッシュペーパーが消える。これらは佐川の所持品だ。佐川と同じように一度消えることになる。そして残ったメモ用紙のうち、筆跡が残ったのはひとつだけ。俺が自分のペンで書いたものだけだ。

 

「佐川のペンで書いたのはもちろん、俺のペンでも佐川が書いたのはダメなのか...なんか抜け道がありそうだな」

 

これは俺が消える日にも同じようなことをすべきだろう。また記憶を取り戻せるかはわからないが、もしこの周期で解決できなければやる価値はあるはずだ。

 

「実験終わったし...とりあえず資料読むか」

 

次の仕事の資料を読みながら、頭の片隅で今後すべきことを考えていく。

 

(次の仕事終わりは13時11分...終わったらすぐに佐川とあの4人のところにいって記憶を取り戻してもらおう)

 

これでまた仲間が増えるはずだ。これを繰り返していけばいずれは...

 

(疲れたな。久しぶりに頭使いまくったから頭痛くなってきた...仕事まで寝よう)

 

痛みはないはずなのに精神的な疲れで痛くなってきた。これからやるべきことは沢山ある。これからに思いを馳せながら、俺は長い眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選ばれた者、それが何を意味しているのかはまだわからない。

 

何が選ばれた者だ、俺たちは抵抗をやめない。




今後、仕事時の描写は必要な時にしかやりません。

片桐くん今回結構頭冴えてるけど、使命感でステータスが上がってますね。
本来の知能的にはそこまで良いわけではなかったんですけど...まぁ理由はあるのでなんでたろうなーって考えておいてください。
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