死亡代行サービス   作:ダイヤモンドリリー

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4089字。
新キャラ登場です。


石の記憶

2032年5月1日

 

「今日からやっすみー!ゴールデンウィークだー!」

 

高校入学から早一ヶ月。やっと長い休みがやってきた。

 

「何をしようかなー」

 

宿題のことなんかもう頭から抜けてしまっていた。この連休に何をしようかということしか頭になかった。

 

「あれをするのもいいなーああでも素材切れてたんだった。今日は海岸に行こー」

 

ベッドの中でゴロゴロとしながら連休中の予定を組んでいく。

 

「ちょっと沙優!休みだからってゴロゴロしない!ご飯だから早く来なさい!」

 

「はーい」

 

呼ばれてしまった。仕方ないのでベッドから出てリビングに向かう。

 

「先に顔洗ってきなさい」

 

「はーい」

 

洗面所に向かう。顔を洗い、手も洗ってリビングに戻り、自分の椅子に座る。

 

「いただきまーす」

 

朝はパンッ!なのでトーストにベーコンと目玉焼きを乗っけて食べる。いつも通り美味しい。やっぱりお母さんの作る料理はなんでも美味しい。

 

「沙優、お母さん今日帰り遅くなるから。お昼はお弁当置いとくから夜は自分で何か作って食べてね」

 

「はーい」

 

「休みだからってずっとゴロゴロするのはやめなさいね。宿題もちゃんとするのよ」

 

「はーい...あっ、宿題のこと忘れてた...」

 

思い出したくないものを思い出してしまい、少し気分が落ち込んでしまう。

 

「ごちそうさまー」

 

「お母さんもう出かけちゃうから、自分で皿洗いしてね」

 

「はーい」

 

「行ってきます」

 

「行ってらっしゃーい」

 

お母さんが仕事に出掛けて行った。

 

「……よし!フリーダーーム!」

 

しっかりと玄関のドアが閉まるのを確認してから喜びの舞をする。

 

「人の目を気にしなくていいのはいいなー。家族でも気が散っちゃうし1人が一番だね。さーて出かける用意しよー」

 

皿を水につけて置いておく。夜ご飯食べたらまとめてやろうっと。私は洗面所でさっさと歯磨きを済ますと、着替えるために自分の部屋に戻ろうとする。

 

ちょうどその時、玄関の方からドアが開く音がした。

 

「忘れ物忘れ物...スマホ忘れちゃった沙優どこにあるか知らない?」

 

「えーっと...そういえば台所に置いてあったような...」

 

「そう?ありがと」

 

お母さんが台所に向かっていく...やばっ。

 

「洗い物積んでおくのやめておきなさいよ。早く洗わないと落ちにくくなるんだから」

 

「…はーい」

 

やっぱり見つかってしまった。自分で取りに行けばよかったな。

 

「それじゃ行ってくるね」

 

「行ってらっしゃーい」

 

再度、お母さんが家を出て行く。

 

「…しょうがない。先に洗うしかないかぁ」

 

着替える前に、皿洗いをすることにした。と言っても、自分の分だけなのでほんの一、二分くらいで終わった。

 

「さーて、行くとしますか!」

 

私は部屋に戻ると、動きやすい服に着替えて荷物をまとめて家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこに落ちてるかなー」

 

私は九十九里浜に来ていた。手芸に使うためのシーグラスを拾いに来たのだ。

 

「あっ、落ちてる落ちてる!今日はどれくらい拾えるかなー」

 

まぁシーグラスで使うのは手芸というよりはDIYの方が近いと思うけど。やっぱりモノづくりは楽しい。そして材料を集めたり買ったりする時間も楽しい。

 

「やっぱり一人でやれる趣味はいいねぇ」

 

ちなみに部活には入っていない。高校入学して手芸部があったので入ろうかと迷ったが、なんとなくやめた。文化祭で何かやらないといけないってのが面倒そうだったし、1人でやる方が気楽だと思ったからだと思う。

 

「おっ!これも良さそう。これも綺麗だねぇ...これ磨けばもっと綺麗になりそう!持ってこー」

 

どんどんシーグラスを拾い集めていく。綺麗そうなのを見つけたら貝殻とかも拾っていく。

 

「大量大量。どんなの作ろうかなぁ」

 

拾い集めながらも、頭を働かせて何を作るのかを考えていく。

 

「うん!いいねいいねアイデアがどんどん湧いてくる!あらかた集め終わったしもう帰って作り始めようかな」

 

ここに来てからもう結構経った。持ってきた袋にはもう飛び出てしまいそうなほど集めたものが入っていた。これ以上見つけても入りきらないので、ここらで切り上げることにした。

 

「ふんふふんーん♪何作ろっかなー♪」

 

鼻歌を歌い、スキップをしながら元来た道を歩く。飛び跳ねるたびにカチャカチャとシーグラス同士がぶつかる音がしていた。

 

「ふんふふーん...ん?これめっちゃ綺麗!でももう入らないんだよなぁ...」

 

スキップをしていると、少し先に綺麗な石が落ちているのを見つけた。まるで宝石かのようなその綺麗な石は、私の目を釘付けにさせた。

 

「行きに通った時こんな綺麗な石あったっけ...?うーん...でも今まで拾ったのの中で一番綺麗だし持って帰ろっと」

 

私は落ちているその綺麗な石に手を伸ばして、掴み取った。

 

「っっっっ!!!」

 

突如、体に電流が流れたかのような感覚が走る。そして頭に鈍痛が走った。

 

「なっ...何が...起きて...」

 

鈍痛は止まらない。しかし、少しずつ、少しずつではあるがその痛みは治まってきていた。

 

「いったい...()は何を...」

 

やっと痛みが治まった。

 

「俺は...いや、今は()、か」

 

俺は、今、この時、あの宝石に触れたことで、再度記憶を取り戻すことに成功したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況を整理しよう。

 

俺は記憶を取り戻した。前世と、そのまた前世の記憶。片桐陽介と、小名木勇平の記憶だ。

 

しかも、本来なら消えているはずの、宝石を手にしていない周期の記憶まで取り戻せている。そのためか、現実世界と狭間の世界の、合わせて100年にもなる記憶のせいで本来の今の記憶や人格が押し流されそうになっていた。

 

「えーっと今の名前は...富田沙優...か」

 

なんとか今の記憶を掘り起こしていく。

 

「高校一年生で帰宅部...手芸やDIYが趣味か...なるほどなるほど」

 

自分のことのはずなのにあまりしっくりとこない。なまじ思い出した記憶の方が多いためか、そっちの方がとても馴染む。

 

「ところでなんで全部思い出せたんだろう。いやまぁちょっと考えれば察しはつくけど」

 

今までは、宝石に触れると一つ前の周期の記憶を取り戻すことができた。それを繰り返していくことで、何十も前の周期でも記憶を引き継ぐことができていた。けれど、この方法では一度継承が途切れると、全て消え去ってしまう危険性があった。それは現実となり、25回目の片桐陽介は記憶の継承が出来なかったため、24回分の記憶も消し飛んだ。

 

この宝石はイシュタム...本来の持ち主に触れたことで元の力を取り戻したのだろう。触れたものの記憶を、過去や前世にわたって、たとえ忘却してしまった記憶でも再生するという元の力が覚醒したのだろう。

 

力を取り戻したこの宝石に触れたことで、宝石の持つ力もなんとなく伝わってきたのだ。

 

「さて、やっと記憶を取り戻せたわけだけども...ここからどうしてやろうか」

 

狭間の世界でできることはもう大抵やり尽くした。けれど、イシュタムの野望を突き止めることはできても、それを止めることは叶わなかった。だから俺は、現実世界に戻り、こっちでできることを探すことにしたのだ。

 

「うーん...とりあえずお腹減った。家帰ろう」

 

腹が減っては頭も働かない。掘り返した記憶によれば、家にお昼が置いてあるそうなので、一旦家に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、腹も満たしたし、できることを考えよう」

 

そうは言ったものの、この現実世界でできることは限られている。というか、こっちにくれば何かできるはずだという見切り発車でここまで来たので、実は何もできませんでしただなんてことも起こりうる。

 

「…全く思いつかないしとりあえず情報というか必要事項をまとめておこう」

 

自分の部屋からノートを取り出し、書き込んでいく。

 

「えーとまずは制限時間。わからない。自殺以外の方法で死んでしまったら、魂を初期化されてゲームオーバーだ。頃合いを見て自殺する必要がある」

 

明日死ぬかもしれないため、一日、一分一秒ですら無駄にできないということは肝に銘じておかないといけない。幸い、今日は絶対に死なないという保証はできる。この体が誰かに乗っ取られていないということは、今日は死なないということだ。つまり、死ぬ日は自分の意識がないためいつのまにかゲームオーバーになる可能性もあるのだ。

 

「目的、イシュタムの野望の妨害。方法は不明...どうにかして仕事を辞めざるを得ない状況に持ち込まないといけない」

 

いつ終わりが来るのかわからない以上、早く方法を見つけてしまいたい。

 

「今、優先すべきことは情報収集と、狭間の世界との連絡!しかしどうやって連絡を取れば...あっ!」

 

俺は狭間の世界と連絡を取れる、唯一の方法を思い出す。

 

「お願いだから届いてくれよ...」

 

俺はとある場所にメッセージを書き残した。狭間の世界での制約から解放され、暗号化しなくても書き残せるのはとても楽に感じた。

 

「……まぁ望み薄か。後でまた見にこよう」

 

あれから16年経ったのだ。もう既に忘れてしまっているのかもしれない。過度な期待を寄せることはやめなければならない。協力が得られなくても、一人でなんとかしてみせよう。もともとは一人で頑張っていたのだ。仲間がいる時間の方が短かった。

 

「もう今日できることはない...か。じゃあ先に宿題済ませておこう。できればゴールデンウィーク中になんとかしたいけど間に合わないだろうし」

 

やることをやり終えた俺は自室に戻って宿題を広げる。後回しにする気満々だったようだが関係ない。さっさと済ませて後で楽するのだ。

 

「まずは数学っと...うわ何これ。今の子はこんなのまでやるのか...うわ地理全くわかんねぇ。16年経ったら色々変わるか。そりゃそうだよなぁ」

 

学習指導要領が変わったのだろうか。もともと勉強あまりできなかったのもあるが、全く知らない範囲すぎてペンが一切進まない。

 

「えっ、歴史総合ってなに...?日本史と世界史はどこ行ったの...?それに情報⁉︎今の子はプログラミングまで習うのか...時代だなぁ」

 

少しはまじめにやろうとしていたが...仕方ないので答えを丸写しにすることにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三度目の人生。

 

100年以上の知識を胸に、俺は神に抗う。




早速記憶取り戻しました。
全部の記憶を取り戻したわけだけど、なんて呼べばいいのか迷う。
はたしてこいつは小名木勇平なのか、片桐陽介なのか、富田沙優なのか...
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