死亡代行サービス   作:ダイヤモンドリリー

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5075字。
さて今回はどう死ぬんでしょうか。


4日目/6日目

2016年10月3日

 

「っうわぁっ!また死んだ!また死んだ俺⁉︎」

 

叫びながら勢いよく飛び起きる。まさか2回も死ぬなんて思っても見なかった。

 

「普通刺さってるナイフ抜く⁉︎なんであの人抜いたのさゴフッゴフ喉いった!なんかすごい枯れてるなんで?」

 

勢いよく喋りすぎて軽く咳き込む。不思議に思いながらもとりあえずベッドから降りようもするも、違和感を感じる。

 

「あれこれベッドじゃない布団じゃん。もしかしてここ日本?っててなんか腰痛い」

 

ゆっくり立ち上がって辺りを見渡す。そこは典型的な和室であった。

 

「聞こえる声も日本語だし今度は日本人か。お、鏡ある。さてどんな姿かな......まぁ声でなんとなくわかってたけどさ」

 

鏡に映っていたのは腰の曲がった老人だった。

 

「さてさて、この人は何をして生きてきた人なのかな?」

 

老人の記憶を覗きこむ。

 

「んーなるほどなるほど。農業ねぇ」

 

記憶を読んでわかったことは大体こんな感じだった。

 

ここは北海道。町の名前までは...ボケがきてて読み取れなかった。妻には先立たれていて、東京の方に子供と孫が住んでるらしい。農家をしていて収穫した作物を道の駅に運ぶのが日課らしい。記憶の抜け落ちが多すぎて見ていて心配になる。

 

「じゃあ怪しまれないように俺も頑張らないとな。てか時間大丈夫か?今何時ってか時計どこ」

 

さっき部屋を見渡した時、時計は見つけられなかったので部屋を出ようとする。そのとき、別のものを見つけた。

 

「ガラケー...だと⁉︎いやまぁ時間わかるしいいか。ヘイガラケー今何時?」

 

ガラケーを開いて時間を確認する。

 

「あ、4時。さすが農家、朝が早い」

 

ついでにカレンダーも確認しておく。

 

「あ、10月3日ねぇ。前回から2日経ってるのか。なんでとか考えなくてもいいよな。この状況自体なんで起こってるのか考えるのやめたし」

 

とりあえずご飯を作る。腹が減っては仕事はできぬ。これ、社畜の時からの教訓である。

 

「ご飯食べたら農作業するか」

 

ぎこちなく動く手で料理をしていき、できた料理を食べる。前回料理人に憑依していたからかちょっと料理が上手くなった気がする。体感にして1日ぶりの日本食にちょっと感動した。塩っけが薄く感じたけれどこれはこれでいい。

 

「よっしゃ農作業しますか」

 

食べ終わった後、ちゃんと歯磨きした。今度こそ長生きしてやる。そのためにも、歯は大切にしておきたかった。もうすでに何本か抜けてたのを見てちょっと怖くなったのもある。そして歯磨きを終え、準備を整えて家を出てトラックに乗り込む。

 

軽くトラックがトラウマになっているのは内緒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老人農作業中...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「めっちゃ疲れたよくやってるな農家さん尊敬する」

 

一日農作業をしていて身体中が痛い。朝のうちに取れた野菜は梱包を済ませて道の駅に届ける。その後畑に戻って水やりなり肥料なりの作業を一日やった。記憶を見たといってもやはり慣れない作業だからかうまく出来なかった。

 

「まぁこれからゆっくり慣れていこうかな」

 

ちなみに今は夜ご飯を食べているところだ。もう少し起きてるつもりだったが結構眠くなってきたので早めに食べて寝ようと思っている。

 

「さすがに初日に死ぬわけにはいけないしねぇ。めっちゃ慎重に一日過ごしてやったぜ」

 

交通事故を起こしたり起こされたりしないように車の運転には目一杯気をつけてやったし、農作業中の熱中症にも気をつけたし風呂で寝ないようにしたしこれはもう大丈夫だろはっはっは。

 

…そういうことを言うとフラグになるのが世の中の常である。

 

「美味しい美味しい明日は何作ろうぐっ!!」

 

(やっべ息できね喉に詰まった⁉︎)

 

喋りながら食べていたため食べていた白飯を喉に詰まらせてしまった。

 

(えっとこういうときどうすりゃいいんだっけえっとえっとそうだハイムリック法だ!...ヤベェ名前しか覚えてねぇ!)

 

頭がうまく働いてくれない。もともと老人の脳のため、ほんの少し思考が遅れることがあったが、脳の酸素が足りておらず少しずつ思考が鈍っていく。

 

(まずいこんなことでまた死ぬなんて嫌だ死ぬならせめて老衰で死にたい嫌だこんなところで...

 

また、死を迎えることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年10月5日

 

「はっ!はぁ、はぁ、窒息すごい苦しい...いやまだ出血死したことしかないけどってかそう何度も死んでることすらおかしいけど!」

 

喉を押さえながら飛び起きる。今度も日本語が聞こえてきた。

 

「よかった今度も日本人か...ってか声女の子っぽい?鏡どこどこ」

 

部屋をざっと見渡すが鏡はなかった。そりゃ自室に必ず鏡があるわけじゃない。とりあえず洗面所っぽいところへ向かっていく。

 

「視線が低いけどまだ子供なのかな。台はどこだ〜あったあった」

 

踏み台を引っ張ってきて、それに乗って鏡を覗き込む。

 

「やっぱり子供かぁ。小学生低学年くらいなのかねぇ。ってことは小学校行かないといけないの?今更小学校通うの嫌なんだけど」

 

「あれ未来ちゃんもう起きてたんだ。早起きだねぇ」

 

高校生くらいの女の子が洗面所に入ってくる。

 

(えっとまて誰だこの人記憶覗かないと...よし!)

 

「なんか目が覚めちゃって、おはようお姉ちゃん」

 

「そういや言い忘れてたね。おはよー未来ちゃん」

 

女の子は顔を洗って洗面所を出て行く。

 

(あっぶねー今のうちに全部記憶見ておこう...よしおけ)

 

今乗り移っているこの子は小学3年生らしい。両親ともに存命。2人姉がいてさっきのは次女。長女はもう一人暮らししてるらしい。

 

「未来ーご飯よー」

 

「はーい」

 

母に呼ばれたので手を洗ってからとっとこかけていく。まったく、小学生っぽいことするのは精神的に大変だぜ。

 

「いただきまーす」

 

与えられたご飯をゆっくりちゃんと噛みながら食べていく。前回ご飯詰まらせて窒息したことも軽くトラウマになりかけている。これからは食べてる時は無言でちゃんと噛んでから食べようと心に誓った。

 

「遠足楽しみでしょ未来。ちゃんと眠れた?」

 

「いや、ちょっと眠いや」

 

「あんなにウキウキしてたんだやっぱり寝れなかったか」

 

ちなみに今日は遠足の日らしい。ちょっとした裏山っぽいところまで歩いて行ってそこでご飯を食べてから遊ぶらしい。なんかちょっと懐かしい。昨夜、俺が乗り移る前は遠足が楽しみすぎて眠れなかったらしい。朝早く起きてたのも眠りが浅かったからだろうか。

 

「…なんかあまり楽しそうじゃない?どうしたの未来、体調悪い?」

 

「へ?大丈夫だよちょっと眠いだけだから」

 

「そうか、あそこちょっと危険なところあるから気をつけるんだよ」

 

「ん、わかった。ごちそうさまでしたー」

 

「ちゃんと歯磨くんだよ」

 

「わかってるー」

 

歯磨きの大切さは老人の歯を見て実感した。言われなくとも綺麗に磨いてやる。そして歯磨きを終えた俺はランドセルに荷物を入れていく。

 

「ランドセル懐かしいなぁ」

 

「未来ーはい弁当。って未来なんでランドセルに入れてるの。遠足なんだからこっちのカバンに入れなさい」

 

「あ、そっか」

 

荷物を別のカバンに詰め替える。久しぶりのランドセルでうわついていた気がする。なんで大人がランドセルでうわついていたのか俺自身にもわからないけど。

 

「よし準備オッケー。いってきまーす」

 

「いってらっしゃい未来。車に気をつけるのよー」

 

「わかってるー」

 

いや、ほんとにわかってる。もう二度と車には轢かれたくない。俺は車に細心の注意を払いながら学校へと向かっていく。まずは学校に行って校長の長い演説を聞かなければならないのだ。今思うとほんとにあれ面倒だったなぁ。それが終わったら遠足の開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論だけ言おう。遠足は無事に終わった。危険なところと母にも先生にも言われたところには一切近づかなかったし怪我もしてない。

 

「やっぱり帰るまでが遠足だよな。家帰ってからも鬼門はたくさんあるけど」

 

もう2回も初日に死んだのだ。二度あることは三度あるなんてことにはしたくない。

 

「まぁさすがに車に注意しとけばとりあえず大丈夫なはず...むぐっ!」

 

道を歩いていると突然口を押さえられる。

 

(え振り解けないなにこれ誘拐⁉︎あ、ちょ意識が...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、ふわぁ...あれ、ここどこ?」

 

ゆっくりと起き上がる。

 

「あ、そうだ誘拐されたんだった。うわガムテで拘束されてる」

 

目を擦りたくなったので手を動かそうとしたが、後ろ手に両手を拘束されていたので出来なかった。

 

「犯人の目的なんなんだろ。身代金目当て?それともただのロリコンさん?せめて身代金の方であってくれお願いだから!」

 

誰が誘拐したのかは知らないが変なおっさんとかに汚されるのは嫌だ。イケメンでも嫌だけど。そんなことを考えてる時に、ノック音が聞こえたので少し身構える。

 

「未来ちゃーん様子を見に来たよぉ」

 

(誰だこいつ記憶の中にもないぞ)

 

女の人が部屋に入ってきた。記憶を覗いてもこの女の人の記憶はどこにもなかった。不審者すぎる。

 

「今日から私があなたのお母さんだからねぇ」

 

(…怖っ!何この人怖いまだロリコンの方がマシだった!)

 

「それじゃあご飯作ってくるからちょっと待っててねぇ」

 

不審者が部屋から出て行く。

 

「…やばい早く脱出しないとやばいこのガムテ急いで取らないと!」

 

身の危険を感じた。いち早くこのガムテを取って逃げ出したい。とりあえず両手を高く上げてから振り下ろすのを繰り返す。

 

「たしかこうすればガムテ緩むんじゃなかったっけ...お、ちょっと緩んできた。でも子供の力じゃダメか。何か引っ掛けるものは...机でいっか」

 

手首と緩んだガムテの隙間に机の角を突っ込んで無理矢理引っ張る。けれどもなかなかうまくいかない。

 

「どうすりゃ抜け出せるかなぁ。せめて前で拘束されてたならもうちょい楽になるんだけど...いやまて、子供の体なら...」

 

座りながら後ろ手に縛られていた手をお尻の下を通して前にもってくる。

 

「さっすが子供体が柔らかい!てかこれなら口で無理矢理外せそうだな......よし!」

 

緩んでいた部分を思い切り引っ張ってガムテを外すことに成功する。

 

「あとはここから脱出を...って言っても窓もないし出入り口この扉しかなさそうだよなぁうわ手首めっちゃベタついてる」

 

手首を触りながらつぶやく。手首の拘束解かれると触りたくなっちゃうよね。初めて拘束されたけど。ちなみに扉は施錠されてた。

 

「外からしか鍵をかけられないのか。てかなんで外についてるんだよ普通内側につけるでしょどういう構造してるんだ」

 

悪態をつきながらこの先どう脱出しようか考える。そしていい方法を考えたので実行してするために準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来ちゃーんご飯だよぉ...ガムテープが落ちてる⁉︎どこにいったの未来ちゃん!」

 

女は部屋の奥に落ちているガムテープを見つけると急いで駆け寄る。

 

「どうやってガムテープを解いたのよというかどこに行ったの出入り口はドアしかないはずなのに...まさか!」

 

女が急いで振り向いた時にはもう遅い。俺は開いた扉の裏から飛び出して部屋から出ると、すぐに扉を閉めて鍵をする。

 

「内開きなの確認しといてよかったぁ。急いで逃げないと!」

 

女の叫び声を聞き流しながら部屋を離れてそのまま家を出る。もう既に日は沈んでいて夜になっていた。

 

「うわ暗くて見えにくいけどここ森?山奥とかなのかな」

 

とりあえずゆっくりと砂利道を歩いていく。靴を見つける余裕がなかったので裸足で歩いているのだがちょっと痛い。今から戻って靴探しに行こうかちょっと迷う。

 

「未来ちゃーん待ちなさーいどこに行ったのぉ!」

 

「嘘でしょもう出てきたの早すぎでしょ!」

 

ちょっとでも時間を稼げればいいと思って鍵を閉めたが、まさかここまで早く抜け出して追ってくるとは思っていなかった。急いで山道を駆け降りていく。

 

(まずいまずいって今度捕まったらまた抜け出せるかわからないぞ。なんとしてでも逃げ切らないと!)

 

裸足で砂利道を走っているのでとても足が痛い。けれど、そんなことを言っている暇はなかった。まずは逃げないといけない。

 

「未来ちゃーんどこなのぉ!」

 

聞こえる声が少しずつ小さくなってきた。このままなら逃げ切れる。そう思った矢先のことだった。

 

「うわっ!」

 

ずるっと足を滑らせる。暗い中山道を走っていたのだ。転ぶのも仕方ない。けれども、転んだ場所が致命的すぎた。

 

(いつまで経っても衝撃が来ない...まさか崖を落ちてる⁉︎)

 

もう真夜中になっていて地面が見えない。いつ衝撃が来るのかわからない恐怖に襲われたまま、地面に激突してそのまま命も落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間どう頑張ったって死は向こうからやってくる。

 

死に慣れたくはないが、逃れられない以上慣れるしかない。




適当に書いた誘拐犯が思ってた以上に怖くなった。
鍵のかかったドアこじ開けるの早すぎてほんとに女か心配になる。
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