死亡代行サービス   作:ダイヤモンドリリー

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4050字。

今回の死因はなんでしょうね。


12日目/14日目

2016年10月11日

 

俺が目を覚ますと、そこは車の中だった。

 

「車の中?今度はどんな人に...って嘘でしょ⁉︎」

 

俺が乗り移る直前まで、この人はアクセルを全開にしていたらしい。崖へと向かってだ。俺が気づいた時にはもう遅く、車はその勢いのまま崖を飛び出していった。

 

「嘘でしょ嘘でしょこんなすぐに死ぬって嘘でしょ!」

 

着水までの短い時間の中で俺が見ることができたのは、カーナビに映る知らない地名と0時ちょうどを示す時刻表示だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車が海に落ちる。幸い、崖下は岩場ではなく深い海だったのですぐに死ぬことはなかった。

 

「し、死ぬかと思った...うわーどんどん沈んでくもう助からないぞ」

 

車はどんどん海の底へと沈んでいく。もしこの車から脱出できたとしても海上まで息がもつかわからない。

 

「そもそも俺泳げねぇんだけど...いや俺が泳げるかどうかは関係ないのか。問題はこの体の本人が泳げるかどうかか」

 

自分自身は泳げなくても、この人が泳げるのなら泳げる。料理経験のほとんどない俺が料理人ができたことや、したことのない農作業をある程度こなすことができたことからの推測だが、多分あってるだろう。

 

「うわーめっちゃ深いじゃんどれだけこの海深いんだよ崖のそばなのに深すぎでしょ上までいけるかなこれ」

 

車に衝撃が走る。海底まで沈み切ったのだろう。少しずつ車の中に水が入り込んでくる。

 

「多分どうしたって今日中にでも死ぬんだろうけど...死体が見つからないってのは可哀想だよなぁ。自分で飛び込もうとしてた以上こんなの望んでないかもしれないけど」

 

多分この人は自殺でもしようとしていたのだろう。そうでなければ崖に向かって車を走らせるなんてしない。

 

「とりあえず脱出するか。ドアはもちろん開かない...と。ハンマーどこだ〜」

 

水圧の関係でドアは開かない。窓ガラスを割るためのハンマーがどこにあるのかを知るために記憶を覗く。

 

「あ、そこにあるのね。よしこれで窓ガラスを割って...いや待て。今割ったら水圧でパニックになって死ぬな。全部水入ってからやろう」

 

今窓ガラスを割ったら大量の水が車内に流れ込んでくるだろう。そうなったら落ち着いて息を吸う時間もない。だから水が車内を埋めるまで待つことにした。水が車の中にどんどん入ってくる。完全に水で埋まるまでもう数十秒もないだろう。

 

「ここまでなればもういいかな。あーやばい緊張してきた。よし一気に息吸おう。そしたら脱出だ。スー...ハー...なんで吐いた俺。落ち着け。スーッむぐっ⁉︎」

 

もう車が水で一杯になるころ。息を一気に吸った俺は突然首を引っ張られたため息を全て吐いてしまった。

 

(なんで⁉︎この車の中に誰かいたのかよ⁉︎)

 

急いで記憶を読む。

 

(恋...人⁉︎無理心中しようとしてたのか、いや違う!こいつ1人で自殺するつもりだったって記憶にそうある!ってことは隠れてついてきてやがったのかよ⁉︎)

 

息を全て吐いてしまったためどんどん苦しくなってしまう。首を引っ張る手を解こうともがいているうちに水をどんどん飲んでしまう。

 

(ああ、やっぱり死ぬんだな)

 

俺は意識を落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サプライズのつもりで車に隠れてたけどまさか自殺をしようとしてたなんて。

 

私を残して一人で死ぬなんて許せない。

 

あなたがいない世界なんて意味がない。

 

あなたが死ぬなら私も一緒に死ぬ。

 

ただ、自分で死ぬなんて許せない。

 

死ぬんだったら、私にやらせてほしい。

 

海に飛び込む直前から人が変わったようになっていたけど、死にたくなさそうだったけど、そんなの関係ない。

 

だから私がやってやった。

 

あなたはとてもびっくりしてたね。

 

しばらくするとあなたはぐったりとして死んでいった。

 

そして私も、そのまま死ぬことにした。

 

これでずっと一緒だよ。

 

深い海の底で、この車の中で、私たちはずっと一緒に居続けるんだ。

 

私は、なんであなたが死のうとしていたかなんて一切考えずに死んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年10月13日

 

「ま、まさか後部座席に彼女さんがいたなんて...ヤンデレかよ怖すぎる」

 

俺はベッドから起き上がりながらそう呟く。女は怖い。トラウマがまた一つ増えた瞬間であった。

 

「部屋暗いな...今何時だ?」

 

眠気がすごい。目を擦りながらベッドの近くに置いてあったスマホを取る。

 

「0時ちょうど?なんか前もそうだったな。憑依は0時ぴったしの時からってことなのかな?」

 

前回、一瞬だけだがカーナビに0時00分と書いてあるのを見た。もし0時まで本人が起きていたのなら即座に乗り移って動けるようになるのだろう。

 

「なんか全然頭動かない...めちゃ疲れてるしめちゃ眠い...とりあえず寝るか...」

 

俺はベッドに潜って目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全然寝れなかった...すっごい眠いのに寝れないのなんでなんだすごい辛い」

 

あれから結局一睡もできないまま朝になってしまった。仕方ないので起き上がる。

 

「いったい今回はどんな人に乗り移ったのかな...ヒッ女の人!...あっなんだ俺か」

 

周りを見渡していると、女の姿が目に入ったのでトラウマを刺激される。けれど、それが鏡に映った自分だと気づいて落ち着く。自分に驚くのは流石にビビりがすぎる。自分の姿ってわけでもないけど。

 

「気を取り直してと、今度はどんな人に乗り移ったのかね...」

 

記憶を覗く。

 

「結婚はしてるのね。あっ共働きなんだ。バリバリのキャリアウーマンカッケェ」

 

家事と仕事を完璧に両立させているらしい。両立と言っても、家事は夫との当番制になっているらしいけど。今日の家事当番は夫なので仕事に行くだけでいいらしい。

 

「一人でぶつぶつと何を話しているんだい?」

 

夫と思われる人が部屋へと入ってくる。

 

「え、あ、ごめんなさいね。あまり寝れてなくて」

 

「そうなのか大丈夫かい?仕事休む?」

 

「あ、大丈夫...よ。仕事には行く...わ」

 

「それならいいんだが...それならもうご飯作ってあるから食べて仕事に行くぞ」

 

「わ、わかった...わ」

 

(あ、危ねぇ。怪しまれないようにしないとな)

 

女言葉にはなかなか慣れない。そもそも慣れたくないし慣れたら困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行ってくるわね」

 

俺と夫の仕事場は別々だ。俺は車通勤で夫は電車通勤らしい。俺の方が職場まで遠いので夫よりも早く家を出なければいけない。

 

「あれ?いつもののやつは飲まないのかい?」

 

「いつもの...?」

 

(ちょっと待ってなんのことだ記憶読まないと...ああ栄養ドリンクのことっすか)

 

家を出る前に栄養ドリンク飲むのが日課らしい。どんだけ働き詰めなんだ前の俺もそこまでじゃなかったぞ。

 

「ちょっと疲れすぎてて忘れてたわ。ありがとう。いただくわ」

 

栄養ドリンクを一気に飲み干す。

 

「それじゃあ行ってくるよ」

 

「ああ、いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ〜ちょっと眠いな。居眠り運転だけはやらないようにしないと。死ぬにしても他の人は巻き込みたくない」

 

そう、今乗り移っているこの人も今日死ぬ運命にあるのだ。疲れが相当溜まっているようだし過労死でもするのだろうか。夫さんにはちょっと悪い気がする。妻が死んだことで精神を病むとかにはなってほしくはない。

 

「流石に高速道路で居眠りはまずい...ふわぁ。なんか珍しく高速空いてるけど2年経って高速使う人減ったの?それとも俺道間違えてる?」

 

ただ単に偶然少ないだけである。

 

「ってかあの栄養ドリンク本当に効果あるのか〜?最初はすごい目が冴えたけどどんどん眠くなってくるぞ。めっちゃ疲れも出てきたし不良品か?」

 

頑張って眠るのを阻止しようとするが、眠気はどんどん増してくる。

 

「あれ...ほんとに変な感じが...え!人⁉︎危な!」

 

ウトウトしていたところから頑張って目を見開くと人が道路の上に立っているのを見つけた。ありえないと思いつつも、思わずハンドルを切る。車は高速道路の道路脇に勢いよくぶつかり、エアバッグが発動した。

 

「さっきの人どこに行った...?変だな...どこにもいない」

 

後ろを振り向いて外を見るも、先程立っていた人はいなくなっていた。外に出ようと考えるが、体が思うように動かない。事故った時に体をどこかにぶつけでもしたのだろうか。

 

「やばいほんとに体が変になってる...早く...車から出ないと...」

 

先ほどの事故の衝撃で車が炎上し出したようだ。車の中に煙が充満し出す。急いで車から出ようとするが体に力が入らない。そもそも事故で車が歪んでしまっているためドアが開かない。

 

(ああ、もうダメだわこれ)

 

俺は脱出を諦めそのまま煙を一気に吸い込み死ぬことにした。気管や肺が焼けるように熱い。高温の煙を吸い込んだからだ。俺はそのまま意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日午前7時32分ごろ、高速道路にて車が炎上する事故が発生しました。

 

その車の中からは、身元不明の焼死体が発見されました。

 

監視カメラには何もない場所で急に曲がる車の姿があり、身元の確認と原因の究明が進められています。

 

そんなニュースを家に帰ってから見た時、やってやった!と思った。

 

何ヶ月も栄養ドリンクに覚醒剤を混入させるのは、いつバレるかわからなくてヒヤヒヤした。

 

少しずつ量を増やしていって、今日は一気にその量を減らした。

 

そうすれば、ほとんど覚醒剤の効果は出ず、運転中に禁断症状が起こり死んでくれる。

 

栄養ドリンクを飲まずに行こうとしていた時は焦ったが、ちゃんと飲んでくれて助かった。

 

飲んでくれてなきゃ死ななかったかもしれない。

 

少し計画と違かったけれど、それほど問題じゃない。

 

急にハンドルを切ったのは多分幻覚を見たんだろう。

 

ちゃんと死んでくれて助かった。

 

これで身元がわかってくれれば、俺の元には大量の保険金が入ってくる。

 

これでもっといいクスリが買えるはずだ。

 

大丈夫だバレはしない。

 

俺は覚醒剤なんて知らぬ存ぜぬを貫き通すだけでいいのだ。

 

覚醒剤を使っていたのはあいつの方で、俺は何も関係ない。

 

俺はただ妻を亡くした可哀想な夫を演じるだけでいいのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人が人を殺すなんて馬鹿げている。

 

俺は何回も死ぬなかで、そんな考えは甘いのだと感じさせられた。




二度も人に殺されてしまいました片桐くん。
まぁ14日目の方は自分が事故を起こしただけだと思ってるでしょうけど。
殺した側の目線を書いてて思ったけどやってること凶悪すぎて草なんだ。
計画がガバガバなのは中毒やししょうがない。
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