今回は1日だけです。
2016年10月27日
(まさかあの状況で殺されるなんて思わなかった)
ああやって死ぬのが確定していたんだろうか。ほとんど自分で動けない以上、人の動きを変えることができないわけだしそういうことなんだろうか。
「はぁ、この人はいったい誰なん...ちょっと待て。この部屋なんか見たことあるぞなんだ?」
あたりを見渡すと、なぜか懐かしいような気分になった。なんだこの部屋、やっぱり前に見たことあるような気が...
「ちょっと待てこの声も聞き覚えが...まさか」
俺は急いで部屋を後にして洗面所へ、鏡のある場所へ向かった。記憶なんて見なくてもどこにあるかわかる。覚えている。そして俺は鏡の前で立ち止まった。
「…予想通りだよクソッタレ」
そこには、女の人が映っていた。そう、俺の母親であった。
俺は、俺の仏壇の前に座っていた。隣には父さんのものもある。
「そうだよな。不思議なことが起こりすぎて忘れてたけど俺もう死んでるんだもんな。そりゃ仏壇くらいあるか」
俺が死んで母さんは大層悲しんだことだろう。父さんが死んだ時のことはあまり覚えていないが、母さんが号泣していたことだけは覚えていた。俺が死んだ時も同じくらい悲しんでくれただろうか。
「母さんは父さんが死んでから女手一つで俺を育ててくれた。体を壊したことだってあった...今となっては感謝してもしきれないな」
こんな死んでは乗り移る生活をしてきて...って待てよ。これ結構まずい状態じゃないか?
「俺が母さんに乗り移っているってことは...嘘だろ母さん今日死ぬってことじゃないか。嘘だ嘘だ嘘ダウソだ!」
冗談じゃない。母さんが死ぬだって?もちろん人はいつか死ぬ運命にあるがそれにしても早すぎる。まだ50代だぞ。母さんが死ぬだなんて...
「いや、よく考えてみれば小学生で死んだ時もあったな。人間いつだって死ぬ時はあるんだ...いやでも母さんが死ぬだなんて...」
やっぱり現実を受け止めることができない。母さんが死ぬなんて有り得ないと思ってしまう。というか死んでほしくないのだ。必ず死ぬ運命にあるなんて認めてたまるか。
「…そうだよ。なんで俺は勝手に必ず死ぬだなんて考えてるんだ。まだそう確定したわけじゃないだろ。足掻け。足掻いてみせろよ俺!」
俺は決意する。何がなんでも母さんを死なせるわけにはいかない。今まで世話になってきた母さんの姿で生きて恩返しをするのだ。
「できるだけ長く生き抜く...いや、まず今日死なないことだけを考えろ。必ずその日のうちに死ぬなんていうジンクスを破壊するんだ」
死なない。それだけでいいのなら手の打ちようはある。
「出来るだけ動かない。家から出ない。これは鉄則だ」
家から出たら交通事故や他殺の危険性がある。家にいても強盗や、誰もいないと勘違いされ空き巣が入ってくる危険性もあるけど、そもそもマンションでまあまあ高めのところだし戸締りさえしていれば問題ないだろう。家の中でも転倒したりすることもあるからほとんど動かないようにする。
「ご飯も食べないようにしよう...そうだな飲み物も出来るだけ控えよう」
ご飯の中に何かよくないものが混じっているかもしれない。もしかしたら喉につっかえてしまうかもしれない。少しでも可能性のあることはやらないようにしたい。
「風呂も危険だな。寝てしまって溺死するかもしれない。それからやるべきことは...そうだな、何があっても寝ないようにするくらいか」
寝てる隙に地震だったり火事だったりの災害が起きて巻き込まれでもしたら大変だ。そんな可能性も考慮すべきだろう。
「とりあえずすべきことはこれくらいか...?だめだな疑心暗鬼になりそうだ。悪い可能性ばかり考えるのも精神的に辛いな」
病は気からというが、さすがにこれくらいで病気になって急死することはないだろう。気が滅入るが母さんを死なせないためだ。自分の辛さなんてどうでもいい。
「よし、早速実行だ。何もせずにリビングのソファでテレビでも見てよう」
適当にテレビをつけてぼーっとする。テレビは流し見程度だ。寝なければ、あまり動かなければいいだけだから、それさえ満たしているならばなんでもしていいのだがニュースが見たい。
「あっ前回の老人殺人がニュースになってる。やっぱり介護に疲れてやった感じか。そんなので命を奪うんじゃないよチキショウ」
世の中にはこんなに頑張って生きようとしている人がいるというのに、人の手で勝手に終わらせようとしないでほしい。
「うう、お腹減った...ちょっと喉も乾いたな...でも我慢我慢っと」
ご飯や水なんて一日取らなかったくらいで死ぬわけじゃない。この一日を無事に生き延びることができたら、目一杯飲み食いしてやろう。食べ過ぎで死なないくらいにな。
「なんとしてでも生き延びてやる...世界に俺は、母さんは殺させない!」
そうして時間はどんどん流れていく。1時間、2時間と時間は過ぎていく。
「くそまだ15時かよ。あと9時間もあるのか長いな」
出来るだけ動かないと言ってもただ動かないだけだとエコノミークラス症候群になるかもしれない。適度に貧乏ゆすりをすることで解消しつつ、変なことはしないようにしていた。水すらもあまり取っていないため喉はカラカラだ。トイレに行くこともあまりなくなっている。
「…やばいな緊張で胸が苦しくなってきた。本当に大丈夫だよな。計画にミスはないはずだ。怖くなってきた」
気をずっと張っているのも大変だ。少し辛くなってきた。
「流石にずっと起きてるのも無理があるか。このままだと夜には寝ちゃうかもしれないし...うん1時間だけ寝ちゃおう。ちゃんと戸締まりを確認して...と。アラームもつけたし大丈夫だよな」
とりあえずソファに寝っ転がり目を閉じる。まだまだ一日は長い。今ぐらいの時間に休まなければ逆に体を壊してしまいそうだ。少しぐらい寝た方がいいだろう。
「…ふわぁよく寝た...ヤッベ今何時⁉︎」
思いっきり寝過ごしてしまった。もう23時を過ぎていた。
「あっぶなかったー地震とかきてたらやばかった」
危ない危ない。けれど結果オーライだろう。これで夜寝ることはない。あと1時間ぼーっとしているだけでいいのだ。
「はーやばいドキドキしてきたここまできたらなんとしてでも生き残らないと...」
あと少し、あと50分。1時間がこれほど長く感じたことが今までにあっただろうか。朝から何も食べていないためお腹はペコペコだし喉も渇ききっている。辛く長い1時間が永遠のようにも感じられた。
「っ!そうだこの時計ずれてないよな。この時計がずれてて油断するとかは洒落にならないぞ!」
今まで掛け時計を見て時間を把握していたが、一応スマホの時計も確認しておく。
「うわやっぱり五分ずれてる...危なかったな」
心配しすぎかと思ったが、掛け時計は5分ほど早くなっていた。確認しておいてよかった。
「あっ思い出した。これ母さんがずらしたんだった」
母さんは5分前行動を心がけるためにスマホ以外のすべての時計をずらしていた。ずらした時計を元に5分前行動をしていたから結果的に10分前になっていたけど。思い出せてよかった。
「他には何もないよな...怖くなってきた」
俺が死んでからの2年で何か変わっていることがあるかも知れない。念には念をと記憶を覗こうとしたその時のことだった。
(ぐっ⁉︎し、心臓が...苦しい...!)
突然激しい動悸と息切れに襲われる。
(なんで...これ...心臓病...?)
急いで記憶を読む。
(薬...毎日飲んでいたのか...そんなの知らないぞ...)
おかしい。母さんが心不全になっていただなんて知らなかった。まさか俺が死んでからの2年のうちになってしまっていたのだろうか。
(うそ...だろ...3年前⁉︎)
記憶を見たら、3年前には心不全になっていたことがわかった。
(母さん...俺を心配させないために...わざと黙っていやがったのか...)
母さんのことならなんでも知っていると思っていた。記憶を見る必要なんてないと思っていた。その考えが甘かった。
(ああクソ...母さんを...助けられなかった...)
2016年10月28日
目が覚めたとき、俺は変な場所にいた。
(ここは...どこだ?なんかの部屋みたいだけど...)
「いい加減、あなたを説教することにしました」
「へ?」
目の前には、金髪の美女。女神とでも言うべき女性がそこに立っていた。
この死に続ける旅ももうすぐ終わる。
後一回死ぬだけでいいのだ。
ここにきて新キャラ登場!
と言ってもセリフだけなら前回前々回にも出てたんですけどね。