ありふれぬ欲望の魔王はやはり世界最強   作:エルドラス

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今回はやっと主人公を変身させられます。


第十五話 欲望の魔王vs最奥のガーディアン

その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 

英字達が足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。警戒する英字とユエ。柱は英字達を起点に奥の方へ順次輝いていく。

 

英字達はしばらく警戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。

 

いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

「……これはまた凄いな。もしかして……」

「……反逆者の住処?」

 

 

いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応が無くとも英字の経験がこの先に何かあると告げていた。ユエも感じているのか、うっすらと額に汗をかいている。

 

「やれやれ、やっと終わりが見えて来たな」

「……んっ!」

 

ユエも覚悟を決めた表情で扉を睨みつける。

 

そして、二人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

その瞬間、扉と英字達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

英字は、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、英字が奈落へと落ちた日に見たトラップと同じものだ。

 

だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

「さぁて、どれ程の強さか……」

「……大丈夫……私達、負けない……」

 

英字が楽しそうな笑みを浮かべるが、ユエは決然とした表情を崩さず英字の腕をギュッと掴んだ。

 

ユエの言葉に「そうだな」と頷き、苦笑いを浮かべながら英字も魔法陣を睨みつける。どうやらこの魔法陣から出てくる化物を倒さないと先へは進めないらしい。

 

魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにする英字とユエ。光が収まった時、そこに現れたのは……

 

体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光が英字達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が英字達に叩きつけられた。

 

同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。

 

英字とユエは同時にその場を左右に飛び退き反撃を開始する。

 

「『アクア・シールド』」

 

英字が水のバリアで炎を防ぎ、その陰からユエが飛び出す。それに続いて英字は氷で槍を創り出し、赤頭を狙い投げ放つ。氷槍は狙い違わず赤頭を吹き飛ばした。

 

まずは一つと英字が次の頭を狙おうとした時、白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻った。白頭は回復魔法を使えるらしい。

 

英字に少し遅れてユエの氷弾が緑の文様がある頭を吹き飛ばしたが、同じように白頭の叫びと共に回復してしまった。

 

英字は『念話』でユエに伝える。

『ユエ、あの白頭を狙うぞ。これではキリがない』

『んっ!』

 

青い文様の頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出し、それを回避しながら英字とユエが白頭を狙う。

 

ドパンッ!

「『緋槍』!」

 

光弾と燃え盛る槍が白頭に迫る。

 

閃光と燃え盛る槍が白頭に迫る。しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。そして淡く黄色に輝き英字のオーインバスター50の光弾もユエの『緋槍』も受け止めてしまった。衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいて英字達を睥睨している。

 

「攻撃役に盾役それどころか回復役までいるとは。何とも豪勢な事だ」

 

英字は頭上に向かって、オーインバスター50の光弾を白頭に向かって連射する

 

ユエも合わせて『緋槍』を連発する。ユエの得意技『蒼天』なら黄頭を抜いて白頭に届くかもしれないが、最上級を使うと一発でユエは行動不能になる。吸血させれば直ぐに回復するが、その隙を他の頭が許してくれるとは思えなかった。せめて半数は減らさないと最上級は使えない。

 

黄頭は、英字とユエの攻撃を尽く受け止める。だが、流石に今度は無傷とはいかなかったのかあちこち傷ついていた。

 

「クルゥアン!」

 

すかさず白頭が黄頭を回復させる。全くもって優秀な回復役である。

しかしその直後、光弾の何割かが直撃し、その苦痛に悲鳴を上げながら悶えている。

 

チャンスと感じた英字は『念話』でユエに合図を送り、同時攻撃を仕掛けようとする。

が、その前にユエの絶叫が響いた。

 

「いやぁああああ!!!」

「ユエ!」

 

英字は咄嗟に瞬間移動でユエの傍に飛び、オーインバスター50をアックスモードに切り替えると、近くにいた黒頭と青頭を斬り飛ばす。そのままユエを抱え、再び瞬間移動を使って柱の陰へ移動する。

 

「ユエ、しっかりしろ」

「……」

 

英字の呼びかけにも反応せず、青ざめた表情でガタガタと震えるユエ。ペシペシとユエの頬を叩き『念話』でも激しく呼びかけ、回復魔法と神水も同時に使う。暫くすると虚ろだったユエの瞳に光が宿り始めた。

 

 

「……英字様?」

「あぁ私だ。大丈夫か? 一体何をされた?」

 

パチパチと瞬きしながらユエは英字の存在を確認するように、その小さな手を伸ばし英字の顔に触れる。それでようやく英字がそこにいると実感したのか安堵の吐息を漏らし目の端に涙を溜め始めた。

 

「……よかった……見捨てられたと……また暗闇に一人で……」

「ん?一体何の話だ?」

 

 

怯えるユエに質問する英字。ユエ曰く、突然強烈な不安感に襲われ気がつけば英字に見捨てられて再び封印される光景が頭いっぱいに広がっていたという。そして、何も考えられなくなり恐怖に縛られて動けなくなったと。

 

「成程、精神攻撃か。まったく、無駄にバランスのいい事だ」

「……英字様」

 

敵の面倒さに呆れる英字に、ユエは不安そうな瞳を向ける。余程恐ろしい光景だったのだろう、英字に見捨てられるというのは。何せ自分を三百年の封印から解き放ってくれた人物であり、吸血鬼と知っても変わらず接してくれるどころか、日々の吸血までさせてくれるのだ。心許すのも仕方ないだろう。

 

そして、ユエにとっては英字の傍が唯一の居場所だ。一緒に英字の故郷に行くという約束がどれほど嬉しかったか。再び一人になるなんて想像もしたくない。それ故に植えつけられた悪夢はこびりついて離れず、ユエを蝕む。

「……私……」

泣きそうな、不安そうな表情で震えるユエ。

 

 

その瞬間、英字の中で何かが『プツン』と切れる音がしたのを実感した。

 

 

英字は服の裾を思わず掴んで震えているユエの頭を撫で、その小さな体を抱きしめた。

「……あ」

「安心しろユエ、すぐに戻ってくるからな」

 

それだけ言うと、英字はユエを柱の陰に隠したまま瞬間移動を使いヒュドラの前にやってくる。そしてヒュドラを睨み、この世界に来てから初めて『本気』を出した。

 

英字はアイテムボックスから『異様な形をした何か』を取り出すと腰に当てる、するとその何かは腰に巻きつき『ベルト』になった。

 

更に英字はアイテムボックスから『グリードバイスタンプ』を取り出し天面のスイッチを押した。

 

 

        グリード

 

 

そしてそのままグリードバイスタンプをベルト──『グリードドライバー』に装填する。

 

 

憤怒・怠惰・嫉妬・傲慢・暴食・色欲・強欲

 

 

英字の後ろには七体の悪魔の幻影がユエには見えていた。

そしてそのまま右手を天に掲げその言葉を口にした。

 

 

 

『変身』

 

 

その言葉を口にした後すぐさまグリードドライバーを操作する。

 

 

 

 

       スクランブル

 

 

      全てを欲して!

 

 

       全てを奪え!

 

 

   仮面ライダーグリード‼︎

 

 

      Lump of desire

 

 

 

 

今この瞬間に、欲望の魔王、『仮面ライダーグリード』がトータスの地に降り立ったのだ。

 

 

「……さあ、刮目せよ」

 

その言葉と共に宙へと浮いたグリードは手から六つの巨大なエネルギー弾を作り出すとそれをヒュドラに向けて放った。

 

六つの光弾が同時に迫り、ヒュドラの首は抵抗する間もなく光に飲まれる。その瞬間になって漸く命の危険を実感したのか、ヒュドラの隠された七番目の銀頭が現れる。

 

だが銀頭が何かする前に、その視線は宙に立つグリードの本体に向けられる。

 

その瞬間、ヒュドラは自らの命を諦め、抵抗する事の無意味さを悟った。

 

そしてグリードはベルトを操作する。

 

それと同時にグリードの右腕に血のような赤黒い炎が纏わりつきグリードはその手で拳を作りそのままヒュドラ目掛けて突き出した。

 

 

 

 

     イラ・ブレイク‼︎

 

 

 

 

そしてヒュドラは跡形もなく消し飛んだのだった。

 

 

「終わったぞ」

 

ヒュドラが消えた部屋の中央で、変身を解いた英字は振り返ってユエに声を掛けた。

するとユエは柱から恐る恐る顔を出し、次いで脇目も振らず英字に駆け寄って抱きついた。

 

「英字様……!」

「ユエ、私はお前を見捨てはしない。言っはずだ、私の国に来いと」

「英字様、英字様……!」

 

 その後暫く、ユエは泣き疲れて眠るまで、外見通りの子供の様に英字に抱きついて泣き続けた。

 

こうして英字は、奈落こと真の【オルクス大迷宮】をたった『二日』で攻略したのだった。

 

 

 

 

 

 

 




はい今回初めて主人公を変身させてみました。
ヒュドラが全然相手になってなかったですね。

因みにグリードドライバーの見た目はジュウガドライバーのリペイントです。

後、変身音の最後の英文の意味は『欲望の塊』です。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!
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