強敵を撃ち倒し、二人の仮面ライダーは、変身を解き、その後糸で絡め取られていた全員から糸を引き剥がしておいた。
「さて、聞きたいことは色々あるが、まず清水、何故お前が『私の』デモンズドライバーを持っているのかだ」
英字がそう言うと、清水と気絶している騎士達を除く全員が驚いた。何故なら今英字は、清水の持っているそれを自分のものと言ったからだ。
「七葉君、それはどう言う……」
愛子は英字に対して質問をしたため英字は、それに答える。
「……私はこのグリードドライバーを使う前は、そのデモンズドライバーを使い戦ってきた。だが、とある戦いの時に、時空の歪みに落としてしまってな。長らく行方が分からないでいたのだが……まさか今、私以外で使いこなせるものがいるとはな」
英字は、そう言いながら清水を見る。すると清水は、デモンズドライバーとスパイダーバイスタンプを英字に差し出した。
「ごめん、勝手に使っちまって。それとありがとう、すごく助かった」
だが英字は、それを受け取らなかった。
「いや、それはもうお前のものだ。……私はそれを使ってきたから分かる。デモンズドライバーは、お前を選んだ…とな」
「俺を、選んだ…」
清水は、デモンズドライバーを見てみるとなんとなくキラリと光った気がした。
「さて、私から一つ提案がある」
「提案?」
「あぁ、…だがこの提案は先生、貴女にとっては特に、苦しいものになる」
「え、それはどう言う…」
愛子が言い終わる前に英字は、その提案を言う。
「清水……お前を私の世界に連れて行く」
「「「「「「「「「「「…………は⁉︎」」」」」」」」」」」
この場にいる全員が英字に対して「何言ってんだコイツ!」と言う顔をしている。
だが英字は、それを気にせず提案の内容を細かく話す。
「勿論理由はある。今回攻めてきた仮面ライダー達、それを率いている『マスター』と呼ばれる存在については、私に心当たりがある。もし奴が魔神族と手を組んでいたのなら、今奴が真っ先に狙うのは……清水お前だ」
全員が驚愕したが、そこに待ったを掛けたのは優花だ。
「ちっ、ちょっと待ってよ。そいつらの目的は愛ちゃん先生を殺すことだったでしょ。それがなんで急に清水が狙われることになるのさ!」
優花の意見は尤もだ。
現に先程の仮面ライダー達の目的は、『愛子の抹殺』だったのだから、いきなり次は清水が狙われるなどと言う話はとても信じられなかった。
「…確かに、魔人族達の目的はそれだったのだろう。だがそれはあくまで『魔人族』の目的であり、奴の目的ではない筈だ。奴は面白いこと以外には興味を示さないからな。だが、『勇者の仲間が仮面ライダーに変身できる』奴にとってこれほど面白いことは無いだろう。ならば必ず清水を殺す、もしくは攫って、研究するか…どちらにしろ碌なことにはならないだろうな」
その言葉に全員がゾッとした。
「だが、そんなことをさせる気は毛頭無い。そこでだ、清水、お前には私の城に来てもらう。そこで修行を積みデモンズの力を完全に使いこなせるようになるんだ」
英字の提案は、清水にとっても良いものだ。はっきり言って、今の清水はデモンズの力を全然出せていない。このままあのレベルの仮面ライダー達が集団で襲ってきたら返り討ちに合うだろう。ならば修行は、必要だろう。
「だが、それを決めるのはお前だ、清水。お前が嫌と言うなら「やる!」……即答だな」
「あぁ、この力を使いこなせれば、皆んなを元の世界に帰せるかもしれないんだろ、だったらやってやるさ」
清水は、先程までの魔人族に洗脳されていた時とは違い、はっきりと、まっすぐな目で英字を見て答えた。
だが、そこに待ったをかける人物がいた。愛子だ。
「ちょっと待ってください七葉君!清水君を連れて行くだなんて、そんなの、そんなの……」
英字は、愛子の言いたいことを分かっていた。
清水は少し前まで行方不明になっていて、ようやく会えたと思ったら魔人族にいいように利用されて、さっきも殺されかけていた。なのに今度は英字の世界に行きしばらくは帰ってこれないと言われたのだ。普通は納得できるはずがないだろう。
だが、清水自身がそれを望んでおり、本心からのお願いであることがわかるからこそ否定しきれないでいた。
「先生、先生の言いたいことは分かるよ。でも、俺は償いたいんだ。馬鹿なことやって、みんなに迷惑をかけた分、今度はみんなの為に戦いたいんだ。……だから先生、俺を行かせてほしい」
先程の狂気に満ちた目とは全く違う、覚悟を決めた真っ直ぐな目で先生を見ていた。
「一つだけ約束してください」
愛子はそう言うとこちらも覚悟を決めた目で清水を見返し、言葉を発する。
「必ず、帰ってきてください」
「……勿論です」
それを聞いて安心したのか愛子はホッとしていた。
そうして一同はウルの町に帰ろうとしていたが、英字は、清水に呼び止められた。
「七葉」
「?なんだ、清水」
「頼みたいことがあるんだ」
「頼みだと?」
「あぁ、頼みってのはな……………ってことはできるか?」
それを聞いた英字は、少し驚くが直ぐに冷静になりもう一度確認のため清水に問う。
「できる…が、本当に良いのか?」
「あぁ、これは俺のケジメだ」
「…辛いと思うぞ」
「それでもだ」
「……分かった」
そしてその日の夜、英字は、清水に頼まれた『あること』を終わらせた。
北の山脈地帯を背にライドベンダーアウトタイプが砂埃を上げながら南へと街道を疾走する。何年もの間、何千何万という人々が踏み固めただけの道であるが、ウルの町から北の山脈地帯へと続く道に比べれば遥かにマシだ。超高性能四輪は、振動を最小限に抑えながら快調にフューレンへと向かって進んでいく。
尤も、後ろの座席で窓を全開にしてウサミミを風に遊ばせてパタパタさせているシアは四輪より二輪の方が好きらしく、若干不満そうだ。何でも、ウサミミが風を切る感触や英字にギュッと抱きつきながら肩に顔を乗せる体勢が好きらしい。
運転は当然英字。その隣は定番の席でユエだ。後部座席にウィルを挟む様にティオとシアが乗っている。
そのウィルが、英字に対し、少々身を乗り出しながら気遣わし気に話しかけた。
「あのぉ~、本当にあのままでよかったのですか? 話すべきことがあったのでは……特に愛子殿には……」
英字は振り向かないまま、気のない返事をする。
「あぁ、あれでいい。あれ以上、あそこにいても面倒なことにしかならないだろうしな。……それに、先生も今は私がいない方がいい決断が出来るだろう」
「……それは、そうかもしれませんが……」
「お前は……本当に人がいいというか何というか」
会ったばかりの冒険者達の死に本気で嘆き悲しみ、普通に考えれば自殺行為に等しい魔物の大群に襲われる自分とは関係ない町のために残り、恨みの対象であるティオを許し、今は半ば脅して連れ出した英字と愛子達との関係を心配している。王国の貴族でありながら、冒険者を目指すなど随分変わり者だとは思っていたが、それを通り越して思わず心配になるぐらいお人好しだ。
「……いい人」
「いい人ですねぇ~」
「うむ、いい奴じゃな」
ウィルは、一斉に送られた言葉に複雑な表情だ。褒められている気はするのだが、女性からの〝いい人〟というのは男としては何とも微妙な評価だ。
「わ、私の事はいいのです……私は、きちんと理由を説明すべきだったのではと、そう言いたいだけで……」
「……」
微妙な表情で頬をカリカリと掻きながら、話を続けるウィル。
「なぜ、愛子殿とわだかまりを残すかもしれないのに、『清水という少年を殺したのか』……その理由です」
そうウィルが放った言葉に英字は、昨日のことを思い出していた。
あの時清水が英字に頼んだことは……『自分を死んだことにしてほしい』というものだった。
英字自身何を言っているんだと一瞬思ったが、直ぐに清水が何を考えているのかを理解した。
清水がもし英字の世界に避難しても、その仲間であった優花達や担任である愛子にも危害が及ぶことは目に見えている。それに敵の、仮面ライダーを蘇らせたであろう『奴』は、『他人の記憶を覗き込む能力』がある。英字自身もその為に護衛をつけようとしていたのだが、清水は、もっと手っ取り早い方法を提案したのだ。
それは、あの時の戦い…要するに清水が仮面ライダーデモンズとして戦ったことの『記憶を書き換えられないか』というものだった。
勿論可能だ。古い記憶を書き換えるのは難しいが、新しい定着して間もない記憶なら書き換えるのは簡単だ。だがそれは皆んなから『死んだことにされる』事と同義。とても辛いことのはずだ。
だが清水は、構わないと言った。
「俺は、罪を犯しすぎた。それなのに更に皆んなを危険な目に合わせるなんて出来ない。勿論ずっと書き換えているわけじゃない。皆んなを守れるくらい強くなって戻ってきたら、元に戻してくれ」
俺なりの我儘。清水はそう言っていた。だがそれは、ただの我儘ではなく、守る為の『みんなの為の我儘』だと英字は悟った。
だからこそその願いを…我儘を叶えた。
皆んなの記憶を書き換えた、勿論ユエ達の記憶もだ。真実を知っている者は少ない方がいい。
だから書き換えた。
『清水は先生を人質に取り、その場から逃げようとしたが、魔人族に先生ごと魔法で撃ち抜かれ、先生は助かったが清水は放って置いても死ぬくらいの重傷を負ってしまった。清水は命乞いをするが英字は清水を撃ち殺した』
そう言うシナリオに。勿論、自分を憎まれ役にしたことは、清水にも言っていない。
英字自身は『憎まれ役には慣れているから』平気だったが。
そして翌日、皆んなが寝ている間に清水を自身の世界に送り出した。正確には英字の家である城にだが……。
そんなことを思い出していた英字だが、ウィルに質問されていたことを思い出し慌てて、『清水が頼んだシナリオにふさわしい』であろう答えを出した。
「……言ったはずだ、敵だからと……」
「それは、彼を〝助けない〟理由にはなっても〝殺す〟理由にはなりませんよね? だって、彼はあの時、既に致命傷を負っていて、放って置いても数分の命だったのですから……わざわざ殺したのには理由があるのですよね?」
「……よく見ているな」
窓から外に顔を出して風を楽しんでいたシアも、「そう言えば、私も気になってました」と知りたそうな顔で運転中の英字に顔を向ける。英字は、どう答えようかと少し逡巡するが、何かを言う前にユエが代わりに答えた。
「……英字様、ツンデレ」
「……」
「「「ツンデレ?」」」
英字は、ユエの的外れな答えに呆れていた。それを無視しながら英字は今、先生はかなり思い詰めているだろうと、想像するのだった。
そして英字は思い出したようにティオに話しかける
「あぁ、そう言えば、ティオ、確か正式な挨拶はまだだったろう? これから共に旅する仲間だ、ユエとシアにしておけ」
「む、そういえばそうじゃの。うむ! では、これから宜しく頼むぞ! ご主人様、ユエ、シア。妾の事はティオでいいからの! ふふふ、楽しい旅になりそうじゃ!」
新たな仲間、竜人族ティオが加わり、一行は中立商業都市フューレンへと向かう。
はいと言うわけで、清水君はしばらく本編での出番は無しです。
ですがご安心を、どこかのお話で必ず復活させますので。
次回でウルの町でのお話は終わりです。
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