「アレ?もしかしてアヤさんじゃないですか?」
「君は…」
俺の名前はレン。昼間はファミレスでバイトをする一般人を装って夜は怪盗している。そんな俺には休日はない。今日は休日を装って、ある人物に接触を試みている。それは天敵とも言える。国家保安委員会。通称KGBと呼ばれて、国内国外の犯罪者を取り締まる組織である。
アヤ・ミツルギ。名前からして東方の出身の人だと思われる。彼女は三等国家保安委員って言うじゃないか、あの若さでとんでもない階級だ。だって上から5番目に高い階級だ。相当実力がないとあの若さで慣れない階級だ。
俺が親しく挨拶すると、彼女は誰だと考える。一昨日しかもほんの一瞬だけ、下手したら相手は俺の事を見てなかったかもしれないレベルだから身に覚えがなくて正解だ。
「あ、すみません。いきなり馴れ馴れしくしちゃって、一昨日ウチのファミレスに食べに来てくれたじゃないですか、店長の隣に立ってたの俺なんです」
「あぁ、そういうことか、すまないな。名前は何というんだ?」
「レン・ヴィマーです。気軽にレンって読んでください」
「わかった。レン。私はアヤ・ミツルギだ。アヤで構わない」
そう言って彼女は友好の印に手を差し出してくれたので、俺は手を握り返し握手をした。さて、ここからどう取り合って行こうかな。
「あの、保安の方って聞いたですけど、それってやっぱり怪盗を追いに来たんですか?」
「店長から聞いたのか?たく、すまないが企業秘密という奴だ。答えなれない」
「そうですか〜、それは残念です。でも貴女が怪盗を追ってるとしたらすぐに捕まりそうですね」
「ほう?それはなぜだ?」
「いや、俺が怪盗だったら自ら貴女に捕まりに行きますもん」
「…もしかして私を口説いてるのか?」
「いやいや、そんな。美人だから少しは顔を覚えて欲しいかな〜って、どうですか?ちょうどここら辺で美味しいお店があるですよ。どうですかご一緒に?」
「コイツは驚いた。おとなしそうに見えるが、意外と肉食系なのか?」
あらら、全然手応えがないな。まあ、こんなもんじゃあ全然引っかかる相手ではないか。
「先輩」
「おや、ライトくん。どうかしたか?」
「実は新たな情報が上がって来まして」
「そうか、わかった。すまない。レン。ちょっとばかし忙しい身なのでな。コレで失礼する」
「はい。お仕事中すみませんでした。頑張ってください〜」
おそらく同じ職場の部下と言ったところだろう。残念なことに全く脈なしのようだな。お誘いの返事をすることすら無く忙しい身なのでの一言で断ち切られてしまった。
まったく漫画の主人公ってくらいに良いタイミングできたな。あの後輩くんは、今頃ナンパに困っていたんだと言って、彼を褒めているのかな?
あの後輩くんも本当は何もないのに、適当にそれらしい理由を言ってナンパ男と言う俺から上司を助け出したわけだ。なんともイケメンだね。さて、これからどうするべきかな。なのど考えていたら数週間経った。
「邪魔するんじゃねえよ。雑魚が」
俺は今路地裏でカツアゲにあっていた少年を助けて、ヤンキー共にボコボコにされてた。ヤンキー共は俺をボコって満足したのか帰って行ってくれた。
「あ、あの…」
「大丈夫か?少年」
「はい。ありがとうございます。おかげでバイト代を取られずにすみました。今日は母の誕生日なんです」
「はは、そうか。それなら早く帰ってお祝いしなきゃな」
「はい。でもその前に救急車を」
「大丈夫大丈夫。大した怪我じゃない」
「ですが…」
「いー、いー、それよりも早く。金を取られる前にプレゼント買っちまえ。俺は本当に大丈夫だから。助けに来たのに逆に助けられたらカッコつかない。ここは助けた礼にこのままカッコつけさせてくれ。少し休んだら歩けるから」
「わかりました。本当にありがとうございます」
そして、少年は母のプレゼントを買いに行った。その間に何度も少年は振り向いてペコペコと申し訳なさそうに頭を下げながら立ち去って行った。
「いててて…」
「随分と派手にやられたな」
俺が殴られた頬をさすっていたら、誰かの声が聞こえてハンカチを差し出して来た。誰かと思い見てみるとアヤ・ミツルギが目の前に立っていた。
「アヤさん」
「情けないな。男だろ少しはやり返したらどうだ?」
「いや、目一杯抵抗しましたって、三体一ですよ。奮闘した方ですよ」
「私なら倒せた」
「なら助けてくださいよ」
「私が来た時にはすでにやられていた。ほら、手をかそう」
そう言われて俺は肩を貸してもらいその場を去って行った。
「へぇ〜、ずいぶんと高そうな部屋ですね」
俺は治療のために近くのホテルに来ていた。明日がの保安のお偉いさんだ。高い給料をもらっているんだろうな。こんな高いホテルを簡単に入れちゃんだもんな。こんな高いホテル入ったことねぇ。
「ジロジロ見てないでそこに座れ」
救急箱を持って来たアヤを見て俺は素直に返事をして椅子に座る。治療を受けている間は無言の時間が続く。高級マンションのだけあって、壁は分厚く隣の音が聞こえない。地上を走る車の音もここまで聞こえない。なんとも静かな夜だ。俺の駅近くにある騒音が酷い家とは大違いだ。
「…お前はチャランポランな癖にいい奴なんだな」
「喧嘩に負けてカッコ悪かったですけどね」
「ふふ、そうだな。でもそれだけじゃない。ここ最近外回りをしていると、時々お前を見かけることがあるんだ」
「そうなんですか?なら話しかけてくれればいいのに」
「いや、随分と忙しそうだったからな。この前おばあさんをおぶっていただろ?」
「見られてたんですか」
「あぁ、また違う日も落し物を届けようと、せっかくオシャレな格好しているのも関わらず。汗だくになりながら必死に追いかけてたり。病院から抜け出した認知症のお爺さんに殴られながらも病院に届けたり。私をナンパして来たチャランポランな奴とは思えないほど好青年でいい奴だな」
「……別にそう言うわけじゃないですよ。俺は自分が惨めにならないように、自分より弱い奴を助けてるだけですよ」
「どう言うことだ?」
「俺元々士官学園の生徒だったですけど、イジメにあって退学したんですよ」
「……」
「惨めでしたよ。何もできずにただやられて、そんな自分を守るために自分より惨めな、弱い人を助けて、自分はまだマシだって言い聞かせてたんです」
「……」
「なんとも情けない話ですよね」
「それでも優しさには変わりないだろ?」
「そうですかね。優しいだけじゃあダメだとか、私だけに優しくしてとか、貴女のは自己満足のエゴイストなんて言われて、確かに俺はありがとうのお礼を聞いて自己満足しているだけかもしれない。お礼の言葉とかが返ってこなかったら、俺はこんなバカみたいな事してないかもな。いったい何が正解なのかわからなし。もう終わりにしようかなって思っちゃって、良いことしたってとくにお礼言われるだけで何も手に入んないし、何も良いことが…」
そんな愚痴を言っていたら止まらない口を突然とアヤによってキスで塞がられる。俺は思わず惚けてしまった。
「良いこと起こっただろ?今まさに」
「……」
「どれ、ご褒美にもう少し…
そして、翌朝起きるとアヤはいなくなって『頑張って強くなれ』と言う書き置きがあった。
「いてて…」
「良かったのか?せっかくお礼してくれるって言ってたに、もしかしたら彼女できたかもしれないぞ」
アレから数日俺はナンパで困ってた女の子を助けて、また不良達にボコボコにされた。そして、またいつの日かのようにアヤが俺の前に現れた。
「別に彼女のために良い奴やってるわけじゃないで」
「それじゃあ、何のために良い奴を続けてるんだる」
「…良い奴を続けてたら、またアヤさんに会えるかなって…」
「ふっ、そうか…
「さ〜て、パスワードは…lift9634。いや〜、長かった」
俺は今アヤのパソコンで保安委員会の犯罪リスト。いわゆる機密情報を見ていた。