アリウス生徒の奮闘記   作:ハァン

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アリウスの夏イベ最高でした。

サオリはイケメンすぎて最高だったしアツコとヒヨリは可愛くて最高だったしミサキはおもしれぇ女すぎて最高だった。幸せなスクワッドが見られて作者も幸せです。

まぁうちのスクワッドはここから一回地獄を見ることになるんですが。




トリニティの戦略兵器 vs アリウスの最高傑作

 

 

 

 この学校は平和ボケしている。

 

 彼女──桐藤ナギサがトリニティに入学した時、真っ先に感じた事だった。

 

 かつて凄惨な弾圧を繰り返し散り散りとなっていた学園を一つに束ね、キヴォトス最大級の自治区を作り上げたトリニティ総合学園。その歴史は血で血を洗う闘争に塗れていた。

 

 アリウスを筆頭に、歴史の闇に葬られた学校など数えきれない。しかしその全てを蹴散らし、屈服させ、あるいは追放して、トリニティは今の平和を享受している。

 

 今の生徒は誰一人としてそれを理解していない。

 

 この()()()()()が薄氷一枚の上に立っている事も、それがいつ崩壊してもおかしくない事も。

 

 だからナギサは政治の世界へと足を踏み入れた。

 

 今の平和を食い潰しながら宿敵のゲヘナに嫌がらせをするしか脳がない老害ども……もとい、時間を持て余していらっしゃる先輩方とも真っ向から立ち向かい、その政治的手腕により一年生にしてその身をティーパーティーへ置く事に成功した。その有り余る武力でのし上がったミカとは対極に位置する、ナギサにとっての戦い。

 

 全てはトリニティの安泰のため、そして何より──ミカのために。

 

 あの幼馴染は武力だけで言えば飛び抜けているが、政治に関しては疎い傾向がある。純粋で無邪気な彼女を政争から遠ざけ、仮初の平安ではない本当の楽園(エデン)を作り上げる。

 

 ミカにとって唯一の大切な友人がナギサであるように、ナギサにとってミカはたった一人の大切な幼馴染だった。

 

 そのためならいくらでも泥を被ろう。目の敵にされよう。

 最後にミカが笑顔でいてくれるなら、喜んで汚れ役を引き受けよう。

 

 だからこそ、ナギサは今回の騒動の主犯──荻野レンゲの事が許せなかった。

 

 ミカにとって新たに友人ができるのは、彼女にとっても喜ばしい事だった。ミカが自分のアクセサリーを譲る程の相手なら尚更だ。

 

 しかし、そんなミカが紹介したのは、見るからに不審な一般の生徒。

 

 この学園を率いるホストの補佐として、彼女は全校生徒の情報をある程度把握している。中でも同学年の一年生の情報は頭の中に全て叩き込んであると自負している。

 

 しかし、荻野レンゲと名乗ったあの少女はその知識の中に含まれていなかった。

 

 自分の記憶違いであって欲しいとデータベースを何度も必死に調べるも、一向に出てこないレンゲという生徒の情報。

 

 その時に彼女は確信した──ミカは騙されている。

 

 どこか不器用で、でも信頼する相手にはとことん甘くなるミカを、あろうことかあの女は利用しているのだ。

 

 絶対に許せない。

 

 正実にもシスターフッドにも渡せない。彼女だけは、自分の手で捕えなければいけない。

 

 そのために彼女は恥を忍び、同級生に頭を下げて協力を要請した。

 

 自分が持てる最大限の戦力を持って、あの不届き者を倒すために。

 

 

⚫︎

 

 

──なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

 

 目の前で繰り広げられている戦いを前に、ナギサは言葉を失っていた。

 

「くっ……キエエエエエッ!」

 

 赤黒い塗装が施された二丁のショットガンから散弾が放たれる。

 まともに当たれば必殺の一撃となり得るその攻撃は、しかし狙いに当たることなく背後の建物の壁を抉るだけだった。

 

 小さな人影──レンゲは既に猛スピードでツルギの懐に潜り込み、自身の銃でツルギの両腕を殴りつけて狙いを外していた。

 

 接近を許したツルギは動揺する事なく右足を振るいレンゲを蹴り上げようとするも、神速で放たれた蹴りを驚異的な反射神経で躱し、反撃と言わんばかりに銃床でツルギの頬を打ち抜いた。

 

 頭を殴られ一瞬だけ動きを止めるツルギ。

 しかしその刹那の隙すらレンゲは見逃す事なく、追撃のタックルをツルギに叩き込んだ。

 

「きひひひ!! 無駄だァァ!!!」

 

 だがツルギもまた、規格外な力の持ち主。

 

 小柄なレンゲのタックルをその身一つで受け止め、渾身の力で彼女を投げ飛ばした。

 

「…………」

「ぐふっ……!?」

 

 レンゲの銃が漸く唸り声を上げた。

 地面を転がりながら放たれた弾丸は、まるで狙い澄ましたかのようにツルギの首や眉間といった急所を打ち抜き、さらなる追撃を抑制した。

 

 再びの仕切り直しとなった戦闘。

 

 しかし、()()()()()()()()()()()この状況が、ナギサにとっては信じられない光景だった。

 

「ツルギさんは既に正義実現委員会……いいえ、トリニティの中でも五指に入るほどの実力者。そんな方が()()()()()()()()()()()()()なんて……!」

 

 一年生でありながら既に正実の中でも戦略兵器とも称されているほど抜きん出た戦闘力を誇るツルギが、素早く動き回るレンゲにあまりにも容易く翻弄されていた。

 

「……なるほど、ツルギさんが苦戦するのも頷けます」

 

 目の前でナギサを守るように盾を構えているミネが、関心するように呟いた。

 

「ど、どういうことですか? あのツルギさんが苦戦する相手なんて──」

「これは私の銃にも言える事ですが、ショットガンは乱発するのに向いているとは言い難く、一度狙いを外してしまうとその時点で一瞬でもタイムラグが発生してしまいます。そしてどうやらレンゲさんは、弾丸を避ける事に長けているようです」

「弾丸を避けるなんて……」

 

 そして、その発生したタイムラグを利用して彼女は一気にツルギへ接近。そのまま近接戦闘へと持ち込んでいた。

 

 接近戦ならばむしろツルギの本領とも言える。正義実現委員会に加わってから、その暴力的な強さを持って暴徒を鎮圧してきた。

 しかし、接近戦では何よりも経験が生きる。

 

 トリニティ(ツルギ)アリウス(レンゲ)とでは、実戦経験は比べるまでも無かった。

 

 生まれつきサバイバル生活を強いられ、アリウスで文字通り叩き込まれた殺しの技術の全てを、彼女は経験値として余すことなく蓄えている。

 

 それこそ、マダムが『アリウスの最高傑作』と彼女を称する所以。

 

 だが、これだけならばナギサは焦っていない。ツルギに万が一の事が起きる可能性がゼロではないのは、既に想定している。そのためにツルギに加え、ミネまで呼び寄せたのだ。

 

「それなのに……ッ!」

 

 ガンガンと、まるで殴りつけるようなミネの盾から鳴り響く。

 

「ッ! ナギサさん、もう少し下がっていて下さい!」

 

 ミネは苦虫を噛み潰したような表情で、さらに強く盾を握り締めた。

 

 ミネが一歩動こうとする度に、このようにレンゲから銃弾が降り注いだ。それも、狙いはミネではなくその背後で佇むナギサの方へと。

 

 ここでミネが加勢に動けば、ナギサは瞬く間にレンゲの銃弾の餌食となってしまう。そして、元々武闘派ではない彼女では、強力な神秘が込められたレンゲの銃弾を受けてしまえば重傷になり得る。

 

 ()()()()()として、ミネはそれを見過ごす事ができない。

 

 半ば人質のような状態にされてしまったナギサは、自身の迂闊さに内心舌打ちを漏らした。

 

 だがそれでも、彼女は戦場に出る事を選んだ。

 

 いや──出なければならなかった。

 

 ミカが自分以外で初めて『友達』と呼んだ少女を、彼女はこの手で捕えようとしているのだから。

 

 自分の目で結末を見届けなければ、ナギサは自分を許せないと自覚していた。たとえミカに恨まれようと憎まれようと、全て甘んじて受けよう。だからせめて、自分の罪と向き合いたかった。

 

 なのに。

 

「ツルギさん……」

 

 徐々に傷が増えていくツルギの姿に、自身の胸が苦しくなるのを感じる。

 

 自分の責任で同級生が傷ついている。

 

 どこまで行こうとまだ一年生のナギサにとって、その苦しさは彼女の心を少しずつ蝕んでいた。

 

 そして何より──レンゲのあの能面のような無表情で見つめられ、ナギサは平静を装うだけで精一杯だった

 

 

⚫︎

 

 

 表面上は無表情を装いながらも、レンゲ自身も内心では少なくない焦りを覚えていた。

 

「(こいつ、何度攻撃しても全然倒れる気配が無い。ミカと違って効いてはいるっぽいのに……!)」

 

 接近戦でも銃撃戦でも幾度となく急所に攻撃を叩き込んでいるというのに、まるでゾンビのように何度も立ち上がるツルギに苛立ちを隠せない。

 

 このまま時間を稼がれ援軍を呼ばれれば、彼女は確実に終わる。

 

 しかし、これでは埒が明かない。

 

──それに、いつ()()()がバレてもおかしくないし……。

 

 レンゲの中のもう一つ懸念点がその焦りを更に増幅させていた。

 互いに近距離で戦う戦闘スタイル故に、レンゲの()()()()()()がツルギに勘付かれるかもしれない。

 

「それなら、さっさと片付けるに限る……!」

 

 カラン、と乾いた音と共に、ツルギの足元に何かが転がる。

 

「ッ……!」

 

 次の瞬間、激しい衝撃と共に足元のグレネードが爆ぜた。

 ただのグレネード程度なら大きなダメージを受ける事はないが、その衝撃に思わずツルギの体が仰反る。

 

 つまり、レンゲから視線が外れた。

 

 瞬時に体勢を整えて起き上がったツルギの目と鼻の先に月明かりに煌めく何かが迫る。

 咄嗟にそれを片手で掴むと、鋭い痛みが彼女の手から発せられ思わず顔を顰めた。

 

「……これも反応してくるんだ」

 

 目前で止まった『それ』を掴んでいるツルギの手から、ポタポタと赤い雫が垂れていた。赤い血でツルギの顔が汚されようと、レンゲは無情にもナイフを振り下ろそうとさらに力を込めた。

 

「ケヒャヒャヒャァ!!!」

「たまには人間の言葉を話そうよ、ねぇ……! そもそもどんだけ弾食うのさ……いい加減倒れて頂戴よ……!」

「それはお互い様だろ」

「ッ……だから急に真顔になるのやめろってば……!」

 

 プルプルと、ナイフの切先が上下する。

 渾身の力でナイフを突き刺そうと全体重を乗せているレンゲだが、対するツルギは片膝をつきながらもどこか余裕を持ってそれに対抗していた。

 

「ちぃ、やっぱチビの私じゃ部が悪いか……これでも小さい頃は馬鹿力だったんだけど……!」

 

 スクワッド内ですら小柄な部類に入るレンゲでは、純粋な力比べとなると不利は避けられない。

 徐々にナイフがレンゲへと押し戻される。

 

「ッ、あぶなっ!?」

 

 その時、左頬に鋭い痛みが走り、レンゲは思わずナイフを手放して大きく後退した。頬から流れる一筋の赤い雫に、顔を顰める。

 

 そんな光景を、拳を振り抜いた状態でツルギは凝視していた。

 何よりも、擦り傷ではあるが()()()()()()()という事実に。

 

──反応が遅れた? 銃弾すら避けられるこいつが?

 

 いくら愛銃を撃ってもその悉くを避けていたレンゲの、不可解な傷。

 

「…………」

 

 握っていたナイフを投げ捨て、再び愛銃(ブラッド&ガンパウダー)を両手に取る。

 

 ナイフを失ったレンゲは、今度はサイドアームのハンドガンを手に再び迫る。的確に急所を狙う銃撃と打撃を躱しながら、ツルギは脳内で先程の光景を思い返していた。

 

「(思えば、こいつは左手(ブラッド)にはすぐ反応するのに、右手(ガンパウダー)は躱すタイミングが毎回少しだけ遅い。どの道避けられてるから今まで気づかなかったが……)」

 

──試す価値はある。

 

 レンゲから放たれた回し蹴りを受け止め、ツルギは左手(ブラッド)をレンゲに向かって振るった。レンゲから見て()()から迫る拳に、彼女は即座に身を屈めて逃れた。

 身を屈めたレンゲは勢いそのままに足払いを放ち、バランスを崩したツルギに向かって飛びかかる。

 

 だが、これもツルギの想定内。

 

 飛びかかるレンゲに合わせる形で、ツルギは右手(ガンパウダー)を突き出した。先程と同じく、今までの銃撃と比べれば取るに足らない攻撃。この程度の攻撃、本来ならレンゲは問題なく躱せるはずだ。

 

「くぅ……!」

 

 だが、ツルギの予想通り、レンゲは躱すのではなく()()()()()

 

 レンゲから見て()()から迫る拳を、彼女は左腕でガードした。ツルギから放たれた全力の拳に、受け止めたはずの彼女は思わず顔を歪ませる。

 

 舌打ちを溢すと、レンゲは手に持ったハンドガンで数発ツルギの額打ち抜き、その場から飛ぶように転がった。

 

 額に銃弾を受けながらも、ツルギの脳はこの一連の戦闘の光景を細かく分析する。

 

「(こいつ、もしかして……)」

 

 ツルギの中で浮かび上がっていたある仮説が、ゆっくりと、確実に確信へと変わり始めている。

 

「急に黙っちゃってどうしたのさ。もうお疲れかな? だったら退いてくれれば嬉しいんだけどなぁ」

 

 先程までの奇声も上げずに黙々と自身を見つめてくるツルギに、レンゲは思わず顔を顰めた。

 

 奇声を上げながら襲いかかるツルギを黙々と受け流していた先程とは打って変わって、今度は軽口を叩くレンゲをツルギが無言で捌いている。

 

 レンゲの背筋を冷たい汗が流れる。

 

「君、もしかして……」

 

 そんな時だった。

 

──漸く隙を見せましたね

 

「ッ!」

 

 上空から降ってくるナニカに、レンゲは咄嗟に顔を覆った。

 

 まるで隕石のように地面と衝突したそれは瞬く間に地面を叩き壊し、視界を包み込むほどの砂埃が巻き上がった。

 

「ミネ……!」

 

 特徴的な大きな盾こそ持っていないものの、先程までナギサの側で釘付けにされていたはずの蒼森ミネが砂埃の中から姿を現した。

 

「はは……参ったなぁ。君が来れないようにナギサを集中的に狙ってたんだけど」

 

 チラリとナギサの方へ視線を向けると、なんと彼女の目の前でミネの盾が地面に()()()()()()()()。その盾の後ろで身を屈めながら様子を伺うナギサが辛うじて見える。

 

 ナギサが遮蔽物まで逃げられないよう立ち回っていたはずなのに、まさか自力で遮蔽物を作り上げるとは。あまりにも力技すぎる解決方法にレンゲは乾いた笑みを漏らしてしまう。

 

 やはり、ミネ相手に常識は通用しない。

 

「遅れてしまいましたが、ようやく貴女を『救護』しに参りました、レンゲさん」

「余計なお世話だって言っても、君は言う事聞かないんだろうね」

 

 力強い瞳でこちらを見つめるミネの隣へ、ツルギもまた並び立つ。

 普段の凶暴な笑みを引っ込めてどこか理性を感じさせる無表情を浮かべているツルギを見て、ミネもまた神妙な表情で頷いた。

 

「ツルギさん、どうやら貴女もお気づきのようですね」

「ああ」

 

 そんな短いやり取りに、レンゲは目の前の二人の少女に首を傾げた。

 

「あらまぁ、二人して頷き合っちゃってさ。ま、君たち二人がかりならもしかしたら私を止められるかも──」

 

 挑発するように肩をすくめながら首を振るレンゲだが、彼女はその言葉を最後まで続けることができなかった。

 

 

お前、左目が見えてないだろ

 

 

 ツルギから放たれたその言葉に、彼女の動きが止まる。

 

 畳み掛けるように、ミネもまた言葉を続けた。

 

「貴女は左からの攻撃への対処が、右への攻撃と比べ僅かに遅い。気を付けなければ見逃すほど小さな差ですが、ツルギさんとの最後の攻防で私も漸く確信を持てました──貴女にとって、左からの攻撃は全て死角になっていたのですね」

 

 確信を持ってレンゲに告げる二人の言葉に、ナギサは言葉を失った。

 

 立ち振る舞いから体の仕草、視線の移り変わりまで、そんな兆候などまるで気づかなかった。しかし、ツルギとミネというトリニティ屈指の武闘派二人にとっては明らかな違和感があったのだろう。

 

 だが、それほどのハンデを背負いながら、彼女はツルギと互角以上の接近戦を繰り広げ、ようやく隙を見せたとはいえミネを長時間釘付けにしていたというのか。

 

 ナギサの額から一筋の汗が流れ落ちる。

 

──荻野レンゲはここで止めなければ、確実にトリニティの脅威になる。

 

「……そのうちバレるとは思ってたけど、まさかこんなに早いなんてね」

 

 もはや誤魔化すのも無意味と言わんばかりに、当のレンゲは自身の左目に手を添えた。能面のような無表情からは一転、困ったような苦笑を浮かべている。

 

「少し前に友達と喧嘩しちゃってね。まぁ、今となっては笑い話にできるぐらいだよ。で? それを知った君たちは目が見えなくて可哀想な私を見逃してくれる気になった?」

「いえ、ただ一つ言える事は──貴女を『救護』する理由が増えたというだけですッ!」

「ッ! 殴りかかりながら言うセリフじゃないよねぇ!」

 

 突風がレンゲの真横を通り過ぎた。

 

 拳を突き出した状態のミネが目にも止まらぬ速さで迫ってくるのを間一髪で避けると、勢いそのままのミネは背後の建物に激突する。

 

 だが、建物の壁はまるでおもちゃのように一瞬にして砕け、崩れ落ちた壁が瞬く間に瓦礫と化した。

 

「ミカほどではないけど……似たタイプの子か」

 

 畳み掛けるように背後から降り注ぐ殺気。

 

 自身の『勘』を頼りにその場で伏せた瞬間、銃弾の塊が頭上を駆け抜ける。当然のように自身の左側から放たれた攻撃に再度苦笑しながら、レンゲはその方角へグレネードを放り投げた。最早聞き慣れ始めた奇声を掻き消すように、爆発音が鳴り響く。

 

 だが、一息つく暇もないまま上空から青色の暴力が降ってくる。

 転がるようにしてその場から退避すると同時に、凄まじい衝撃と共に目の前の地面が叩き割られた。

 

 連携などまるで考えていない、二人の突出した力による純粋な暴力。

 

 だが、既にツルギとの戦いで消耗していたレンゲにとって、その暴力はまさしく脅威として牙を剥いていた。

 

「ハァ……ハァ……見えないって分かった途端に死角ばっか狙っちゃってさ……人の心とかないの?」

「人の心を持つべきは貴女の方です! あれほど貴女の事を信頼していたミカさんを騙すなんて、到底許されるべき行為ではありません! だから私は貴女を『救護』します!」

「こんな言葉を知ってる? 『騙される方が悪い』んだよ!」

 

 レンゲの構えられたライフルが声を上げる。

 

「うっ……!」

 

 数発の銃弾が体に叩きつけられ、ミネは思わず苦痛で顔を歪める。

 盾さえあれば難なく防げる程度の銃撃だったが、彼女の盾はナギサを守るために手放した。今ミネを守るものは何もない。

 

 無防備になった彼女にレンゲは何度も銃弾を叩き込む。

 

「恩を仇で返すようで悪いけど、こっちも必死なんだよ、ねっ!」

 

 動きが止まったミネに容赦なく襲いかかるレンゲ。

 銃床で彼女に頬を打ち、鋭い蹴りで距離を離した。

 

 受け身もままならないまま地面を転がるミネを確認し──。

 

「キエェェェ!!」

 

 背後から迫る奇声に向けて再度銃床を振るった。

 

 カウンターで叩き込んだはずの打撃を文字通り体で受け止めたツルギは、「キヒヒ」と笑みを浮かべながら銃を目の前のレンゲに突きつけた。

 

「グレネード直撃してるんだからさぁ……もっと痛がってくれてもいいでしょうが!」

 

 あまりのタフネスに呆れたように目を細めるレンゲ。

 

 トリガーが引かれる寸前で顔を逸らして銃撃を躱したレンゲは、そのまま愛銃を手放しサイドアームのハンドガンへ持ち替えた。この近距離ならライフルよりも早い。

 無防備になったツルギに今度こそ致命的な一撃を叩き込もうと、さらに肉薄しようとして──。

 

 シュルシュルと、自分の髪が解けるのを感じた。

 

 激しく動き回ったせいか、一つ結びにまとめていたはずの髪が乱れてしまったのだ。

 そして、彼女の髪を留めていたはずのシュシュが──ミカからの大切な贈り物が、ツルギのすぐ足元に落ちている。

 

──拾わないと。

 

 考えるよりも先に、彼女の体は動いていた。

 

 生まれて初めてできた友達から貰った、大切な思い出。

 それが今まさに、彼女の手からこぼれ落ちようとしている。

 

 咄嗟に手を伸ばし、その指先が触れた瞬間。

 

 

 

「──え?」

 

 

 

 ぐちゃ、という耳障りな音と共に、レンゲの左目から鮮血が飛び散った。

 

 

 




次回、長かったトリニティ編がようやく終わります。

・レンゲ
実はミカ戦から最初に目が覚めた時点で左目が見えなくなってた。信号の存在に気づかずナギサの車に轢かれたのもそのせい。ここからどんどんボロボロになって貰う。

・ナギサ
レンゲとは違うベクトルで覚悟ガンギマリ状態。原作でも絶対ミカに重い感情抱いてそう。レンゲの戦闘力を甘く見積もってたのが誤算。

・ミネ
ナギサの護衛のせいで本来の力を出せず、いっそナギサを遥か彼方へ投げ飛ばした方がよかったと後悔してる。実はツルギと武器が被ってる。

・ツルギ
一年生のため今は正実モブと同じ制服。絶対可愛い。
まだ新入生のため流石に戦闘経験は少ないが、それでもトリニティ屈指の武闘派。


主人公の名前変更のアンケートですが、変更無しの人数の方が多かったのでこのまま「レンゲ」で進めようと思います。

ちなみに変更になった場合は「レンカ」に変える予定でした。




主人公の名前どうする?

  • 変更なし
  • 改名するべき
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