「なんかやたら強いモブいたよね」って言われたいじゃん 作:わなびさびわなびのわなび
大聖堂の爆破の隙間から、這うようにして“人形”は現れた。
「おい、どうなってんだよ」
人形の姿をみた誰かは震えた声で呟く。
人形
それは魔術師の中でも最悪と呼ばれた“人形師”が操るモノであり、
それは人形師に敗れ殺された、人たちの集合体である。
自分たちの前に立ちつくす人形は、
胴体二つ上下に繋げられ、四本の腕には、教本を持たされ、
なにより虚ろを浮かべる
複数の目がジッとみつめ
口から
「殺して、殺して」と微かに漏らしている。
他にも、女性の体に四本の腕と豚の頭を持つ人形。
頭が無く何人にも体を芋虫のように繋げられた人形
顔だけがやたら肥大化させられ、手足には犬に変えられた人形
おおよそ人の悪意というものを詰め込んだモノに
「ひでぇなぁ」と隣は呟いた
心なしか怒りが混じっている。
本当にひどい、ゲームで見たときよりも醜悪で哀れな姿だった。
「なんでだよ」
その行為に、まだ出てくる時じゃないだろという言葉もグッと飲み込んだ
「みんな落ち着け、こっちに来るんだ!」
キリカ・グリムゾンの声が響く。
すでに大司教クラスは全員、襲い来る“人形”に対応しており、上級生、先生たちはもう何体もの人形を倒しているようだ。
「お前、名前は?」
「ノゾミ」
「ノゾミ、どうする彼女の元に向かうかい?」
「いや、まだやることがあるんだ」
隣をみる、改めて見るとやたら美形な人物がそこにいた。
性別は分からない、少女にも見えるし、少年にも見える
しかし、この世界にとってそれは羨むことでは無い。
古今東西、どの物語においても、美少年あるいは美少女というのは、
生贄になりやすい
魔術師、魔獣、悪神がある程度存在する、この世界において
それは特にひどく
美少年あるいは、美少女というのは、よほどな理由がないと生き残れない。
(これは、チャンスだ)
隣にたたずむ少年、
もしくは少女はなにかの力を持っている
そうでなければ生き残れないはずである
ルビーキャンベル生徒会長、
脳筋姫キリカ・グリムガル、
もしくは主人公のように、
なにか特殊な力、途轍もない豪運を持つ存在であるなら、
この大聖堂に眠る、無限聖力外装に近づくのが楽になる。
「君も手伝ってくれないか」
自分は最低だ。目的のために他人を利用しようとしてる。
「手伝うって?」
「あるアイテムを手に入れたい、手に入れたのならこの人形たちをなんとかできるかも」
「それって本当?」
隣は目を丸くしている
「本当、そして迷っている暇はないみたいだよ」
ずっと目前で静止していた人形がゆっくりと手に持つ教本をゆっくりと「arma44」と読み始めた。