牙狼外伝 蒼キ牙-SOUGA-   作:秋乃楓

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愛憎-LOVE AND HATE

「…魔戒騎士とそれから魔戒法師。それ等がこの聖域に紛れ込んでいる。そう言いたいのね?御影……。」

 

 

姫村アイ。彼女は現在不明の生徒会長の秘書として務めている。

紺色の長い髪と薄緑色の目。

それが御影と呼ばれた女性を見つめていた。

 

 

「…はい。蒼牙…騎士の方はそう名乗っています。」

 

 

 

 

「蒼牙…か。蒼い牙…それで、貴女は戦ったの?」

 

 

 

 

「…戦いましたが未だ未熟者です。ですが既に奴により何体ものホラー…それから奥村様が狩られています。」

 

 

 

アイは赤い液体の入った小瓶を手にすると軽く揺する。中身の液体が左右に動いた。

 

 

「…奴等のせいで嘆きの雫が集まらないのよ。だから次の手を打たねばならない。」

 

 

 

 

「真宮朱音…過去に奥村様が生み出した生徒の1人です。彼女が生きていれば…騎士を狩る為の手立てにはなるでしょう。如何致しますか?」

 

 

 

「……そんなのを残していたのね。良いわ、探してらっしゃい…生きてたら彼女を魔戒騎士へ差し向けて。あまり失態を続ければ会長に顔向け出来ない…解るでしょう?貴女も。」

 

 

 

アイはじっと御影を見つめる。

それに対し彼女は無言で頷くと姿を消した。

 

 

 

「蒼牙…アナタと愛し合う日は直ぐそこ迄来ている…うふふッ、あはははッッ!!」

 

 

アイは高笑いし、パソコンを点ける。その画面には例の赤い封筒が映っていた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

有紀は教室でブツブツと何かを言いながら席に座っていた。

内緒で持ち込んでいる携帯を触りながら。メッセージのやり取りをするアプリを見てから返事を返すとアプリと画面を閉じた。

 

 

「…なぁんで別れ話を私に振ってくるかなぁ?私に彼氏なんて居ないのに…。」

 

 

溜め息をつくと机に伏せてしまう。

有紀の友達である同学年の子が付き合っている彼氏と別れたいと言い出したのだ。それに対し有紀は昨夜の晩からずっと相談を受けていたのだった。

ふと近くを通り掛かった冴月を見ると有紀はまた溜め息をついた。

 

 

「はぁ…面倒だなぁ……。」

 

 

 

 

「ちょっと、あまり溜め息をつかないで。こっちまで気になるから。」

 

 

冴月は立ち止まると有紀の方をじっと見ていた。有紀はごめんごめんと謝ると

後ろの席に座った冴月を見ていた。

 

 

「冴月は恋とかした事なんて有る?」

 

 

 

「恋?……無いけど。」

 

 

 

[冴月は昔から男勝りな所が有るから恋愛は難しいでしょうね。最も…。]

 

 

カガリが重ねて何かを言おうとしたが冴月の手で塞がれてしまった。

 

 

「…余計なお世話ッ!!」

 

 

 

 

「あはは…こりゃダメだ。ごめん、こっちで何とかしてみる。ありがとね。」

 

 

 

有紀は苦笑いしながら誤魔化すと普通に話題を変えて話し始めた。

それから午前午後の授業が終わり、放課後になり部活動の最中でもずっと携帯を触っていた。竜弘がホワイトボードに今後の予定等を書いて説明していた時も。

 

 

「じゃあ…この件なんだけど…吾妻さんお願い。おーい…吾妻さん?」

 

 

 

「へ?あ、ごめん…何だっけ?」

 

 

 

「部活の予定の確認だよ、ほら此処。」

 

 

竜弘が丁寧に有紀へ説明してから再び会議が始まった。会議が終わっても有紀はずっとあーでも無い、こうでも無いと言いながら携帯を触っていた。

そんな有紀を見た竜弘は冴月を手招きすると廊下へ連れ出した。

 

 

「…弥那瀬さん、何かあったの?吾妻さんずっとあんなだけど。」

 

 

 

「別れ話だって。…有紀の友達の子は彼氏を愛しているのに当の彼氏はそんな気はもう無いとか何とか色々。」

 

 

 

「それでずっと携帯弄ってるのか…。」

 

 

成程と納得する竜弘を冴月が見ていた。

ふと冴月は竜弘の左手首が気になった。

何かに掴まれた様なアザを見つけたのだ。

 

 

「竜弘、その手首のアザは?」

 

 

 

「これ?ああ…ちょっとね……大した事無いから大丈夫だよ。」

 

 

 

 

「……何か有ったのか?」

 

 

 

 

「心配性だな、弥那瀬さんは。本当に大した事無いんだってば。」

 

 

 

竜弘は普段と変わらず笑って冴月へ大丈夫だと答えた。それから冴月は街へ買い出しに向かう事になった。というのも同好会内で今度向かう場所の話し合いをする為。学内だけでは無く、学校外でも色々と都市伝説やオカルトに関する知識を深めたいと珍しく浩介が提案したのだ。付き添いとして紗那も冴月に同行し街中を歩いていた。

 

 

「…無理に着いて来なくて良かったんだぞ?メモなら貰ってるし、買い物のやり方だって解ってる。」

 

 

 

 

「いえ、良いのです。私も少し外の空気を吸いたかったので!それより魔戒騎士をパシリにするとは…浩介殿も中々やりますね。私なら間違い無く手が出てますよ?」

 

 

 

 

「…手で済まないだろ、紗那は。」

 

 

2人は近所のスーパーへ入るとメモ書きを頼りにお菓子やジュースを買っていく。2人からしたら見た事が無く、新鮮そのものだった。

その後、会計を済ませるとスーパーを後にし歩いて行く。路地を進んでいると冴月と走って来た1人の少女がぶつかってしまい、倒れてしまう。

 

 

「いつつ…キミ、大丈夫?」

 

 

 

 

「あ…ありがとう…ッ、大丈夫…。」

 

 

 

ふと彼女を見ると両方の目元が赤く腫れていた。それに声色から何かあったのは明白だった。それから冴月の手を握って少女は立ち上がる。

 

「ねぇ…何かあったの?」

 

 

 

 

「……何でもない、大丈夫だから。」

 

 

 

同世代の少女は立ち去ってしまう。

冴月は彼女の背をただ見送る事しか出来なかった。

 

 

[…フラれたのね、あの子。]

 

 

 

 

「カガリには解るのか?」

 

 

 

 

[女の子が泣くのは好きな男に別れを告げられたか、或いは友達に嫌われたかの何れか…嫌われたくなくて涙を流してるというのも有り得るからよ。]

 

 

カガリはボソッと呟く。

横に居た紗那も成程と言わんばかりの顔でカガリを見つめている。

すると何処かから悲鳴が上がり、2人は頷くと悲鳴のした方へと向かうのだった

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

2人が辿り着いた場所は人気が無い公園。遊具は無く、大きな溜池やベンチが有る他に木々が生い茂っている。

通路には街灯がポツポツと数メートル置きに並んで配置されていた。

 

 

「悲鳴が聞こえたのはこの辺の筈…2手に別れて探そう!オレは溜池の方へ!」

 

 

 

「なら私は遊歩道とこの辺りを!」

 

 

 

紗那と別れた冴月は走って向かう。

ホラーが出た可能性も捨て切れないからだ。買い物した時の荷物が走る度に揺れて邪魔であり鬱陶しいが仕方ない。

 

 

[…冴月!]

 

 

 

「え?あれは…さっきの…!」

 

 

 

カガリに呼び止められ、冴月は足を止めた。自身の目の前には刃物を持った少女とそれから怯える様に彼女の目の前で座り込んでいる1人の少年の2人。恐らく歳は自分と同じだろう。

 

 

「おい、何を…ッッ!」

 

 

冴月は2人の合間へ割って入ると少女の手からナイフを奪おうとする。

話してと叫んで抵抗する少女から無理やりナイフを奪い取るとそれを投げ捨てた。再び相手の顔を見るとその顔には見覚えがあった。

 

 

「馬鹿な真似は止めろッ…キミはさっきの…!」

 

 

 

 

「何で止めるの!?此奴は私をほっといて他の子と付き合ってた!!私は彼の事をずっとずっと愛していたのに…何でよ!?何で裏切るの!?」

 

 

 

 

「…だからって殺していい理由には成らない。落ち着いて話し合うべきだ。」

 

 

 

 

「話し合ったわよ…何回も何回も!!今日だって友達に相談して色々と聞いてもらって…それでやっと上手く行くやり方見つけたのに…なのに此奴が、他の子と一緒に居るのを見ちゃったから…もう終わりにしようって思って…アンタを殺して私も死んでやるッ!!」

 

 

 

少女は泣き叫びながら冴月へ喰って掛かる。

その姿は冷静さを失っている様にしか見えなかった。冴月が何とか宥めていると人の気配と殺気を感じ、見回す。すると何かが少女へ向かって放たれた。

 

 

「危ないッ…!!」

 

 

 

冴月は咄嗟に彼女を抑え、互いに地面へ倒れる。地面に刺さっていたのは細い棒状のクナイだった。

 

 

「……まさかッ!!」

 

 

冴月が2人の前へ立つと飛んで来た方向を向く。月明かりに照らされ、そこに居たのはあの時戦った魔戒法師だった。

 

 

「…久しいな、魔戒騎士。てっきり剣を握るのを諦めて普通の女になったと思っていたが?」

 

 

 

 

「生憎…オレは諦める気は更々無い。一体何の真似だッ!!」

 

 

冴月は法師を睨みながら叫ぶ。

足元へ買い物袋を投げ捨てると

背負っていた細長い黒の袋から青い鞘の付いた剣を取り出した。

 

 

「…実験さ。此奴を使う為の。」

 

 

 

そう法師が叫ぶと赤い液体の入った小瓶を取り出す。それは間違い無く嘆きの雫だった。

 

 

「確か…そこのお前はその男を強く憎んでいたな。どうする?殺したいのであれば手を貸してやろうか?」

 

 

法師は少女へと話し掛ける。

冴月の後ろに居た少女はビクッとし、項垂れてしまった。

 

 

「誘いに乗るな…乗ったらダメ!」

 

 

 

 

「私は…彼を…殺したい……私がどれ程愛しても愛しても伝わらないのなら…いっそ!!」

 

 

 

 

「ッ…しっかりしろッ!!その力はお前を不幸にするだけなんだぞ!!」

 

 

必死に叫ぶ冴月を他所にフラフラと少女は冴月を退けて前へ進む。

すると少女は法師と冴月の居る中程で止まった。

 

 

「…まだ葛藤しているのか?何を迷う必要が有る…躊躇うな。愛と憎しみは紙一重…故に片方が愛しても伝わらないのならいっそ殺してしまえば良い…違うか?」

 

 

少女はそのまま歩みを進め、奉仕の前へ来てしまった。そして少女は小瓶を受け取ろうと手を伸ばした。だが途端に小瓶はいきなり粉々に砕け散った。離れの木には黒い矢が突き刺さっていたのだ。それが瓶を砕いた。

 

 

「ちぃッ…誰だ!?」

 

 

 

 

「…紗那ッ!!」

 

 

冴月が横を向くと離れにボウガンを構えた紗那が立っていた。冴月に気付くと小さく頷く。駆け寄ると2人は法師へそれぞれ魔戒剣と魔導筆を向けた。

 

 

「…オレはあの子を助ける。紗那はあの法師を!!」

 

 

 

「引き受けました…!後ろの彼はどうします?泡吹いて倒れてますが。」

 

 

 

「はぁ…そっちは紗那が助けてあげて。行くぞッ!!」

 

 

 

 

「ふんッ…小癪なッッ!!」

 

 

 

冴月が走り出し、立ち尽くす少女へ駆け寄る。彼女の手を掴もうとした瞬間、突然現れた黒い人影に阻まれてしまう。その顔には白い紙に謎の刻印が記されていた。

 

 

「…くッ!!」

 

 

 

 

「お前の相手はソイツがしてくれる…精々遊んで貰えッ!!」

 

 

 

冴月を退けた法師は少女へ再び歩み寄るが、今度は紗那がボウガンを放って牽制して来た。

しかし法師は魔導筆を用いて飛んで来た矢を全て弾き落として見せる。

 

 

「コレがダメなら…ッ!!」

 

 

紗那はボウガンを背へ担ぐと今度は左足太腿にあるホルスターから銃を引き抜き、発砲する。弾は少女をすり抜けて法師へ向かって飛んで来た。

 

 

「魔導銃…あの時は良く見えなかったが…成程、奴のモノかッ!!」

 

 

弾を避け、少女を片腕で法師が抱き留めると紗那と距離を取る。そして互いに睨み合う状態へと発展した。

 

 

「腕を上げたな…紗那。だが、此処までだ。下手に動いてみろ、此奴をホラーにしてやる…!」

 

 

 

 

「…卑怯者ッ!!」

 

 

 

 

「何とでも言えばいい…さぁ、どうする?紗那。」

 

 

 

法師は液体の入った小さな筒に針の付いた物を取り出すとそれを少女の首元へ突き付ける。仮面の下で法師はニヤリと笑っていた。

 

一方の冴月は黒い人影と交戦を繰り広げていた。

向こうが刀を構えて此方へ斬り掛かると縦に振られた刃を防ぎ、振り払って受け流す。何度か切り結ぶ状態が続き、冴月は距離を取る。解るのは少しでも油断すれば此方が斬られるという事。

 

 

「…何だ此奴、唯の偶像じゃ無いのか?」

 

 

 

[まるで本物の剣士の様ね…来るわよ!]

 

 

 

カガリが叫ぶと再び刃が冴月へ振り下ろされる。それを剣の刃で受け止めて上に押し上げると正面へ蹴りを放ち、突き放す。相手がふらついた所へ右斜めから下へ刃を振り下ろして斬り裂いた。

黒い人影は塵の様に消滅する。

 

 

「良し、片付いたッ!」

 

 

冴月は紗那の居る方へ目を向ける。そこには法師に人質に取られた少女と紗那が向かい合っていた。

 

 

「人質に取ったのか…!」

 

 

 

冴月の視線に気付いた法師が彼女の方へ目をやると動くなと身振りだけで示した。

 

 

「魔戒騎士であろうと…法師であろうと、こうなれば何も出来まい?ふふッ…!」

 

 

向こうは勝ち誇った様子で2人を見ている。だが冴月だけは何かが違った。

 

 

 

「…オレ達は守りし者。例えどんな人間の命だろうと見捨てたりしない。大丈夫、オレならやれるッ!!」

 

 

冴月は法師へ向けて走り出す。タイミングを少しでも間違えばあの少女はホラーにされてしまう。

 

 

「血迷ったか?馬鹿な騎士だッ!!」

 

 

 

 

「…馬鹿なのはお前だぁあッ!!」

 

 

 

法師が筒を振り下ろした瞬間、冴月は何かを投げ付ける。それは法師の目の前で爆発し鋭い光を放った。

 

 

「ッッ…目眩しか…!!」

 

 

 

法師が再び確認した時には冴月が少女を連れて離れに居た。

 

 

 

「…後はオレがやる。この子を連れて下がって!」

 

 

 

紗那の元へ少女を託すと冴月は法師と対峙する。剣の刃先を向けて、構えて見せた。

 

 

「お前の計画はこれで失敗だな。後はお前を斬るだけだッ!!」

 

 

 

「くくッ…斬れるのか?この私を…!」

 

 

 

 

「はッ…!?冴月殿ッ、ダメですッ!!あの人は貴女の…!!」

 

 

 

冴月は紗那の叫び声に対し頷いた。

何故なら冴月はあの法師の正体を既に知っている。信じたくはなかった。だが敵となった以上、斬るしかない。

 

 

「…知ってるよ、紗那。アイツ…オレの姉さん…舞衣なんだろ?」

 

 

 

 

「ッ…だからとは言え、血の繋がりの有る姉妹同士が争う事は絶対に許されるモノでは…!!」

 

 

 

冴月は首を横に振り、紗那の言葉に耳を貸さなかった。紗那は言葉を詰まらせてしまう。

 

 

 

「ふふ…あっははははッ!!そうか、覚悟を決めたか。なら私と殺し合おう…どちらかが倒れる迄…ッ!!」

 

 

舞衣は仮面を外し、微笑んでいる。

その顔や髪型は冴月と似ているが目の色だけは血のように赤い。

それは嘗ての冴月が知っているあの時の優しかった姉の姿そのものだった。

 

 

「…闇に堕ちた者は斬る。それが守りし者の掟。例えそれが姉妹だろうと同じ事…お前はもうオレの姉なんかじゃないッ!!」

 

 

 

冴月が走り出し、舞衣へ襲い掛かる。

剣を彼女へ振り翳すが舞衣も腰の後ろに備えている刀を引き抜いて防いだ。

睨み合う形でお互いが張り合う。

 

 

「ふふッ…あの時より良い目になったな。冴月ッ!!父さんもあの世で喜んでいるぞ?」

 

 

 

 

「黙れぇえッ!!」

 

振り払い、冴月が右足で蹴りを放つ。それに合わせる様に舞衣も右足による蹴りを放つと互いの足がぶつかり合う。

だが冴月は止まらなかった。足を即座に戻すと今度は舞衣が反撃として振り翳して来た刀の刃を自身の剣の鞘を左手に持ってそれで防ぐ。

そして冴月は右手の剣で舞衣の腹部を横一線に斬り裂いた。

 

 

「ッッ!?…ほぅ、一太刀浴びせられる位にはなったらしいな。だがお前は私に勝てないッ!!」

 

 

舞衣が冴月から離れ、左手に持った魔導筆で何かを書き記すと黒い刃が出現。再び筆を冴月の方へ向けると一斉に襲い掛かって来る。

 

 

「動き回らねば死ぬぞ?精々足掻いて見せろッ!!」

 

 

 

 

「くそッ…早い!!」

 

 

冴月は飛んで来た刃を左手の鞘で、右手に持った剣で叩き落とす。ある時は身を屈めて躱したりと自身の持つ身体能力全てを駆使して戦っていた。

それでも間髪入れずに舞衣は冴月へ攻撃をし続ける。連続して冴月へ攻撃を仕掛け続け、彼女を追い込んで行く。

 

 

「その程度の実力で私を斬れると本当に思っているのか?なら筋違いだッ!!」

 

 

 

 

「斬ってみせるさ…必ずッッ!!」

 

 

 

舞衣が冴月を殴り飛ばせば冴月も彼女へ蹴りを喰らわせ怯ませる。

その姿はまさに死闘そのものだった。

 

 

「終わらせてやる…これでッッ!」

 

 

互いに距離を取ると舞衣は刀を構え、更に左手へ魔導筆を握り締める。

冴月は目を閉じ、深呼吸してから再び目を見開くと剣を前へ突き出す。

 

 

「はぁああッッーー!!!」

 

 

 

「来る…ッッ!!」

 

先に仕掛けたのは舞衣。魔導筆を刀へ添わせると刃が眩い紫色の光を放ち始める。それを構えながら冴月へ向かう。

冴月は前方へ円を描くと蒼牙の鎧を身に纏い、剣を変化させると再び互いに真っ向からぶつかり合った。

刃の擦れる音が響き、先程よりも激しく2人は切り結んでいた。

 

 

「ぐッ…うぉおおおッッ!!」

 

 

冴月は更に力を込める。次第に舞衣を圧倒し始めていた。

 

 

「力が増している…?ふふッ…やはりそうでなくては詰まらないッッ!!」

 

 

 

「オレはもう迷わない…守りし者としての使命を果たすだけだッ!!お前の陰我、オレが此処で断ち切るッッ!!」

 

 

舞衣の刀を振り払うと蒼牙は剣を高く掲げる。 そしてそれを下ろし、目の前で十字に斬ると光が蒼牙を包み込んだ。

光に包まれた蒼い鎧は変化し、身体には紅いラインの様な物が刻まれ、背中からは黒いマフラーの様な物がそれぞれ左右に出現した。目付きも以前より鋭くなっている。

 

 

幻創騎士 蒼牙 -真-。

 

 

今迄の姿とは違い、これこそが本当の蒼牙の姿。ただ蒼いだけだった鎧は更に輝きを増していた。

舞衣はその様子を見ると再び刀を構える。

 

 

「あの姿は父さんと同じ…!?馬鹿な…そんな筈は…ッ!!」

 

 

 

 

「これで最後だ…舞衣ッッ!!」

 

 

 

蒼牙はマフラーを風に靡かせ走り出す。

舞衣と再びぶつかり合い、接戦を繰り広げると彼女の手に握っていた刀を剣で弾き飛ばすと蒼牙は舞衣へ刃先を向けた。

そして勢い良く彼女へと刃を振り翳し斬り裂いた。

いや、斬ったのは舞衣では無い。

そこに居たのは同じ学校の制服を身に付けた謎の少女。蒼牙の刃は彼女の手にしていた扇子の様な物で止められていた。

 

 

「…御影。姿を晒してまで戦って追い込まれるなんて、貴女らしくないじゃない?」

 

 

 

「ッ…申し訳ございません…。」

 

 

 

 

「まぁ良いわ…それより貴女が蒼牙?ふふッ、綺麗な鎧…奥村君を殺したのも、他のホラーを殺したのも貴女でしょう?」

 

 

 

少女は蒼牙の剣を跳ね除けると扇子を拡げ、舞衣の前へ立った。

 

 

 

「誰だ貴様…ッ!!」

 

 

 

 

「…月ヶ丘高等学校、生徒会秘書。姫村アイ。アイちゃんって呼んで?」

 

 

 

アイはクスクスと笑うと首を傾げていた。蒼牙は即座に刃を振り翳したものの、既に2人の姿は無かった。

冴月は鎧を解くと紗那の方へ近寄った。

 

 

 

「姫村…アイ……か。」

 

 

 

 

「冴月殿…戻りましょう、2人の記憶から先程の事を消しておきました。目を覚ませば普段通りの生活に戻れるかと。」

 

 

 

 

「……だと良いけどな。」

 

 

それぞれをベンチへ座らせてから冴月と紗那の2人はその場を去った。

買い物へ出てから2時間以上経過していた事から2人が学校へ戻ると有紀や浩介から色々と小言を言われてしまった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

翌朝、有紀は部屋で嬉しそうに声を出すとそれから携帯を触っていた。

冴月はベットから降りると眠そうにしながら有紀の元へ近寄る。

 

 

「どうしたの…?朝からそんなに騒いで。」

 

 

 

「さっき友達から連絡があってさ、やり直す事にしたんだって!!お互いに話し合ったらやっぱり一緒に居たいってなったんだって。いやぁ、良かった良かった!」

 

冴月はそれを聞いて少し微笑んだ。

恐らく昨日見た同い歳の少女と少年がその有紀が話していたカップルなのだろう。何処と無くだが話も幾つか辻褄が合う。

 

 

「そういえば…冴月は好きな人とか居ないの?」

 

 

 

 

「…オレには居ないよ。」

 

 

 

 

「竜弘君とかは?お似合いだと思うけどなぁ…。」

 

 

 

 

「…ふぅん。それより、早く支度しないと遅刻するよ。」

 

 

冴月は有紀の話を流すと自分は顔を洗いに洗面所へ。冴月には恋心は未だ当分解りそうには無かった。

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