雨が降り注ぐ、雷と共に。
学校に居た生徒達は皆学生寮の有る方へ集まっていた。何でも唐突な集会が開かれるらしい。
達弘達は別の階で固まっていた。暇そうにしていた浩介が達弘の方へ近寄る。
「…大規模な集会って何だよ?」
「さぁ?僕にはさっぱり。」
「…そういえば冴月と紗那は?」
有紀が2人の不在に気付く。
辺りを確認しても居ない、つまり何処かへ行ってるという事。
「ねぇ…!何かが屋上に居る!!」
優一が屋上の方を指さすとそこには黒い人型と青い人型が立っていた。お互いに向き合って動かない。
達弘は優一の隣へ来ると目を見開いた。
「まさか…ッ!?」
有紀も隣へ来るとじっと目を凝らしていた。
「あの青い人…私見た事有るかも…!!」
「僕も見た…けど…アレは…!」
「優一、何か知ってんのか!?」
浩介は思わず優一へ問い詰めた。
だが彼は首を横に振る。それを見た竜弘が呟いた。
「……冴月だよ。今彼処に居るのは冴月だ。」
「冴月!?じ、冗談でしょ…岡本君!」
有紀が2度も彼と屋上の方を見る。
だが竜弘は首を横へ振った。
「本当だよ…僕が初めて会った時、彼女に助けて貰ったから解る……彼女はずっと僕達の事を守ってくれてたんだ。恐ろしい存在から…ずっと。」
「冴月、前に私に言ってたっけ…人を食う化け物と戦ってるって。」
有紀は彼女の話を思い出していた。
だが自分達にはどうする事も出来ない。
「…皆は此処に居て!!」
「どうするのよ岡本君!?」
「決まってる…冴月を助けるんだッ!!」
竜弘は1人で玄関へ走って向かう。
だが、楓に止められてしまった。
「弥空さん!?ッ…退いてくれッ!」
「ダメだよ…紗那ちゃんが絶対此処から出るなって言ってたから…!」
「でも…ッ!」
[坊主、そのお嬢ちゃんの言う通りだぞ?]
「え……?」
楓の後ろから声がするとそこには見覚えの有る茶髪の女の人が立っている。喫茶店の店主である八千代本人だった。
「そうよ、ザルちゃんの言う通り…出ない方が良いわ。」
「八千代さん…どうして此処へ?」
「助っ人よ。それに…この建物にはホラー避けの結界が貼ってるから外へ出ない限り安全は保証される。」
[下手に飛び出せば、ホラーに喰われるぞ。あのお嬢ちゃんなら心配無い…。]
「え?」
ザルバがそう呟くと八千代は頷く。
すると彼女はザルバを手の平へ載せて魔導筆を取り出すと彼女の横から少女が現れた。
「…キミは?」
「輝弥と申します…冴月様にはお世話になりましたので。」
「冴月に?…そうなんですか?」
竜弘が八千代を見ると彼女が頷いた。
「彼女が希望の運び手、だから大丈夫よ…どんな暗闇でも光は必ず晴らしてくれる。」
「では…お願いします、八千代様。」
「ええ、勿論!ふぅ…はぁあッ!!」
八千代が輝弥へザルバを渡すと同時に魔導筆で印を記す。すると彼女の姿が消えてしまった。
「き、消えた!!?」
「さて…私のお仕事は未だ終わらないわ。たっ君は此処に居てね♪」
ニコニコ微笑むと八千代は手を振って歩いて行った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして屋上ではアビスと蒼牙による死闘が続いていた。片や満身創痍、片や平然として立っている。
降りしきる雨は互いの鎧を濡らしていく。
「終わりだよ…今度こそ…これでッ!!」
「此処で…倒れる……訳には…ッ!!」
剣が向けられ、刃先から紫色の稲光がバチバチと輝く。アビスが身構えるとギリっと片足を踏み込む。
向こうはこれで終わらせるつもりらしい。
だが自分も負けては要られない。
身体が動く限り…力の限り…最後まで抗う。
それしかない。
「消えろぉおおおッッッ!!!」
横一線へ放たれた一撃が凄まじい音と共に蒼牙へ迫る。そしてそれを刃で受け止めた。
「ぐぅッッ…!!?負けて…ッ、たまるかぁッッーー!!」
だが、威力が凄まじいせいか相殺出来ずに弾き飛ばされてしまいフェンスへ激突、鎧が解けてしまった。がっくりと力無く項垂れると冴月の額から血がつうっと垂れて落ちた。
「終わった…これで騎士は死んだ。これで!!」
そう叫ぶと弾丸が鎧へ命中し、振り返る。排気口の上に紗那が立っていた。そしてもう片方には零牙が立っている。
「未だ雑魚が残っていたか…消してやる…貴様らも纏めてッッ!!」
「紗那、冴月を頼む!俺はコイツを…ッッ!! 」
「はいッ!」
零牙がアビスへ飛び掛るが軽々とあしらわれてしまう。そして剣を向けて突進して来た。
「成程…貴様、あの時居た銀色の騎士かぁッ!!」
「ジンさんの仇…討たせて貰うぞッ!!」
双剣でアビスの剣を防ぎ、鍔迫り合いへ。
そして至近距離で何度も何度も切り結ぶ。
油断すればケガでは済まされない、それでもやるしかないのだ。
「雑魚が何匹集ろうが同じ事だ!!」
「ッッ…!!」
振り払われると蹴り飛ばされてしまう。
更に追い打ちを掛けるように蹴られ、壁へ叩き付けられてしまうと鎧が解けてしまった。
「これで2人目…後はお前だけだ。魔戒法師ッ!!」
「ちッ…舞衣様…力をお借りしますッ!!」
黒い魔導筆を右手に構え、左手の魔戒銃を握り締める。
残弾も数発、頼れるのは己の腕だけしかない。
すると冴月が紗那の服の袖を掴んだ。
「ダメだッ…やられるぞ…!」
「冴月殿!?…今無理をすれば傷に障ります…!私が…時間を稼ぎますから…!」
「ダメだ…もしオレが死んだら剣はお前が持っていてくれ。」
冴月は紗那に身体を支えられながら立ち上がる。
そして彼女から離れると歩き出した。
「冴月殿…無茶ですッ!!」
「…大丈夫だよ紗那、必ず帰って来るから。」
ゆっくり歩みを進める。傷だらけの左右両手足、何度も強打した為に痛む身体、動かす度に痛む左右の肩、呼吸すればその度に痛む胸と脇腹。
そして額の右側から滴る血液は彼女の顔を半分赤く染めていた。服も長い髪もボサボサ。
とても歳頃の女の子とは思えない程に傷付き、ボロボロだった。
「ふふ…まだやるつもりか?」
「オレが…諦めない限り……負けじゃない…!」
「…なら、へし折ってやる…その希望を!!」
アビスが剣を向けて冴月へ近付く。
自分の剣は何処へ飛んだか解らない。
鎧を纏った相手に挑むにも丸腰は幾ら何でも無茶だ。どうする事は出来ない。だが冴月は拳を前に向けて構えた。
「ほぅ…鎧相手に素手かい?ヤケが回ったらしいね?」
「…どうとでも…言えば良い…!」
「なら、このまま斬り刻んでやる…ッ!」
アビスが途端に走り出すとバシャバシャと水溜まりを踏み付ける音がする。
そして冴月目掛けて大剣が振り下ろされた…いや、何かが当たって直前にアビスが後方へ弾かれたのだ。
「冴月様!」
聞き覚えの有る声に振り向くと自分の直ぐ右横に輝弥が降り立っていた。あの時見たのと同じ美しい着物を纏って。
「輝弥…!?どうして…此処に…!」
「…希望を貴女に…託しに…参りました。」
すっと輝弥が片手を差し出すとそこには髑髏を象った魔導輪、ザルバが居た。
[よう、お嬢ちゃん。随分こっぴどくやられたらしいな?]
「ザルバ…こんな時でもベラベラ喋るの?」
[当たり前だ、それが俺様だからな。さて…どうする?幻創騎士。目の前のアイツを倒すにはガロの力なら可能だ…そうなるとお前さんは俺様と契約する事になるが……どうする?]
冴月は少し考えると首を縦に振る。
あの時とは違い、彼女は強く決心した。
[…その前に幾つか聞かせてくれ。お前さん、ガロの英霊達に会ったんだろう?何を問われた?]
「…迷うなって言われた。進むべき道を只管、真っ直ぐに進めって…迷ったら剣に問えって。」
[…そうか。お嬢ちゃん、これが最後の質問だ。お前さんはこれから先、想像を絶する困難や苦悩にぶち当たる時もある…身を引き裂かれる様な悲しみも味わう事にもなるだろう…それでも…お前さんは騎士として歩み続けるか?]
「覚悟は出来ている……オレは…いや、私は戦い続ける。沢山の人の命と明日を守る為に。」
[成長したらしいな…良いだろう、お前さんと契約しよう…但し、その代償として一ヶ月に一日…お前さんの命を貰う。さぁ、俺様をその手に嵌めるが良い…新たなガロの継承者よ!!]
冴月は輝弥の手からザルバを手に取ると左手の中指へ嵌める。するとアビスが身体を起こして此方を見据えていた。
「ザルバ…?魔導輪…ザルバだと!?馬鹿な…この世界に牙狼は居ない筈だぞ!?」
[おいおい…お前さん、まさかガロが途絶えたと本気で思っているのか?だったら検討違いだ…このお嬢ちゃんはずっと信じ続けていたのさ。例え肉体や見た目、性別こそ異なろうが守るモノも…騎士としての在り方も皆同じだと。そして時に迷い、困難が訪れたとしても進み続けた。だから俺様はこのお嬢ちゃんを認めたのさ…ガロを纏うに相応しいと!つまり…このお嬢ちゃんこそが新たなガロという事だ!!]
ザルバの声と共に冴月が前へ出るとアビスを睨み付けた。そして輝弥が彼女へ声を掛ける。
「冴月様…ご武運を。」
「ありがとう…輝弥。紗那、結界をッ!!」
「お任せ下さい!はぁあッッ!!」
紗那が黒い筆を頭上へ掲げて円を描く。
すると屋上を大きく囲う様に結界が貼られた。
「存分に戦って下さい…冴月殿。そして終わらせましょう、この陰我を断ち切るのです!」
「あぁ、行こう…アイツを今度こそ討滅する!!」
冴月は右手を横へ差し出す。
それに併せて輝弥が両手を広げると彼女の胸元から赤い鞘の剣が姿を現し、それを手に取った。
アビスは奇襲に近い形で冴月目掛け襲い掛かる。
「ふざけるな…、ふざけるな…貴様ぁあッ!!」
「ふざけているのは…貴様だぁあッ!!」
赤い鞘から剣を引き抜くと大剣を受け止めて防ぐ。
刃同士が擦れ合うと火花が散り、そしてそれを跳ね除けて冴月が離れると頭上へ剣を掲げて目を閉じ、そして再び見開く。その瞬間、彼女の頭上だけ結界を通して陽の光が差し込んだ。
「暗黒騎士アビス…貴様の陰我…私が此処で断つッッ!!」
円を描くと同時にその身に鎧を纏う。
黄金のその鎧をその身に。金色の狼…そして魔戒騎士の上位に君臨する真の守りし者…。
「我が名は守りし者…黄金騎士…、牙狼ッッ!!」
名乗ると同時にアビスが大剣を振り翳して再び襲い来る。
「だが…貴様の様なヒヨッコでは僕には勝てる訳がないッ!!何が牙狼だ…何が黄金騎士だッッ!!」
「……!」
アビスの繰り出した一撃を後方へ避け、飛び上がると結界の壁を蹴って勢いと共に彼をタックルし突き飛ばした。
「冴月殿…ッ、受け取って下さぁあいッッ!!」
紗那は咄嗟に落ちていた冴月の剣、つまり蒼牙の剣を射糸壱号を用いて掴むと放り投げる。それを左手で受け取った牙狼は剣を引き抜くとそれを蒼牙の扱う魔戒剣へ変化させる。そして身体を蒼い炎が包み込み、瞳の色も金色から蒼色へ変わった。
そして蒼牙の時に纏う黒いマフラーもまた牙狼の背中から出現する。
-蒼炎融合騎士牙狼-
身体の色合いも金色と蒼色が合わさった姿へと変化していた。そして再び真正面からぶつかり合う
「ぐッッ…くそぉッ…僕は、僕は最強の…ッ!!」
「…騎士などでは無い!!鎧の力、そして自らの力に溺れ、進むべき道を…騎士としての在り方を見誤った!!今の貴様はホラーと何も変わらない!!」
アビスと鍔迫り合いを繰り広げた末、
牙狼の振り翳した左手に持つ幻蒼剣の刃がアビスの身体を斬り裂いた。そして右手に持つ牙狼剣の一撃が更に命中する。クロスを描く様に斬られたアビスは吐血しフラフラと後退し此方を見据えていた。
「がぁッッ!?おのれぇえッ!!」
「これで…終わりだぁあッッ!!」
反撃も許さず、一気にアビスとの間合いを詰めると左右の剣を横一線に振り翳して身体を引き裂いた。
「僕…が…負ける…!?嘘だッ…そんな…筈は…!!?」
「燃え尽きろ…炎と共に!!」
その瞬間、蒼い炎と緑色の炎にアビスは焼かれると悲鳴と共に消滅する。そして冴月は鎧を解いて振り返った。
「はぁ…はぁ…ッ……終わったの…?」
[あぁ、終わった。ホラーの反応も全て消えている…邪気も何もかも全てだ。頑張ったな…お嬢ちゃん。]
「お嬢ちゃんじゃない…冴月って呼んで。」
[考えといてやるよ、未だお前さんは未熟だからな。志は立派だが…それじゃあ未だ未だだな。]
「…解った、どうせ私は未だ未熟だよ…。」
結界が解かれると外は晴れていた。
雨が上がり、日の光が辺りを照らしている。
長い長い戦いが漸く終わったのだ。
冴月は、冴月達は守り切った…この学校の人間達を。だが救えなかった者も居る…その彼等の思いも彼女は胸に秘めていた。その犠牲を忘れる事の無い様に。紗那が駆け寄り、冴月を抱き締める。斗真の方を向くと彼は右手の親指を突き立ててサムズアップし頷いた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
あの死闘から1ヶ月後。
壊された校舎は漸くその形を取り戻しつつあった。
そんな中、冴月は1人でアビスと戦った広間に居た。
[お嬢ちゃん、あれだけ探したんだ…見つからないなら諦めた方が良いぞ?]
「絶対ある…ッ!」
冴月は瓦礫を掻き分けると手を止めた。
そこには砕け散った魔導輪が落ちていた。
「カガリ……ごめんね…遅くなっちゃって。」
[…お前さんに希望を託したのか。]
「あぁ…最後まで戦えたのもカガリのお陰。」
冴月はハンカチを取り出すとカガリの破片の一つ一つを丁寧に拾うとそれを包んでポケットへ。
そしてその場から立ち去った。
その足で次に向かったのは彼女が所属する番犬所、
古い神社の鈴を数回鳴らすと中へ入った。
そのまま進むと黒髪のおかっぱ頭の少女が見下ろしている。
「おぉ…久しいのう、冴月。今は…ガロと呼ぶべきか?」
「呼び易い方で結構です。」
冴月は一礼する。
途端にザルバが話し出した。
[剣の浄化…それも2本だ。頼めるか?ソウガにガロだ。]
「お易い御用じゃ…ほれ。」
コハクが指を鳴らすと冴月の元へ来た2人が剣を持ち去って行く。
「冴月よ、あの学園のホラー…及び関わっていた悪しき者は皆消えた。ご苦労であったの。」
「いえ…責務を果たした迄です。」
「それでじゃ…冴月、紗那と共にあの学び舎から去れ。無論…連中の記憶を全て消してな。」
「ッ……。」
「ホラーの討滅がそもそもの目的、そして暗黒騎士アビス及びそれに加担したホラーの討滅が御主の任務。これ以上彼処に長居する道理は無かろう?」
そうコハク様から言われると冴月は頷いた。
そして2つの剣を受け取ると彼女は一礼し去る。
外へ出ると歩き出した。
[お嬢ちゃん、辞めるのか?あの学校を。]
「もう居る必要は無いからね。端からそのつもりだった……。」
[辞めた後はどうするんだ?]
「店の手伝いしながら、夜はホラー狩り。前と変わらないよ。」
[辛くは無いのか?]
「…うん、大丈夫。」
冴月は歩いて喫茶店グラシアへと戻ったのだった。
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「記憶を消せと…番犬所からの仰せですか?」
冴月と紗那の2人は店のベランダに出ていた。
夜の空を眺めながら。
「あぁ。彼等の記憶から私達の事を無かった事にする…知らない方が良い事も山程有るから。」
「連中のラボは斗真が全て破壊、雫の出処も師匠が全て封じてくれました。なので2度と湧く事は無いそうです…もう私達の役目もお終いですね。」
「そうだな…今思えば長かったかも。明日の朝、お前の力で雨を降らせて欲しい。」
「雨ですか…嘗て本で見た魔戒法師も同じ事をしていたと聞いた事が有ります。では今晩中に拵えておきますね。」
「あぁ、頼んだ。」
冴月は遠くを見ていた。
街の灯りがポツポツと光っている。
あんな事が有ったのに未だ信じられない。
「守ったんだよな……アイツらを。」
[確かにそうだが、人間の欲望が尽きぬ限り…ホラーは生まれる。だから騎士の戦いは終わらない。]
「それでも戦うよ…それが私の使命だから。」
「おやおや…冴月殿?オレでは無く私って言いました?」
「え!?い、良いだろ…別に!何か変か!?」
「いいえ、何にも?ですがご立派になられましたね…牙狼の鎧を纏ってしまうなんて。」
[いや、お嬢ちゃんがガロの継承者になったのは何も偶然じゃない。覚えてないか?お嬢ちゃん…お前さんは出会ってる筈だぞ?お前さんの前の黄金騎士にな。]
ザルバがそう話すと冴月は考えていた。
少し心当たりがあった。
「あの時の…!!」
[あぁ、そいつも魔戒騎士でありガロだ。]
「…そうだったんだ、知らなかった…。」
彼の目は優しかった。赤い瞳と赤い髪が何よりも印象に残っていたが名は知らない。ふと紗那が冴月の方を向いて呟いた。
「…あ、冴月殿?そういえば冴月殿に施されていた刻印の事はご存知ですか?」
「刻印?…何か有るの?」
「転生の刻印と言って、冴月殿の性別を逆転させて鎧へ誤認させるという物なのですが…ちょっと失礼しますね?」
紗那はペタペタと冴月の身体を触る。
そして手を離すと離れた。
「可笑しいですね…刻印が消えてます。」
[恐らく、何かの弾みで消えたんだろうな。そんなモノ無くてもお嬢ちゃんは鎧を纏えるって事だ。]
ザルバが話すと紗那は納得し頷いていた。
「…そろそろ行きましょうか、ホラーが出る時間帯ですし。」
「そうだな…私は左、紗那は右を。」
「了解しました!」
2人は部屋へ戻ると足早に階段を降り、店の外へと出ると先ほど決めた様に走って向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
[この辺だな。匂うぞ…注意しろお嬢ちゃん!]
「解った…出て来たら斬る。」
冴月はゆっくり歩くと警戒しながら進む。
悲鳴が聞こえ、走ると素体ホラーと1人の女性が居た。
「居た…ッッ!!」
冴月は走り出すと赤い鞘の剣を取り出す。
そしてホラー目掛けて駆け出し、飛び蹴りを喰らわせると冴月は女性の前へ立つ。
「…逃げてッ、早く!!」
振り向かず剣を引き抜いて構える。
蹴られた素体ホラーが立ち上がると唾液を垂らしながら此方を見据えている。
[おっと…未だ居るな…気を付けろ!]
「え?」
冴月が見回すと今時の格好をした若い男が姿を現す。そして冴月の目の前でホラーへと変化した。
気味の悪い醜態を晒し出して。
左右の指には銀色の爪が生えており、背中には蛾の様な羽。そして虫の様な顔と見た目。
[ホラー、ナーゲル。鋭利な爪がやっかいなホラーだ。人間の肉なんざ直ぐ裂けちまうぞ!!]
「成程…それは厄介だッ!!」
振り翳して来た爪の一撃を避けると剣で擦れ違い様に一撃を加える。悲鳴と共に血が飛沫しふらついた所へ振り向いて左足による蹴りで更に一撃を与えて突き放した。
「ギッ…ガァアッッ!?」
「今…ッ!!」
[待て!お嬢ちゃん、未だ鎧を纏うな。]
「何故!?」
ザルバに止められると冴月は思わず左手の指を見た。
[鎧の力に頼るな、お嬢ちゃん。鎧を纏うのはアイツを追い込んでからだ!]
そう話しているとナーゲルは途端に飛び上がり、左右の羽を羽ばたかせながら冴月へ突っ込んで来た。
「無茶言うんだから…ッ!」
冴月が左へ飛び退くと髪へ鋭い爪が当たり、数本が飛び散って落下する。そのまま旋回し再び此方へ襲い掛かって来た。構えていると冴月の脳裏に有る事が過ぎる。それは過去にカガリと共に戦っていた時の事。
[冴月、鎧を纏うのが早過ぎるわ。ホラーをある程度追い込まなければダメよ。]
「でも…下手すればこっちが死ぬってば!」
[貴女は鎧の力に頼り過ぎている、だから半人前って言われるの!少しは魔導輪の忠告を聞きなさい、全く…!]
実はカガリにも同じ事を過去に言われていた。
自分では1人前の騎士だと思い込んでいたが、実際はそうでは無かった。カガリが途中で何も言わなくなったのは恐らく言わなくても冴月が解ってくれるから。でも自分は解っていなかった。
「……カガリ、私は未だ半人前だ。さっさと終わらせたくて鎧を纏って斬って…無茶して追い込まれて死にそうになった事だって有る。カガリが心配しなくて良い様に…もっと強くなるから…だから見守ってて…お姉ちゃんと一緒にッッ!!」
[来るぞ、注意しろッ!!]
ナーゲルが翼から無数の針を飛ばし攻撃を仕掛ける。降り注ぐ針を剣で弾きながら冴月は空中へ飛んだ。
「でやぁああッッ!!!」
そして身体を宙返りさせると剣で羽を斬り裂いて墜落させた。冴月も着地すると振り返り、再度剣を向ける。
[今だ、鎧を纏え!!]
「解った…行くぞッッ!!」
冴月は頭上へ剣を掲げ、円を描くと牙狼の鎧を纏うと金色の鎧が彼女を包み込み、金色の瞳が光った。
黄金騎士牙狼…冴月が蒼牙と共に継いだ鎧。
羽をもがれてボロボロになったナーゲルが牙狼を見据えると威嚇し、爪を振り翳して襲い掛かって来る。
「…ッッ!!」
飛び掛ったタイミングと同時に剣を振り翳して身体を真ん中から斬り裂いて倒す。悲鳴と共にナーゲルは塵となり消滅した。
鎧を解くと冴月は剣を再び赤い鞘へと戻す。
[今のを忘れるなよ?鎧を纏うのはホラーを粗方追い込んでからだ。その都度、状況判断しお嬢ちゃん自身が決めろ。向こうはお嬢ちゃんを待ってはくれないぞ。]
「……うん、気を付ける。帰ろ、ザルバ。」
冴月はポケットの中に有るカガリの破片に触れながら色々と思い出しつつ帰路へ着いた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして翌朝。
紗那と冴月は建物の屋上へ来ると学校へ目掛けて小型の大砲の様な物を設置した。
「例の弾は完成しました。雨を降らす為の溶液の中に、記憶が消える薬も混ぜましたので大丈夫かと。念の為に学校の空気清浄機にも同じ薬を入れてます。」
「ご苦労様…じゃあ、始めよう。」
「…良いのですか?本当に。」
「番犬所の指示だ…なら、それに従うさ。」
紗那は頷くと弾をセットしマッチで火を点けると学校の上空へ弾が放たれる。少し経つと雨がそこだけ振り出した。
「嫌な事は忘れるに限る…アイツらが見たのは全て夢。夢なら覚めてしまえばどうって事無い。私達の存在は知られ過ぎた……。」
「こんな事なら食堂のパフェとか色々食べておけば良かったです……はぁ。」
「…そんなの何処でも食べられるだろ?」
「違うんですッ!アレに載ったプリンとやらが美味しいんですってば!生クリームとか…チョコレート?という砂糖菓子も!」
「すっかり染まったな…紗那は。さ、帰って店の手伝いしないと。それに甘いの食べ過ぎると太るぞ?」
「大丈夫、太りませんよ!私は太りにくい体質なので!」
「その自信は何処から来るんだか……。」
2人は後片付けをすると建物から去った。
遠くを見ると弾を撃った辺りは未だ雨が降っている。部活の活動日誌には書いてないが実際はホラーという化け物と出会っている時点でネタにはなる。
しかしそんなのを書いても誰も信じてはくれない。
空想か或いは夢の話だと笑われて終わりだ。
オカルト同好会は都市伝説や怪現象を追う者が集まる部活で、こういう所にホラーの噂も紛れ込む事がある。2人はそれを利用したに過ぎない。
だが彼等は関わってしまった。
ホラーに喰われそうになった達弘
復讐の為に私物をゲートとされた優一
教師らに騙されてホラーに襲われた有紀
知らずにホラーに憑依されそうになった浩介
夢の中でホラーに襲われ、殺され掛けた楓
何れもが何かしらの形でホラーと密接になってしまったのだ。そしてその都度、冴月と紗那がそれを狩って守って来た。出来ればもう二度と危ない橋を渡って欲しくないとさえ思う。
「……冴月殿?どうかしました?」
「ん?いや、何でも無い。」
冴月が駆け寄ると紗那と共に歩いてグラシアへと戻るのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
僕の人生は極めて平凡…だった様な気がする。
あれは夢だったのだろうか?
その夢は1人の女の子がバケモノから僕を助けてくれて、それから一緒に同じ日々を過ごすという物。
名前は思い出せない…でもまぁ夢だから仕方ない。
学校の建物は何故か一部が未だに修理中で他は何とか使える。校舎の老朽化による崩壊の危険性が有るらしく、一部は未だ立ち入り禁止のまま。
何か大事な事を忘れている様な気がする。
「…すっかり遅くなっちゃったな、早く帰らないと。 」
僕の名前は岡本竜弘。
このオカルト同好会という部活でも何でも無い同好会の部長だ。メンバーは未だ5人しか居ない、今時この時代にオカルトなんて珍しいのかもしれない。
達弘はカバンを担いで部室を後にする。
階段を降りて玄関へ向かうと靴を履き替えて外へ。
外はもう日が落ちて真っ暗。
街灯の有る通りを進んで家の有る方へと足を運んでいた。
ふと路地が気になって足を止めると奥からフラフラと人が此方へ歩いて来る。それは女性で、衣服も髪も乱れていた。
「あ、あの…大丈夫ですか?」
「……人間?」
「は…?」
「美味そうな…人間……それも…男!!」
女性は竜弘を見ると顔を上げてニヤリと笑った。
その目は正気では無い。長い髪を振り乱し飛び掛って来た。
「うわぁあッッーー!!?」
「伏せてッ!!」
途端に女性の声がし、乾いた音が響く。
女性の身体に弾が命中しその場に倒れる。
顔を上げると銃を持った薄紫色の髪をした少女が立っている。恐らく歳は自分と同じだろう。
黒いタンクトップに長袖のジャケット、そしてその下は短パン。左足には何かのケースが付いていた。
「おっと…これは……お怪我は有りませんか?」
少女は近寄るとしゃがみ込んでいる彼へ声を掛けた。そして手を差し出すとその手を握り、彼が立ち上がる。
「あの人は…何なの?」
「…世の中には知らぬ方が良い事も有ります。さ、早く逃げて下さい?」
トンっと少女に背中を押される。彼女は微笑んで手を振っていた。竜弘は気になったのか走ってから少しして足を止めて振り返る。
「あの子…何処かで会ったかなぁ?」
考えても思い出せない。
モヤモヤしながらその場に立ち止まっていた。
すると先程居た方から獣の様な唸り声と発砲音が聞こえるとやはり気になって引き返してしまう。
物陰に隠れながらその様子を見ていた。
今度は白いコートを着た少女が現れ、金色の鎧を纏う。それは夢で見た事があった。だが自分が見たのは青い色だった気がするがモチーフは狼なのは同じ。女性が変化した化け物相手に剣で応戦していた。
「何だ…何が起きて…ッ!?」
すると化け物と目が合ってしまい、化け物は此方へ攻撃を繰り出した。無数の蔦が此方へ飛んで来ると竜弘を捕らえようとして来たが、立ちはだかった金色の狼により防がれる。
「ッ…おい、何やってる!早く逃げろ!!」
「あ…ッ…ごめん…ッ!!」
そのまま狼は蔦を斬り裂くと駆け出し、一刀両断で斬り裂いた。塵となって化け物が消滅すると此方へ振り向いた人型の狼が近寄って来ると鎧を解いた。
そこに居たのは同い歳と思われる黒い長髪の女の子だった。
「逃げろと言ったのに…何故逃げなかった。」
「ごめん…でも、気になって…!」
「…今お前が此処で見た事は全て忘れろ、良いな?」
少女は竜弘を威圧する。
その目は女の子とは思えない程、迫力があった。
竜弘は何を思ったか背を向けた彼女へ問い掛けた。
「ね、ねぇ…キミ…何処かで会った?」
「……人違いだ、私はキミを知らない。」
「待ってよ…ッ!」
竜弘は咄嗟に彼女の左腕を少し握った。
前にもこんな事が会った様な気がする。
「…執拗いと嫌われるよ。」
「嫌われても良い…名前…キミの名前を教えてくれない?」
「ッ……ダメ、言えない。」
「言えない…そっか、そうだよね…ごめん。ありがとう…それじゃ…僕はこれで。助けてくれてありがとう。」
竜弘はその少女の手を離すと歩き始めた。
あの声と似た誰かを夢で見た様な気がするのだ。
同い歳で、滅多に笑わず、無愛想だが時折女の子らしい一面を見せる誰かを。
歩いて行くと彼の脳裏を何かが掠める。
[…お前、何でも知りたがるんだな?]
[オレがお前達の事を守ってやる。だから心配しなくていい。]
[お前が色々聞く前にオレから話しとく。…大丈夫、何があっても必ず帰って来る。]
間違い無くあの子が発した言葉。
そしてもう1つだけ思い出した事がある。
「サツキ……。」
あの子の名前だろうか?咄嗟に竜弘は振り向いて呼んでみる。
「サツキ…!」
「ッ…!?」
「サツキ…それが…キミの名前…?」
「何でそう思った?」
「キミの事…夢でずっと…そう呼んでた気がしたから。ツンツンしてて女の子っぽく無いけど…本当は優しくて、誰よりも人の事を気にする子。それがキミだから…冴月!!」
竜弘はいつの間にか思い出していた。
夢なんかじゃ無かった。
アレは全て現実に起きた事。
あの時、学生寮の有る建物から見た屋上から差し込む陽の光…その中に居たのが彼女の背中。
それに間違いは無かった。
「…冴月、言うの遅くなっちゃった。その…お帰り……。」
そう呟くと冴月は振り向いた。
彼女の顔は最初に会った時より穏やかで、女の子らしい雰囲気が出ている。
そして彼女が後ろに居る紗那へ背中を押され、前へ出る。コツコツとブーツの当たる音と共に此方へ近寄ると向き合った。
「…私も言うのが遅くなった…ずっと言えなかった…言えば全て思い出してしまう…そう思ってた。本当は何も知らずに生きて欲しかった…ホラーとか、魔戒騎士とか、そういう存在なんて知らないまま。」
「それでも…僕は覚えておかなきゃいけない気がするんだ。この世の中には誰かを悪魔から守ってくれる存在が居る事、自分の命を懸けて僕達を助けてくれる存在が居るという事を。」
「後悔しない?…きっとまた同じモノを何度も見るかもしれないし、ましてや怖い思いもする。下手をすれば私や仲間が死ぬかもしれない…それでも…!」
「ずっと一緒に居る。僕はキミの事が好きだから…確かに僕は何も出来ない、あの剣だって握れない、鎧を着て戦う事も出来ない。それでも…キミの居場所は僕が守る。力不足かもしれないけど。」
「……それだけ聞ければ充分だ。私が鍛える…鎧が纏える様になれば多少は戦える筈…だって竜弘は誰よりも優しいし強いから。」
そして冴月は目を閉じてからゆっくりと深呼吸し
再び目を開けて彼の方を見つめた。
「……ただいま、竜弘。ずっと会いたかった。」
今まで見せた事の無い笑顔で冴月は彼の名を呼んだ。竜弘は冴月を抱き締め、折れそうな程細くて柔らかい彼女の身体を両手で包み込んだ。すると突然彼の唇へ温かい感触が伝わって来る。
「冴月…ッ!?」
「んッ…初めてのキス、前はお前からだったから。私だって女の子だ…それ位する…不満か?」
「全然…不満じゃない。」
2人は互いに唇を重ね合わせる。
抱き締め合って、お互いの存在を確かめる様に。
彼だけが…彼女の事を思い出した。
自分の事を、いや…自分達の事を守ってくれた存在が居た事を。ずっと忘れていた事を漸く思い出した。
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[…朝よ、そろそろ起きなさい。冴月、それと竜弘!]
「うわぁッ!?えッ…誰!?」
何かの声がして飛び起きると、どうやら竜弘は裸で誰かの部屋で寝ていたらしい。声の主の方を見ると腕輪が喋っていた。スタンドライトの横には何かを破ったビニールが置かれている。
「えっと…もしかして……カガリ?」
[そうよ?私の名はカガリ、カガリ=アルヴァ。魔導輪よ。そこの子が私の持ち主。]
カガリがそう言うとモゾモゾとその隣の子が背伸びをし、身体を起こした。
「ん…五月蝿いぞ…もう少し静かに……って竜弘?お前…何で裸…え、私もッ!?」
「あ…思い出した……!」
竜弘は昨夜の事を思い出していた。
あの後、冴月の部屋に来て話していた後に流れでそういう形になってしまったのだ。だが冴月は気にも止めずに机の上に有るカガリの方へ向かって行った。
「…か、カガリ!?カガリ…どうして…完全に砕けてたのに…?」
[斗真が直してくれたのよ。あの子、魔導具の工房見習いだから。それより冴月、昨夜はお楽しみだった様ね?竜弘と。]
「し、知ってるの?」
[ええ、勿論?最初は痛がって突き飛ばしたのも…慣れてから可愛い声出してたのも全部♪これで貴女は本当の女の子、そして彼は卒業という事ね。将来が楽しみだわ。]
「ッッ…はぁ……全てお見通しだった…でもお帰り、カガリ…。」
2人は着替えてから下へ向かうと客席のカウンターに紗那が座っていた。クルクルとコップの中のマドラーを回しながら。2人も並んでその横へと座った。
「おはよう紗那…どうした?不機嫌そうな顔して。」
「冴月殿も案外隅に置けないなぁって。昨夜はお楽しみでしたしねぇ?」
「うッ…まさか聞こえてたのか?」
「ええ、私の目の前で凄い濃厚なキスしてから、今度は此処の貴女のお部屋で盛った様にイチャコラしてましたからね?世間ではリア充と呼ぶらしいですよ?こーいうの。それと壁薄いんで成る可く声は抑えて下さいね、冴月殿♪」
ニヤニヤしながら紗那にもからかわれてしまった。
宥めようとして来た竜弘へ冴月の牙が向いた。
「元はと言えば、何でそういう流れにするんだよ!?キスだけで良かっただろ!?」
「だ、だって冴月が可愛かったから…それに!」
「それに…何だよ?」
「あの雰囲気では引き下がれなかったから…ごめんッ!」
竜弘は謝ると両手を合わせて頭を下げて来る。
それを見た彼女は頬を赤らめつつ、溜め息をついて頭を抱えていた。
「解った…、解ったから顔上げて。もう過ぎた事は仕方ないから。」
「あんまり人前でイチャコラしないで下さいね?そもそも、冴月殿は私の騎士ですから!!わーたーしーの!」
「はぁ!?何でそうなるんだよ!?」
「私がそう決めましたから♪キスだってしましたよ?お互い子供の時ですから覚えてないでしょうけど。つまり竜弘殿と私はライバルという事です!」
「いつの間にそんな事を…というか勝手に私を巻き込むな!あーもう、頼むから朝だけは静かにしてくれッッ!!」
こうして3人は賑やかな朝を迎えた。
1人の少女であり、魔戒騎士である弥那瀬冴月。
彼女は亡き父から受け継いだ鎧、幻創騎士蒼牙をその身に纏い戦い続けて来た。
そして新たな希望…牙狼の継承者としても彼女は選ばれた。彼女は性別という垣根すら超え、ただ只管に己の出来る事を貫き通して来た。
これからも、この先もずっとそれは続いて行くのだろう。
魔戒騎士…それは守りし者。
古の時代から存在する魔物、ホラーを倒す為…そしてその脅威から人々を守る為に戦う者達の事である。陰我が有る限り、ホラーが居る限り彼等の死闘は終わらない。1人でも多く…誰かの明日を、誰かの未来を守る為の戦いは続く。
「…我が名は弥那瀬冴月!!蒼牙…そして牙狼の鎧を持つ魔戒騎士だッ!!」
今宵も1人の騎士は魔物を狩る為に闇夜を駆け抜ける。その長い黒髪を風に靡かせ、その黄色い瞳で自らが守る者…そして狩るべき魔物を探して。
-完-