恋に堕ちるのはいつも突然だ。
どんなロマンティックなシチュエーションでどんな天気かなど関係ない。それまでの好みなど塵芥だ。
少し齧った程度に知った世界に来て地盤固めを終えたらやること。そうだね観光だね。
潜入したのはトリニティ総合学園。
ゲヘナ生の私がなぜ不倶戴天の敵であると言っても過言ではないトリニティにやってきたのか。
それは生のハスミを見物しにきたのだ。
そう前世はハスミがデカくて好きだった。
男の子はデカいものが好きなのだ。
当時は貫通属性不利でもずっと使ってた。
好き好き言ってもアビドス編を終え次のアプデを待ってるうちにブルーアーカイブから離れてしまった自分の言葉は軽いかもだが。
ものがごった返している押収品保管庫のロッカーに隠れハスミがくるのを待つ。
ブラックマーケットで買った『光学迷彩透明くん』は2時間しか効力を発揮しないのでこのように泥臭く隠れなければならないのだ。
最も見つかったとしてもこの『改造制服トリニティアレンジ』があるから大丈夫。押収されたものを取り返しに来たトリニティ生にしか見えない。
真面目にそう考え拳を小さく握る。完璧だ。勝った。
だがゲヘナの友人が自信満々の彼女を見たらこういうだろう。
「制服だけ変えても角とか翼でバレるわよ。それにロッカーに隠れるなんて三流よ。」と。
常識であるゲヘナとトリニティの身体の差を理解していないのは転生者ゆえなのかそれとも少し抜けているからなのか。いやハスミのハスミに狂わされた男だからなのか。
ガチャリと扉を開く音が聞こえた。
慌てて近くにあったロッカーに隠れる。
教科書か何かわからないが本がたくさん詰まったロッカーだった。スペースが確保できる本でよかった。銃とか武器だと危ないしスペースもなさそうだしでやばかった。
ロッカーの中で息を潜め『光学迷彩透明くん』にいつでも電源が入れられるようにスイッチがある横隔膜辺りに手を置く。
ん?入ってきたのは小柄な女の子っぽい。
「こ、こんなものを持ってきてるなんて。あ、ありえない。」
消え入りそうな独り言。
可愛い声だ。この世界全員が全員ビジュアル良し!声良し!なので当たり前なのだが。
ロッカーの隙間からなので良く見えないが押収品を置きに来たのだろう。
整理しに来たわけでないっぽいしすぐに出ていくはず。完璧な理論だ。
押収品一時保管ボックスのある棚を通り過ぎて真っ直ぐ隠れているロッカーへ歩いてくる気配。
えっこっちに来るんだけど!
ロッカーに入れるの!?
くそぉ!下調べもっとしておけばよかった!
オラァ!スイッチオン!
キヴォトス脅威の科学力でつくられたらしいマシンは体を一瞬で透明に変えた。
ロッカーが開け放たれる。
ピンクの髪。ツインテール。小さな羽根。黒の帽子。少し上気したかわいい顔。
かわゆ。思わず声が出そうになり飲み込む。
彼女はくるりと後ろを向きそのまままるで車を駐車するようにロッカーに入ってきた。よちよちと。ロッカーの扉を閉めながらゆっくり後ろに下がってくる。
押収品だけじゃなくて自分ごと入ってきた!?まずいバレる!?
逃げる!いやこんな狭いロッカーじゃ無理!どうしたら!
あわわわ。どうしよう。
ぐるぐると目を回し慌てる。
そんな間にどんどん近づいてくるピンクの頭。
ふにょん。
彼女の頭が胸に当たった。
「ッッッ!何!この感触!」
びっくりした猫のように飛び退き距離をとる。
この瞬間に飛び出して逃げればまだバレずに済んだかもしれないが頭が真っ白になった彼女は動くことができない。
ピンクの彼女は恐る恐る手を伸ばす。
そして揉む。自身の頭が当たった謎の柔らかい感触を。
んっ。
もみもみとしたあと輪郭を確かめるように下へと手が動いていく。
ピンクの彼女の手はポチッと何かボタンを押した。
すると尊敬する先輩と同じくらいの身長で大きな角を持つ胸元の開いたトリニティの制服を来たゲヘナの生徒が出現した。
顔は火がついたように赤かった。
?????なんで?
ゲヘナ生が?トリニティの制服を着て?
どうして?押収品保管庫のロッカーの中に?
痴女?読んだことがあるシチュエーション!?
わっと浴びせられた情報の嵐にあまり優秀でない脳みそはパンクして目をくるくるとまわしそのまま倒れた。
心臓がうるさいほど脈打っている。
このドクンドクンで世界が壊せるほどに。
初対面で胸を揉まれた。初めて揉まれた。
薄暗い押収品保管庫で。ロッカーの中で。
ロマンのかけらもなく埃っぽいこの部屋で。
顔がアツイ。この胸の高鳴りはもしかして恋!?
わかるのは一つだけこの少女に俺は男から女にされたということだけだ。
目の前の彼女のポケットを漁り学生証を見る。
気絶した彼女を抱き寄せツーショットを何枚も撮る。
ついでにモモトークも交換してと。
下江コハル。名前も顔も記憶したからな。
思いつきゆえ続かない。
いや反応があったら続きます。