時計仕掛けよかったです。
「最近うちの学校の人間がトリニティに出入りしているらしいじゃ無いか。」
マコト先輩は突然電気を消してそう言い放つ。
自信満々に何かを言う時は面倒ごとの合図だ。
私はへにゃりと顔を崩し机に突っ伏す。だるいやつだ。だけれどマコト先輩を選んで万魔殿に入ったのは私だ。突拍子もない思いつきに振り回されてきた。しかし普通に楽しかった。
楽しかったのだ。
だから突っ伏しながらでも聞き耳を立てる。
あまり話題に食いつくのもカッコ悪いし。
いま他の子達外に出てるし、私以外幹部しかいないこの教室であまり目立つのも良くなさそう。
パチリとスイッチが押された音と共に世界が光に包まれた。
目悪くしますよ。と万魔殿所属であるイロハさんか呆れながら電気をつけてくれた。
暗いとテンションが上がるのはわかるけれど今はそういうノリじゃなかったのでイロハさんには感謝、とじぶんに言い聞かせる。本当は暗いとテンションが上がるので少しがっかりだけどイロハさんには逆らわない方が良い。
たぶん万魔殿で1番頭が良いし勘気に触れたら後方支援に回されてつまらなくなってしまう。
席につきお菓子をつまみながら本に目を落とすイロハさん。
ただ1人ワクワクと自分の計画を語りたがる女が1人、聞きたい子は私だけ。イロハさんは興味なさそう。口出すと睨まれそうだけど好奇心のが勝る。
「マコト先輩、報告には上がってますけど愛川エル程度、気にするようなことではないかと思います。最近は特に問題も起こしてませんし。」
私が話を広げるといつもよりやる気に満ち溢れた元気なマコト先輩が水を得た魚のようにさらに元気になる。
「いやいやいや賢い賢いマコト様はピンときたわけだ。これは使えるとな。」
「あれだけ痛い目を見てまだ諦めてなかったんですか。」
本で口を隠しながら小声で呟くイロハさん。
「イロハさん聞こえてますよ。
マコト先輩には聞こえてないかもですけど。」
お前がマコトに食いついたせいでうるさくなっただろうがと目で制された。あんな感じの沈黙嫌いだし計画聞きたかったし喋っちゃったの仕方ないから許してほしい。
「安心しろ前回と同じようにならない。」
ふふんと鼻を鳴らすマコト先輩をみて少し呆れのため息が出てしまった。
イロハさんは自信に溢れているマコトを信用できないと言った顔で見ている。
なぜならマコト先輩の素晴らしい計画によって何度も何度も被害を被ってきたからだ。
楽しかったからいいけど。
黙っている姿に説明を促していると受け取ったのかマコト先輩の口からその素晴らしき計画が飛び出していく。
「トリニティに出入りしてるのはただのゲヘナ生じゃあない。風紀委員会に入り浸っている風紀委員の友人的存在が愛川エルというわけだ。わかるよな。」
「また爆発するのは嫌なので1人でやってください。」
「まてまてバレないように直接手を下さなければ大丈夫だ。昔の伝手でトゥリクゥム訓練学校の傭兵部の人員を用意した。彼女達に愛川エルを攻撃させる。のこのこ愛川エルを助けにきたヒナを罠にかけ倒すと言うわけだ。」
罠にかけた程度で風紀委員長が倒せるか疑問だけどそれであの女が倒れるなら良い。
戦闘のプロフェッショナルである傭兵ならいけるだろう。マコト先輩の計画だからちょっとアレだけど楽しそうだし大丈夫。
か、賢すぎる!やはりマコト先輩!ゲヘナ学園の長!タイミングと運が少し悪かっただけで実力は高いんだ!
顔にそういう感情を乗せてマコト先輩を見る。
ニヤリと笑い『あとはお前が賛成するだけだぞイロハ!』と言わんばかりの視線を向けた。
「トゥクリゥムの方達がメリットもなく風紀委員長とことを構えるなんて考えられませんけど。」
「いいや。奴らは実績が欲しいんだ。たとえ敗れたとしてもゲヘナの風紀委員長と戦ったという実績がな。もしキヴォトス最高峰の武力である空崎ヒナを倒したのならば傭兵部の評判は鰻登り、仕事は途切れない。そうして資金は湯水の如く扱えるトゥリクゥムがヴァルキューレを追い落とす可能性も出てくる。
警察組織と我々が密接に関わっていればどんなことを我々がしたとしても揉み消してもらえるようになるだろう。つまり我々とトゥリクゥムはウィンウィンの関係ってわけだ。」
悪い笑顔というのはこういう顔を言うのだろう。
「こちらに被害が来ないようにお願いしますね。流石に飛行船墜落はこたえましたから。」
流石にあの爆発は死ぬかと思った。でも生きてるから今度があっても大丈夫なはず。
それにしてもこの計画が成功したらゲヘナ学園がキヴォトスNo. 1で万魔殿最強ということをこれで示すことができる。そしてゲヘナにかつて聞いたゲヘナらしさが戻ってくる。
「マコト先輩の頭脳はキヴォトスで1番。あの有名な先生を軽く越える神算鬼謀。超人!羽沼マコト。万魔殿に入ってよかった。アリウス?とかいう敗残兵に任せた前回があんまり良くなかっただけ。今回は表の学校でうちの学園ほどではないけれど大きいところ!マコト先輩の人脈でしっかりした傭兵部とかいう戦闘に特化した人員も確保していると。完璧だ。勝利は揺るがない!」
適当に耳障りのいい言葉でよいしょするとマコト先輩はいつもの特徴的な笑い声をし立ち上がる。
「安心しろ大船に乗ったつもりでこのマコト様に任せておけ。」
「うぉぉ!マコト先輩最強!万魔殿最強!」
あなた毎回それだよねってイロハさんに呆れた目で見られたけど、ゲヘナ生に生まれたからには一度はこういうコトに手を出すし、一度出したら二度も三度も変わんないからいいんだよね。
「フリじゃないですからね。」
「情報提供と資金援助と場を整えるだけだ。こちらに被害などありえんよ。」
カッコをつけてか、ノリなのか手元にあったリンゴを丸齧りしながら高笑いをするマコトをみてイロハは『あっ』と思わず声が出てしまった。なぜならそれは万魔殿のお姫様イブキために取り寄せたものだったからだ。
「あー!」
タイミング悪いことにちょうど入室したイブキに見られてしまった。
ゆるしてくれイブキ!そんな言葉がゲヘナに響いて消えた。
ゲヘナ学園3本の指に入るほど強力な組織である万魔殿。そこはすこしだけおかしかった。
また遅れます。(いつの日か世界を救うと信じて緑の勇者やってるため)