VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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第一話『踏み出す一歩』
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 仮想空間。

 

 

 ――VRという物は、利用方法も、空間の設定も、多種多様になっている。

 特に、それを利用したゲームが、近年、爆発的にヒット、シェアを拡大してきている。

 VRゲームは、元々は大型の商業施設で展開されていたものだが、今では家庭でも手軽にできる。

 

 そんな仮想空間は、現実逃避するには持ってこいだ。

 仮想現実という言葉がある通り。

 仮想空間に降り立った時、そこはもう、もう一つの現実になるのである。

 

 

 

 

 第二世界(スフェリカ)、そう呼ばれるMMORPG。

 キャラクターネーム:ローリエ。

 

 今日もその姿が、森林地帯の奥に現れる。

 

 たった一人。

 

 パーティプレイ推奨の高難度地域に、ローリエはひとりだけ。

 

 軽装に身を包んだ、金髪のエルフ。

 

 その声がつぶやく。

 

「――「『身軽さ上昇(アジリティ・オブ・ウィンド)』『生命力上昇(タフ・オブ・ソイル)』『自己治癒力上昇(リジェネレーション・オブ・ウッド)』……」

  

 

 唱えられる単語の度に、短いエフェクトが奏でられ、ローリエのステータス数値を彩っていく。

 強化の魔法だ。

 

 

 

 やがて持ちうる10種以上、すべての強化を終えたローリエは、1本のレイピアを手に、駆けだした。

 森を徘徊する、厄介者――魔物を狩るために。

 

 

 

 最高難度の地域だけあって、出会う魔物の強さも、雑魚とはいえすさまじい。

 それを慣れた所作で、ローリエは狩っていく。

 

 

 また1匹が、血潮を噴きだしながら、その身体を霧散させながら、消えうせて行った。

 

 

 ローリエは、手を止める。

 

 

 空を見上げれば真昼間の太陽が。

 19時という現実世界の時刻を無視して、煌々と輝いていた。

 

 

 その輝きを、翳した掌で遮りながら。

 ローリエ――いや。

 プレイヤー:(すめらぎ)愛海(なるみ)は、ぽつりと零す。

 

 

「……どうしてこうなっちゃったのかな」――と。

 

 

 

 憂鬱。

 溜息が出る。

 

 

 ゆっくりと、気だるげに。

 

 

 ローリエは……。

 

 いや。

 

 (すめらぎ)愛海(なるみ)は、その辺の倒木に腰を下ろし。

 

 

 思う。

 

 『結局、どこで何をしても、私は同じなんだな』、と。

 何一つ変わらないんだ、と。

 

 愛海が、このゲームを始めたのには理由がある。

 

 

 

 

 愛海は、コミニケーションが得意ではない。

 むしろ、コミニケーションなんてしない。

 必要な生活を送ってきていない。

 

 学校ではいつも一人だし、誰からも声をかけられない。

 

 

 中学校の三年間、一緒のクラスだった人に、「誰だっけ?」と言われるほど、影が薄い。

 珍しい苗字のヒトでしょ。という程度にしか人の中に残らない。

 

 そんな学校生活が楽しい筈もなく。

 家族にも、あまりに生き方が不器用すぎて心配をかけていたから。

 

 だから、VRMMOを始めたい。

 そう言った愛海に。

 そこそこ値の張る機械を、母が快く買ってくれた。

 

 

 

 

 

 愛海は期待していた。

 

 ゲームの中でなら、友達がたくさん出来るかもしれないと。

 

 

 

 ―――。

 

 

 しかし、現実も仮想も、何も変わりはしない。

 だって仮想空間はもう一つの現実だ。

 

 生き方が変わったりするわけじゃない。

 性格が変わったりするわけじゃない。

 

 

  

 

 

 結局、愛海――ローリエは、ずっと一人で遊んでいた。

 誰かと遊んでみたい。

 そんな気持ちはずっとあるのに。

 

 

 どうやればいいのか、解らないまま。

 はや、3年。

 とうとう、ローリエはゲームの限界一歩手前くらいまで、強くなった。

 他のゲームで言うなら、最大がLv100だとするなら、Lv99くらいにはなったということだ。

 

 たった一人のまま。

 

 

 これなら、ネットで繋がるゲームである必要が無い。

 

 何をしているのだろう、母に、高価なゲームを買ってもらって。

 

 もう、高校生になって、1か月になるというのに。

 何の進歩もない自分。

 

 嫌になる。

 

 そんな自己嫌悪を引きずって。

 

 ローリエは、街へ向かう。

 魔物から削り取った金目の物を売りに行くために。

 

 ああ、そうだ。

 

「ついでに、倉庫に溜まってる万能霊草(パナケア)もエリクシルにしなきゃ」

 

 美形に作られたエルフの少女。

 その顔に浮かぶ表情は、今日も暗い。

 

 

 

 

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