VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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「あ、あの……ここ、入るんですか?」

 

「当然でしょ。そのために来たのに」

 

 ローリエとマナは、今、首都のとある美容室前に居た。

 

 ここでは、キャラクターの髪型をある程度弄りなおすことができる。

 他にも、色々な美容サロンがあり、顔つきや目や、肌の色などを再設定できる。

 

 その店構えは、アンティークな美容サロンと言った感じだ。

 社交的な者なら、なんておしゃれなお店なんだと喜ぶかもしれないが。

 

 ローリエには関係ない。

 へっぴり腰で、入る様子は微塵もなく。

 

「いえ、でも……。私、リアルでも入ったこと無いんです、けど……?」

 

 おどおどと、お店に入る勇気を出せないチビエルフ。

 その髪型は今、金髪の三つ編みお下げとなっている。  

 

 その髪型のままでも、十分可愛らしいし、中の人は気に入っているのだが。

 新しく入ったパーティメンバーのユナの情報では、ローリエは誰かに付け狙われているかもしれないのだという。

 恨みを買ったであろう相手は、ローリエもフェルマータもマナも、なんとなく予想はつくのだが。

 

 念のために、髪型くらいは変えて見つかりづらくしておこう、という話になって。

 今、美容室の前に来ているのだった。

 

 しかし、ローリエは個人商店に入るのが苦手だ。

 

 だから。

 プレイヤー:(すめらぎ)愛海(なるみ)は、いつも自分で調髪を行っている。

 

 そんなリアルでも美容院に入ることができない愛海が、もう一つの現実であるVRで実行できるとでも?

 それができるのならば、3年間ゲームでぼっちプレイなどしていない。

 

 けれど、ついに。

 

 しり込みするローリエに、マナはしびれを切らし。

 ローリエの手を取って、店内に引っ張り込もうとする。 

  

 

「ほら、私がおごってあげるって言っているのよ。それに、相手はNPCよ。気にすること無いわ」

 

「うぐぐう」

 

 ゲーム内のイメチェンには、特別なチケットが無い場合、リアルマネーが必要だ。

 しかし、既にマナの左手には、光輝く、美容サロン無料チケットが握られている。

 

 それなのに、ローリエは、金銭的な利益では動かない。

 マナというキャラクターの腕力は1という超非力ではなおさら、引っ張り切れない。

 

 なので。

 

「仕方ないわね」

 今度は、マナがローリエの背後に回る。

 

「PVモードオン」

 

「へっ?」

 

魔衝弾(ステラ・インパクト)!!」

 

「ふきゅ!?」

 

 

 どんがらがしゃーん。

 

 と、マナのノックバック特化魔法をPVモードで背中にぶつけられ。

 吹き飛んだローリエが、アクセルとブレーキを踏み間違えた、地面を走るミサイルのごとく。

 

 豪快に入店を決めた。

 

 

「あら、いらっしゃい。可愛らしいお客様。今日は、どんなイメチェンをお望みかしらぁん?」

 

 ごろごろごろ、びたーん。

 と連続前転でローリエが入店すると。

 オカマ系のNPC店員が、出迎えてくれる。

 美容室はプレイヤーが経営できないので、NPCによるものなのだ。

 そしてNPCだから、いちいち、店の入り口がめちゃくちゃに壊れていても何も気にしない。

 あと、ゲームなのでお店の損壊はすぐに戻る。

  

「こ、こんにち、わ……」

 

 倒れたままローリエが見上げると。

 そのエグみの効いたご尊顔が、ぬるっと覗き込んでくる。

 手にした雑誌の写真を掲げながら。

 

「今なら、こういう髪型が、人気みたいよぉん」

 

 そんなディープなビジュアルのNPCは、なぜかキャラ付けもカップの底に沈殿して溶け切ってないインスタントコーヒーの粉のごとく、濃厚であり。

 

 ひときわ目立つ濃い口紅が、色白な顔に浮いている。

 さらに、男は、とても長身で細身だ。

 あとおヒゲも濃厚。

 剃ってはいるものの、元々が濃いせいか青く残る剃り跡の主張も強めで。

 『いや、あんた、そのイカレタファッションセンスと、無駄にくねくねした動き無かったら、ただのおっさんだろ』と、突っ込みを入れたくなるような。

 

 そんなダンディーな男が。

 

 女口調で話しかけてくる。

 奇抜なイカレファッションでだ。

 まるで、パリピが変態を着ているかのようだ。

 

 

 しかし、オカマに注文を入れたのは。

 スポンサーだった。

 

「可愛い感じのやつ全部試して頂戴」

 

「了解したわん。じゃあ、お客様、こちらの席に、どーぉぞ!」

 

 倒れたままだったローリエは、意外とマッチョだったNPCにがっしりとつかまれ。

 美容院の椅子的な椅子に、座らされる。

 

 

 

 そうして、あーでもない、こうでもない、と。

 ローリエは暫くマナの玩具にされてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 ――1時間ほどして。

 

 

 ローリエとマナは、『ミミズクと猫・亭』の訓練場に居るフェルマータとユナの所に合流した。

 フェルマータと、ユナの開口一番は、完全に一致。

 

「か、かわいい」

 

 ローリエは、腰まであるウェーブがかった若葉色の髪に変わっており。

 ケープのようなモノで、上半身を隠している。

 さらに、手には日傘を持っている。

 

「先輩、どうしたんですか、この日傘?」

 

「こ、これは、マナさんから……」

 

 日傘は、マナからローリエへのプレゼントで。

 属性クリスタルが幾つか備わっている、片手棍棒系とワンドハイブリット系列武器であり。

 広げれば盾として使えるし、日傘の柄を外すと、細剣が出てくるという仕込み杖要素もある。

 

 マナは言う。

 

「日傘は、お嬢様感アップに良いアイテムよ。ちょっと大人っぽくなったでしょ? これで、掲示板に上がってる特徴と印象が変わって、暫くは誤魔化せるんじゃないかしら」

 

 

「へぇ、先生、意外とセンスあるわね」

 

 ぱしゃり、と、フェルマータ。

 カメラを構えてスクショを取るモーションで、フラッシュがたかれる。

 

「はっ、私も撮ります! 先輩、こっち目線下さい!」

 

「え? あ、ちょ……と、撮らないでください!」

 

 そんな感じで。

 

 ローリエは、金髪ロリエルフから、若草色ロリお嬢様エルフに、ジョブチェンジしたのでした?

 

 

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