VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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 日傘を、パラシュート代わりに。

 なぁんていうのは、演出で。

 

 重力を扱う魔法を習得しているローリエは、そのスキルを使って、落下速度を自由にできる。

 その上、重属性のパッシブスキルで、落下ダメージは無効だ。

 

 

 そんなローリエは、ゆっくりと地面に向かって下降中で。

 

 傍に暗殺者の姿はなく。

 ローリエの探知スキルにも、キャラクターの反応は見られない。

 

 そもそも、周囲は全部壁に囲まれている縦に高い細い区域。

 

 まるでとっても広いエレベーターの空洞のようなところを、落ちて行っている。

 ローリエの予想では、暗殺者とは別の空間(ID)に入ったのだろう。

 

 他人が大勢集まるイベントなんて、行く気もしないローリエには関係なかったが。

 興味があって攻略サイトを逐次見ていたローリエには、すこし覚えがある。

 

 石蛇王遺跡イベントの遺跡ダンジョンと、遺跡の裏ダンジョン的な石蛇王の卵関連は、別の処理だと。

 つまり、卵関連のダンジョンは、インスタントダンジョンの扱いらしい。

 

 インスタントダンジョン……略してIDとは。

 個人、もしくは幾人か毎に招待される特別なダンジョンで、何度も1から挑戦でき、報酬も個別に取得できるという特徴がある。

 その代わり、そういうスタイルのゲームでは、ものすごい周回を迫られたりして、飽きることも多いと思うけど。

 

 石蛇王遺跡イベントもその一種で。

 ただ、周回目的のダンジョンではなく。

 レアアイテムに到達できるダンジョンかどうかという。

 当たりか外れか、を自動判定して、指定人数を振り分けるシステムだと思われる。

 

 つまりうまくいけば。

 ローリエは超レアアイテムの巨大石蛇王(カトブレパス)の卵の在処まで行くことができるという訳だ。

 

 まぁ、ローリエにとっては、そんなことはどうでもよくて。 

 今大事なのは、残してきたパーティメンバーの事だ。

 

 「……ユナさん、大丈夫かな」

 

 ゆっくりゆっくり、タンポポの綿毛のように降下する最中。

 ローリエは残してきた初心者ちゃんの心配をしていた。

 

 ゲームはじめたての娘さんに怖い思いはさせられないと思って。

 ほぼ反射的に、ユナを庇う行動を取ってしまったけれど……。

 

 今ははぐれてしまって、きっとしばらく合流は難しいだろう。

 

 フレンドリストのユナのステータスも、消息不明(Unknown)になっている。

 この表示は、ここがIDであるという証拠だ。

 イベント用の空間に居て、外の情報を感知できないという意味に他ならない。 

 

 でもたぶん、ユナは無事だろう。

 あの通路の先に残っているはずだ。

 暫くは通路を渡れないけれど、ここがイベント用の隠し通路なら、時間が経てば崩落した通路は元に戻る。

 今のユナなら、骸骨兵くらいで死にはしないし。

 ひとりで街道を戻るのは危険だが、きっとフェルマータ達が救出に来てくれるだろう。

 なんなら、フェルマータ達がINするであろう夜までログアウトしておけば、大丈夫な筈。

  

 あとは無茶はしないこと。

 ローリエは、それを祈るばかりだ。

 

 でも。

 とローリエは改めて思う。

 

 そして嬉しそうに言う。

 

「さっきの私、なんか、めっちゃパーティしてたよね? ……してない? ね? ね? ね?」

 誰に問うでもないのだが。

 ローリエは、自画自賛のような言葉を、真っ暗な空間に零す。 

 

 自分のことより、仲間を守れた。

 これは大きなことだ。 

 

 一人では叶わない。

 

 ちょっとは、先輩らしいことができただろうか。

 出来ていてほしい。

 

 そう思いつつ。

 ちょっと、勝手に、いい気になりつつ。

 

 自己犠牲的にカッコよく仲間を守れた、と思っている。

 

 そんなローリエのHPは満タンだった。犠牲になっていない。

 衣装のテクスチャーもサラピンで。

 新品同様だった。

 

 確かに、あのときローリエは大ダメージを受けた。

 どのような風も木も、防御に使えない弱点属性だから。

 完全には防げなかった。

 

 しかし生存できたのは、一重にマナにもらった日傘のお陰だ。

 

 あの時のローリエは。

 日傘を盾にして、吶喊することで、後方のユナとの距離を開け。

 【雷光嵐(サンダーストーム)】の着弾点を前方にずらした。

 同時に、文字通り盾となった日傘の効果で。

 上昇した魔法防御力(M/DEF)が、少しだけ雷の威力を緩和してくれた。

 

 それが、指輪で半減した最大HPでも首の皮1枚繋ぐことが出来た要因だ。

 

 

 あとは、いつも通り、有り余っているエリクシルを飲んだだけである。

 

 ――そういえば。

 パーティに入れたのがうれしすぎて。

 エリクシルを売る、という当初の目的をすっかり忘れていたな。

 

 と、ローリエは今思うのだが。

 まぁ良いか、と思った。エリクシルはどうでもいいのだ。

 パーティが出来ていることが大事なのだから。

 

 

 

 そうして、ローリエは深い暗闇の底に降り立った。

 

 超音波の自動マッピングが機能し。

 絶対方向感知で、自分が今向いている方角も解る。

 

 真っ暗でも問題ない。

 

 しかし本当に、超音波探知が機能する範囲には、誰も居ない。

 敵も、味方も、魔物も。

 

「――また、ひとりになっちゃった……」

 

 まぁもう、慣れっこだけどね。

 

 ローリエは歩き出す、出口の可能性が広がっている方角へ。

 迷うことなく。

 

 

 

 

 そうそう、念のために『骸王シズナレヴの指輪』は外した。

 HPとMPが、元の数字に戻る。

 もしかしたら強い魔物が要るかもしれないし。

 ここは一人だから、魔法使いの真似はしなくても良い。

 代わりに、あのいけ好かない暗殺者が落とした、筋力アップの指輪でもつけておこう。

 

 今度であった時に、見せびらかして反撃してやるのだ。

 

 なんてね。

 

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