VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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 壁にあいた、亀裂のような隙間をまたぎ。

 

 ローリエは、別のフロアと思われる空間に、降り立つ。

 

 

 すると、唐突に。サウンドエフェクトが鳴って。

 

 ――フレンド:ユナがログインしました――

 

 

 そんなメッセージが流れた。

 

 

 フレンドリストを確認すると。

 今まで消息不明だったユナの表示が、『石蛇王遺跡――至宝の間――』と書き換えられている。

 

 そこはローリエが今、足を踏み入れた場所に他ならない。

 

 そしてユナは、遺跡の床が崩落した時に、通路の先に残っていた筈だ。

 なのになぜ?

 

「ユナさん? どうしてここに……?」

 

 ローリエが居る場所は、ダンジョンの中でもかなり奥地になる。

 なんなら、ラスボスが居てもおかしくないフロアだ。

 

 その証拠に。

 

 フロアをしばらく進んだ先に、巨大な影が視界に入る。

 まるでスポットライトのように、天井にあいた穴から月明かりが差し込む。

 そんな幻想的なビジュアルに、ローリエは近づいていく。

 

 聳える巨大な影は、二つ。

 

 争いの末に、地表を突き破ってこの地下にもつれ込み。

 そこで、相打った竜とカトブレパスの亡骸だ。

 

 そして、フロアの中には。

 動かない気配がひとつ。

 動く気配がひとつ。

 

 ローリエの探知はそれらを感じ取り。

 その一つに歩み寄る。

 

 

 

 

 ユナが、ヒトゴロシの気配を見送って。

 暫くして。

 

 ユナが、悔しさと絶望を噛み締めていた時。

 

 居ない。

 と言われていた筈の。

 

 ローリエが接続した、という旨のSEが鳴って。

 先輩が同じフロアにやってきたことを知る。

 

 居ない筈の人がやってきたことが。

 ユナは嬉しくて。

 

 

 でも、ユナはもう動けなくて。

 駆け寄ることは適わない。

 

 ユナの、倒れたままのその視界はただの闇で。

 音も、香りも何も伝わらずに。

 

 キャラクターとして、というよりは。

 プレイヤーとして。

 

 できることは、声を上げることだけだった。

 

 

「先輩……!? そこに……居るんですか……?」 

 

 

「ほんとに、ユナさん?」 

 

 ローリエは、見知った姿が倒れていることに驚きを覚えた。

 インスタントダンジョンに入るには、崩落した場所から降りなければならず。

 落ちたら決して助からないし。

 初心者のユナに、降りる手段なんてありはしないのに。

 

 それなのに。

 

 この魔物がひしめくダンジョンを抜けて。

 至宝の間に居ることが、どれほどの奇跡なのか。

 

 信じられなかった。

 

 いったいどうやってここにたどり着いたのか。

 

 でも、その姿はユナでしかなく。

 フレンドリストの表示を見ても、疑いようがない事実だ。

 

「ほんとに、ユナさんだ……」

 

「先輩……?」

 

 けれど、ユナのHPは真黒で、0になっている。

 死んでいるのだ。

 パーティが全滅した時にも、コミュニケーションが取れるように。

 声だけは発せられるけれど、一切の身動きも視界も得られていない状態だ。

 

 ここのフロアボスにでもやられたのか?

 でも、今のところボスの姿は見えない。

 

 いや。

 今はそんなことは良いだろう、と。

 ローリエは慌てて行動に移そうとする。

 

 蘇生アイテムを使用して、ユナを起こさなければ。

 そう思うのだが、ずっとソロしかしてこなかったローリエは、蘇生アイテムの用意が無い。

 

 エリクシルで復活するだろうか?

 試したことはないが、やってみようか。

 小瓶を取り出そうとした時。

 

「先輩、私のカバンに、アウェイクポーションがあります。使ってもらえませんか」

 

 ユナがそう言った。

 本当は、ローリエに使うつもりだったポーションだ。

 

 ローリエは、その方が確実だと思い。

 ユナのカバンをまさぐって、ポーションを取り出すと。

 倒れたままのユナに振りかけた。

 

 

 程なくして。

 ユナの感覚が、キャラクターに再接続される。 

 仄かな花の香りがして。

 眼を開けば。 

 

 傍には、膝を折りたたみ、座った状態のローリエが見えた。

 その腰を超える若草色の髪が、波のように、床に広がっていて。

 琥珀色の幼い瞳が、心配そうにユナの顔を見つめている。

 

「ローリエ先輩……」

 

 ユナは、本当は少しの間だったのに。

 ずっと何年も探していた人物にやっと会えたような、錯覚がして。

 

「……やっと会えました。探しましたよ」

 

「ご、めんね、ユナさん。私、何か間違えてた……? なんか、怖い思いさせた……?」

 

 ローリエは、申し訳ない気持ちでいっぱいで。

 何だかわからないけれど、ユナに苦労をかけただろうことは、なんとなく解った。

 こんな場所で、倒れていることが、そう思わせた。

 

「大丈夫です。私が、ただ、弱かっただけですから……」

 

 どこか悔しそうに言う。その声。

 でもユナはすぐに、ローリエの心配をする。

 

「先輩は大丈夫でしたか?」

 

「う、うん。なんとか……」

 1回死にかけはしたけど。元々防御よりの構成なので、何とか生きていた。

 

 ふと。

 

 そして、ローリエは見つける。

 ユナの傍らに、落ちている投擲用の短剣を。

 

 

「ユナさんを、殺したのはやっぱりあのPK?」

 

「あ、はい……そうです。すいません、私が弱いばかりに」

 

 弱いのは仕方がない。

 始めたばっかりなのだから。

 

 その始めたばかりの初心者を殺すなんて。

 

 確か、PK対策はされていたと思うのに。

 どうやったのかは解らないけど。

 

「……じゃあ、今あっちに居るヤツが、そうなんだね……!」 

 

 ローリエは立ち上がる。

 

 そして。

 

「ごめん、ユナさん、私ちょっと行ってくる――」

 

「え?」

 

 ローリエは、駆けた。

 PKが佇む、そのさらなる奥のフロアへ。

 至宝の卵が、鎮座する先へ。

 

 

 

 

 

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