VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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 中央に、4メートルはあろうかという、大きな石碑が立つフロア。

 その周囲を囲うように、幾つかの卵が置かれていた形跡があり。

 今も、何個かは採取可能な状態だ。 

 

 卵は、1メートルほどの大きさの、球状の物体で。

 見紛うこと無き、超レア品、カトブレパスの卵だ。

 

 

 くっくっく。

 姿を現した男は。

 笑い。卵に掌を置く。

 

「こんなに早く見つけられるとは……オレは運がいいぜ」

 

 

 そして。

 背後からの接近にも気づいていた。

 というより、ひとつ前のフロアからの月明かりで出来た長い影が。

 床に映りこんでいるのだから、否が応でも気づくのだが。

 シルクハットの男は、振り返らずに、

 

「よぉ、生きてたか? センパイ」 

 

「ど……どうしてユナさんを殺したんです!」

 

「どうして?」

 

 男は振り返る。

 振り返ると、小柄なエルフが、険しい表情で佇んでいた。

 

「どうしてって、オレァ、PKだぜ。殺すのが普通だろうが?」

 

「そ、そういうことじゃありません。始めたばかりなんですよ? そんなことをしたら、辞めちゃうかもしれないじゃないですか……」

 

 他人に談判するようなことは、今までになかった。

 そんなローリエの言葉は、基本的にデクレッシェンド。

 自信なく、声量は尻すぼみになっていく。

 

 しかし、どうしても、言いたかった。

 折角、パーティに入ってくれたのに。

 自分のことを追いかけてきてくれたのに。

 

 心を折るような仕打ちは、許せなかったからだ。 

 

 だが、男は、そんなこと知ったことではない風で。

 

「何がダメなんだァ? 良いじゃねェか、別に。辞めたきゃ辞めりゃいい。今じゃこの手のゲームはより取り見取りだろォ? 何も、このゲームにこだわる必要はねぇ。PKなんていないゲームをやりゃいいだけじゃねえか? 始めたばっかりなら、辞めても未練もありゃしねえだろォ?」

 

 それはそうかもしれない。一般的には。

 

 でも、それでは困るのだ。少なくともローリエは、困る。

 ユナに辞められても、良いって? 

 

「そんなはず、無いです。……良く……あり、ません!」

 

「じゃあどうするってんだ?」

 

 

「PKモードオン!」

 

「ふっ。いいねェ? 復讐、ってかぁ? オレをPKしようってわけだ?」

 

 ローリエは、その手に、短剣を作り出す。

 【木葉短剣(リーヴスエッジ)】という木属性の初級魔法で。

 それを最大レベルまで上げた時に追加される隠し要素。

 本来は、ナイフのように強化された木の葉を投げつける魔法だが。

 そこから派生したこのスキルは、【大自然の弓(フォレストアーク)】と同様に、自分の手に装備することができる。

 

 

「……へぇ、短剣、ね。貴様に扱えるかな?」

 

 ローリエが構え、今にも踊りかかろうかと言うタイミング。

 暗殺者は、カトブレパスの卵を、インベントリに収納した。

 

 フロアから、卵が一つ消え失せる。

 

「――でも、貴様と殺るのは、今じゃねえんだよな。オレはまだ、準備が出来てねぇ。そのことはさっき、ようく解ったからよ」

 

「え?」

 

 何を言っているのだろうか。

 自分は気配を消して、他人の準備も何もさせないような状態で殴りかかるクセに。 

 

「まさか、逃げるつもり、です……か?」

 

 ローリエが言葉を言いきるかどうかと言う時。

 フロア全体が振動し、地震のような地響きに見舞われる。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴッ、とそんな重々しく低い音が、周囲を震撼させ、パラパラと天井から土石が舞う。

 

「……良いぜ? ヤルっていうなら止はしねえ。でもよぉ? オレの相手をしてていいのか? 今頃、卵を取られて怒り狂った亡霊が、暴れ始めてんぜ?」

 

 あっちのほうでな。と、シルクハットの男は、顎でクイっと指し示す。

 そっちは、ドラゴンとカトブレパスの死骸があったほうで。

 

 そして、復活したばかりのユナが残っている方だ。

 

「貴様の後輩が、またくたばってもしらねぇぞ?」

 

「くっ!」

 

 

 ローリエは、踵を返すと。

 【超高度跳躍(ハイジャンプアシスト)】も使って。

 

 一目散に走る。

 

 

「くっくっく、精々がんばりなぁ、オレはこの辺でおさらばさせて貰う」

 

 そうして、背後に残した暗殺者は。

 貰う物だけもらって。

 その場から消え失せた。

 

 インスタントダンジョンはゴールしなきゃ脱出できないだなんて。

 ユナに言った言葉は嘘だ。

 

 拠点に帰還するアイテムを使えば、脱出は出来るのだから。

 

 

 そうそう。

「――あと、その指輪はしっかり持っておけ」 

 オレの手で必ず取り返す。

 

 ローリエの短剣を見た時に、男は指にハマっているアクセサリーに気づいていた。

 それが、もともと自分の物であったことに――。

 

 

 

 

 

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