VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

47 / 65
第五話『ゴーストライダー』
48


  

 地下遺跡から戻って、暫くしたある日の夜。

 ローリエは、『ミミズクと猫・亭』の裏手にある、訓練場所に居た。

 お店の裏手を出てすぐの木製のベンチに座って、ぼー、っとしているところだ。

 

 ちなみに、今は魔法使いモードで『骸王』の指輪もはめ直してあり、暗殺者が落とした『ストレングスアップリング+25』も装備したままだ。

 

 そんなローリエは。

 とても暇だった。

 

 

 そして、平日の今日。

 まだ、パーティの誰も接続していない。

 

 むしろ、ここ最近は、ユナとも、フェルマータとも、マナとも、まともに会話していなかった。

 なにせ、フェルマータもマナもリアルが忙しく、最近は殆どすれ違いだったからだ。

 ユナに至っては、遺跡の時以降、あれから1回もゲームに接続していない。

 

 だからローリエは今日も独りだ。

 しかし、狩に行く気も、買い物に行く気も起きない。

 独りでやるSP稼ぎは、もう3年の間にやりつくしたから。

 

 今はただ、暇を持て余してだらけていた。

 

 リアルでもゲームでも、特に何もする気が起きなくて。

 

 それなのに。

 ローリエは、スフェリカの世界に来ている。

 

 もう立派なゲーム廃人だ。 

 

 部活もしていないし、学校終われば定時で直帰がスタンダードだから。

 無駄に過ごせる時間はある。

 

 高校生なのに、こんなのでいいのだろうか。

 なんて思いつつ、ちょっと雲が多めの夜空を見上げている。

 

 

 

 

 そして、つぶやく。

 

「宿題もしたし、予習もしたし、ご飯も食べたし……」 

 

 暇だなぁ。

 

 

 

 なんて。

 マナから貰った日傘を杖代わりに、老人のように訓練所のベンチに座っていると。 

 

 

 ピロン、とSEが鳴って。

 

 

「みぃつけた」

 

「ごふぁっ!?」

 

 背後から小さい気配に抱きつかれた。

 

 その頑丈で金属製の胸板と、首に回されたガントレットが、柔肌にめり込んでガチガチと音を立てる。

 さらに、攻撃者の筋力値の高さと嬉しさのあまり力加減を間違えたことで、その威力は想像以上だった。

 

 ほぼヘッドロック状態で苦しむローリエは、振り返ることも許されずに。

 

「は、う、ぅぅ!? ダ、ダレ、デスカ……!?」

 

「フェルやめて。ロリ苦しそう」

 

「え? あ、ごっめーん」

 

 咳き込みながら。

 ローリエが振り向くと。

 

 見慣れた二人が立っていた。

 

「フェルマータさん……にマナさん? どうしてここに?」

 

 

「どうして、って。私が居たらお邪魔ってことぉ?」

 

「いえいえいえいえ!」

 そんなことないです。

 と、フェルマータの言葉をローリエは全力で否定する。

 邪魔だなんてマジでそんなわけないですから。

 

 「それにしても、繋いだらすぐそこにロリが居るとは思わなかったわ」

 

 ついさっきローリエがフレンドリストを見た時は、二人はまだログアウト状態だった。

 今しがたなったSEは、接続を知らせる音で。

 ログには、やはり、二人が接続したというメッセージが記録されている。

 ということは――。 

「え、えっと。じゃあ、つまりお二人は、いまログインしたところ、ですか?」

 

 拘束は緩んだけれど。

 まだ、ローリエの首に腕を引っかけたまま、フェルマータは、お疲れの様子でだらりと答える。

「ええ、そうよ。やっと解放されたわ」

 

「フェルも忙しそうだったわね」

 

「もう大変だったわ。イジワルな課題出されたり、提出するレポート大量に書かなきゃいけなかったりで。――先生も何かトラぶってたんだっけ?」

 

「まぁ、そんなところね。なんか、新入りが作ったプログラムのところ、バグ出まくりで大変だったのよ。納期も近かったし」

 

 へぇ。

 と言う感じで、ローリエは二人の話を聞き流す。

 ここ1か月ほどの会話を聞いている限り。

 たぶん二人は、社会人か大学生なのだ。

 

 だから、聞き流す。

 

 ローリエは、世知辛すぎる世間のことは考えたくない。

 このまま、誰かと触れ合う事が苦手なまま、何の仕事ができるのか。

 不安しかない。考えたくない。

 だから聞かない。

 今はまだ、社会なんて無かったことにしておこうと思うのだ。

 

 せっかく、ゲームの中に逃げているのだから。

 

 ところで、とマナ。

 

「ロリ、ユナとはどう?」

 

「ああ、そうね。遺跡どう? この前行ってたんでしょ?」

 

 そしてマナは、フェルマータのその一言に。

 くすくすと、元々のジト目をさらにジト目にして。

 意地悪く微笑む。

 

「フェル、二人の事すごい心配してたわ。LINKで、大丈夫かな? 大丈夫かな? って何度も送ってくるのだもの」

 

「だって心配でしょ! ユナちゃんは初心者だし、ロリちゃんはパーティ不慣れな感じだし」

 

「うっ」

 ローリエは、心が痛んだ。

 不甲斐ないばかりに心配をかけさせてしまった。

 申し訳ない。

 しかも、雑魚モンスターに殺されかけたし。

 

 ほんとうに、何をやっているのだろうか。

 そんなちょっとの自己嫌悪を感じていると。

 

 

 マナはきょろきょろして。

 

「ところで、ロリ、ひとり? ユナは?」

 

「ユナさんは、遺跡以来、繋いでないみたいです」

 

「そう?」

 

「ユナちゃん、いつも忙しそうだもんね」

 

 

 

 

 なんて話をしていると。

 ユナがログインしたというメッセージが流れてきた。

 

 噂をすれば影とやら。

 

 

 ローリエが、『風の囁き(ウィスパー)』で連絡係をして。

 

 3人の居場所や、最適な移動ルートを享受する形で。

 30分ほどして、訓練所にユナが姿を見せる。

 

「先輩。フェルさん達も、お久しぶりです!」

 

 

 そうしてさんにんでひとしきり挨拶を終えて。

 雑談などをしていると。

 

 ユナが唐突に質問する。

 

「あの、ところで、手に入れた卵なんですけど……ローリエ先輩の卵にもカウントダウンて表示されていますか?」

 

 その言葉に。

 ローリエは。

 

「カウントダウン? なんのことですか?」と、不思議がり。

 

 フェルマータとマナは。

 

「卵!?」

 と驚く。

 

「はい、小さいのと大きいのがありますよね? 大きい方なんですけど」

 

 それについてローリエは何のことかわからない。

 フェルマータは、まさか、超レアのヤツのこと、まさかねと信じられず。

 マナは、冷静に問う。

 

「もしかして、カトブレパスの卵のこと?」

 

「はい、そうです」

 

「私の卵は、小さいのしかないですよ? 枠が虹色の卵ですよね?」

 

「……私、もう一つ拾いましたよ?」

 

「もう一つ?」

 

 

 

「え? 何? 本当にカトブレパスの卵なの? ユナちゃん、本当に?」

 

 ユナの言葉から、卵を手に入れたのが本当だと理解して。

 フェルマータもマナも、凄いと驚き、喜んだ。

 

「あそこは、当たりのダンジョン引くだけでかなりの運が必要な筈よ。良く行けたわね」

 

 そこで。

 ローリエは、その時のいきさつを軽く話し出す。

 

「一緒に遺跡で狩りしてるときにこの前のPKに襲われまして。そいつが使った魔法で、遺跡の階層が崩落たんです。それでそのままはぐれてしまって。そのIDで見つけたんですよ」

 

「崩落?」

 

「ロリ、それ詳しく」

 

 というわけで、ローリエはその後のことを二人に手短に説明する。

 

 かくかくしかじか。

 まるまるうまうま。

 

 フェルマータは再び驚き。

「えー!? またあのPKに襲われたの!?」

 

 マナは微笑んだ。

「遺跡を破壊するとIDに繋がるのは知っているけど、崩落するかどうかも確率は低かったはず。二人とも凄い運がいいわね」

 

 しかし、今はその苦労話はあとにして。

 それよりもだ。

 

「カウントダウンって?」

 

「え、っと、出してみますね」

 

 ユナが、問題のアイテムを、インベントリから取り出し、訓練所の地面に置き直す。

 すると。

 

 

「うわ……」

 

「大きいわね」

 

 フェルマータとマナの反応はこんな感じで。

 

「これ……あそこにあった石碑じゃないですか?」

 

 そう。

 それは、円形に囲うように並んでいたカトブレパスの卵の。

 ど真ん中に、ででん、と置かれていたでっかい石碑だった。

 

「あれ? これ石碑なんですか?」

 

 ユナは、石碑を引っこ抜いてきたのだろうか。

 でも、カウントダウンとは。

 

「残り時間はいくつなんです?」

 

「あと約1時間です」

 

「ば、爆弾とかじゃないでしょうね?」

 

「石碑なんでしょ? それは無いんじゃない?」

 

 そして相談の結果。

 1時間待ってみよう、ということになった。

 何が起こるのか、誰もまだ分からないまま。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。