VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

5 / 65
6

 

 この世界。

 第二世界(スフェリカ)は、とことんリアリティに拘った設計をしている。

 余計なインターフェースは、視界になく、完全にもう一つの現実を思わせ、錯覚させる。

 

 太陽も、月も、星々も。

 独自に定められた法則に従って、公転自転している。

 

 

 故に。

 

 雲も、季節も、風も動く。

 なんなら、天気予報が可能なスキルだってある。

 

 

 

 だから。

 首都の上空に差し掛かった急な暗雲が、土砂降りの夕立をもたらしたとしても、特段不思議なことではない。

 

 

 ローリエが。

 

 自分を入れてくれるパーティに巡り合うために。

 屋根の上をうろつき、下界を見下ろし。

 

 たまに地上に降りたかと思えば。

 

 人気のない場所にぽつんと立ち。

 いかにもな『私強いですよオーラ(自己評価)』を出し。

 

 誰かに、『パーティに入りませんか』と声をかけられることを期待するような。

 全く持って無駄で、頭の悪い、都合のいい愚考を繰り返していた時。

 

 

 それは起こった。

 

 

 数度の雷鳴が轟いたかと思えば、首都全域は急な豪雨に見舞われた。

 種族がら、雨が大好きだったり、有利だったり、全く気にしない輩も居るけれど。

 

 多くは、人間の思考のそれで。

 

 街中のプレイヤーやNPCは、次々に傘や雨具を纏い。

 雨天に閉店する店は、そそくさと看板を下げ始める。

 

 

 そして、雨が嫌いで、雨具の無い輩がやることは一つ。

 

 雨宿りだ。 

 

 

「ひぃ、ヤバイヤバイ」

 

 雨はともかく、雷に撃たれたらただでは済まない。

 

 突っ立って、『誘ってオーラ』を振りまいていたローリエは、一目散に近くの建物の軒下に逃げ込んだ。

 幸い、首都の中でも人気のない路地で、誰かに巡り合う率は少ないだろうと思われた。

 

 

 降りしきる雨。

 地面に強く打ちつける、雫、雫、雫。

 

 ざぁぁぁぁぁ。

 

 聞こえる音が、雨音だけに支配されたかのような。

 

 そんな錯覚。

 

 ローリエは、路地の軒下から、曇天を見上げる。

 

 

 

 冷静になる。

 

 

 

 ――なにをやっているんだろう。

 

 そう思うのは、生きてきて何度目だろうか。

 何千回目だろうか。

 

 

 どうしてこうなったのだろうか。

 

 そう、思う時は良くあるけれど。

 その答えは、既に分かっているのだ。

 

 他人と付き合うことが怖い。

 他人が怖い。

 なのに、仲良くしたい。

 

 

 不毛な、二律背反。

 

 全部、自分が悪い。

 こんな、性格なのがいけない。

 

 他人の中に入っていけない。

 他人に自分から、声をかける勇気がない。

 

 お腹がすいても。

 飲食店には入れない。

 個人経営も、チェーン店も、ファーストフード店も。

 コンビニでさえ。

 うまくお買い物ができない。

 

 ネット通販だけが、ローリエの、愛海の、友達だ。

 

 そんなやつが、パーティプレイに憧れるだなんて、きっとおこがましい事なんだ。

 

 ローリエは、もうすぐ成長限界だ。

 よく考えれば、割とやり切ったと言えなくもない。

 

 ――もう、やめようかな。引退しようかな。

 そんな考えがよぎる。

 

 雨の中。

 

 冷たい雨の中。

 

 軒下から零れた、水滴が顔に当たって。

 頬を伝って。

 

 顎を伝って。

 

 地面に落ちる。 一滴。

 

 

 そんな瞬間に。

 

 

 物思いにふけっていて気づけなかった。

 すべてのスキルの警戒をかいくぐって。

 

 遅れて知った時にはもう遅い。

 魔銀製甲冑(ミスリル)の擦れ合う金属音を奏でさせ。

 

 ロングマントをカッパのように身体に巻き付けて。

 

 その小柄は、ローリエの居る軒下に駆け込んできた。

 

 ばしゃばしゃ、と――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。