VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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第六話 『鮮血の古城にて』
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 フェルマータ、マナ、ローリエ、ユナ。

 4人は、首都から南に下った砂漠地帯に来ていた。

 そこは以前、ローリエとユナが訪れた石邪王遺跡群があるところだ。

 

 その砂漠地帯に散らばる幾つもの遺跡は、ひとつひとつが大小のダンジョンであり。

 石材で建てられているのは共通だが、内部の間取りは多種多様だ。

 

 地下水脈に通じる水場がある遺跡。

 狭い通路だらけの遺跡。

 トラップ地獄の宝物殿。

 などなど。

 

 その中から、4人は、ただっぴろいフロアを有する遺跡を選択した。

 1フロアの面積もさることながら、天井までの高さもある遺跡だ。

 

 そこならば、ヒューベリオンも陽の光でペナルティを受けることもなく。

 ユナも、2メートルのポールウェポンを存分に振るえるだろう、という目論見だ。

 

 

 そんなユナの雰囲気は、今回からガラリと変わっている。

 

 真紅のふりふりドレスの上に漆黒の金属甲冑を身に着けたユナは、背中にハルバードを背負っており。

 防御力あるんか? とつっこみたくなるような、隙間だらけの兜から、真っ黒なツインテールを、吹きすさぶ砂嵐に靡かせている。

 そのクセっ毛なツインテールには、赤いリボンが目立っていた。

 これは黒い兜に黒髪では、真っ黒すぎるし、黒のイメージカラーは既に埋まっているとマナに気にされた結果で。

 最終的にユナのカラーリングは、黒と赤で構成される感じになっている。

 

 さらに、ドレスのスカートはアイドル風なミニ丈で、それに合う可愛いデザインの甲冑は、少女感を損なわない可憐さだ。

 具足はピンヒールになっていて、太腿までを覆う装甲は、絶対領域を作り出し、露出した素肌が、黒い装甲と対比して眩しい。 

 ついでにパンツもかわいいのになった。

 

 そしてユナの傍には、今インファントドラゴンゾンビのヒューベリオンは居ない。

 ヴィエクルスフィアに収納状態でユナが持っているからだ。 

 

 

 4人は今、目当ての遺跡。

 その入り口に到着したばかり。

 

 遺跡の前に、皆が立ち止まったのを見計らい。

 先頭を歩いていたフェルマータが、振り返る。

 

 

「ユナちゃん」

 

「はい?」

 

「入る前に一つ聞きたいのだけど、ユナちゃんは、私達『に』ついてくる方が良い? それとも、私達『が』ついていく方が良い?」

 

「え!? っと……?」

 

 ユナは、フェルマータの言葉の真意を測りかね、即答できなかった。

 マナがフォローを入れる。

 

「深く考える必要は無いわ。ただ、私達の前を歩くのか後ろを歩くのか、って言う話」

 

「ユナちゃんの好きな方で良いんだよ。急ぐつもりないから」

 

 深く考えなくていい。

 そう言われても。

 

 ユナは、考えを巡らせた。

 

 そしてこう思った。 

 

 これは。

 手伝ってほしいのか。

 見守って欲しいのか。

 どっちがいい? 

 そういう選択だと。

 

 両方のメリットとデメリットを天秤にかけているのだ。

 

 手伝ってもらえば、ユナは早く強く成れる。

 逆に、見守ってもらえれば、ユナは強くなるのは遅いが、死んでも起こしてもらえるし、じっくりゲームを楽しみながら自分のペースで強くなれる。

 

 ひとりしかキャラクターが作れないゲームだから。

 早く強くなることが必ずしも正解ではない、という話で。

 弱いうちには弱いうちの楽しさや、苦労がきっとあるから。

 その過程を、楽しみたいならば、急ぐ意味は何もない。 

 

 確かに、一歩づつ強くなるというのは楽しいかもしれない。

 苦労があるほど、プレイヤーへの経験値は高いだろうし。

 高みに来た時の感慨深さも筆舌に尽くしがたいことだろう。

 

 でも。

 ユナは、この遺跡の地下で。

 インスタントダンジョンで。

 弱い事の辛さを噛み締めた。

 

 ローリエ(せんぱい)に助けられてばかりで。

 あのナハトとかいう暗殺者に遊ばれっぱなしだった。

 

 それにそもそも、もう手助けはされている。だから。

 

 ユナは、自分の真っ黒な鎧の、その胸元に手を置いて。

 

「私は早く強くなって、ローリエ先輩の役に立ちたいです」

 

 え?

 

 急に自分の名前が出た幼い風貌のエルフが、ヒールで高くなったユナの顔にを見上げ、視線を送る中。

 ユナは、凛として続ける。

 

「それに既に、私は皆さんから色々なものをいただいていますから、今更なお話ですよ? 大精霊、倒すんですよね?」

 

 フェルマータの、急ぐつもりはないという言葉は、パーティが大精霊を討伐するという目的があるから。そのためにユナは速く強く成ろうとしなくてもいい、そういう意味だろう。けど。

 

 ユナの時間は限られている。

 それを踏まえても、余りのんびりはしていられないのだ。

 早く強くならないといけない。

 今、ユナが一番嫌なことは、足手まといになることだから――。 

 

 

 マナは、納得したように目を伏せ。

 ただ一言、「そう」と応じ。

 

 フェルマータは、微笑を浮かべると、前を向き直し。

「じゃあこっちよ」と、ユナを先導しはじめる。 

 

  

 3人の前を歩くフェルマータは、遺跡に入ってすぐ直角に歩む方角を変え、脇道のようなところへ入る。

 そして、床に魔法陣、その中央に台座、という一室に、皆を案内した。

 マナが説明する。

 

「ユナ、ここの台座に触れて、地下70階を選択して頂戴」

 

 その魔法陣は、転送用のモノで、1回踏破したフロアを自由に行き来できるエレベーターのような役割を担う。

 踏破済みの判定は、パーティ単位で行われており、1回も踏破していないユナでも、他のメンバーが踏破済みならば同行が可能だ。

 

 

 リアル事情で、ユナがなかなか接続できない合間に。

 ユナ以外の3人で遺跡をある程度踏破しておいたのだ。

 

 だから、今すぐに、4人は70階という上位の狩場で、SP稼ぎをすることができる。

 

 でも。

 

「そのまえに、強化(バフ)かけますね」 

 

 ローリエが率先して持ちうる基本強化をかける。

 

「そうね、そうしましょ」

 

 つづいて、フェルマータもそれに倣う。

 

 ユナが、スフィアからヒューベリオンを開放し。

 

 

 準備を終えた一行は、狩場へと入る――。 

 

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