VRMMO-RPG:SecondWorld/第二世界スフェリカ ――『ガールズ・リプレイ』――   作:日傘差すバイト

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「いやぁ、参ったわね」

 

 

 そう言って駆け込んできたのは、ドワーフ種族の少女だった。

 頭にはなぜか、可愛らしいウサ耳が装着されていて。

 背中には大きな盾を背負い。

 

 どこからどうみても、防御タイプの重戦士が。

 

 ローリエのすぐ隣に入ってきた。

 

 

 唖然とする。

 雨の音が聞こえなくなるくらい。

 

 ローリエは、驚いた。

 

 こんなすぐ隣に、他人がするりと入り込んできた。

 たった、1メートルの真横に。

 その緊張か恐怖か分からない感情に、心身が強張っていく。

 

 

 その様子を、ドワーフの少女は心配してか。

 ローリエの顔を覗き込んできた。

 

 大丈夫?

 そう言いたげに、首が傾げられる。

 

 そろり、と動かしたローリエの視線が、交差する。

 一瞬、ローリエはドワーフの少女と目が合った。

 

 「あっ……」

 思わず声が漏れる。

 けどどうしていいのか分からない。

 

 雨音だけが、ざーざーと耳に入ってくる。

 やかましく。

 うっとうしく。

 跳ね上がる鼓動を押し隠すかのように。

 

 そんな状況。 

 

 

 路地の軒下に、小柄ふたり。

 

 

 そう、小柄が二人だ。

 

 

 ローリエの身長は、ドワーフに近く。

 エルフ種族の平均を大きく下回る140cm程しかない。

 

 

 それは、プレイヤー:(すめらぎ)愛海(なるみ)のキャラクリセンスの無さが原因だった。

 

 あえてもう一度言おう。

 ローリエのキャラクタークリエイションは、愛海のセンスが無さ過ぎた。

 そのため。

 ランダムで作成されたモノを、半ばガチャのように何度も試行して、奇跡的に超絶美形に仕上がった姿形を使用している。

 

 しかし、顔は完璧に仕上がっていたが、体型には一癖あった。

 まず、胸はぺらぺらで、下半身だけが艶めかしいくらいお尻が安産型で、それに倣うように太腿も『太いから太腿って言うんですよ?』と言わんばかりの高主張だ。

 そして、身長は140cmくらいしかなかった。

 これは、エルフ種族としては最低値位の低さだ。

 

 今は、プラチナ色の金髪を、太めの三つ編みお下げにしているが、その幼い髪型のチョイスが、さらに少女感を強めている。

 

 

 そのローリエを、やや中腰のドワーフ少女が、なお上目遣いで見上げてくる。

 ドワーフなのだから、背が小さいのは普通だけど。

 

 だからこそ、視線を遮る術に困る。

 

 上からの視線は遮りやすくても、下からの視線は遮りづらい。

 

 できることは、眼を逸らすことだけ。

 

 

 

 

 エルフの小柄が、どうみても陽気でキラキラの少女に見つめられる。

 ドワーフ少女の小動物のような可愛さが合わさって、ローリエの緊張がさらに加速する。

 

 実際、ドワーフ少女の顔の造形は、ローリエに負けず劣らずの一級品だった。

 美しいというよりは、可愛らしいという雰囲気で。

 ツーサイドアップのミディアムヘアは、薄桜色(チェリーピンク)で、ちょっぴり尖った耳と、色白の素肌。

 子猫のような配分でキラリと輝く赤く大きな目が印象的で、一言で言うならば、めっちゃ幼女。

 トドメとばかりに、頭にはふさふさのウサ耳を身に着けている。

 

 なのに、全身フルプレートメイルでがっちがちだ。

 腰部の花弁のように広がる金属プレートが、鎧の下に着こんだフワフワドレスのスカートと重なって、可憐さすらも孕んでいる。

 素晴らしいコーディネートだ。

 かわカッコいいにもほどがあろう。 

 

 そんなドワーフの身長は125~130くらいだろうか?

 

 様子を見ていた感じのドワーフだが。

 

 視線をそらしたローリエを追いかけるように。

 さらに1歩近づき。

 ローリエの眼を、再び見つめてくる。

 

 そして――。

 

「こんにちは……?」

 

 そんなドワーフの少女も、物は試しという感じか。

 ちょっと探り探りというニュアンスのこもった挨拶が、小さな口から放たれた。

 可愛らしい声で。

 

「へっ?」

 あっ、あの、その……。 

 

 ローリエは、小さな驚きの声を漏らし、思わず1歩後退(あとず)さる。

 続く言葉はまるで霞のように存在感を示さず。

 その背中が、追い詰められたかのように、背後の壁に密着した。

 

 満足な返事も返答も挨拶も、ローリエからは無く。 

 けれども、ドワーフ少女は止まらなかった。

 

「あなたも、雨宿り……ですか?」

「あ、は……は、はい……」

 

 霞から雲くらいには進化した声量で、ローリエは言葉を絞り出す。

 その最中。

 右へ左へ、ローリエが外す視線をドワーフ少女がホーミングしながら。 

 

「そう、ですか。急に降ってきましたもんね」

「そ、ソウデスネ」

 

 眼がぐるぐると回っているような錯覚に陥る。

 ローリエはまちがいなくテンパっている。

 なんなら、この3年間で一番他人と接近しているかもしれない。

 

 

 どどど、どうしよう。

 どうしたら……?

 

 どぎまぎのローリエ。

 

「……」

 

 そのあたりで、ドワーフの少女は悟ったのかもしれない。

 目の前のエルフが、他人が苦手だという事に。

 

 

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