ノートパソコンが不調でスマホで執筆をしていたので遅くなりました。
流石に購入から9年も経てばガタがきますね。
@××○○
東京11R
1番人気 10番スペシャルラピッド
2番人気 2番クライスマイル
3番人気 11番ノボバカラ
@×○△●
東京11R
10番スペシャルラピッドかな
@○○××
東京11R
前3戦みれば、スペシャルラピッド以外にあり得ないな
@△○××
スペシャルラピッドって新馬戦で9馬身差つけたやつか
これは決まったようなものでしょ
@○×○○
東京11R
◎⑩スペシャルラピッド
〇⑧アルタイル
△⑬イントロダクション
▲④クラシックメタル
@○○×○
スペシャルラピッドがパドックで暴れてる
@××▲◇
スペシャルラピッドは大丈夫なのか?
@×〇▲●
スペシャルラピッドは前もパドックでチャカついていたしいつもこんな感じ
@●▲××
スペシャルラピッドいつも通りで草
@▲●●□
結局1番人気変わらずか
10スペシャルラピッドは間違いねえから2着以下だな
@×□◇〇
返し馬でも首振り回していて草。大丈夫かよスペシャルラピッド
@▽〇××
池、スペシャルラピッド
@××〇▽
スペシャルラピッド!こいこい
@〇▽×■
うそだろ
スペシャルラピッド競走中止か
@▽■■〇
スペシャルラピッド競走中止
東京11R
@×〇▽■
吹っ飛んだ。それよりスペシャルラピッドは大丈夫かよ
@〇××◇
スペシャルラピッド競走中止かよ
能海騎手も落馬しているしやばいかも
@〇〇◇×
スペシャルラピッドはとりあえず馬運車には乗れたみたい
能海騎手がやばいかも
@○○スポーツ競馬
【東京11R白嶺S】
スペシャルラピッド競走中止
○○-keiba.jp/
@×〇〇▽
東京11R
1番人気スペシャルラピッド競走中止
1着は9番人気のサノイチ
よめんわこんなん
@〇〇■■
スペシャルラピッドは大丈夫なんかね
あれはぜったいに上に行くと思っていたんだけど
――――――――――――――――
右後脚の第一趾骨剥離骨折
これがスペシャルラピッドに下された診断であった。また、同じ骨の一部に細かいヒビが入っていることもレントゲン写真で確認された。
全治は3~4か月程度であり、競走馬の骨折としては比較的軽症であった。ただ、復帰には5か月程度は必要であるため、4歳の春競馬を全休する必要があった。
「剥離骨折の手術は無事に終わった。特に問題なく術後の経過も良好だ。ヒビについても、剥離骨折があったから、徹底的に検査したおかげで見つかったレベルなので、3,4か月程度で完治するようだ」
「とりあえず一安心ですね」
縣と森本は、スペシャルラピッドのレントゲン写真や獣医からの診断書を確認していた。
「競走中止になったとき、肝が冷えました……」
森本は、スペシャルラピッドのもとに全速力で走った関係で、足を痛めていた。運動能力に優れていた彼が、躓いて捻挫をするほど動揺していたのであった。
馬の方も動揺しており、ちょっとした刺激で暴れたり、走り回ってしまう可能性もあった。厩務員の伊藤を筆頭とした縣厩舎の面々が全速力で駆けつけて、彼をなだめたことで、大事にはならなかった。
「剥離骨折程度で済んだ、とは言いたくはないが、重症な骨折じゃなくてよかった」
「ただ、春競馬は完全にあきらめざるを得ませんね」
復帰の予定は、約5か月後の2016年6月である。これもすべてが順調に進んだ場合である。何かあれば、復帰はさらに遅れることになる。
「また賞金を加算しないといけないのか……」
4歳の夏シーズンに入れば、せっかく積み上げた収得賞金が半減されてしまうため、重賞挑戦の夢はまた遠のくことになりそうであった。
「そこも心配ですが、ケガをした経験が競争能力にどのように作用するのかが心配ですね」
森本は、ケガをしたことで、スペシャルラピッドが持つ素晴らしい競争能力に悪影響が出るのではないかと心配していた。ケガが原因で、競争能力が低下した例は数多くある。身体的な影響もあれば、精神的な影響もある。
馬は人間と同じで、生き物であり、感情がある。ケガをしたことで、走ることやレースを恐れてしまうのではないかという懸念があった。
「その話は、復帰後に考えるしかないな。今は、ラピッドが回復するのを待とう。それに、我々が管理しているのは、彼一頭だけではないからな」
縣厩舎には、スペシャルラピッド以外にも馬が委託されている。このため、1頭の馬に入れ込み過ぎるわけにはいかなかった。
「それもそうですね。ラピッドも新井牧場に戻されるようですし、管理はあちらに任せるしかないですね」
ケガをしたスペシャルラピッドは、術後の回復が良好であるため、しばらくしたら、新井牧場に放牧されることになっていた。
「やはり間隔が短かったのがダメだったのか。それとも調教が原因か。今回は、ラピッドの調子がかなり良かっただけに、ケガの原因が調べにくいな」
「正直、レース間隔については、そこまで影響はなかったと思います。レース前にケガの兆候は見られていませんでしたし、調教も順調でした」
「調教も順調だった……?」
「どうしました?追切のタイムを更新して、かなり順調だったと思いますが。身体の仕上がりも過去一でしたし」
「それが原因かもしれん。仕上がりすぎていたんだよ。調子が上向きになりすぎたんだよ。よく考えたら、ラピッドが仕上がった状態でレースを走ったのはあのレースが初めてだ」
「身体の出力が上がりすぎて、骨の方が耐えきれなかったということですか。そんなことあり得るんですか……?」
「そこはわからん。今後、ラピッドの骨や関節が、全力に耐えきれるレベルまで成長できたらいいのだけど……」
「その辺りは流石に未知数ですね。もし、今のままなら、これからも抑えて競馬をしていく必要がありますね。残念なことですが」
今のままでは、スペシャルラピットの全身全霊の走りを見ることができない可能性があった。それは考えたくない未来である。
「ラピッドは、5か月程度の休暇を得ることができたと考えよう。そこで身体をさらに強くして帰ってくることを祈ろう。新井牧場の皆さんに託すしかない」
「そうですね。未勝利戦のあとの放牧で一回り成長した経験もありますし、強くなって帰ってくると思いますよ」
生まれ故郷に一時的に帰省しているスペシャルラピッドが、よりたくましい姿になって帰ってくることを厩舎全員が祈っていた。
「あとは、能海君の方だな。頭の方は大丈夫だったが、あばら骨が何本か折れたらしい。こちらも復帰には時間がかかるだろう」
「彼の場合は、身体よりも精神面の方が心配です。大丈夫なんでしょうか……」
「それは確かに心配であるが、騎手を続けるなら、自分で解決してもらわなきゃ困る。それができないなら、辞めるしかないよ」
縣は、能海秀樹の事情を知っているが、それはそれであると考えていた。
「縣先生は、騎手をすんなりと辞めてましたが、理由があったんですか?」
「おいおい、俺の騎乗成績を知っていてそれを言うのは失礼だぞ。単純に食っていけなかったからだよ」
「あ~すいません。何か特別な事情があったのかと思いまして」
「そういう事情はない!俺がヘタクソだっただけだ」
縣は、なぜか自信満々に話す。
「……え~」
「というのは半分冗談で、調教師とかそっちの方面に興味が移っていたことが辞めた一番の理由かな。調教師になるために一から修行もしたかったし、なるべく若いうちの方がいいと思ってね。まあ、40代で開業もできたし、よかったとは思うよ」
「そうだったんですね。ちゃらんぽらんなので、その場のノリで調教師になったのかと思いました」
「結構ひどいこと言うね、君。イギリスに留学に言ったりして、結構頑張ったんだけどなあ。って、前にこの話しなかったっけ」
「しませんでしたよ。いつも馬と酒の話しかしないので」
「そうだったっけ?まあ、騎手を辞めるのも人それぞれってことだよ」
「彼の問題ですし、あまり口を出さない方がいいということですか」
「そゆこと。まあ、所属騎手だから、本格的にやばくなったら、いろいろとケアはする予定だけどね」
「わかりました。あとはオーナーへの説明とかですね……」
「今後のことを大宮さんに詳しく説明しないといけないし、大変だよ。まあ、今回の件で委託先変えるといわれても文句は言えんな」
「そこは我々の責任なので、仕方がありませんね」
管理している馬がケガをした責任は、預かっている縣達にある。特に大宮は、口を出してくる馬主ではないため、「馬主が無理を言ったから」という言い訳は通じない。
どうやって大宮に謝罪して、これからも信頼してもらうかと考えながら縣達の日々は過ぎていった。
――――――――――――――――
病院の病室に一人の若者が入院していた。先日のレースで落馬して、骨折の重傷を負った能海秀明であった。
久しぶりの入院は、かなり暇であった。本来なら、騎手として自らの騎乗技術の向上のために、研究をする必要があるのだが、今の秀樹にはそれをやる気力がわかなかった。
読書やテレビを見たりする日々を過ごしているなか、彼に見舞客がやってきた。
見舞客は、父親の能海秀明だった。
「秀樹、元気か?」
「まあ、元気だよ。頭も外傷はなかったしね」
咳やくしゃみのときに痛みが走るのが最悪だったが、父親に弱みは見せたくないためやせ我慢をしていた。
「そうか。ケガは職業病のようなもんだ。焦りすぎないように」
「わかっているよ」
父親の秀明も落馬事故で死にかけた経験があった。そのケガに比べたら、自分のケガは軽症みたいなものだと秀樹は思った。
「それよりもお前、どうするんだ。これから」
「どうするって……」
「スペシャルラピッドだよ。乗れるのか?これからも」
「乗れるなら、乗りたいさ……」
「そんな調子じゃ俺が奪うぞ」
「わかっているよ……」
「本当か?まあ、それならいいけどよ。あの馬がケガ明けで前と同じように走れるかはわからないけどな」
「そうならないことを祈っている」
こうして、父と息子のあまり弾まない会話は進んでいった。
「連絡することはこれぐらいかな。あと、母さんが心配していたから、電話くらいしてやれ」
「ああ、電話するよ……」
そういって秀明は部屋から出ていった。
相変わらずな父親であった。いつもこんな感じで飄々としており、こういうところが好きになれなかった。
秀樹にとって秀明は、父親であると同時に、騎手としてライバルであった。その父親に、今回の事故の心配されたことが、情けなく感じていた。
今日の見舞いも、父親なりの気遣いであることはわかっていたが、未熟者扱いされているような気分になった。
ただ、今の自分の調子だと、未熟者扱いされて当然かとも思った。
「奪うか……」
父の残した言葉が頭のなかで反芻していた。
秀樹が初戦から騎乗してきたスペシャルラピッドという馬は、間違いなく怪物級の馬であった。
体質が弱かったり、掛かり癖があったりと、弱点もあったが、それでも、自分が見た馬の中で最高峰の素質を持った馬だと断言できた。
抑えないとどこまでも加速して走り続ける。そんな快速馬だった。
「これで俺は降ろされるかもな……」
そんな素質馬を成績不振の未熟な騎手がケガをさせてしまった。
大宮オーナーはあまり口を出す人ではないため、今後どうなるかはわからなかった。しかし、大手の馬主なら間違いなく乗り替わりになるような事例だと思っていた。
「それに……」
―俺はもう馬に乗れないかもしれない―
秀樹は意識が回復してからずっとそう思い続けていた。
こういった馬のケガが原因の競走中止は2回目の経験であった。5年間で2回というのが多いのか少ないのかかはわからなかったが、最初の1回が、彼の心に永遠に消えない傷として残っていた。
「……」
呟いた言葉は、消したくても消せない、忘れることが許されない名前であった。
秀樹は、騎手としてデビューしたその年に、縣先生の恩師の調教師から、一頭の馬に騎乗した。その馬は、3歳の葦毛の牝馬であった。きれいな葦毛の牝馬ということもあり、関係者からは愛されている馬だった。
新馬戦は勝利したが、そこから伸び悩んでいる馬だった。秀樹に騎乗依頼が来たのも、新人騎手の減量制度を期待した面もあったようだ。
まだデビューしたてだった秀樹は、その馬をかなり可愛がっていた。スペシャルラピッドとは正反対といえるほど愛想のいい馬だった。
3歳の夏に乗り始めてからは、勝ち負けを繰り返し、オープン馬にまで昇格することができた。オーナーも調教師も秀樹の騎乗のおかげだと喜んでいた。
それで彼は調子に乗ってしまった。
冬の中山競馬場のレースで、秀樹は致命的なミスをした。
4歳になったその馬は、良血統ということもあり、12月のレースがラストランで、その後は繁殖入りする予定であった。
調教師も、馬主も、そこまで無理をさせる必要がないレースだと考えていた。馬主も、オープン戦を勝利するぐらいには強く、愛着のあった自分の馬が最後に走っている姿を見たいという希望もあって出走したレースであった、
しかし、秀樹は、ラストランは勝利で終わりたいたいという身勝手な考えをしてしまった。ここで勝てば、この馬はもっと愛されると思っていた。そして、その勝利を導いた自分はもっと評価されると思っていた。
ラストランは、出遅れた影響で、後方からレースとなった。雪が降ったこともあり、馬場のコンディションはあまりよくなかった。重馬場は得意ではなかったため、負荷が大きくなる可能性があった。
この時点で無理をさせないのが普通である。しかし、秀樹は欲をかいてしまった。
大捲りからの直一気で、中山の短い直線を走らせた。走らせてしまった。
鞭を何回も使って、押しまくった。勝たせるということだけを考えて。
その結果、脚が限界を超え、ゴール手前で競走中止となった。
秀樹は、あの時の光景が今でも時折フラッシュバックする。
空に放り出された浮遊感。芝に叩きつけられた衝撃。芦毛の馬がターフの上で横たわっている姿。
落馬の衝撃で意識は朦朧としていたのに、全部はっきりと覚えていた。
すべて自分の騎乗が原因だった。秀樹は今でもそう考え続けていた。
馬主も調教師も、馬場状態があまりよくないから、無事に帰らせてくれるだけでいいと言っていた。競走中止の後、縣先生たちには、大きな迷惑をかけた。
2年目の騎手のミスだったこともあり、大問題に発展することはなかったが、かなり絞られたことは言うまでもない。
あの事故は、自分の無理な騎乗が原因だとわかっていたからこそ、より辛かった。
調教師たちの指示を無視して、全身全霊で彼女を走らせてしまった。「最後くらいは勝たせたかった」という気持ちは、ただの自己満足でしかなかった。
そこから、能海秀樹という騎手は、馬に乗れなくなった。
競走馬に乗ってレースに出ることができるが、どこかの歯車が狂ってしまった。
このことを知っている同期や先輩、それに父親からは、乗り越えろと言われている。
「そう簡単に乗り越えられるかよ……」
現役の騎手は、大なり小なりこういった事故や失敗を乗り越えて、騎乗し続けている。
しかし、秀樹にはそういった折り合いをつけることができなかった。
秀樹は、慎重な騎乗をする騎手だといわれることが多い。しかし、それは一瞬の判断力が必要なシーンで、迷ってしまう、あと少しで勝てるというところで、力を発揮できないということであった。騎乗成績が伸び悩むのも当然であった。
そういう場面になると、あの葦毛の牝馬の顔が脳裏に浮かぶのである。
「辞め時かな……」
克服できないならやめようかとも考えていた。
5年目を過ぎれば減量制度の適応から外れるため、より厳しい世界で戦うことになる。そうなれば、自分の立場はますます追い込まれることになるだろう。
厳しい現実に打ちのめされていたときに出会ったのが、スペシャルラピッドであった。
毎回抑えるのに必死になっていたが、騎乗していて楽しい馬だった。何より、彼は最強だった。間違いなく、歴史に残る名馬になりうる馬だと思った。
そんな馬だからだろうか。燻っていた自分を変えてくれる馬かもしれないと思った。次も、その次も自分が乗っていたいと思わせてくれる馬だった。
「もう一度は……ないだろうな」
縣や森本は、秀樹が競走中止にしたおかげで、ケガが悪化しなかったと考えている。しかし、彼はそう思わなかった。
残り800メートル地点で違和感に気がついた。走り方のバランスが変わった気がしたのだ。
スペシャルラピッド、右後ろ脚に爆弾を抱えているが、普通のレースではそれが気になるような走り方はしなかった。
骨折の兆候はこのときに表れていたと確信していた。
「何が慎重な騎乗だよ。何もできていないじゃないか」
焦っていた。ここで負けたりしたら、乗り替わりになってしまうのかという恐怖心もあった。リーディング上位の騎手や、実績のあるベテラン騎手、何より父に鞍上を取られてしまうのではないかと考えてしまった。
そんな自分勝手な考えで、また同じようなことを繰り返した。
結局、残り400メートル付近で本格的にまずいと感じて、スピードを緩めさせた。しかし、違和感に気が付いたときに全力で止めるべきだったと後悔していた。
『大事には至らなかった』
一歩間違えば、その「大事」になっていたかもしれない。そう思うと、秀樹は、自分の騎乗を許すことができなかった。
こういう判断ができないから二流なんだと自責していた。
「俺は何も変わっちゃいなかった。いつもこうやって失敗する」
もう何もかもが嫌になっていた。
「もうやめた方がいいのか……?」
その質問に答えるものはいなかった。
能海秀樹(2年目)「全部俺が悪いんだよ……」
↓
能見秀樹(5年目)「最速のラピッドが俺の停滞した人生を救ってくれる」
↓
能海秀樹(6年目)「ラピッドがケガをしたのも全部俺が悪いんだよ。もう…嫌なんだ自分が…もう…消えたい…」
能海君は勝手に曇り湿気ているだけなので、そのうちラピッドに晴らしてもらいます。